ホグワーツ教師 ロード・エルメロイII世 作:木材
あとは私が考えた設定についても記載してます。
GWはサボってました。
あ、やめて…杖を振り上げないで…
「じゃあ、今日は盾の呪文の復習だ!みんな、2人一組で始めてみて!」
ハリーの言葉と共に、集まった生徒達は皆呪文の練習に入る。決闘のような形で互いに魔法をぶつけ合いながら、盾の呪文で防ぐ練習を始めた。何人かは既に盾の呪文をモノにしており、中でもハーマイオニーとロンはかなり筋が良いらしい。既に7年生である双子のウィーズリーは参加前から盾の呪文をマスターしていたため、他の生徒達に面白おかしく魔法のコツを教えている。
そんな生徒達をグレイは柔らかく微笑みながら眺めつつ、ゆっくりと歩む。既に盾の呪文を習得しているかつ、防衛術関連ではハリーをも凌ぐ腕を持つグレイには盾の呪文の練習はほとんど意味を為さない。そのため、グレイの習得していない魔法が出てくるまでグレイはハリーのアシスタントという形でダンブルドア軍団に参加していた。
「グレイ!」
そんな中、グレイを呼ぶ声がする。声がする方を見ると、ルーナとジニーが盾の呪文を練習しており、ジニーがグレイのことを呼んだのだとわかった。
「どうしました?」
「ねえグレイ、盾の呪文のコツを教えてくれない?前はもう少しうまくできたんだけど、ちょっと間を空けるとすぐにできなくなっちゃうの…」
「わかりました。ルーナさん、適当に魔法を撃ってくれますか?」
「うん、いくよグレイ」
グレイはトネリコの杖を抜くと、ルーナの魔法を待つ。ルーナは杖を振って基礎呪文をグレイに向けて飛ばしてくるが、グレイは動じることなく完璧なタイミングかつ最小限の魔力で盾の呪文を形成させた。
「プロテゴ」
基礎呪文はグレイの盾の呪文によって防がれ、霧散する。防衛術関連では卓越した能力を持つグレイにとって、この程度は無言呪文でも防御可能なのだが、今はジニーへ教えることがメイン。敢えて呪文を唱えることでジニーにも極力わかりやすくしていた。
「こんな感じです。魔力を盾のような形で形成するだけでなく、魔力の中に『盾』としての特性を意識するんです。『盾』のイメージが難しい場合は、『ぶつかったものを弾く』という意識でもいいと思います」
「盾…弾くね。うん、弾くほうがわかりやすいかも。ちょっとできてるか見ててくれない?」
「はい」
「……プロテゴ!」
ジニーの前に透明な壁が作り出される。強度としてはあまり強くはないだろうが、盾の呪文としてはきちんと形になっていた。
「できてますよ」
「ほんと?まだグレイやハリーと比べたら、なんだか弱い気がする…」
「力を込め過ぎているのかもよ?あと、弾く特性を強く出そうとし過ぎているせいで盾としての機能が弱いのかも」
「そっか…弾くのはあくまでイメージで、本質は防ぐだもんね。ルーナ、もう一回付き合って!」
「もちろん」
それだけ言って2人は練習に戻る。そんな2人の練習を見ていたグレイにハリーが歩み寄ってきた。
「グレイ」
「ハリーさん。ご苦労様です」
「グレイもね。助かるよ。結構参加者が多いから、僕だけで全員を教えるのはちょっと大変だったから」
盾の呪文を始めとして、防衛術関連の魔法を大体習得しているグレイはハリーのアシスタントとして動いている。寡黙なグレイだが、教えるのが非常に上手いエルメロイII世の内弟子なだけあり、想定していたよりも教えるのが上手くハリーとしてもかなり助かっていた。
「いえ、拙は大したことはしてません」
「ううん、本当に助かってる。正直、参加してくれないと思ってたから」
「師匠から許可をいただいたので」
「助かるよ。それにしても、グレイがあんなに教えるのが上手いとは思わなかった」
「いえ、それは…」
正直、グレイの口は決して達者ではない。元々引っ込み思案で寡黙な性格なだけあり、本人の教える能力は決して高くない。加えて、防衛術を含めた魔法に関しても感覚で使っている部分が大きく、そのまま参加していたら大した力にはなれなかっただろう。
ではそんなグレイが何故ここまで上手く指導できているのか。それは、エルメロイII世に魔法を使う感覚を予め聞いておいたからだ。師匠の言葉を借りてそれを活用しているだけなのに、グレイの教え方が上手いと思われていることにグレイは内心で小さな罪悪感を覚えていた。尤も、この話をエルメロイII世にしたところ、全く気にされなかったのだが。
「拙の師匠が、教えるのがとても上手なので…それを少し真似しているだけです」
「エルメロイ先生のおかげか。確かに、あの人本当に教えるの上手いもんね。僕の知る限り、あの人以上に頭に入りやすい教え方をする人はいないよ」
「そう言ってもらえると、拙も嬉しいです」
師匠がホグワーツの生徒に受け入れられているのをみると、エルメロイ教室の生徒達を思い出す。彼らは皆、師匠を受け入れて心から尊敬している者が多い。そんな彼らほどではないにしろ、こうして尊敬の念を向けられているのは、彼の指導の腕と真摯な姿故だろう。
「それで…グレイ」
「はい?」
「エルメロイ先生はその…僕たちのことについて何か言ってた?」
どれだけ受け入れられていようと、エルメロイII世の立場は魔法省からの監視。グレイが参加しているかつ署名リストに変化がない以上、まだアンブリッジには知られていないのは明白。だが、まだ知らせていないだけで否定的な可能性もある。そこでハリーは一応グレイにエルメロイII世はどう思っているのかを問いかけた。
「師匠の立場的に信じていただけるかはわかりませんが…師匠はこの活動に肯定的です。今の皆さんに必要なのは時間だと、師匠は言っていました」
「時間か…うん、僕もそうだと思う。じゃあ、先生は僕らの味方ってことだね」
味方、と言っていいのかわからず、グレイは苦笑する。何せ、エルメロイII世はこれから彼らの活動に横槍を入れざるを得なくなる。敵ではないし長期的な視点で見たら確実に味方ではあるのだが、瞬間的に敵扱いされてしまう可能性もある。なんとも言えない状態ではあるが、とりあえず普通に参加するしかないのだろう。
「ハリー、ちょっとこっち教えてくれる?」
「あ、うん。すぐ行くよチョウ。じゃあグレイ、引き続きよろしくね」
「はい」
チョウに連れられて去っていくハリーの後ろ姿を見送り、グレイはジニーとルーナに視線を戻す。するとジニーが去っていくハリーの後ろ姿をなんとも複雑そうな表情で見つめていた。
「…?」
「グレイ、気にしないで。ジニーはちょっと
「は、はあ…」
思うところというのはどういうことなのか。残念ながら今のグレイには全く理解できないが、ルーナが『気にしないで』と言う以上、下手にこちらから突っ込むようなことはしない方がいいだろうとグレイは内心で納得する。
「それよりグレイ。あたしに武装解除の魔法教えてくれない?」
「はい。では、あちらの訓練用の人形で実践しましょう」
気を遣ったのかそもそもこちらがメインだったのかはわからないが、武装解除の魔法を実践するためにグレイとルーナは訓練用の人形を運んでくる。すぐに再起動したジニーもそれに続くのだった。
*
「先生、ちょっとここ教えてくれませんか?」
授業終了後、エルメロイII世が教室で仕事を進めていると、スリザリンの五年生であるセオドール・ノットが声をかけてくる。どうやら授業内容に対する質問らしい。
「ミスター・ノットか。いいだろう、質問箇所はどこかね」
「前に教わった属性についてなんですけど…」
「……ふむ、ここか。ここはだな…」
セオドールの質問内容に対して、エルメロイII世はいつも通り的確な答えを解説していく。
エルメロイII世はスリザリンの生徒からも評判はいい。特段純血主義を掲げているというわけではないが、古くから続く血筋に対してはそれ相応の敬意を払う。それ自体で態度が大きく変わるということはないものの、歴史という重みが成果そのものに繋がることもあるとよく理解している環境にいるが故に、たとえ魔術の道に進む者でなくとも歴史そのものにちゃんと敬意を持っていた。だから純血主義を掲げるマルフォイも特段エルメロイII世に突っかかるようなこともなく、おとなしく非常にわかりやすい授業を受けていた。
「…そうか、地域ごとに属性への捉え方が違っても使える魔法がほぼ同じなのは、元を辿れば似たような考えがベースにあるからなのか」
「その通りだ。西洋と東洋で五大元素の捉え方は異なろうとも、元となる考え方は近い。呪文や儀式の形態など違うところはそれなりにあるだろうが、似たような魔法になるのはある意味必然とも言える」
「そういうことだったのか…呼び方が違っても本質は同じ人間である以上同じって考えるんだな。うん、納得できました」
「質問箇所としては初歩に思えるが、初歩に対しても理解を深めようとする姿勢は実にいい。ついでに、何か他に聞いておきたい部分はあるかね?」
「あ、じゃあもう一つ。架空の元素についてなんですけど…」
「エヘンエヘン」
突如響く不愉快な咳払い。
声がした方を見ると、そこには全身をピンクの服で統一したガマガエルのような魔女がいた。
「お勉強中ごめんなさいミスター・ノット。少し、先生をお借りするわね」
決定事項として提案される言葉に、セオドールは諦めたようにため息を吐く。スリザリンであるセオドールはこの魔女…アンブリッジからの扱いは良い方だが、決して好きではない。寧ろ嫌いだと言っていいだろう。得意とは言えない防衛術の授業がひたすら書き写すだけでは嫌にもなる。ここ最近人気が非常に高くなってきたエルメロイII世の個別指導が受けられる実に貴重な時間に横槍を入れてきた相手がこれでは、ため息の一つでも吐きたくなるのは仕方ないだろう。
対してエルメロイII世はほんのわずかに目を細めた。アンブリッジから呼び出される時は大抵ロクでもないからだ。
「アンブリッジ女史、私にどういったご用でしょうか」
「ここでは良くないわ。私の部屋にいらしてくれないかしら」
「…承った。ミスター・ノット、すまないが席を外す。この教室は開けておくから、好きに使うと良い」
「…はい、先生」
セオドールを残してエルメロイII世は防衛術の教室へと向かい、アンブリッジの私室へと入る。アンブリッジの部屋は壁一面に猫が描かれた皿が飾られており、甘い匂いとピンクに塗れた装飾も相まってエルメロイII世の眉間にはさらに深い皺が刻まれた。
「少しお待ちください。お茶を淹れますわ」
「………」
勧められたまま、エルメロイII世はアンブリッジの対面に座り、目の前に紅茶が置かれる。
「さあ、召し上がって」
「…では」
カップに手を伸ばしながらも、エルメロイII世は自身の中で防衛瞑想を始める。この紅茶に真実薬が混ぜられていると考え、予め防衛瞑想をしておくことで真実薬の効果を受けることを防ぐためだった。しかし、防衛瞑想に引っかかるような効果は感じられない。
(…真実薬ならば、飲んですぐに防衛瞑想で感じ取れる。何もないということは、その類の薬は込められていないと考えていいだろうが…警戒は続けるか)
アンブリッジはエルメロイII世を、ひいては時計塔が魔法省の管轄下にあると勘違いしている。故に、エルメロイII世のことを魔法省に属する自分の部下だと本気で思っていた。
「それでアンブリッジ女史、どういったご用だろうか」
「そうね、本題に入りましょう。要件は二件あるわ。まず最初…最近、ポッター達を中心とした生徒達がどこかで集会を開いているみたいなの」
「(ダンブルドア軍団のことか)ほう、確かなのですか?」
「ええ。ただ、現場を抑えることができていないの。教育令が出ているのに集会をしている彼らは、罰則に値しますわ」
「庇うつもりはありませんが、一つ確認を。彼らが集会しているとして、どういった目的なのですかな?」
「目的の確認などするまでもないわ。ダンブルドアが魔法省への反旗を翻すために、ポッター達を私設兵団として使うのよ。間違いないわ」
(状況証拠ですらない…全く、つくづく度し難いな)
集会を行っていること自体はやはり既に掴んでいたみたいだが、肝心の目的については全く掴んでいないらしい。確かにアンブリッジが予想しているように彼らは防衛術の訓練を積んでいるが、目的はあくまで自衛の術を身につけること。魔法省のことなどカケラも目的には入っていなかった。
(そもそも、初めから決めつけているから目的を探る気もないか。現場を抑えられればいいとしか考えていないのかもしれんな)
「何人か参加してそうなメンバーに目星をつけてフィルチに尾行させたりしているのだけれど…どうやらいつも上手く撒いてしまうみたいなの。そこで先生にも協力してもらおうかと」
「具体的には?」
「貴方の内弟子がホグワーツに来ているでしょう?彼女にポッター達へ近づくよう指示しなさい」
その言葉を聞いて、エルメロイII世はすっと目を細めた。
「アンブリッジ女史、私には契約がある以上、契約の範囲内であれば指示されたことは請け負います。しかしその契約には弟子の采配は含まれません。彼女はあくまで私の護衛と魔法を学ぶためにここに来ているに過ぎないのです。魔法省からの指示といえど、彼女の行動を縛る理由にはなりません」
「私は魔法省大臣の勅命を受けてホグワーツに来ており、貴方は魔法省からの要請でホグワーツに来ています。つまり本件における責任者は私であり、貴方は私の
「本件における責任者がアンブリッジ女史であることはこちらも承知の上です。時計塔と魔法省で正式に契約が締結されている以上、時計塔から派遣された者として私は契約の範囲内であればあなたの指示に従う。しかし、私の弟子はあくまで私個人の事情で同行してもらったにすぎず、彼女は時計塔と魔法省の契約とは無関係です。例え貴女がどんな権力をお持ちであろうと、彼女を動かす力はあなたには無いことを今ここで明言させてもらいます」
本件を遂行するにあたり、グレイに同行してもらったのはエルメロイII世の護衛のため。これ自体はあくまでエルメロイII世の都合であり、魔法省との契約には一切関係ない。事実とは異なるが、仮に時計塔が魔法省の管轄下であり、本件においてアンブリッジの立場が上だったとしても、アンブリッジがグレイを動かす権利は持ち合わせていない。
「貴方の弟子が時計塔に所属しているのなら、魔法省に属する私の命令を聞くのは当然のことではなくて?」
「(こいつ…いまだに時計塔が魔法省の管轄下だと勘違いしているのか…少しは時計塔のことを学んで来い)彼女は時計塔に所属しているのではなく、私個人の弟子です。魔法省からの要請だとしても、そこだけはこちらも譲るわけにはいきません」
「私は、魔法省大臣の…」
「代わりに、代替案をこちらで用意しましょう。ポッター達の集会の現場を抑えればいいのですね?」
また何かアンブリッジが宣おうとしているのをエルメロイII世は遮る。グレイを利用するという案を断固として使うつもりだということを察したため、ならば代替案でアンブリッジの望みを
「…ええ、その通りです」
「ならば、その任は私が請け負おう。簡単にはいかないだろうが…少し時間をかければ現場を抑えられるかと」
「貴方自ら出るというの?」
「ええ。私なら、彼らの集会現場を抑えられる。暫しの時間はいただきますが、そこにさえ目を瞑っていただけるのなら、確実に」
「…ふふ、結構。貴方が自分でやるというのであれば、それで構いませんわ。では、よろしくお願いしますね」
「ええ、成果があれば報告いたします。もう一つの要件は?」
「最近、貴方の授業が随分と評判がいいみたいだから、それについてよ」
アンブリッジの言葉にエルメロイII世は腕を組む。文句がある、というほどでは無さそうだが、少し気に食わない様子だった。
「…何か不都合でも?」
「いいえ、そんなことないわ。ただ、彼らの魔法に対する好奇心をあまり刺激しないでほしいわね」
魔法省の目的は、生徒が力をつけて魔法省に反旗を翻すのを防ぐこと。故に、魔法省としてはあまりにもわかりやすい授業は良く思えないのだろう。尤も、アンブリッジからしたら生徒が楽しげに学校生活を過ごしているのが気に食わないだけなのかもしれないが。
「……好奇心を刺激することに、どんな悪影響が?」
「彼らには
(要するに、生徒達には馬鹿でいろと。黙って魔法省に従うことこそが、あるべき姿だと言いたいのか。反吐が出る)
本当に支配することしか頭にないアンブリッジの思想に心底辟易しながらも、エルメロイII世は悟られないよう気を引き締める。生徒の学ぶ時間を失わせるわけにはいかないからだ。
「私は時計塔でも教鞭を取っています。他者への指導には微力ながらも一日の長がある。魔法理論という科目も基礎を中心とする内容故に、教えることが比較的容易ということが合わさった結果でしょう」
「こちらの要請通り、実践はあまりしていないようだけど…あまり熱心に指導しすぎて
アンブリッジの言う本業とは、ポッターの更生とダンブルドアへの監視だろう。定期的に報告はしているが、あまり大きな成果はない。尤も、ポッターへの更生はともかく、ダンブルドアへの監視についてはダンブルドア本人が動かなければどうしようもないため成果がなくて当然なのだが。
「ポッターについてはそうかもしれません。私の想定していたよりもずっと頑なでしたな。これほどとはさすがに思いませんでした。少し手を変えるべきかとは考えています。ただ、ダンブルドア教授に関しては喜ばしいことでは?我々の監視が入ったからこそ、直接的に動くことができなくなっているのですから」
「…そうとも言えるわね。ポッターについては、私も想定以上でした。先生が手こずるのも仕方ないとは思います。ただダンブルドアについてはそうでもないわ。認めるのは業腹だけれど、ダンブルドアは現存する魔法使いの中でも腕は最上位。私達の監視を逃れて小細工をするくらいなら、できてもおかしくはないわ」
「そうかもしれません。それで、アンブリッジ女史は私にどのような要望が?」
「生徒への指導を辞めなさい。彼らには非力で好奇心のないようになってもらいたいの」
エルメロイII世はアンブリッジの言葉に目を細める。
「アンブリッジ女史。あなたのお言葉は時計塔との契約に反するものになる。その要望を受けるわけにはいかない」
「あら…先生、おそらく誤解してるわね。先生の今の言葉は、魔法省大臣その人へ反論することと同義です。
「アンブリッジ女史のお言葉は、時計塔と魔法省の契約にある『学校を試験のための場所として定義し、そのためだけの授業をする』という項目に反します。試験のために必要となる最善の授業を私なりに進めている。試験のためにすらならない授業を行うことは契約内容に反すると同時に、時計塔で教鞭を取る私の信念に反します。申し訳ないが、その指示には従えない」
極東の儀式で敗れ、世界を巡った後に時計塔に戻った際にエルメロイ教室を買い取ったのは、エルメロイ教室にいた学ぶ機会を失ってしまった若い魔術師達の力になりたかったからだ。師であるケイネスのような優秀な魔術師にはなれないが、彼らの力になることはできる。そう考えてエルメロイ教室を運営してきたのだから、アンブリッジの『学ぶことを否定する』要望など、受けられるはずがない。(そもそも契約と異なる)
「先生、勘違いされているようですが魔法省との契約がある以上、先生は私の指示に従う義務があります。拒否権は…」
「契約内容に沿ったものであれば従いますが、そうでないのなら話は別です。試験のためだけの授業をするとの細かい指示を出したのは魔法省であり、私はその指示に私なりに従っているのです。私の授業のみで試験勉強をしていない状態であったとしても、最低限試験をパスできるよう進めています。それを否定するのは、魔法省が指定してきた条件を否定することに他ならない。それこそ、試験のためだけの授業とは魔法省大臣本人が指定してきた条件です。実践をほぼしない魔法理論の授業で、試験をパスできるような授業をしてきたことに対して、教科書を読むだけの授業にしろというのは到底受け入れることはできません」
魔法省大臣が指定してきた、という言葉を聞いてアンブリッジは口を噤んだ。アンブリッジも魔法省大臣から『ホグワーツの授業を試験のためだけにさせろ』という風に言われている。試験のためということは、試験をパスできるような授業にすることに他ならない。エルメロイII世の言うように試験のためだけの授業をしている以上、それを辞めて教科書を読むだけの授業にしろというのはあまりにも正当性がない。
「ご心配せずとも、私の受け持ちである魔法理論では実践することなどほとんどない。課題も出している以上、生徒達が個人的に魔法の実践訓練をする時間を削ることはできております。課題を増やすことでポッター達の自主練時間をもう少し減らすこともできるでしょう。自由に使える時間を限定的にしてやれば、そのうち尻尾を掴むこともできるかと」
「……そう。結構ですわ。仕方ないので、今回は私が折れてあげましょう。ですが先生、くれぐれも…生徒達の好奇心をくすぐるような授業はしないように。私は魔法省大臣より直々に権力を与えられています。
だって、
「無論です。何度も言いますが、私は契約の範囲内であれば従います。ポッター達の集会の件、承りました。必ずや現場を抑えて見せましょう」
エルメロイII世の言葉に、完全に納得はいってないもののポッター達の集会を抑えることを約束したことに満足したのか、アンブリッジは醜悪な笑みを浮かべて頷いた。
「ふふ、期待しておりますわ先生」
「用件は以上でしょうか」
「ええ、下がって結構よ」
「では、失礼いたします」
エルメロイII世はカップを置いてアンブリッジの部屋を出る。そのまま教室に戻ると、セオドール・ノットがまだ一人で自習をしていた。
「ミスター・ノット」
「あ、先生!その…用事は終わったんですか?」
「ああ、問題ない。先ほどの質問に答えよう」
「ありがとうございます」
その後、セオドールが疑問に思っていた部分を一通り答えると、セオドールは寮へと戻っていった。
残ったエルメロイII世は私室に戻ると、仕事を進めつつ葉巻を楽しんでいた。そこにグレイが戻ってくる。
「師匠、グレイです」
「戻ったかグレイ。今日も練習かね」
「はい。拙はお手伝いですけど」
「君が防衛術を学ぶ必要はないからな。できないのは…守護霊の呪文くらいかね?」
「はい。拙は…まだ守護霊を呼び出せないので」
グレイは防衛術を一通り習得しているが、守護霊の呪文だけはまだ習得できていない。グレイができない唯一の防衛術魔法が守護霊の魔法だった。
「あの魔法は習得難易度が全ての魔法の中でもトップレベルだ。何しろ、数少ない架空属性の魔法だからな。組み立てる術式ではなく自らの感情や記憶と結びつく魔法だ。できない魔法使いの方が遥かに多い」
「何度か挑戦はしてみたのですが、白い煙みたいなものができるだけで…」
「それは恐らく、媒体とする記憶が呼び出すには弱かったのだろう。別の記憶で調整してみるといい。さてレディ」
「はい」
「ダンブルドア軍団の様子はどうかね」
「みなさん、熱心に練習されてます。実力も着実に伸びてきていますよ」
「そうか、それは何より」
エルメロイII世はそこで言葉を切ると、葉巻に火をつける。煙を吐き出すと、真剣な表情でグレイに向き直った。
「今日、アンブリッジと対談した。奴は既に、ダンブルドア軍団のことに気づいている」
「!」
「対談の中で、君をダンブルドア軍団に入れて尻尾を掴めと言われてね。断りはしたが、私自身が彼らのことを見つける役を担うことになった」
「……では、以前師匠が話していた計画を…?」
「実行する。ただし、早急には行わない。少し時間がいると保険をかけた。冬休みくらいまでは時間を稼げるだろう」
予め『時間はかかる』と釘を刺しておいたため、ある程度の時間は許容されるだろう。それこそ、冬休みが終わるくらいまでの時間は問題ないだろうが、それよりさらにかかるとなるとエルメロイII世の立場が悪くなりかねない。
「彼らのためにも極力時間を稼ぐが、限界がある。最近のアンブリッジは契約を無視して私に色々やらせようと要求してきている。契約を盾にほとんどを遠回しに突っぱねているが、遠くない未来に契約を完全に無視するだろう。まあ、それこそが私の狙いであるのだが」
「拙は、どうすれば?」
「今すぐやることはない。だが、グレイにも手を貸してもらうことになる。さて、その内容について予め説明しておく。全部を頭に入れておく必要はないが、概要だけ頭にいれてくれ。そしてこれを知るということは、より一層アンブリッジとの接触には注意せねばならない。中和薬は常に持ち歩き、防衛瞑想についてもより一層力をいれて取り組むことだ。いいかね」
「はい!」
「よし。では…」
エルメロイII世は一度言葉を切って葉巻の灰を落とし、煙を吸い込む。そして非常に悪どい笑みを浮かべながら煙を吐き出した。
「私の計画詳細を伝える。アンブリッジを、ホグワーツから追い出すための計画をな」
「師匠、表情が悪すぎます」
「…む」
あまりにも人の悪い表情をしているエルメロイII世にグレイは思わず突っ込んでしまう。少しだけ緊張感が解けてしまうが、二人はアンブリッジへの反撃計画について話し始めるのだった。
ifシーン
『ハリーの尋問時に現れた被告側証人がダンブルドアではなくエルメロイII世だったら』
ウィゼンガモット大法廷に木槌の音が響く。
「懲戒尋問。8月12日、被告ハリー・ジェームズ・ポッター。住所リトル・ウィンジング・プリベット通り四番地。尋問官、コーネリウス・ファッジ魔法大臣。ではこれより、尋問を始める。まずは被告側、証人はいるかね?いないのであれば、このまま尋問を開始するが…」
「被告側証人」
突如、大法廷に声が響く。
入ってきたのは、不機嫌そうな表情と長髪を携えた男性だった。
「時計塔
「…ロード・エルメロイ。何故、ここに」
「とある方の代理でここに来た。それと、私のことをエルメロイと呼ぶのであれば、II世をつけていただけると幸いです。被告側証人だが、公正な立場からこの尋問の一助となろう。何か異論はありますか?尋問官」
「………問題などない。君を被告側証人として認める」
「尋問官の広き御心に感謝いたします」
エルメロイII世はそこで一度言葉を切ると、スーツの襟を整えて尋問官…ファッジを見つめる。
「して、どんな罪状で」
「罪状は以下の通り。被告人は自分の行動が違法であると知りながら、マグルの面前で守護霊を出現させた」
ファッジの言葉に大法廷へ集まった者達はざわつく。
確かに法律にあるように、未成年魔法使いはマグルの面前での魔法行使を禁じられている。ハリーが行った行為は違法そのものだった。
尤も、尋問官達がざわついているのは未成年であるハリーが守護霊を
「守護霊を出現させたことを否定するかね?」
「っ、いいえ!でも!」
「17歳未満の魔法使いが学校の外で魔法を使うことが禁止されていることを承知の上でか?」
「はい!ですが!」
「ウィゼンガモット大法廷の諸君!このように彼は…」
「あれは
ハリーの言葉に法廷は静まり返った。
「吸魂鬼?リトル・ウィンジングに?」
「馬鹿な、上手い言い訳だ。マグルに吸魂鬼は見えないからな。都合が良いことこの上ない」
「嘘じゃない!二人いたんだ!」
「もうよい!せっかく何度も練習してきた嘘話を遮ってすまないが、それを証明できる者がただの一人もいないのであれば…」
「大臣」
言いくるめ、ハリーの無罪主張を握り潰そうとするファッジの言葉をエルメロイII世は遮る。
「発言、よろしいかな」
「……認める」
「目撃者がおります。お連れしても?」
「っ…良かろう」
「では…グレイ」
「は、はい!」
いつの間にか大法廷の被告側傍聴席にいたフードを被った少女が立ち上がる。そのまま少女…グレイは、ハリーと交代するように中央の椅子に座った。
グレイが着席したことを確認すると、尋問官の一人がグレイに問いかけてくる。
「では、私から質問を。事件の様子を教えてください。どんな姿をしていましたか?」
「え、っと……晴れていた空が、急激に暗くなって、寒くなりました。それで雨が降ってきました。拙は地下通路に降りて雨宿りをしてたんですが…そこに二人が来ました。一人はハリーさんで、もう一人は大柄な方でした。その二人に向かって、急に黒くてマントを来た吸魂鬼が襲いかかってきたんです。その瞬間…幸せな空気というものが、その…完全になくなってしまったような感覚になりました…」
「…なるほど、吸魂鬼の特徴と一致していますね」
吸魂鬼はいるだけで周囲の温度を急激に低下させる。どれだけ晴れていようとも、二人も吸魂鬼がいれば天候を書き換えるくらいのことはできるだろう。
「しかしですぞ?吸魂鬼がアズカバンを遠く離れてマグルの街にいて、偶然魔法使いに出くわす?はは、確率はごく僅かだ」
「大臣の仰る通り、確率としては相当低いでしょう。ただし、それが偶然であるのならばですがね」
「…どういう意味だ」
「現在、吸魂鬼は魔法省が管理している。そんな中、アズカバンを遠く離れることなど簡単にはできないでしょう。ならば何故、吸魂鬼がリトル・ウィンジングにいたのか。裏で糸を引いた者がいたと考えていいでしょう」
「……この証人の言葉が真実であるという証明はできるのか?」
「無論です」
エルメロイII世は懐から数枚の紙を取り出す。そこにはリトル・ウィンジングをはじめとしたいくつかの街の天候記録があった。
「この記録にもあるように、リトル・ウィンジングの気温が突如、急激に下がっているのがわかります。そしてこの時刻は…被告人がマグルの面前で魔法を使った時刻と一致する。季節的に気候は変わりやすいとはいえ、この時期としては明らかに気温が低すぎる。自然に発生した事例とは考えにくい。この事象は魔法的要因…それこそ、吸魂鬼の存在があったと考えて良いでしょう。吸魂鬼が現れた場合…身を守る術は守護霊の呪文しかない。そして法には、『命の危機であれば魔法の行使は認められる』との明記がある」
「神秘の秘匿を目的とする時計塔のロードが、マグルへの魔法漏洩を認めるとはな!」
「神秘の秘匿は、時計塔での最重要事項です。しかし本件において対象となるマグルは一人。漏洩レベルとしては無いに等しいものであり、いくらでもリカバリーが効く程度だ。部分的に記憶を操作する程度でいいのですから。既に被害に遭ったマグルは本件のことを何も覚えていないのですしね。以上のことから、厳重に注意されるべき事例ではありますが、決してホグワーツを退学になるような処罰を与えられるものではないと主張いたします」
「…だが!被告人はかつて自身の叔母を風船にして飛ばしており!それを何人ものマグルに目撃されている!過去に厳重注意を受けているにも関わらず、再度の違法行為でもある!無罪放免には到底できない!」
「過去の事例では確かにマグルへの『危害』と言うことも可能でしょう。実際、ポッターは注意を受けている。しかし、前回と今回では状況が大きく異なります。前回の件では恐らく衝動的に叔母を風船にしたのに対し、今回は能動的に守護霊を呼び出した」
「ならば!」
「能動的に使った方が、心象的に悪質に思えます。しかし、実際の結果はいかがでしょうか。前回は風船になるという実害がありましたが、今回は守護霊。守護霊はマグルに見えはしても実害を与えることはできない。神秘の秘匿という意味でも実害という意味でも、本件の守護霊を出現させた件について大きな罰則が与えられるには値しないと考えられます」
守護霊はマグルにも見ることができる。しかし、守護霊はどんな使い方をしようとも直接マグルを傷つけることはできない。今回の件でマグルが魔法による傷害があったのなら、有罪判決もあったかもしれないが、守護霊の出現だけで有罪判決からの退学処分はあまりにも不当だった。
「っ…」
「神秘の秘匿、実害…両方の視点から見ても、本件は有罪には値しないでしょう。有罪のために法を改定することも可能でしょうが、本件のためだけに法を変えることは難しい。何しろ、過去にあった神秘の漏洩と比較してあまりにも事態が軽い。これだけでは法を変える正当性はないと言えます」
「……だ、だが…」
「続けて言わせていただくと本件の罪状の場合、傷害が起こっていない以上、退学処分までの刑罰を与えることができないことは法に明記されております」
「しかしだ!守護霊の呪文を行使したことは事実!被告人は二度目の魔法行使となる以上、何かしら刑罰は必要となる!」
「…では、もう一つ。本件は吸魂鬼がリトル・ウィンジングにいたことによって起きた事件です。では何故、吸魂鬼がそんな場所にいたのか」
鋭い視線がファッジを射抜く。魔法の使い手としては二流だが、時計塔という魑魅魍魎が蠢く魔境で教室を運営し、ロードという地位を維持し続けてきた男の迫力は並大抵のものではなかった。
「先程も申し上げたように、マグルの街に吸魂鬼がいたのは誰かが糸を引いていたから。ではその人物は誰か、どうやって吸魂鬼をマグルの街まで連れてきたのか。これは重要ではありません」
「何故だ」
「我々が魔法という超常現象を起こせる以上、直接手を下した者が黒幕だと断言できないからです。しかし理由…
魔法が使えるのであれば、他者を操り、直接でなくとも相手を動かせる。いくらでもやりようがある以上、誰が、どうやってやったのかは重要ではない。
しかし理由だけは別。行動を起こした以上、そこには理由が存在する。そして、理由から黒幕の意図を汲み取ることも可能だとエルメロイII世は言った。
「何故ポッターを狙ったのか…答えは単純、ポッターを邪魔だと判断した。ポッターを排除したいと考えた人物、または組織がいる。そして、この事件の鍵となるのは
「…吸魂鬼がなんだと言うのだね」
「吸魂鬼は、マグルには見えない。そのため、マグルの街付近で待機させておいても見つかることもない。そして、吸魂鬼を追い払うための手段は基本的に守護霊の呪文しかない。この二つが鍵となります。学校にいないポッターを狙う場合、魔法生物や魔法使いを使うのはリスクが高い。魔法生物も魔法使いも、マグルの目に見えてしまう。そして見えてしまった場合は神秘の秘匿に反してしまい、時計塔から目をつけられる可能性が高い。その場合、誰にしろどんな組織にしろ、時計塔からの調査を潜り抜けるという非常に困難な課題が追加されてしまいますからね。しかし、マグルの目に見えない吸魂鬼であれば、神秘の秘匿には反することはない。しかも守護霊の呪文という超高難易度の魔法が使えなければ詰み。高確率でポッターを始末できる手法と言えますが、誤算だったのはポッターが守護霊を呼び出せることでしょう」
ファッジは小刻みに震えながらエルメロイII世を睨みつけているが、エルメロイII世は全く気にすることなく続ける。
「では次に、この守護霊について。守護霊は吸魂鬼を追い払うことはできても、マグルを傷つけることができない。仮にポッターが吸魂鬼を追い払うことができたとしても、マグルへの被害が少なく済む。つまりは、最悪失敗したとしても、後始末をする必要もなく魔法を使った疑いで逮捕し、社会的立場を落とすことができる。時計塔と事を構えることなく、失敗したとしてもポッターの立場を悪くできる…というのが黒幕の意図でしょう」
「…………」
「そして守護霊を呼び出したという法律違反。失敗したとしても、この法律違反だけでポッターの立場を悪くすることができる。そうすれば、彼を邪魔に思う者にとっては最善とまではいかなくとも、効果としては十分でしょう」
「誰がそんな、無駄な事を…」
「さて、誰でしょうね。吸魂鬼を遣わせてきた者が黒幕かどうかは判別しかねますが、黒幕が魔法省の人物を操った可能性は高いでしょう。何せ吸魂鬼は今、魔法省が管理しているのですから。魔法省は必ず、徹底的な調査をして、二度とこのようなことが起こらないように尽力なさるでしょう」
「…貴様…」
「ポッターが守護霊の呪文を使ったのは事実。しかし、ここまでの話を聞いてもなお、彼を有罪に賛成なさいますか?」
「む、無論だ!背景はどうであれ、法律を違反したのだ!」
「では最後に…過去、未成年の魔法使用による違反で、刑事事件の大法廷を招集とは…いかがなものだろうか」
ウィゼンガモット大法廷は魔法界における最高裁判所。本来であれば、未成年の魔法使用程度の事件に使われる裁判所ではない。仮にハリーがマグルの街で魔法を乱用し、マグルに被害を出したというのであれば話は別だが、そうでない今回においてウィゼンガモット大法廷に招集されるというのは、異例というに他ならない。
というか、端的に言えば過剰だった。
「さて…被告側証人として言えることは以上だ。尋問の続きをお願いできますかな?」
「……では、私が。原告側からこれ以上の証言がなければ、判決の審議を行います。いかがいたしますか」
「…審議に入りたまえ」
「尋問官の承認が下りたため、これより審議に入ります。被告人の有罪に賛成の者は挙手を」
司会の発言のもと、ファッジを始めとする何人かが手を挙げた。挙手の際、ファッジがウィゼンガモット大法廷の面々を渋い顔で見渡し、その視線に当てられて何人かが追加で手を挙げるが、それでも全体の1/4ほどの人数だった。
「では、被告人の無罪に賛成の者」
この言葉と共に、過半数以上の者が手を挙げ、司会も手を挙げていた。この時グレイは自分も手を挙げるかどうか迷っていたが、エルメロイII世が手を挙げないことを見て思い止まる。
人数差は明白。わざわざ数えるまでもないほどの差を見て、ファッジは木槌を手に取った。
「…無罪放免とする」
吐き捨てるような物言いと同時に、全員が席を立った。
ハリーは無罪を受けたことで顔を綻ばせながらも、自分の証人をしてくれた人物に目を向ける。不機嫌そうな目つきはどことなくスネイプを思わせるが、どことなく雰囲気が柔らかい。どこかで教師でもしていそうな雰囲気があるが、『ロード・エルメロイII世』という名前に聞き覚えはない。それに、何故知らない自分の証人を受けてくれたのかなど、色々と不思議な人物だった。
「あ、あの!」
帰ろうとしていたエルメロイII世の背中にハリーは声をかける。
エルメロイII世は振り返ると、相変わらず不機嫌そうな視線を向けてきた。恐らくこういう顔なのだろうとハリーは勝手に納得しつつ、話しかける。
「その、ありがとうございました!」
「気にしなくていい。諸事情で来れなかったダンブルドア教授の代理で来たにすぎないのだからね」
「ダンブルドア先生の、代理?」
「ああ。諸事情で来られそうになかったとのことで、私に代理を頼んできたよ。何、こんな茶番の対応程度であれば大したことはない。報酬も貰っている」
「えっと…」
「気にしなくていい。だが、無罪になったとはいえ君の立場は変わらず悪いままだ。嘘をついているとは思えないが、今後は振る舞い方に気をつけた方がいい。周囲にいてくれる者達のことを忘れず、抱え込みすぎないように頼ることを推奨しよう」
「!」
「特に用事がなければ、私とグレイはここで。私に何か用があれば、ダンブルドア教授に伝えてくれ。グレイ、スラーに戻るぞ」
「はい、師匠。ハリーさん、失礼します」
「あ、うん。ありがとう」
それだけ言ってエルメロイII世とグレイと呼ばれた少女は去っていく。
その後ろ姿を見ながら、ハリーはなんとなく彼らとはまた会う気がしていた。
Q.基礎呪文って何?
A.魔力に質量を持たせて飛ばすだけの魔法です。呪文としての言葉は存在せず、本当にただ飛ばすだけ。ホグワーツレガシーの通常攻撃として出てくるものです。トリムマウ無しの時にライネスが唯一まともに使える攻撃魔法。ライネスの戦闘力はトリムマウありならそれなりですが、トリムマウ無しだと二年生時のハリーくらい。盾の呪文は使えるが、それ以外はからきし。
Q.魔術師世界のロードって魔法省にも顔が効くの?
A.マルフォイ一族のように直接干渉している一族と比べたら影響力は弱いですが、最高峰の実績があり魔法省と対等(かつ不可侵)の関係である時計塔のロードの影響は魔法省としても無視できるものではありません。有事の際は魔法省とロードが直接やり取りすることもあります。お辞儀様の時は魔法省が時計塔にヘルプを求めましたが、『神秘の秘匿』にはあまり影響のなかったことで大した援助は得られませんでした。アンブリッジが何故このことを知らないのか?ただの勉強不足です。
Q.盾の呪文ってわざわざ練習しなきゃいけないもの?結構作中だとみんな使ってない?
A.作中で使ってる人は多いですが、実は習得難度が地味に高いものらしいです。というのも、被るだけで盾の呪文が展開される帽子を双子のウィーズリーが販売しているのですが、この帽子の発注が魔法省から来るほどです。実は魔法省にいる魔法使いでも盾の呪文が使えない者は多いらしいので、学生で使える人はもっと少ないんじゃないかと考えました。なお、守護霊の呪文はもっと少ない。
Q.グリンデルバルドの時って、魔術協会と聖堂教会はどうしてたの?
A.グリンデルバルドはお辞儀様よりも単純な実力は劣りますが、非常に卓越した頭脳と未来視の魔眼を持っていました。故に、頭脳と魔眼を活かして上手く両者から逃げ続けることができていたので、ダンブルドアに負けるまで捕まることがなかったのです。グリンデルバルドの凶悪さはお辞儀様のような暴力ではなく狡猾さなので、魔術協会からも聖堂教会からも逃げ続けられました。決闘に至るまでの間でダンブルドアと魔術協会で手を組んだりしていたとか。
ちなみに、本作ではグリンデルバルドの未来視の魔眼は
Q.ダンブルドアってどれくらい強いの?
A.少なくともウィザーディングワールド界では最強クラス。最強の杖であるニワトコの杖を使っていたグリンデルバルドに、通常の杖で正面切って決闘して勝てるレベルの化け物。そのダンブルドアがニワトコの杖ブーストをかけても正面からでは勝てない更なる化け物がお辞儀様。決闘ならダンブルドアも封印指定執行者レベルの実力があるが、お辞儀様はそれ以上だと考えてます。ただ、これについては私の知識不足部分もあるやもしれないので、異論は認めます。
Q.エルメロイII世ってどう戦うの?
A.普通の決闘では弱いです。現時点のハーマイオニーにすら普通に負ける。ただ、なんでもありの勝負になったら勝つことはできないけど相当粘る。使える魔法は規模が小さく弱いものばかりですが、使える幅は広いので時間稼ぎはできる。インスタント煙幕とかの道具も双子から貰ったりしてるので、多分相当うざい。ベラトリクスレベルでも時間稼ぎや逃走だけならできますが、ダンブルドア以上だと小技の意味があまりないので瞬殺されます。大体いつもグレイに守ってもらってる。
Q.お辞儀様って魔術協会のことどれくらい知ってるの?
A.あんま知りません。ただ、相当昔から生きてるブリシサンやゼルレッチのことは小耳に挟んだみたいで、その長命の秘密を解き明かそうかとも考えたみたいですが、ホグワーツレベルで強固な護りが敷かれているため時計塔への侵略は後回しにしました。魔術協会に属する者は古くから続く魔術師の家系が多いことと、ほとんどお辞儀様の活動に干渉してこなかったこともあり、お辞儀様の粛清対象ランキングではほぼ最下層レベルでした。魔法省と比較したら時計塔への関心はかなり低いため、復活した今もほぼ関与してないです。
Q.聖杯戦争って、この世界だとどういう扱い?
A.極東のマイナーな儀式程度です。日本にある魔法学校である『マホウトコロ』でも一応知られていますが、儀式までのスパンが長いこともあり、都市伝説レベルと認識されてます。わざわざ参加しようと思う人はあまりいません。情報規制されていることもあってか、そもそも日本のどこで行われているのかも知っている人が少ない。
ちなみにこの世界の聖杯もしっかり汚染されてます。
Q.型月の人狼とウィザーディングワールドの人狼は同じもの?
A.違うものです。型月の人狼はいわゆる魔獣であり、ちゃんとした種族ですが、ウィザーディングワールドの人狼は感染症に近いものです。本作での人狼症は『かつていた闇の魔法使いが金狼、銀狼を人為的に作り出そうとして失敗した結果』ということにしてます。
ライネス出したい。
ロード・エルメロイII世
寮に関わらず生徒から人気になってきた先生。魔法理論だけでなく、他の科目の質問も答えたりしているらしく、呪文学のフリットウィック先生がなんとも複雑な顔をしていたとかなんとか。
グレイ
実はダンブルドア軍団一の戦闘力を有する。普通に決闘すればハリーよりも強い。使える魔法は武装解除、失神、
ローブは少し改造してあり普段のグレイの外套に近く、袖がない外套タイプのローブ。ダイアゴン横丁での注文時に、エルメロイII世が気を利かせて通常のローブではなく外套タイプのものにした。最近はトネリコの杖が馴染んできて、魔法のキレが良くなっている。
ハリー・ポッター
先生役。戦闘力はおそらく同学年ではピカイチ。ネビルや他の生徒が五年生になってもできなかった武装解除を三年生の時点でできる時点で、防衛術関連では天賦の才がある。最初はエルメロイII世のことを警戒していたが、何度かの面談を通して今では完全に味方として判別している。
ドローレス・アンブリッジ
みんな大好きガマガエル。エルメロイII世のことは正直気に食わないが、仕事はきっちりやるし指示を聞くためとりあえず許している。ただ最近口答えが増えてきたため、そろそろ飛ばそうかとも考えているとか。アンブリッジがいなくともエルメロイII世の評判は相当高いものになっていたが、アンブリッジの評判が下がることでエルメロイII世の評判はさらに上がった。
魔法省の権限で時計塔の閉鎖を本気でできると思い込んでいるが、当然不可能。
エルメロイ教室メインキャラ全員の杖を妄想したりしてます。
次回の後書きで書いてみようと思います。