ホグワーツ教師 ロード・エルメロイII世 作:木材
前回、私が割と鬼畜発言である「シリウス死んでもいいかな」発言に対して「死なないでほしい」と読者の皆様が言ってました。みんなシリウス好きなんだなって思ったら、「死なない方がハリーが苦しむよ」って愉悦部してて「っ⁈」となりました。
みなさんは脳内に解像度高めのマジカル⭐︎八極拳を使う外道神父でもいるんですか?いいぞもっとやれ。
「ホグワーツに時計塔の君主がいるとは知っていたが、まさかここまでポッターを追ってくるとは思わなかったな」
ヴォルデモートはにやりと笑いながら言う。
「…今の私は、時計塔の君主であると同時に、ホグワーツの教師です。生徒の面倒を見るのは、至極真っ当かと」
「そうか。それは殊勝な心掛けだな」
興味深そうに言うヴォルデモートに対して、エルメロイII世とグレイは表情を引き締める。
「ベラ、お前は退け」
「しかし我が君…」
「退けと言っている。消耗しきった今のお前では、足手纏いだ。それに、俺様はこの君主と話がしたい」
「ですが」
「これ以上、俺様に同じことを言わせるな」
ヴォルデモートがベラトリックスを睨みつける。それだけで空気がひび割れるかのような威圧感が周囲を包む。
さすがのベラトリックスもこの威圧感を向けられては逆らえない。頭を下げると、転がっていた自分の杖を拾って煙突飛行ネットワーク出入り口まで後退りしていく。
「待て!ステューピファイ!」
ハリーが魔法を放つが、ヴォルデモートがハリーの魔法を消し去る。
「くっ…」
「俺様がいるのに、お前ごときが思い通りに動けるとでも?」
「ポッター、下手に動くな。ここは…」
「エクスペリアームス!」
「ふん」
ハリーが武装解除の魔法を放つが、ヴォルデモートはその魔法を簡単に弾いた。
「弱い奴め。今、そこの君主がお前に忠告していたはずだ。それを聞かずに、こうして自ら足手纏いになりに来るとは。愚かな奴だな、ポッターよ」
「っ!」
「落ち着けポッター!下手に手を出すな!」
「ステューピファイ!」
エルメロイII世の言葉を聞くことなくハリーは続け様に魔法を放つが、ヴォルデモートは杖を軽く振るだけでハリーの魔法を弾き飛ばし、同時にハリーの杖を地面に叩き落とした。
「弱いなポッター!いいか、失神の呪文はこう放つのだ!ステューピファイ!」
「レダクト!」
ヴォルデモートが放った失神の呪文に対してグレイは咄嗟に魔法を放つが、タイミングが一瞬遅れたことで威力を削ぎ落とすことはできても相殺させることはできなかった。ヴォルデモートの魔法がハリーの胸に当たり、ハリーは意識を失って倒れ伏してしまった。
「ハリーさん!」
「ほう…なかなか良い腕だな小娘。最近の脆弱な闇祓いより、遥かに見どころがある。良かろう、俺様とロードの対談にお前も同席することを許す。こちらへ来い」
上機嫌に笑うヴォルデモートを前に、グレイは杖を握りしめる。グレイが最も得意とする得物を手にしていない今、下手に動けば自分もエルメロイII世もハリーも殺されると理解していた。いや、恐らく自分だけならなんとかなるが、その間に二人が殺される。それでは意味がない。
守ると、会わせてあげたいと思った。貧弱で、必死で、手段を選ばないような師匠と、わずかな期間ながらも自分を友だと言ってくれた人を、こんな身勝手の権化のような存在に奪わせないために。今の自分にできることを最大限にやるのだと自らに言い聞かせ、グレイはハリーの側を離れてエルメロイII世の隣に立った。
「賢明な判断だ。どちらに価値があるのか、よくわかっているな」
「………」
「さて…待たせたな、ロード・エルメロイ」
「私のことをエルメロイと呼ぶのであれば、II世をつけていただきたい。その名は私には重すぎる」
「ふむ…良かろう。では、ロード・エルメロイII世。俺様はお前たち時計塔の魔術師に興味があってな。少し話そう」
ヴォルデモートが杖を振ると、椅子が現れる。どうやら椅子に座れとのことらしい。
グレイは杖を握りながら近くで倒れるハリーに目を向ける。意識を失っているが呼吸をしており、特に外傷らしいものもない。とりあえずは問題ないだろうと安堵しながらも気を引き締めた。
「座れ。この対話をしている間、俺様はお前達に手出しをしないと約束しよう」
「………」
「座れ」
ヴォルデモートの有無を言わさない言葉に、エルメロイII世は従うしか無いと判断して腰掛ける。グレイはエルメロイII世に付き従うように、エルメロイII世の背後に立った。エルメロイII世が椅子に座ったことに満足したヴォルデモートも椅子にゆったりと腰掛け、杖をローブの内側にしまった。とりあえず攻撃の意思はないとわかるが、グレイはローブの内側にある
「うむ。話をするのであれば、こうして互いに腰を据えねばな」
「…して、私にどういった話が?」
「お前達魔術師が、何を求めているかは知っている。根源…それを求めているとな」
根源とは世界のあらゆる事象の出発点となったモノ。ゼロ、始まりの大元、全ての原因。これを魔術師達は「根源」と呼ぶ。もしくは、その一点から事象が渦を巻くように放射状に流れ出す様を例えて、「根源の渦」とも呼ぶ。魔術師が求めるのは、この根源へと到達する方法だ。
「お前達魔術師は根源を求め、神秘の流出を防ぐことを目的とした集団。俺様はこう認識している。相違ないな?」
「ええ」
「魔術師は魔術師同士で交わることで、代を重ねて研究を子に継がせ続け、より強い魔力を持つ子孫を作り、子孫もそれを繰り返し、いつか根源に至る道に辿り着く…ふむ、こうして言葉にすると荒唐無稽な話だな」
その話をエルメロイII世は否定しない。実際、魔術師は最初に『これから学ぶことは全て無駄』だと教えられる。故に、ヴォルデモートが言うように荒唐無稽というのも強ち間違いではないのだから。
「お前達は何故、あるかもわからない根源を求めるのだ?根源は究極の知識というのはわかるが、そんなものが本当に存在していると思っているのか?」
「根源の渦は実在します。ただし、たどり着いた者は現世から姿を消す。故に、実在を疑問視する者がいてもおかしくはないでしょう。しかし、確かに存在するのです」
「なるほど、確信はあるのだな」
興味深そうに笑うヴォルデモートに対してエルメロイII世は毅然とした態度で本題に切り込んだ。
「それで?ヴォルデモート卿は私と何を話したいと」
「お前達魔術師は魔術師同士で交わる。つまり、純血であることを重んじている。そして俺様は、純血の魔法使いこそを重んじる。純粋な魔法族のみの血で魔法族を構築すべきだと考えているのだ。お前達魔術師の生き方は俺様の思想と一致している部分があるだろう。俺様の軍門に下る気はないか?」
「………」
「俺様はお前達の実力を正しく認識している。武力という意味では、闇祓いや俺様の部下達に劣る者は多いだろうが、お前達が有する知識や秘匿している神秘は、大変価値のあるものだ。この価値のある者達こそ、世界を総べる一族になるべきだとは思わんか?」
「つまり、貴方は魔術師、魔法族こそが世界の中心であるべきだと考え、今のマグルと魔法族の立ち位置を逆転させたいということですかな?」
「概ねその通りだ。何故、魔法を使えないマグルという劣等種が我が物顔で世界を闊歩し、我ら魔法族が己の存在を隠さねばならないのか。疑問に思ったことはないか?俺様と組めば、その地位を変えられる。俺様の下に来い」
ヴォルデモートの言葉にエルメロイII世は目を細める。
確かにヴォルデモートが言うこともわからなくはない。魔術師はマイノリティであるため、必然的に魔術師としての立場を隠しながら生きることになる。この立場を隠す必要がなくなったら、確かに楽ではあるだろう。
だがそれは魔術師としての本分ではない。魔術師としても、一人の人間としても、ヴォルデモートの申し入れを受けるわけにはいかなかった。そしてなにより、ヴォルデモートがこうして魔術師を配下に入れたい理由は自分が全てを支配するための手駒にするため。そんな存在を認めるわけにはいかない。
「ヴォルデモート卿。残念ですが、その申し出を受け入れるわけにはいかない」
「ほう?」
「理由は二つ。まず、魔術師の目的は仰る通り根源への到達。だが根源への到達というのは、神秘が流出することにより遠ざかる。仮に立場が逆転した場合、魔法という存在がマグルにも広く知られることになる。それは神秘の流出ということに他ならない。我々の目的と貴方の目的とでは、大きく異なる。今まで時計塔が貴方の活動に介入してこなかったのは、貴方の行動が魔法族の中だけで行われているものだったからだ。魔法族の中で魔法を使って何をしようと、神秘の流出にはつながらない。故に、時計塔は貴方に一切の干渉をしなかった。今のように魔法族での内戦なら、時計塔は手出しをしないでしょうが、マグルに魔法で攻撃し始めた瞬間に貴方に干渉し始めるでしょう」
時計塔は社会としての秩序には基本的に干渉しない。故に、魔法族の中でヴォルデモートがどれだけ暴れようとも、神秘の流出に関与しない限りは一切手出しをしない方針を取っている。だがヴォルデモートの最終的な目的が魔法族とマグルの立ち位置逆転ならば、時計塔の方針としてもヴォルデモートと組むことはしない。むしろ、積極的に排除しなければならない対象になる。
「ふむ、なるほどな」
「そしてもう一つは、私個人としての理由だ。貴方の下につく、ということは貴方を主として仕えるということに他ならないのではありませんか?」
「無論だとも。俺様の下につくというのは、そういうことだ。俺様の意思に従い、俺様のためだけに動く。それこそが、お前達にとって最も栄誉になる」
「ならば私はそうなるわけにはいかない。私が仕える主は既に決まっている。そして私は、その主に仕える栄誉を受けている。貴方の誘いを受けることはできない」
既に己が仕える相手は決まっている。ただでさえ考え方が好まない相手である以上、こんなふざけた誘いに乗る理由はない。
「時計塔のロードであるお前が仕える相手というのは?」
「…征服王イスカンダル」
「イスカンダル?過去に存在していた異国の王のことか?」
「ええ」
「どうやって過去の人物に出会い、仕えたというのだ?まさかゴーストにでもなっていたか?」
「近いかもしれませんが、ゴーストとは異なります。ただ私は実際にイスカンダルに出会った。そして、今よりもさらに未熟だった私を認め、臣下としての使命を与えた。これほどの栄誉を受けている以上、私は貴方の配下になることはない」
ヴォルデモートはエルメロイII世の力強い言葉と瞳を興味深そうに見つめる。圧倒的な力を持つ自身を目の前にしても怯まない胆力と、主人への揺るぎなき忠誠心。加えて、ロードとして活動できるだけの頭脳も持ち合わせている。魔法の実力は脆弱極まりないが、それを加味しても配下に加えられたら非常に有用な手駒になっただろうとヴォルデモートは考えた。
「実に惜しい。お前ならば、俺様の配下に相応しい人材になれたというのに。なんならそこの小娘もともに召し上げても良いのだが、それでもお前は配下にならぬと」
「ええ」
「残念だ」
そう言ってヴォルデモートは椅子から立ち上がる。それを見たエルメロイII世も立ち上がり杖を抜き、エルメロイII世の前にグレイが立ち塞がった。ヴォルデモートが杖を振ると、先程まで腰掛けていた椅子が一瞬にして消える。これだけでヴォルデモートの魔法の腕がどれほど高いかがわかり、グレイは背中に冷や汗が流れるのを感じた。
「さて…交渉は決裂した。加えて、今回お前達が俺様の邪魔をしたことは紛れもない事実。死ぬがいい」
「師匠、下がってください」
「ほう?小娘、お前がロード・エルメロイII世を守ると?」
「そうです。拙が師匠を守ります」
「良かろう。ならば、まずはお前から殺してやる」
グレイとヴォルデモートの視線が交錯し、ほんの一瞬の沈黙が流れる。
そして次の瞬間、二人は杖を振った。
「アバダ・ケダブラ!」
「エクスペリアームス!」
赤い閃光と緑の閃光がぶつかり合い、金色の炎が吹き上がる。魔法の押し合いは互角であり、閃光は二人のちょうど中間地点で競り合っていた。
しかし、数秒も経たないうちにグレイの魔法が押され始める。ヴォルデモートがその莫大な魔力をもって、魔法の威力を上げてきたのだ。
(っ!強い!)
グレイの決闘術の腕前は相当高い。それこそ、単純な戦闘力だけならば闇祓いにも引けを取らない。しかし、ヴォルデモートの力はグレイよりも遥かに高く、
それを瞬時に悟ったグレイは、このまま戦うべきではないと判断した。だが武器を出すための隙がない。どうにか隙を作らなければと頭を巡らせようとした瞬間、エルメロイII世の言葉が響く。
「グレイ!繋がりを上にぶつけろ!」
「は、はい!」
グレイがぶつかり合う魔法を天井に押し上げる。魔法の繋がりは天井にぶつかって弾け飛び、繋がりは途絶えた。
「エクソパルソ!」
「プロテゴ・マキシマ!」
ヴォルデモートの爆破呪詛を最大の盾の魔法で防ぐが、防ぎきれない。爆破の余波がグレイの頬を僅かに焼く。
「俺様の爆破呪詛を盾の魔法で防ぎきるとは。やはり良い腕だな」
「っ!」
「ならばこれも防いでみせろ!」
ヴォルデモートが杖を振ると、ヴォルデモートのローブが紐のように伸びてグレイに迫り来る。全部を叩き落とすことが難しいと悟ったエルメロイII世はグレイが捌きやすいように呼び寄せの呪文で紐の軌道を一箇所に集めることで、グレイがまとめて消し飛ばせるようにサポートし、グレイもその意図を瞬時に汲み取った。
「コンフリンゴ!」
紐を纏めて爆破魔法で吹き飛ばす。紐そのものを防ぐことはできたが、ヴォルデモートに攻撃は達していない。この一瞬の隙でヴォルデモートは次の魔法の準備を終えていた。
「ペスティス・インセンディウム」
そう唱えながらヴォルデモートは口から火吹き芸の如く劫火を吐き出す。吐き出された劫火はやがて形となり、人を優に越える大きさを持つ大蛇へと変貌した。
「これは、悪霊の火か⁈」
「正解だ。捌いてみせろ、魔術師」
「グレイ!この魔法は炎に悪霊を宿らせ呪うことで破壊力を増している!水で時間稼ぎはできるが消すことはできん!だが
「!」
エルメロイII世の言葉を聞いたグレイは、背後にある噴水の泉に向けて杖を振り、自分とエルメロイII世の周囲を水の結界で覆う。消すことはできずとも火である以上、水で時間稼ぎはできる。
「師匠!5秒稼いでください!」
「それ以上はもたんぞ!アグアメンティ!」
グレイが作り出した水の結界に自分の水も加えることでほんの僅かだが、水の結界の強度を底上げする。
その僅かな時間を使い、グレイはローブの内側にある鳥籠を手に取った。
「アッド!」
『おうさ!』
「第一段階、限定解除!」
グレイの言葉と同時に、水の結界が破られる。二人は炎に飲み込まれたと思われたが、次の瞬間には炎が全てを切り裂かれて霧散した。霧散した炎の中からは、エルメロイII世と大きな鎌を持ったグレイが姿を表した。
「…ほう、凌いだ…いや、この場合は打ち破ったと言う方が正しいか。見るのは初めてだが、娘。お前の持つそれは千年以上の神秘に属するものだな?お前自身の腕前とは無関係のようだが、そんな隠し玉を持っているとは思わなんだ」
「………」
「お前に興味が湧いたぞ小娘。名乗るがいい」
「…ただの、
「グレイか。ロード・エルメロイII世共々、覚えておいてやろう。興が乗った。その大鎌の力を見せてもらうとしよう。簡単に死んでくれるなよ」
「………」
グレイはアッド…
「アバダ・ケダブラ!」
「はぁ!」
ヴォルデモートの魔法をアッドで弾き、高速でヴォルデモートに肉薄する。魔法使いは魔法の扱いばかりで身体能力そのものはあまり高くない。接近すれば自分に分があると判断し、グレイはヴォルデモートに迫った。
「やぁぁ!」
「むっ!」
振り下ろした鎌が空を切る。魔力で足を強化し一気に距離を取ったヴォルデモートにグレイは更に高速で肉薄した。
ヴォルデモートが杖を振り、砕けた柱の瓦礫を飛ばしてくるが、大鎌の一閃により瓦礫は切り裂かれる。グレイはその先にいたヴォルデモートまで踏み込んで再び大鎌を振り切った。
(手応えがない…?)
全くなかった手応えと目の前のヴォルデモートが煙のように消えたことで、切り裂いたのがヴォルデモート本体ではないことを瞬時に悟り、視界の隅で緑の閃光が光ったことをグレイは見逃さなかった。迫り来る死の呪いの閃光を切り裂き、ヴォルデモートに大鎌を向ける。
ヴォルデモートは自らの幻影を作り出すと同時に簡易的な目眩しの魔法で自分の背後に回ったのだろうとグレイは予想する。そしてわざわざ距離を取ったということは、やはり接近戦ならば自分に分があるのは間違いではないのだろうと判断した。
そう考えて近接戦に持ち込もうと考えたが、ヴォルデモート相手には通用しない。ヴォルデモートは先程見せたローブを変形させる魔法で空中に飛び上がると、グレイの頭上まで上昇した。
「ヴェンタス!」
「プロテゴ!」
空気の塊がヴォルデモートの杖から放たれるが、グレイは咄嗟に杖に持ち替えて盾を展開して防ぐ。そこに続け様に炎の塊が降りかかってきた。空気の奔流に炎が追加されることで、炎の竜巻と化してグレイに襲いかかるが、グレイはアッドで炎を打ち払う。だがこの防御がエルメロイII世のことを無防備にしたことをヴォルデモートは見逃さない。
「アバダ・ケダブラ!」
「師匠!」
高速で割り込んできたグレイがヴォルデモートの魔法を弾いた。続け様にヴォルデモートは強大な炎を放ってくるが、グレイは杖から放った水を纏わせた鎌で炎を全て切り裂いた。
『イッヒヒヒヒ!おいおいグレイなんだこいつはよぉ!魔力の量がとんでもねぇと思ったが、
「魔力が不味い…?」
今までアッドから聞いたことないような言葉にグレイは違和感を覚える。アッドは周囲から魔力を吸収することができるため、ヴォルデモートの魔力を吸収した時の
ヴォルデモートは地面にゆっくり着地すると、にやりと笑いながら口を開く。
「…グレイ、お前はただの人間ではないな?」
「………」
「答える気はないか。だが…それほどの力を振えないことは魔法界の損失だ。グレイよ、お前は俺様と来い。お前の望む世界を見せてやろう」
「…お断りします。拙が望む世界は、貴方では理解できません。貴方にはついていかない」
グレイは静かで穏やかな時間が好きだ。ヴォルデモートでは決して理解できないような世界を愛しているグレイとヴォルデモートは人間としての本質が大きく異なる。そうでなかったとしても、友達を傷つけるきっかけを作ったヴォルデモートの配下になど加わりたくない。
「愚かだな。これは決定事項であり、お前に拒否権などない。そうでなければ、背後のロードが死ぬだけだ」
「耳を貸すなグレイ。お前が奴についていこうが行くまいが、奴は私を殺すつもりだ」
「はい、わかってます」
「ならば、まずはロード・エルメロイII世。お前からだ」
ヴォルデモートが杖を振ると、背後にあった噴水の水がエルメロイII世の周囲を取り囲む。グレイは背後からの攻撃を咄嗟に打ち払おうと振り返るが、視界の隅に緑色の光を捉え、咄嗟にアッドを振って死の呪いの閃光を弾き飛ばした。だがこれが致命的な隙になり、エルメロイII世を救う機会を逃す。
「しまっ…」
「余所見をする余裕があるのか?」
「っ!」
再び炎がグレイに襲いかかる。アッドで炎を打ち払うも、今度は上から戦闘の余波で割れたガラスの雨が降り注いできた。
「プロテゴ!」
盾の魔法でガラスを弾くも、数が多すぎる。グレイの魔法でも長くは保たない。加えて、背後で水の檻に囚われたエルメロイII世は水中故に長時間そのままにすることはできない。圧倒的に手数が足りない。その事実に焦り始めたグレイの心理的な隙をついて、ヴォルデモートが再び死の呪いを放った。
「させない!」
緑の閃光を切り裂く。
だが緑の閃光を切り裂いた先には、爆破の呪詛。魔法もアッドも間に合わない。
当たる!
そう直感したグレイだったが、爆破呪詛はグレイの眼前で霧散した。まるで透明な盾に弾かれたように霧散した光景が理解できず呆然としていると、背後で水の檻が弾ける音がした。
「わしの友人とその内弟子に手荒な真似は止してもらおうかの、トム」
煙突飛行ネットワークの出入り口から、一人の老人が現れる。長い髭とローブ姿の老人は、ダンブルドアだった。
「これはこれは…ダンブルドアか」
「ウェイバー、グレイ。遅くなってすまなかったの。不躾な歓迎を受けてしもうた」
「いえ、本当に助かりました」
水に濡れた長い髪をかきあげるように整えていたエルメロイII世にダンブルドアが杖を振ると、濡れた全身が瞬く間に乾いていった。
「ウェイバーよ。ハリーは無事かの」
「はい。気を失っていますが、命に別状はありません」
「ありがとう。グレイ」
「は、はい!」
初めてダンブルドアに話しかけられ、グレイは少しだけ声が上擦ってしまう。
「時間を稼いでくれたのは君じゃな?ウェイバーとハリーを守ってくれてありがとう。ここからは、わしが引き継ぐ。ウェイバーと一緒にハリーを守ってくれ」
「…はい」
頷くグレイを見届けたダンブルドアはヴォルデモートに目を向ける。
「ここに来たのは愚かじゃったなトム。じきに闇祓いが来る」
「その前に俺様はここからいなくなる。そして貴様は…死んでおるわ。アバダ・ケダブラ!」
「エクスペリアームス!」
ダンブルドアとヴォルデモートの魔法がぶつかり合い、再び金色の炎が吹き上がる。先ほどグレイと撃ち合った魔法よりも高い威力の魔法だが、ダンブルドアはヴォルデモートの魔法に負けることないほど高い威力の魔法をぶつけていた。威力は完全に拮抗しており、凄まじい衝撃が周囲に広がっていく。
「すごい…」
「あれが現代最強と言われるアルバス・ダンブルドアだ。ヴォルデモートが表立って侵略活動を行わない一番の理由は彼がいるからだろう。あれほど凄まじい力を持つヴォルデモートですら、ダンブルドアを相手にするのは非常に骨だということだな」
「じゃあ、このまま戦えば…」
「いや、そうとも限らない。互いに決闘の実力が拮抗しているということは、互いに決定打に欠けるとも言える。お互いの攻撃がほぼ確実に防がれてしまうならば、決定的な一撃をいれることができないと言えるのだから」
ヴォルデモートとダンブルドアの実力はほぼ拮抗している。勝負を決めるための決定打が互いになく、どんな一撃であろうともお互いに防げてしまう。つまり持久力以外で互いに勝負を決められる要素がないのと同義だった。
突如、ヴォルデモートが魔法の繋がりを切る。そして杖の先から、再び悪霊の火を噴き出してダンブルドアに襲いかからせた。
「悪霊の火!」
「拙が…」
「いや、大丈夫じゃグレイ。下がっておれ」
ダンブルドアは杖に魔力を込めると、悪霊の火を両断する。切り裂かれた炎は霧散することなくダンブルドアの魔法によって圧縮されると、爆炎の如き勢いでヴォルデモートに向けて放たれた。
ヴォルデモートは爆炎を杖の一閃によって背後に流すが、その一瞬でヴォルデモートの目の前には金色の像が生き物のように襲いかかってきた。
「ふん!」
ヴォルデモートは黄金の像を爆破して粉々に砕く。砕かれた破片をダンブルドアが操ってヴォルデモートにぶつけてるが、ヴォルデモートは炎を呼び出して破片を全て溶かした。周囲に溶解した金が飛び散る中、ヴォルデモートは忌々しげにダンブルドアを睨みつける。
「……貴様」
「トム…」
ダンブルドアの声には哀れみと少しの期待が込められていた。何を期待しているのかはグレイにはわからない。だがその悲哀にも似た期待はヴォルデモートには伝わらない。ただただ忌々しい存在を目の前にして、ヴォルデモートは煙のように姿を眩ませていった。
残されたグレイは突如いなくなったヴォルデモートに驚愕する。あれほど己の力に絶対的な自信を持つヴォルデモートが簡単に逃げるとは思えなかったからだ。周囲の熱気を浴びながら戸惑っていると、突如背後から呻き声が聞こえてきた。
ばっと振り返ると、そこには苦しむように呻くハリーの姿があった。
「ハリーさん⁈」
「待てグレイ」
「師匠⁈」
「ダンブルドア教授、これは…」
「……ハリーに、トムが憑依しようとしておる」
「憑依⁈」
「黒魔術に憑依経験というものがある。霊魂や悪霊を憑依させることで過去の出来事を再現したり経験を己のものにしたりすることができる魔術だ。恐らく厳密には異なるだろうが、これに近いことをポッターに仕掛けている」
ヴォルデモートは開心術の達人。閉心術が未熟であるハリー程度が相手ならば、非常に強力な開心術で擬似的な憑依を実現し、ハリーに強い苦しみを与えていた。
「ハリー、ハリーや」
「ゔっ!ゔあぁあ!」
「ハリー」
「『…老いぼれめ、貴様の負けだ』」
ハリーの声と重なるように響く邪悪な声に、グレイは思わず顔を顰める。普段は優しいハリーがこんな言葉遣いと悪意を孕んだ声色をしている事実に、グレイはヴォルデモートに怒りと不快感を覚えた。
「ハリー、どれだけあやつと似ているかではない。どれだけ違うかじゃ」
「ゔぅっ!」
「ハリー…」
「ハリーさん!」
戦っている。己に入り込み、自らの記憶で苦しめてくるヴォルデモートとハリーが戦っているのだと、グレイは本能的に感じ取り、ハリーの側に屈み込んでハリーに強く呼びかけた。
「ハリーさん!ハリーさん!戻ってきてください!」
「ゔぁ、あが…み、んな…」
グレイの声にハリーが苦しむ以外の反応を見せる。これを見たエルメロイII世はグレイの隣に屈むと、杖をハリーの額に当てた。
「ポッター、お前が何を見せられているのかはわからん。だが、お前を大切に思う存在…守る価値のある存在を、今一度思い出せ」
エルメロイII世は杖を通しながら、名前を呼んでいく。
「ロン・ウィーズリー。ハーマイオニー・グレンジャー。ネビル・ロングボトム。ルーナ・ラブグッド。ジニー・ウィーズリー。フレッド・ウィーズリー。ジョージ・ウィーズリー。そして、グレイ。皆のことを思い出すのだ。そう、守護霊を呼び出す時と同じように、大切な存在で己を満たしていけ」
エルメロイII世の言葉と共に、ハリーの精神世界では変化が現れる。
自分にとって大切な記憶が呼び起こされては、セドリックの死や吸魂鬼に襲われた記憶など、嫌な記憶に塗りつぶされていく。加えてヴォルデモート本人によるハリーの否定も相まって、ハリーは苦しみ続けていた。
だがある瞬間、一欠片の記憶が浮き上がってくる。ホグワーツでロンやハーマイオニー達と共に笑い合った時間。自分にとって大切な時間が、存在の記憶が湧き上がってくる。
『お前は何も守れない』
ヴォルデモートの声が響く。
記憶が塗り変わり、友達が倒れている様に変わっていく。
『弱い奴め。簡単に傷つく』
ヴォルデモートの侮蔑する声が響く。
だが同時に、別の声が響いてきた。
『ハリー』
『ハリーさん!』
『ポッター』
尊敬する恩師の声。
共に学んだ物静かな友。
そして、自分を信じてくれた教師。
彼らの声を聞いてハリーの意識がヴォルデモートに抵抗できるようになる。浮かんでくる幸せな記憶で己の意識を満たしていく。ヴォルデモートには決して理解できない大切な記憶が、ヴォルデモートの意識を押し戻していった。ヴォルデモートが押し戻されていくことで、ハリーの意識が現実に戻ってきた。
ハリーの意識が戻ってくるのとほぼ同時に、神秘部へ共にやってきた友人達がエントランスへとやってきた。彼らの顔を見てハリーの意識はより強く保たれるようになった。
「…弱いのは、お前だ!お前は愛を知らない!友情も!ひとりぼっちでしか生きていけない、憐れな奴だ!」
一瞬の静寂の後、ヴォルデモートの開心術の力が一気に増す。強く保たれていたハリーの意識とぶつかり合い、ハリーの精神の中で記憶と悪夢がぐちゃぐちゃに混ざり合う苦しみにハリーは自らの胸を強く握って抵抗した。
「ポッター!」
ハリーの精神を強く保つ手助けをしていたエルメロイII世に突如衝撃が走り、衝撃から目を閉じる。
僅かな間の後に目を開くと、倒れているハリーとそれを見下ろすヴォルデモートの姿があった。周囲には動かないダンブルドアとグレイ、そしてハリーの友人達の姿もある。
「これは…精神が僅かに繋がった影響か?」
エルメロイII世がハリーの意識から記憶を呼び起こしていたことと、ヴォルデモートがハリーの意識から弾き出される衝撃が要因となり、エルメロイII世の精神がハリーとヴォルデモートの意識と僅かに繋がった。ただ、エルメロイII世は二人を見ていることしかできない。ハリーとヴォルデモートのように互いを認識し、意思疎通を図ることはできないことをすぐに悟った。
「愚かな奴だハリー・ポッター。お前は全てを失うことになるぞ。全て、俺様が奪い去ってやる」
「……できる、もんか。お前には理解できない…ものを…僕達は、たくさん持っている。お前だけでなんでもできると思ったら、大間違いだ」
「それはお前が弱いからそう思うのだポッター。俺様は特別で、お前のような俗物とは異なるのだから」
「じゃあお前は、一生僕の……言ったことは理解できない。本当に憐れ、な…奴だ」
自身の開心術を受けたにも関わらず煽ってくる余裕のあるハリーに、ヴォルデモートは少し訝しむような表情を見せる。かつては歴戦の猛者であったとしてもその開心術で廃人にし、自らの死を願うほど強力な開心術であるはずなのに、彼らよりもはるかに閉心術が劣るハリーに余裕があることに違和感があった。まるで
その違和感を感じると同時に、ヴォルデモートはハリーの精神から抜け出して姿を見せる。ハリーは地面に倒れ伏したまま弱々しく呼吸を続けていた。グレイは大鎌を構え直し、ダンブルドアも杖を構える。そしてエルメロイII世はハリーを守るように屈んだまま杖を構えた。
「…ふん」
忌々しそうにヴォルデモートが杖を構えると同時に、煙突飛行ネットワークの炎が至る場所から上がる。そこからはパーティーを終えた魔法省大臣と闇祓い達が姿を現した。
「っ!」
「大臣、あの人です!あの人が…!」
「わかっておる、ドーリッシュ。まさか、本当に…あの人が⁈」
「……少し遊びすぎたか」
狼狽える魔法省大臣を守るように闇祓い達が杖を構えながら前に出てくる。彼らだけならばどうとでもなるが、今はダンブルドアとグレイがいる。さすがに分が悪いと判断したヴォルデモートは炎を纏うように展開すると、その場から姿を消した。
「…グレイ、もう大丈夫じゃ。トムは去った」
「あ、はい…あの、ダンブルドア先生。ありがとうございました」
「気にしなくて良い。ウェイバーと君をホグワーツに呼んだのは他でもないわしじゃ。助けるのは当たり前のことじゃよ」
ダンブルドアの言葉に安心したグレイは大鎌を匣の形に戻し、鳥籠に入れてローブの内側に戻した。籠に戻されたアッドのことをダンブルドアは少し興味ありげに見ていたが、あまり深く聞くものでもないだろうと考えて、倒れていたハリーを抱き起こす。
「ハリー」
「……あ、先生…」
「すまぬ。わしが不甲斐ないばかりに…」
「……でも、先生が助けてくれた」
「…わしだけではない。ウェイバーとグレイがいたから、君と君の友達は無事だった。誰も死なずに済んだのじゃ」
「死ん…あっ!先生!シリウスが!シリウスが!」
朦朧としていた意識が急激に覚醒する。シリウスが致命傷を負って危ない状態だったことを思い出し、ハリーは開心術の影響が残る体で無理矢理立ちあがろうとしたが、足元が覚束なくなり倒れそうになる。倒れる直前にエルメロイII世が抱き止めたことで倒れることはなかったが、シリウスのもとへ向かおうと体を引き摺るように動かそうとしていた。
「ポッター、今は動くな。開心術の影響で体が動かしにくいだろう」
「そんなことはどうでもいい!早くシリウスのことを…」
「シリウスはもう安全な場所に移動させたよ」
狼狽えるハリーに駆け寄ってきたロンが声をかける。ロンの言葉にハリーはロンに縋り付くような視線を向けた。
「シリウスは…シリウスは無事なの?」
「無事とは、言えないわ。一応まだ生きてはいるけど…失血が酷くて。仮に命が繋げられたとしても、何かしら障害が残るかもって」
「シリウスはどこ⁈」
「聖マンゴ病院。ちゃんとした治療を受けさせるって」
「すぐに行く!ロン、ハーマイオニー!聖マンゴって…」
言い終わらないうちにハリーの体から力が抜ける。何事かと思ったが、すぐにエルメロイII世が自分に何かしたのだと気がついた。
「せん、せい…なんで…」
「先程私が言った言葉を忘れたのかね。君はもう少しその無軌道さを減らせないのかと」
「ぼくは、シリウスが…」
「君がシリウス・ブラックを大切に思う気持ちは良い。だが、君がシリウス・ブラックを大切に思うように、君を大切に思う者がいる。今回はその心に助けられたと言っても過言ではない。他でもない助けられた君がその心を無視してまでシリウス・ブラックのもとへ向かうと言うのであれば止めはしない。だが助けられ、友を危険に晒した者が取る行動としては…あまりにも傲慢が過ぎないかね?」
「っ!」
「今の君がするべきことはしっかりと休養を取り、無事な姿をブラックに見せることだ」
『尤も、まだ助かる保証もないのだがね』と付け加えながらエルメロイII世はハリーを立たせる。ハリーはエルメロイII世の言葉を聞いて俯いていたが、ロンやハーマイオニーがハリーの肩を叩くと、落ち着いたようにハリーは頷いた。
「…はい、先生」
「ダンブルドア教授、あとは頼みます」
「うむ。君はどうするかね」
「グレイと共にホグワーツに戻ります。契約は今学期まで。まだ魔法理論教員としての仕事がありますので」
「ウェイバー、君のおかげで非常に助かった。ありがとう」
「貴方には恩がある。それに、私自身のためでもあります」
いつもより穏やかな笑みを浮かべながら言うエルメロイII世にダンブルドアは優しく頷くと、ハリーの肩に腕を回しながら魔法省職員達の中に消えていった。生徒達もダンブルドアについていき、エルメロイII世とグレイは彼らを見送ると早々に煙突飛行ネットワークでホグワーツへと戻ってきた。
そのまま魔法理論教室にあるエルメロイII世の部屋に入ると、エルメロイII世はソファに倒れ込むように腰掛けて俯いた。
「死ぬかと思った…」
「師匠…」
「ヴォルデモートが出てくる可能性は考えていたさ。命を狙われる可能性もな。だがまさか最初に対話を求めてくるとは思わなかった…あそこで下手に機嫌を損ねていたら、私は死んでいた…」
あの時、ヴォルデモートは杖をしまっていた。杖なし魔法ならば即死はなかっただろうが、ヴォルデモートほどの魔法使いならばエルメロイII世に致命傷を与えることくらいはできただろう。そうしなかったのは、おそらくただの気まぐれ。機嫌が良かったにしろ本当にあの場で殺す気がなかったにしろ、攻撃されなかったのは幸運だったにすぎない。
「アッドを使ったグレイならば戦える。まあ今回はグレイも向こうも
「拙達は、ヴォルデモートに狙われるようになってしまうのでしょうか」
「因縁ができたことは間違いない。狙われる可能性はあるだろう。特に、奴は君に興味を示していた。ロンドンに戻れば時計塔の庇護下にあるが、それまではホグワーツを出ない方がいいかもしれん」
「わかりました、師匠」
そこでふと、グレイはヴォルデモートと戦っている際にアッドが言っていた言葉を思い出す。
「あの、師匠」
「どうした」
「アッドでヴォルデモートの魔法を切った時、アッドが『魔力が不味い』と言っていたんです。今までそんなこと言ったことなかったので…何か心当たりはありますか?」
アッドは切ったものや周囲の魔力を吸収することができる。その際に『美味い』と言うことはあれど『不味い』と言うことはなかった。この不可解な言葉はアッドにすら仕組みがよくわかっていないらしいため、エルメロイII世にこのことを問いかけた。
グレイの問いにエルメロイII世は思案するように腕を組む。
「…魔力が不味い、か。魔力は原初の生命力とも命そのものとも言われ、精神と結びついている。もしかすると、ヴォルデモートの命…または
「命…」
「心当たりはある。恐らく、奴が使った闇の魔術に関することだが…今ここで解説するのは些か重すぎる。これは後日にしよう」
「そうですね…今日は、拙も休みます」
「では、今日はもう休むといい。私も今日は休む。明日からは試験対策をするとしよう」
「お願いします、師匠。では、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
そう告げてグレイは教室を出る。消灯時間は迫ってきているが、寮に戻る際にふと見えた星空が美しく、思わず足を止めた。
ホグワーツでの生活も、残り少ない。グレイは時計塔の生徒であり、今回は特例としてホグワーツの生徒として編入した。不思議な場所に驚き、魔法の勉強に四苦八苦し、アンブリッジの目を盗んで特訓するなど、色々と大変な時間の方が多かった。だがルーナやジニー、ハリーなど、新たな友人もたくさんできた。充実した期間だと、胸を張って言える。
ヴォルデモートがいる以上、時計塔にいても何かしらの被害が出る可能性はある。加えて今回の一件で目をつけられた可能性もある。それでも、今の自分の場所を守るために、新たにできた友人達のために、エルメロイII世とともに自分は戦えると、心から思えた。
「おや、ミス・グレイ」
ふと声がしてそちらを振り向くと、杖先に灯りを灯したマクゴナガルがいた。
「もうそろそろ消灯時間ですよ。どうかなさいましたか?」
「…いえ。少し、この風景を見ていたくて」
「……色々あったことは、先程ダンブルドア先生に聞きました。エルメロイ先生と貴女にも大きな迷惑をおかけしてしまいましたね」
「迷惑だなんて…拙も師匠も思っていません。みなさんのおかげで、拙の学校生活は…とても、楽しかったので」
「イレギュラーなことばかりある一年でしたが、そう言っていただけるのであれば、ホグワーツの教師としてこれ以上のことはありません」
「ありがとうございました、マクゴナガル先生。叶うのなら、もう少し先生の授業を受けてみたかったです」
「ロードの内弟子にそう言ってもらえるなんて。教師冥利に尽きます」
そう言って笑うマクゴナガルにグレイも優しく笑う。いつかの早朝、こんな風に話したことをグレイは思い出していた。やはりホグワーツの教師の中では、マクゴナガルが一番親しみやすい教師だと改めて実感していた。
「今日はもう遅いですし、色々あったとはいえ試験期間です。寮に戻っておやすみなさい」
「はい。おやすみなさい、マクゴナガル先生」
「おやすみなさい、ミス・グレイ」
そう言って二人は各々の目的地へと足を向けた。
寮に戻ったグレイは寝間着に着替えると、ベッドに体を沈める。普段は隣のベッドにいるルーナだが、ハリー達と共に魔法省へ乗り込んだ生徒達は全員聖マンゴ病院で治療を受けているため、その姿はない。ルーナの隣で眠れる日が残り少ないことを少し寂しく思いながら、グレイは眠りに落ちた。
Q.アバダって消耗激しいの?
A.超激しいです。加えて難易度も高く、未熟者が使ってもちゃんとした効果は得られません。例えば現時点のゴイル(息子)が使ったとしても相手の体調が悪くなる程度です。
Q.お辞儀様ってブリシサンとかゼルレッチのこと知らないの?
A.知ってはいます。でもお辞儀様的には魔法使い主体の社会にするために何もしていないので尊敬はしていません。お辞儀様視点で尊敬できる魔法使いは多分、サラザール・スリザリンくらい。
Q.お辞儀様の目的って、マグルと魔法族の立ち位置入れ替えなの?
A.正確には違うと思いますが、魔法省陥落後のエントランスにあったマグルが下敷きにされてる石像を見る限り、近い思想があったと思います。ただ結局お辞儀様はあらゆるものを隷属下させ、全て自分の思い通りにしたかっただけだと思います。どちらかと言うとグリンデルバルドの方がこの思想。お辞儀様はアンブリッジレベル100みたいな存在なので、魔法族の未来を憂いていたというより隷属下しか考えてないかと。
Q.呪いの子ルートになる場合、時計塔はどうなるの?
A.お辞儀様がホグワーツの決戦で勝ち、何かしらの禁忌に手を出して時計塔ですら手に負えなくなった場合のみ亜種特異点と化します。最終決戦でハリーが負けてネビルもナギニを殺せず呪いの子ルート突入かつ、禁忌(聖杯とか)に手を出してマグルと魔法族の立ち位置を変えた場合に発生する特異点。最初に会う現地人はフラットで、その後時計塔の生き残りを集めてできたレジスタンスのリーダーの一人であるエルメロイII世に出会って、はぐれサーヴァントのゴドリック・グリフィンドールとかと一緒にお辞儀様に立ち向かうとかかなって妄想しました。
・杖設定妄想
藤丸立香
木材:モミ
芯材:八咫烏の羽
ホグワーツ特異点でレジスタンスの杖職人として在籍していたギャリック・オリバンダー製。レジスタンス合流時に与えられ、選ばれた。
モミの木は回復力がきわめて高く、モミの木材で作った杖は耐久力と強い決意を持った者を持ち主に選ぶ。気まぐれで決断力のない者が使うと、粗末な道具にしかならない。
芯材として使われている八咫烏の羽は、本来オリバンダーは使わない(というより原産地が日本であるため、イギリスではほぼ手に入らないため使えない)。イギリス国内の物流が完全にお辞儀様に掌握されたことにより、裏ルートでしか材料を仕入れることができなくなり、その中に入っていた材料の一つ。性質としては持ち主の選り好みが不死鳥の尾羽以上に激しいが、主人として認めた者には従順。加えて、ここぞと言う時は実力以上の力を引き出し、主人が進むべき道を示してくれる。これは導きの神として崇められる性質が由来していると言われている。
人理焼却を解決した立香に宿る強い決意を感じ取り、主人として認めた。まともな魔法は今のところほぼ使えないが、カルデアの礼装と組み合わせて使うことで魔力の燃費が良くなる。ゲーム内なら礼装のリキャストターンが減る。
八咫烏の羽はオリジナルです。
ロード・エルメロイII世
当たり前のようにグレイに守られている。水の檻に閉じ込められた時、実は周囲の空気を閉じ込めた泡頭の魔法で空気を確保していたため、案外余裕だった。
暗示や催眠を解除するのは割と得意。開心術で入り込んだハリーに対して『ヴォルデモートと異なる部分』を刺激することで自分の意思を取り戻させ、ヴォルデモートを追い出す手助けをした。
グレイ
本作では、アッドでの戦闘は初。サーヴァントとも切り合えるグレイでも、お辞儀様との相性が悪いためかなり押され気味だった。お辞儀様が結構な頻度でエルメロイII世を狙うため得意のインファイトに持ち込めず、苦戦。
ホグワーツでの生活は結構気に入っており、ようやく慣れたところで時間切れ。時計塔に戻ることに抵抗はないが、新しくできた友達と離れることが少し寂しい。
ヴォルデモート
お辞儀はしなかったお辞儀様。
魔術師に対して敬意などかけらもないため、勧誘したのは戦力増強のため程度。ロード・エルメロイII世よりもグレイの戦闘力と神秘に目をつけた。グレイ、お前も死喰い人にならないか?
アルバス・ダンブルドア
最強のおじいちゃん。ニワトコの杖ブーストかけてるけど、それがなくても最強レベル。なのにそれと正面切って戦えるお辞儀様は普通に化け物。
シリウスの処遇はまだ悩んでます。このまま死なせて謎のプリンス開始時のハリーを鬱にしたっていいし、大きな障害を残して生かすことで慢性的な鬱にするのもいい。
外道神父「一体いつからシリウスが無事だと錯覚していたのかね」
次回、不死鳥の騎士団最終回。
謎のプリンスとロード・エルメロイII世の事件簿をうまく絡められる気がしないので、もしかしたら魔眼蒐集列車×ハリー・ポッターシリーズになるかも。
今回の後悔はエルメロイII世に「犯人はお前だ」と言わせられなかったこと。本当はルシウスに対して言わせようかとも思ったけど、言わせられるタイミングなかった。