更新不定期、初の恋愛物、プロット無しの見切り発車です
うちがあの人の事を気になり出したのは何時頃からだっただろうか…
初めて見かけた時に思ったのは真面目な雰囲気。でも彼は余り他者との関わりを持とうとしなかった。ゲンヤさんの所で部隊長としてのアレやこれを扱かれていた時、彼と接した事がある。親しみやすく、でも何処か遠慮のある接し方。そんな彼を私はどうしようもなく気になっていた。
六課が編成され、なのはちゃんやフェイトちゃんを同じ部隊に招き入れ。ヴォルケンリッター、うちの大切な家族たち、新人達、多くの人たちに支えられながら部隊長として頑張っていたある日
「はやて?いきなり立ち止まってどうしたの?」
クラナガンに三人で出かけて、評判の高いケーキ屋に入り、なのはちゃんの実家である翠屋のケーキとの味の比較を面白おかしく聞いていた時、私はまた彼に出会ってしまった。
不意に心臓が跳ねる。フェイトちゃんになのはちゃんが急に黙り込んでしまった私に声をかけてくれているが、申し訳ないがそれどころでは無い。鼓動が早い、頬が熱い。喉もカラカラと渇きコップの水を飲み喉を潤す。それでもうちの視線は彼から離れることは無かった。
彼は私服姿で雑貨屋で店員と談笑している。その手には既に買い物が終わったのか丁寧にラッピングされた紙袋を持っていた。
(彼女へのプレゼントやろか…)
そんな考えが脳裏をよぎる。なんだろうか、モヤモヤする。話しかけに行くべきか、いやしかし彼との会話はそれ程多くは無かった。本当に世間話をするぐらいで、街中で久しぶりに再会したからといって声を掛けるのも如何なものか…
そんな風に一人で悩んでいると彼が店員に別れを告げお店を立ち去るのが見えた。音を立て椅子から立ち上がる。驚いた二人が何事かと私の視線が注がれているものに気がつき
「はやてちゃん、あの男に人がどうかしたの?」
確かにこれだけ見ていれば彼と何かあったか感づくだろう。まぁ特に何も無いのだが…
「いーや、なんでもあらへんよ。ただ久しぶりにおうたから声かけるべきかなーって悩んどっただけや」
ケラケラと笑いながら二人に視線を戻すと、何だろうが。二人してニヤニヤと悪どい笑みを浮かべている
「もしかして、はやての意中の人なのかな?」
フェイトちゃんから、爆弾とも言える言葉が投下され、なのはちゃんはキャーと黄色い声を上げながら頬に手を当て体をくねくねと動かしている。そのリアクションにお前は何時の人間だと小一時間程問い詰めたくなる。
しかしフェイトちゃんのその言葉に、うちは何も言えずにただ立ち尽くすだけ。その反応が余計に怪しかったようでうちは二人に質問責めされることになった。
気がつけば彼は何処にもおらず、ただうちの心には寂しさだけが残されていた。
それからまた月日が経ち、新人達の出動も終わりゆっくりした時間を久しぶりに謳歌すべく一人でクラナガンにやって来たある日
「姉ちゃん随分と色っぽい体してるじゃーん。どう?俺とお茶でも飲みに行かない?」
ナンパである。ぶらぶらと、特に目的もなくクラナガンを歩いていたら突然声をかけられた。自画自賛になるがうちはそれ程悪くはないスタイルであり、顔も…まぁ整っている方だとは思っている。まぁだからと言って目の前の軽薄そうな男にホイホイと着いて行く程軽い女では無い。着いて行ったら最後、お茶以外のナニかまで飲まされてしまう。地球にある薄い本では大体そんな感じや。
「すんません、うちこれから友達と出掛ける予定あるんで…」
無難な、それでいて相手を刺激しないように断ったのだか相手は諦めずにうちの腕を掴み逃がそうとはしなかった。
その握る力が強く、顔が痛みに歪む。例え部隊長であろうとそこはか弱い女の子。男性の筋力で掴まれてしまえばうちの体は当然悲鳴を上げる。
「あ、あの。私の連れが何かしましたでしょうか」
その声に私の心臓が大きく跳ねる。
声のする方を向けば彼がいた。その顔は少し怯えているようにも見え、しかしその目はとても真剣な眼差し。そんな彼を見て私の心臓はどくんどくんと血液をこれでもかと体に循環させている。
「くそ、友達って男のことかよ…」
私の腕を掴んでいた男は吐き捨てるようにして去って行く。なんとも諦めの早いことで…
「大丈夫ですか?八神さん」
名前を、覚えていてくれた。
たったそれだけのことで顔が赤く染まり。私の心は幸せで満たされて行く。
何時までも返事を返さない私に、何を思ったのか彼は頭をぽんぽんと優しく、子供をあやすように軽く叩き出した。
「八神さんは綺麗ですからね、あんな風にナンパされることもあるんでしょうね。怖かったでしょうに…、腕を掴まれて声を出そうにも出せなくて…」
いや違うんです、本当はバインドするまで五秒前くらいでした。とは言えるわけが無いし言うつもりもない。
あうあうとらしくない声を上げながらされるがままに頭を弄られている。
これはどんなテンプレであろうか。ナンパされ、怯え、助けられ、頭を弄られる。テンプレ通りすぎて最近では小説でもこんな流れにはならないであろう。しかしそんなテンプレを心地よく思っているうちがいる。
垂れる前髪から、上目遣いで彼の顔を見ると何処か不安そうにしていた。それと同時に私の頭から彼の手が離れる。
あっ、と声を漏らす。離れた頭には何か寂しさがある
「すいません、馴れ馴れしくしてしまって…。」
当然である。何時まで経ってもマトモな反応をしなければ不安にもなるだろう。
「ちゃ、ちゃいます!嫌とかそんなんじゃなくて…」
大きな声で否定してしまう自分に驚きながらも
「助かりました、ありがとうございます…」
お礼を告げる。
彼は良かったと言うと、微笑んでいた。
その笑顔を見て私は確信した。
ーーこれはきっと恋である
八神はやて人生初の恋だ。初恋だ
自覚してしまいさらに顔が赤く染まる。変な子に思われていないだろうか?などと心配までしてしまう
「怪我もなさそうですし、大丈夫なようですね。それでは八神さん、また何処かで」
そう、告げて彼は去ろうとした。
連絡先も知らない。名前しか知らない。
今度は何時会うことができる?偶然で会うことがどれ程難しい?神様は不公平なのだ、そんな簡単に偶然に合わせてくれはしないだろう。
ぐるぐると考えながら、無意識に彼の服の裾を掴んでいた
「八神さん?」
突然掴まれ困惑している。
何か言わねば。本日もお日柄が良く?何処の誰だ。
ご趣味は?お見合いか!
そんな風に考え、考え、うちの口から出た言葉は
「あなたが、好きです!うちと付き合って下さい!」
何を言うとんねんうちは…
はやて可愛いよはやて!