どっちの原作に忠実といえるかわからない謎時空物語と思ってくればいいかと。
超常、超人社会と呼ばれる世界。
人類の八割は何らかの特異体質、"個性"を当たり前に持つ。
だが残りの三割は持たぬ者たち、いわば力を持たぬ者たち。
その世界で一人の力を持たぬ存在、"無個性"と診断された少年がいた。
少年はヒーローに憧れた。だが現実とは残酷で、皮肉で、理不尽で溢れかえっている。
無理だと言われ、虐められていた。
そんな少年はもはや日常となっている虐めを受け、顔を暗く俯きながら学校を終えて帰宅している最中のこと。
少年の帰り道にある1つの路地裏へ入れる場所、その目の前で脚を止めてしまう。
『はぁ…ぁ…はっ……クッソ、転生してもご都合なんて、ねぇのかよ……』
「ッ!」
その路地裏に、素人でもわかるほどに重傷を負っている一人の男性がいた。
それを見た少年は思わず駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
『あ…? ハッ、うっそだろおい……まさかここで
「…?」
その男性は息も荒々しくしながら、少年を見て、少年にはわからないことを呟く。
無論、少年はその言葉の意味を理解できない。
「あの…本当に大丈夫ですか?」
重傷なハズなのにブツブツと言っている姿に、少年は戸惑いながらも、とりあえず救急車とばかりに電話を掛けようとしている。
そんな少年を見た男性は何かを思いついたのか、ハッと笑いながら少年の手を止めた。
『どうせ死ぬなら、最後にとっておきの爪痕残して死んでやるよ……クソ神……』
「えっ、な、何を言って……——」
男性の言葉に少年は戸惑っている中、ドンッという音と共に自身の胸元に叩かれた痛みを感じた。
少年が恐る恐る顔を下に向ければ、男性の手が触れられており、自身の身体と男性の手の間に
「——…ぇ」
『俺の"個性"で…
翡翠の猛々しい光と炎が消える。
『…
それを最後に男性の手が、力が抜けたように離れ落ちた。少年は何をされたのか、男性が放った言葉がどういう意味なのか理解できずにいる。
それでもハッ気づき、慌てて端末を改めて取り出し救急へと掛けた。
だが彼は気づきもしない。
目の前で死んだ男性の……転生者の手によってこの世界が……——
—
——◆——
『転生』『主人公』【原作】と創作物でしか使われない単語を発言し、己に何かをした男性の死から数日。救急へと連絡した少年…『緑谷出久』は初めて目の前で人が死ぬというものを見たせいか、上の空となっていた。
学校へ行き、そこで幼馴染や他学生たちから虐めを受けるも、それすら気にすることができないほどに、目の前での死というもの方が衝撃が大きかったのだ。そんな男性は自身の"個性"にて、緑谷出久に何かをして命を落とした。
そして緑谷出久は、
摩天楼の地平線から登り始める太陽。
最初は何も見えなかった摩天楼を照らし色を露にしていく。
己の知る世界のようで、どこかが違うようにも思えるような、見晴らし抜群といえる展望台。
だがそこに自分はいない。
銀色に少しの瑠璃色を混ぜたような髪を風に靡かせている。
緑谷出久は摩天楼を眺める女の子を見ることしかできない。
そして視界が光に包まれる瞬間にのみ、女の子は緑谷出久の方へと振り返る。
その顔を見ることなく光に包まれ、夢から現実へと目覚める。
その夢は鮮明に覚えている。
だが女の子の顔だけが見れない為、後ろ姿しか思い出せない。
これまでの日常が、緑谷出久の中でだけ変わった日から数日。
それでも緑谷出久の周りは何の変化もなく、彼を見下していた。
だが今日は時期も時期なこともあり、一番酷かったと思える日と緑谷出久は思っていた。
「一線級のトップヒーローは大抵学生時から逸話を残している。俺はこの平凡な市立中学から初めて、唯一の! 雄英進学者っつう箔を付けてェんだよ」
進学が迫った今、虐めの主犯である幼馴染はよりみみっちぃことを緑谷出久に言い放つ。
あろうことか、彼がこれまでまとめていった大事なノートを己の"
「つうわけで、雄英受けるな。ナード君」
自慢の"個性"を使い脅す。
そんな緑谷を無視して幼馴染は取り巻き2人を連れて教室を去ろうとする。
だがそれだけでは満足しないのか、幼馴染はとんでもない発言を言い放った。
「そんなにヒーローに就きたいなら効率いい方法あるぜ? 来世は"個性が宿ると信じて……——屋上からのワンチャンダイブ!!」
それを見た取り巻きは「現実が見えていない」と、「
その後黒焦げにされたノートを回収した緑谷は、幼い頃から憧れていたヒーローに偶然にも出会うことができた。
だがその憧れの存在から、間接的にとはいえ、「ヒーローになれない」と諭された。
最後の支えとも言える憧れにすら否定されてしまった。それが最後の一押しになったかのように、心の中で全てが崩れていくような感覚が身体全体に伝わった。
「ハハッ……僕は、やっぱり無理だったんだ……"無個性"の人間にヒーローが務まるなんて…ない、んだ………」
憧れがその場を去っても緑谷は動けず、一人絶望したまま一滴の涙を頬に垂らし地に落ちるだけだった。
『ヒ———に——るよ——は優——から』
「……?」
そんな彼の頭に、微かに誰か…女性のような声に近しいものが響き渡る。
だが曇り、途切れ途切れでもあるが故か、ハッキリとは分からなかった。
その後彼は、絶望と現実に心を打ち砕かれたまま家に帰宅するため足を運んでいた。
だが周りが騒がしいことに気づき、顔を上げると商店街についており、入り口は人混みで溢れている。
そんな商店街の奥からは何度も爆音が響いていた。
人混みをかき分け、何が起きているのか確認できる所まで出れば、緑谷は絶句した。
「なん、で……」
そこは爆発の被害で散々な状態になっている商店と、その惨状を作り上げたと思われる
緑谷はその正体に気づいていた。
「(僕の、せい……?)」
憧れのヒーローに出会う前に、泥のような力を使う
そして憧れのヒーローに救われ、現実を突きつけられてここに立っている。
それでも、己の行為が目の前で暴れている
緑谷はただ心の中で謝罪を繰り返し、救われることを、耐えて欲しいと、そう強く思い、願い、苦しみに耐えている幼馴染を見た。
そして見た。幼馴染が救けを求めている顔を。
その瞬間、身体は勝手に動いていた。
"無個性"、確実性、そんなものは彼の頭からは既に消えており、ただ目の前の幼馴染を救けることだけを考えて、走っていた。
誰かが緑谷を止めるようと声を上げるが、彼の耳にそんな声は届かない。
鍛えてもいない。強くもない。
"個性"もない自分に何ができたんだと、今更になって後悔が押し寄せる中、あの日出会った死ぬ直前の見知らぬ男性と、夢の中に現れるある女の子を走馬灯のように思い出していた。
結局あの男性は自分に何をしたのだろう。
結局あの夢に出てくる女の子は誰だったのだろう。
しかしそれを知ることなく、緑谷は意識を落とした。
——そう、
その場にいるヒーロー、
ヒーローどころかただの中学生が突然飛び出し、術無くして返り討ちあい、気絶したはずの緑谷出久を中心に、周辺の炎が渦上に燃え上がり始めていた。
——焦土を夢に見た……
その炎の渦の中、緑谷は誰も聞こえない声量で呟く。
——新たに生まれた蕾は……
そして緑谷を見える位置にいる者は目を疑った。
少年であり地味目なはずの彼が、
そしてその手にはいつの間にか、手に収まらない程の、
——朝日と共に綻び…囁く……
機械装置が翡翠に輝く四つの翼を展開するように顕現させる。
——■■■よ……
翡翠の光と燃え上がる劫火がともに女の子を包み込み、そして光と劫火の輝きを終えた時——
——生きるのために、戦うのだと
——鉄騎を纏いし一人の戦士が現れた。
・転生者
原作より前に転生し、ある世界の人物を好き勝手召喚しまくった迷惑系転生者とも言える元凶人物。
死に際に主人公に出会ったため、原作とかそこらを無視して強制的に力を与えて死んだ。
※なお、召喚された人物たちは消滅することなく滞在している。
・『緑谷出久』
ヒロアカ世界の主人公。
だが転生者によって『OFA』の前に先に力を訳も分からず与えられたある意味一番の被害者。
今作での主人公に変わりはない。
・女の子
緑谷の夢に現れたり、最後に入れ替わったように現れた女の子。
もう一人の主人公でもある。
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