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先の緑谷、そして女の子とも異なる等身に、全身を鉄騎の装甲にて纏う戦士。
その戦士が己の拳を握れば、胸元の装甲から劫火が溢れ、戦士の力として揺らめく。
「あの隠れミノ……あんな弱そうな雰囲気でとんでもねぇ"個性"があったとは……だが! 爆死だァ!!」
それを見たプロヒーローたちは駆け出す。
だがその手は先に戦士へと届き、爆音が響きながら黒煙が立ち昇った。
「ッ!?」
だが黒煙が消えれば戦士はその手を、構えながら片腕で受け止めていた。
「忠告しておきます」
戦士は先の緑谷、女の子とも異なる声を発した。
「あなたが人質を解放すれば、私も加減しましょう」
戦士の言葉に
「——掃滅開始」
戦士は防いでいる
同時に劫火の炎を脚部と背面装甲の
「なにッ!?」
掴みが強かったのか、人質にされている幼馴染は少し苦痛の呻き声を漏らす。
「歯を食いしばることをオススメします」
戦士は一言、人質に発言すればすぐにもう片方の拳を強く握り、劫火を漏らし纏わせる。
そして人質を
「ッ! アッチィィィイイイッ!!!!」
先ほど自身の隠れミノであり人質、"個性"すらも利用し商店街を炎上させていた本人であるにも関わらず戦士の放った拳、そしてその劫火の熱さに苦しんでいた。
「コホッ…テメ……」
「まだ動けるのなら下がってください」
返事待たずして戦士は、隠れミノであり人質であった幼馴染、もしくは元は子供である戦士を攫おうと、
【—— Action.2 実行ッ!!】
対して戦士は片足を上げ、脚部のスラスターを展開後すぐに劫火を噴射される。
コンクリートで作られている地に叩けば割れ、同時に爆炎として周囲に広がり、
されど
「ッ! お、お前は……『オールマイト』ォ!!」
「君に諭しておいて、己が実践しないなんて…プロはいつだって命がけェ!!」
誰もが知り、緑谷も憧れたヒーロー。
その姿を見た戦士はすぐにその場から離れ、巻き込まれまいとする。
そしてヒーロー……オールマイトの放った一撃が
その雨は戦士の装甲にも当たるが、戦士の劫火が強いのか蒸気となる。
それでもその雨によって外部からもその装甲に溜まる劫火の熱は冷やされていた。
「——おい!!」
ヒーローの勝利に外野である人々の歓喜の声が響き渡る中、戦士は荒い声の方へと振り返る。
振り返り見た先には、戦士が救けた幼馴染がいた。
「テメェ『デク』だろ!? なぁ! なんなんだその姿と力はよォ…!!」
幼馴染の顔は怒りか、戦士に詰め寄る。
「……その質問に対し、お答えすることはありません」
「ア”ァ”!?」
戦士は答えないのではなく、答えないという否定として言葉を述べる。
それを聞いた幼馴染は怒りに染まり始めていた。
そんな二人の元に、オールマイトが歩み寄る。
「少年……で、あっているだろうか? 君のその力は…——」
「彼にも言った通り、あなた方にもお答えすることはありません」
戦士はそれを最後に装甲から劫火を噴射させ、その劫火を推進力としその場から浮上する。
その際オールマイトや幼馴染などの声が響いていたが、戦士は聞く耳持たずしてその場から消えていった。
——◆——
見晴らし抜群といえる展望台から見渡せる摩天楼……『夢の中の空に一番近い場所』。
超常世界には存在しない。誰も知ることも見ることもできない夢の中。
そこに緑谷出久は立っていた。
彼はなぜここにいるのか、さっきまで自分は燃え上がる商店街におり、気絶したはずだと困惑している。
「——安心して。ここは夢の中で現実じゃないから」
「……ぇ?」
そんな見晴らしの抜群な展望台に自分以外の女の子の声が響き渡り、緑谷はさらに困惑する。
だが同時に理解した。ここはあの日以降見るようになった夢の場所だと。
そして緑谷の目の前に人ひとり分ほどの劫火の渦が燃え上がる。
劫火の中には人の影があり、炎が消えれば人が……女の子が現れた。
「やっと……会えたね」
女の子は銀色に少しの瑠璃色を混ぜたような髪を風に靡かせ、美しい紫のグラデーションに透き通った瞳を向けている。
緑谷は突然現れた、美人、美女とも言える女の子を前に顔を赤くしながらどよめく。
「初めまして、あたしは『ホタル』」
「へっ!? あっ、ぼ、僕は緑谷出久です!!」
「うん、知ってる。
ホタルと名乗った女の子の発言に緑谷はあまり理解できないでいる中、ホタルは続ける。
「この状況がよくわからないのは、わかってる。君からしたらさっきまでのこともあって、混乱するのは当たり前だから」
まるで現実で起きていたことをわかっているかのような様子に緑谷は困惑が収まることがないか、それでも冷静になるため、ゆっくりと落ち着こうとしている。
「さっきも言ったけど、ここは夢の中。そしてあたしたちがいるこの場所は夢の中の空に一番近い場所なの」
ホタルが振り返り見上げ、それに釣られ緑谷も見上げる。
二人の視界に映るは朝日が地平線に被るようにあり、同時に夜空で星々と流れ星もあるが故か、本当に夢といえる現象が起きていた。
「ここはね、
あまり理解が出来ない理由。
緑谷は理解できずにいるが、ホタルもまたあまり理解できていない様子だ。
「こういうのは
「えっ、ま、待ってください! 召喚されたってどういうことですか!? そもそも、ホタルさんは何者なんですか!?」
「…話せば長くなっちゃうんだけど……君があの日出会った男性の人、あの人の力…君で言う"個性"で、あたしは君の中に宿る……
「"個性"って……ど、どういうことなんだ!? 確かにあの日あの人に僕は何かをされて、あの人も召喚とか言ってた。それに僕のことを知ってるような雰囲気で僕の家系……というよりはお父さんが『火を吹く』"個性"で、それすらも知ってる感じだったんだけど……そもそも『召喚系』の"個性"、それも人をそのまま召喚することができる"個性"なんてあるのか? 使い魔とか動物を操る、もしくはコミュニケーションが取れる系は聞いたことあるけど……」
緑谷は理解が追い付けないが、それでも自分なりに推察しようと考え、一人の世界に入り込みブツブツと独り言を呟く。
それを見たホタルは微笑ましいものを見るように口元を手で隠し笑った。
それに気づいた緑谷は恥をかきながら謝罪する。
「簡単に言っちゃうとあたし……ホタルという存在は君の…緑谷出久の"個性"として存在するようになった。そしてあたしの力を君も扱うことができる。そしてこうやって話し合うこともできるの」
「…ごめんなさい、まだよくわかりません……」
「大丈夫。あたしを完全に
ホタルは緑谷の手首を掴み、引いて手すりの傍まで共に移動する。
すると目の前に広がる摩天楼、夜空、太陽、そのすべてが光に包まれ始めた。
「『イズク』はヒーローになれるよ。誰であろうと救けようとするぐらい、優しいから」
「え…っ」
緑谷は一瞬聞き逃しそうになったが、それでも聞き逃さない。
憧れに、母に、誰でもいいからと願い、言ってほしかった言葉を、さりげなくホタルが伝えたからだ。
「——現実で、また会えることを願ってる」
その言葉とホタルの微笑んだ顔を最後に、緑谷の視界は光に包まれた。
——◆——
太陽は地平線へ落ちかけ、空は茜色に染まる。
そんな空の中、1つのビルの屋上にて緑谷は重い瞼を上げた。
「痛ッ…」
緑谷はゆっくりと身体を起こすが、全身に伝わる痛みに苦しむ。
それでも立ち上がり、屋上フェンスの傍まで歩み見下ろした。
『夢の中の空に一番近い場所』といわれた摩天楼……比べれば今見下ろすはその摩天楼程ではないだろう。
『——現実で、また会えることを願ってる』
女の子……ホタルの言葉、姿と綺麗な微笑み。
緑谷は今も鮮明に覚えており、おずおずと身体の奥底に宿っているものを感じようとする。
すれば奥底から燃え盛る劫火ともう一つの魂を感じ取った。
そして再度地平線へ沈みゆく太陽を見つめる。
力を得た今、彼は周りの者たちと同じヒーローという夢を見ることが、その夢を掴み取ることが出来るだろう。
「(それで、いいのかな……)」
ヒーローという夢をあきらめたわけではない。
されど憧れにすら否定されてしまっているため故か、心の底から歓喜に満ち溢れることはない。
そして今見る摩天楼は、どうしても夢で見た摩天楼よりも見晴らしが抜群とは思えずにいた。
・『ホタル』
今作主人公の一人、女の子の正体。
元の世界では奇妙な現象である病『ロストエントロピー症候群』を患っていた。
緑谷出久の中に力として召喚され、宿られた今、その病があるかは不明。
覚醒するまでの間、緑谷の誕生から現在に至るまでの生い立ちを記憶として見ていたりとか。
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