皆様方、スシローへの跳躍準備は整いましたか?
もちろん私は信用ポイント(お金)をちゃんと用意しました。
後は跳躍を待つのみですで、一緒に美味しく召し上がったりなどして楽しみましょう。
「――問題はキャストリスの力よね」
開幕早々、キュレネは真面目に呟いた。
現在出久達は、人の気配が全くない森林にいる。
それはなぜか?それは出久が体育祭で十分に三人の力を扱えるようになるがため。
雄英体育祭までの期間、学校に残り"個性"の特訓は許されている。
しかし出久の、正確には三人の力は超常世界では桁違い故に、能力も大幅に異なっている。
付け加えれば直接姿を露にし指導したほうがやりやすい点もあるのだろう。
人がいなければ気にせず行うこともできる。
故に彼らは本来はよろしくないがその方針に向け、今いる森林にて特訓を行おうとしていた。
「確か二人の話だと、
「はい。元の世界では普通に接触することも可能になりました。ですがこちらの世界に召喚された際、何故か元に戻ってしまったように、再び奪うようになってしまったのです。能力面では当時のままなのですが……不明点、矛盾が大きくあります」
「考えられるとしたら転生者が召喚する際に何かしら行ったとしか言いようがないけど、もう亡くなってる以上、知るすべはないから困ったものね。もう、責任丸投げなんてひどいわ!」
「その責任の一部はある意味僕が背負ってるようなものですよね、多分……」
「それはないから落ち込まないでイズク!」
ホタルたちの世界。
その世界のとある星の、宇宙へと規模を広げた戦いは終止符を打っている。
それすなわち、その筋書きの一部にて、キャストリスは「死」の権能を完全なものとし、無差別に他の
されど転生者に召喚された際、姿に変えられただけに飽き足らず、その力も逆行、もしくは初期化されるように「奪う」だけになっていた。
その真実、理由を知るのは召喚した転生者本人のみ。知り得たいがその転生者は既に亡くなっている故、いろんな意味が込められた矛を穿つ先はない。
転生者が召喚した理由は分かっても、更なる理由を知るすべはもうない。
「とりあえず、出久がキャストリスの力をある程度でも使えるようにした方がいいわね」
「賛成です。私はあまりお力添えできませんが、少しでも出来るのでしたら行います」
「確か、ボリュクスのサイズを変えられるか試してるんだっけ?」
「はい。それから……」
考えてばかりでも時間は溶けるように過ぎていく。
故に今は己がやるべきことをやるしかない。
特に力が大きすぎるキャストリスとキュレネの力のコントロールは必須課題。
今ではもう出久も女性…というよりも、三人に対し免疫が出来ているため、ためらいもなく近い距離で話し合っている。
「……」
だがそれを見ていたホタルは静かに頬を膨らませていた。
結論:嫉妬である。
——◆——
人とは成長するにつれ時間の感覚が変わっていく。
成長すればするほど短く感じるが、年齢問わず行うことに集中すればよりすぎる速度は上がり、気が付けば予定当日になることも多くあるだろう。
出久達もまた同じであり、既に二週間を終え、雄英体育祭当日を迎えていた。
「入場検査、長いね……」
「
雄英高校校門前には多くの人でごった返しとなっていた。
四月上旬のオールマイト就任時にも多くの報道陣が取材に来ていたが、
それでも彼らは己の仕事のため、多くの人数で集い赴いている。
自身たちは人の過ちや大きなミスなどを恥じらいなく報道する癖に自身たちの失態に関しては他の報道陣たちにもなるべく隠蔽するよう働くにも関わらずだ。ある意味鋼のメンタルを持つ者たちのたまり場とも言えるだろう。
「物議をかもすは数字が取れるよ! 今年の目玉はやっぱり一年生のヒーロー科よね!!」
「ラストチャンスに賭ける熱と経験値から成る戦略等で、例年メインは三年ステージだけど」
「今年に限っちゃ一年ステージ大注目だな」
例年、雄英で行われる体育祭はかつて超常ではない時代に行われたオリンピックに成り代わる形。
故に通常の体育祭と異なり、親族がいない無関係の一般観客から報道者や企業など、多くものが赴き、さらに世間へと生中継として液晶に映るようになっている。
例年は三年生が的になるが今回に限り、一年生が大きな的となっていた。
それはヒーロー科のAとBの両組が
故に注目になるのは必然であるが、それだけではないのもある。
「ねぇ知ってる? 今年の一年の中にエンデヴァーの息子がいるって」
「ウッソマジで!?」
No.2ヒーローエンデヴァーと血を分けた親族、息子がいること。
それもあってプロヒーローから報道陣は一目でも見ようと赴いている。
だが誰もが期待した展開は、想像通りに、期待通りに行くほど世は甘くない。
「あ、おっ、おいあれ!」
その証拠に一人がある方向へと向いた瞬間、その顔は蒼白に染まり後退る。
周りもそれに気づき向けば同じようになり、報道員もそのカメラを向ければ終わりかもしれないと悟り、向ける事すらできないとばかりに行わない。
何故ならそこには誰もが知る人物が歩んでいるがため。
一人は水槽のように透け肋骨まで見える腹部を露にし、目元に鱗が微かにある、人に大きく近しい異形型の、黒髪に白水色のインナーを持つ女剣士。
一人は小柄でありながら、その風格・威圧はまさしく本物と思わせる水色の髪に、蒼炎を絶やず燃える小さな王冠を乗せる女帝。
「今年も多くの来訪者がいるな。やはり新しく水槽に入った小魚たちを見に来ているのだろう」
「だろうな。戦の"い"すらその身に体験したことのない者たちが、戦場と化したその地から乗り越えたのだからな」
二人が堂々と歩めば、自然と周囲の人々は後退り道を開けていく。
そして二人がゲートの前に着けば、そこには既に一匹の鼠と数人のプロヒーローが出迎えていた。
鼠は一歩前に踏み込み、丁重に言葉を紡ぐ。
「今年もよくぞお越しくださいました。女帝陛下」
「戯言は結構。事前に報告しているが、分かっているな?」
「もちろんです」
「ならば案内しろ」
根津校長が先頭となり、彼らは歩みだす。
その姿を見た者たちは、誰もが悟った。
あの女帝もまた、今年は注目すべき一年を見るがために来たのだと。
自分たちが満足するものは見れないかもしれないと。下手すれば、己が人生すら危ういと。
——◆——
A組控室。
そこにヒーロー科一年A組が体操着を身に纏い待機している。
各々が緊張をほぐしたり、精神統一を行ったり、会話を行ったりしている。
その中の一人である出久もまた、"個性"であるホタルたちと秘かに話し合っていた。
『サムに変身するのは最終手段でいいと思う。いい意味でも悪い意味でもヴィジランテ時代にプロヒーローの一部には見られてるから』
「(僕もその方がいいと思う。特にエンデヴァーとは一度戦っちゃってるから、バレたらいろいろと大変なことになると思うし……)」
『う~ん…やっぱりあたしたち全員の力が他の子たちと比べると結構差があるから調整が難しいのよね』
『やはり私やキュレネ様よりも、長らく使用しているホタルさんの力が適用かと』
どう力を使い、未発表の競技を乗り越えるか話し合う。本来個人戦でもある雄英体育祭でこのようなことは不可能に近いだろう。
しかし"個性"そのものと相談できる場合、誰もがきっと乗り越えるために行う。
故に彼らは話し合う。
そしてそんな出久に轟は歩み寄り、名を呼んだ。
「緑谷」
「ッ!」
自身に話しかけてくる人物はいないのと、予想外の人物から呼ばれたために出久は驚愕するが、轟は構わず告げた。
「客観的に見ても、俺は実力があると思ってる」
「えっ、う、うん…"個性"凄いし、そうだね」
いきなりの自信過剰発言に出久は戸惑うも、轟の"個性"は聞いており、今日に至るまでの訓練でも見てきたため把握している。
故にその実力は本物であると理解している。
しかし理解できないのは、なぜそれを今己に言ってきたか。
「別に詮索するつもりはねぇがお前、オールマイトに目ぇかけられてるよな?」
「ッ…!」
大きな理由。
それは己がオールマイトと何らかの関係を持っているということを見越してのこと。
轟焦凍はエンデヴァーの欲望・願望の末に生み出されたとも言える存在。
その"個性"も憎き父の追い求めた力。
彼自身は否定するだろうが、オールマイトを超えようとするものとして、そのオールマイトと一緒にいることの多い出久に対し、彼は何か裏があると見越したのだろう。
故に今、そのオールマイトが気に掛ける存在に片割れの力だけで勝ち、一位になることで憎き父を否定すると目論んでいる。
『熱烈ね♪』
『どちらかと言えば、復讐や怒りに近いかと思います。何か大きな理由がない限り、この若さであの目を宿すことはありません』
キャストリスの指摘にて、出久は轟の目を見る。
轟の宿すその目はまさに、復習者という色に染まり続けていた。
「おい直前にやめろってそういうの…!」
「仲良しごっこじゃねぇんだ。なんだっていいだろ」
居ても立っても居られず、切島が仲裁に入るも轟は薙ぎ払う。
まるでここにいる全員が己より弱い弱者であるが故、眼中にない様に。
出久に宣言したのも、オールマイトが故であろう。
転生者の爪痕はまだまだあるみたいです。
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