翡翠の劫火と生きる   作:伽華 竜魅

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ホタルの新衣装綺麗で可愛くて最高です。
ついでに花火とアーチャー、さらにセイバーもゲットしました。やったぜ。




銀の狼 コンタクト

 

 

 

 

最初は驚愕と戸惑いが同時に襲ってきたと『緑谷引子』は語るだろう。

"無個性"と診断結果を受け、幼ながらに絶望し、現実を受け入れず涙を流す血を分けた我が息子。

引子はそんな息子に己の心を痛め、息子が眠り静まった深夜には一人で食料を大量に摂取するほどに。

 

そんな引子の息子である出久は引子にホタルの存在を話した。

最初こそは引子は戸惑い、心優しい息子が人を巻き込むことをするのかと疑った。

だがホタルが姿を露し、ホタル自身が引子に話したことで引子は信じることにした。

 

見知らぬ男性の力によって、ホタルという存在と力を宿した経緯。

ある事件が引き金となり覚醒させた経緯。

 

全てを包み隠さず出久は打ち明け、聞いた引子は受け入れた。

ホタルは出久の力であり、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ホタルちゃん、出久呼んでくれる?」

 

「うん!」

 

出久がホタルを覚醒させ、引子も受け入れた日から現在。

月日では既に二ヵ月が経過している故、ホタルは緑谷家にすっかりと馴染んでいた。

引子も「娘ができたようだ」と後々に語る程に。

 

何より出久の父にして引子の夫の"個性"は『口から火を吹く』炎系。

ホタルの力【鉄騎を纏う戦士となり、劫火を操る】という点でも突然変異の形でうまく話を繋ぎ合わせることが可能。

 

またホタルの一見瑠璃色を混ぜたような白銀の髪は、見かたによっては翡翠色にも見える姿は、海外から来訪した血縁者と言い切ることもできるだろう。引子はホタルに「学校には通わないの?」と尋ねた時期もある。

しかしホタルは断った。

 

出久と同じ制服を身に纏い、一緒に学校に行くことは魅力的であり、覚醒前のホタルは出久の記憶を見ながら、何度も妄想に浸っていた。

だが自分は緑谷出久の"個性"であり、そっちの方がより深く一緒にいることができる。

故にホタルは断ったのだ。

 

「イズク、ご飯できたよ?」

 

ホタルは『IZUKU』と書かれた扉の前に立ち、ノックしながら呼びかける。

出久の"個性"でもあるホタルは彼の部屋や、申し訳ないが彼自身にしか知らないプライベート、黒歴史に当たってしまう記憶すら見ている。

しかし家の中では基本別々になり過ごすようにしていた。

 

これはホタルの要望によるもの。

一つであればいつでも一緒でいつでも話せる。

だが実際に顔を見て、目を合わせて、実際に触れ合うことができながら話しあいたいと願った。

 

出久もまた賛同した。

心の優しい彼は家だけでも自分の中に閉じ込めず、自由に開放させたいと願っていたから。

引子もまたいろいろと話をしたいこともあり、現状の結果になっている。

 

すれば扉が開き、『Yシャツ』と書かれたTシャツを着ている出久が現れた。

余談だが、ホタルは出久の服を拝借し『ドレシャツ』と書かれたTシャツを着ている。

 

「おはようホタルさん……」

 

「おはようイズク…寝癖付いてるよ? 直してあげるから洗面所行こ」

 

目を擦る出久を見たホタルは、微笑みながら出久の手を取り洗面所へと向かう。

すれば出久は今だ寝ぼけながら歯を磨き始め、その間にホタルは出久の寝癖を直す。

他から見れば、元々もさもさな髪をしている彼のどこが寝癖なのかはわからないが、ホタルはそれでも直している。

 

「昨日のあれから身体はどう?」

 

「ん…まだ少し身体は痛むけど、気にするほどじゃないから大丈夫。ホタルさんは?」

 

「あたしは大丈夫。元の世界ではよく戦ってたから」

 

昨日の深夜にてヴィジランテとして(ヴィラン)退治を行ったとき、二人はNo.2でありフレイムヒーロー、エンデヴァーと交戦した。

結果は二人の勝利に終わったが、No.2の実力は本物。

 

一つになっているときに限り、互いの五感すべてが共有される。

 

ホタルは元の世界でも多くに死闘を繰り広げ、乗り越えた実力者。

対して出久は二ヶ月前まで力を持たなかった"無個性"故、戦闘は未だ不慣れ。

故に二人は互いに同じ痛みが微かに身体に流れ、伝わり巡っているが、それぞれの感じる痛覚の大きさは異なっていた。

 

「でもエンデヴァーたちにサムとしての姿を見られたから、活動は難しくなるかもしれない……」

 

「幼馴染の…バクゴーだっけ? あとオールマイトも、2人にはサムの正体があたしたちだってのはバレてるからね。ここに来るのも時間の問題かもしれない」

 

出久は歯磨きを、ホタルは出久の寝癖を直し終える。すれば一度ヴィジランテとしての活動の話をやめ、共にリビングへと歩き出す。

リビングでは母である引子が既に料理の乗った皿を机に並べ終え待っていた。

 

「おはよう出久、冷めないうちに食べましょ」

 

今までは二人だけだった食卓。

しかし今はホタルが加わり三人となった。

人が一人増えるだけでも食事は楽しくなるもの。

故に、緑谷家の食卓はこれまでよりも賑やかになったと、彼らは後に語るだろう。

 

 

——◆——

 

 

七月後半は夏の季節。

夏とは地球が太陽を軸に最も近い位置をゆっくりと旋回する。

故に太陽の熱、日差しがより一層強くなり、生命はその暑さにやられ、耐えながら日々を過ごす。

同時に一部学校は夏休みという長期休暇への突入の時期。

 

市営多古場海浜公園。

近年不法投棄が問題とされている海岸に、鉄騎を纏いし戦士、サムが立っている。

そしてサムの目の前には廃棄物が黒焦げになっており、微量だに劫火も燃え上がっている。

 

「やっぱり繊細なコントロールが難しい…二ヶ月も経ってるのに……」

 

サムが劫火に包まれれば出久が姿を露にし、己の掌を見つめる。

今日に至るまでの間、出久はホタルの指導の元、必死とばかりにホタルの、サムの力の特訓に励んでいた。

 

「やっぱりホタルさんはすごいな……この力を完璧に扱えてるんだから」

 

『それほどでもないよ? あたしでも苦戦はするし、コントロールがぶれる時はあるから』

 

出久が呟けば、"個性"として己の中に宿るホタルが答えたが、出久は「それでもだよ」と答え返し、倒れている冷蔵庫を椅子代わりに座る。

 

『そういえば進路は決めたの? 前までは雄英高校って学校を志願してたんだよね?』

 

「…そう、だね。雄英のヒーロー科を志願してたけど、オールマイトにも否定されちゃったから、絶対雄英って感じがなくなったって感じがして……」

 

『そっか…そうだよね。ごめんね、嫌なこと思い出させて』

 

ホタルを覚醒させた日。

だがその日は同時に憧れのヒーロー(オールマイト)から夢を否定された日でもあるが故に、出久の記憶には繊細に刻まれている。

 

『バクゴーにはあたしたちの姿を見られてるし、イズクの記憶と話だと、あぁいう性格なのに洞察力や観察力がいいみたいなんだよね? それに今でもずっと突っかかって来てるから、雄英に入学したらもっと大変なことになるかもしれない』

 

「うん…普通に想像できちゃうのがかっちゃんだから……」

 

苦い顔をする出久。

その一方でホタルは先までの雰囲気と変わり、出久も感じ取った。

 

「ホタルさん…?」

 

『誰かがあたしたちを見てる……それも二方向から』

 

気づいたが、出久に気づいていないように振る舞うようホタルは指示し、自分たちを観察している人物たちとの特徴を言い始める。

 

『一人は身体に合わずダボッとした服装に金髪の男性…もう一人は私服だけどブロンドの髪が特徴のイズク同い年当たりの男性……うん、イズクも大体は分かる人たちだね』

 

「かっちゃんに、オールマイト……どっちも見られてるからかな。それに僕が元々"無個性"だってことも知ってるしなぁ…」

 

『サムになってここから離れるのもいいけど、バクゴーは家の場所も知ってるから避けられないよね』

 

どうするか。とばかりに二人は考える。

出久の端末から着信による振動が発生し、出久は端末を取り出す。

すれば端末の画面と共に音声が流れ始めた。

 

『あーあー、コホン。聞こえる? 初めましてだね——緑谷出久くん。それか久しぶりかな? サム』

 

画面に映るは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

の、二等身大のゆるキャラ的立ち絵であり、音声によって流れる声もまたその少女の声であろう、録音として流れていた。

同時に出久の中にいるホタルも、揺らめく劫火として激しく反応しているのを、出久は感じ取る。

 

「だ、誰…!? 僕たちのことを知って——」

 

『——『銀狼(ぎんろう)』! なんで……そっか、彼女もこの世界に召喚されていたんだ』

 

ホタルと同じく転生者の手によって召喚された異界の人物。

ホタルはその正体を銀狼と迷いなく呼んだ。

 

『残念だけど、これは録音音声を君の端末に送っただけ。電話みたいに答えることはできないから。まぁ実際に電話とかもできるけど、直接会ったほうがいろいろと面倒だけど楽でもあるしね。もし君がサムならこの意味、わかるでしょ?』

 

「ホタルさん…わかる?」

 

『うん。とりあえず銀狼の送って来たこの録音をちゃんと聞こう』

 

ホタルは知っている。

ならば否定することも、抗議することもない。

出久は素直にホタルの指示に従い、その場から動かずに銀狼の録音データに集中する。

 

『まず、私たちを召喚したあの男が逝っちゃったことは私たちも把握済み。もうこれから先、さらに多くの私たちの世界の住人がこの世界に召喚されることはないよ。そういえばまだ私が誰か言っていなかったね。改めて。私は【星核ハンター】の銀狼。あっ、調べても無駄だよ? 警察からヒーロー、公安委員会たちの徹底的な調べでも見つけられないようにしてるから』

 

警察や公安ですら見つけられない。

簡単に言って簡単ではない。

警察も公安委員会も、ヒーローと比べればあまり派手でないように見えるが、ヒーロー以上に活躍する場面が多々ある職業でもある。

 

『それと君のことも粗方調べさせてもらったよ。緑谷出久くん。なんで"無個性"である君がサムになれるのか疑問に思ったけど、大方、あの転生者に何かしらされたって感じでしょ? 私からしたら、今の君が緑谷出久の姿として召喚されたサムって可能性もあるけど……君の活動を見て、実は違うってのもとらえられる。なんでって? そりゃあ監視カメラをハッキングすれば簡単さ。映ってるんだよ——ホタルがね』

 

思わず息を止めてしまう。

否、ホタルが銀狼を知っているのであれば、逆もまた然り。

銀狼もホタルを知っているということ。

 

『これ以上無駄話ももったいないし、本題に入っちゃおうか。このデータの後に、君の端末にある位置情報を送られるように仕組んでいるから、今日か明日にでもそこに来てよ。ホタルや私以外にも召喚された人はたっくさんいるからね。ヴィジランテの活動も、半分は私たちに自分がいることを伝えるためだったんでしょ? まぁそういうことだから、今度は直接会えることを楽しみにしてるよ』

 

それを最後に映像は途切れ、再度再生も不可能となる。同時に位置情報のデータが入れ替わるように受信された。

 

「……どう思う? ホタルさん」

 

『嘘…とは思えない。それに銀狼ならこういったハッキングはきっと「朝飯前」って言いながらできるから、行ってみてもいいと思う』

 

「わかった。警察すら見つけられない位置情報をわざわざ送って来たんだ。それに、僕のことを調べ上げたってことは住所も特定されてると思うからね」

 

出久は立ち上がるが、今ここから向かうのは難しいと考える。

それは自信を観察している憧れと幼馴染がいるからだ。

 

『場所はわかるから、一度家に戻って準備をしてからでもいいと思う。バクゴーはともかく、オールマイトは撒くことができると思うから』

 

「そうだね。向かう時はタクシーでも捕まえればいけるだろうし、そうしよう」

 

どう向かうかを決めた出久は廃棄物の溜まり場である海岸から離れ、一度自宅へと向かい始めた。

 

 

 

 





・『銀狼』
元の世界でもゲームを好み、ハッキングを得意とするハッカー。
ホタルよりも早く出久の世界に召喚された人物であり、今回出久たちにコンタクトを取った。ちなみに警察や公安委員会らには居場所を特定できないようにもしている模様。

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