TS ょぅι゛ょオジサンで行くバトオペ2動画配信
Q.なんで配信者になったの?
「例のパンデミックやね」
カチカチとコントローラーを操りながら幼女が答える。
パッと見て特徴的なのは、明らかに手入れの行き届いていない長髪を頭頂部で
「おっちゃんフツーに工場でコンデンサー作る機械のオペレーターやってんけどな? あのパンデミックの頃にワクチン猛毒論が流行ったやろ? いや実際おっちゃんの周りにもワクチンで身体ガタガタんなった子も居るから間違いでも無いとは思うんやけどな?」
ーーー知らんけど。
そう語る声はソプラノ。
小鳥のさえずりのように美しい音域が過去のオジサンの生活を穏やかに語る。
「おっちゃんそもそも注射怖いんよね。それでズルズルと予防接種先延ばしにしとったらウイルスに感染してな〜。まぁ配信には関係無い事やし、何より話せば長いけーそんな深くは言わんけどさ」
幼女の服装はラフの一言。
伸びてよれよれになったTシャツと、ダメージでボロボロになった空色のショートパンツ。
肉の少ない脚は胡座の中に折り畳まれている。
「倒れて、次に目が覚めたら5年経ってて、その上性別反転した上に幼女になってた」
ゲーム画面上で完全に孤立した自機が周囲のMSからタコ殴りにされて爆散する様を眺めつつ、一時コントローラーから手を離してビールの缶を口に運ぶ。
「……ッ! くは〜ウマぃ…ととと!」
オツマミのナッツをパクリと口にした所で出撃待機時間が経過していた事に気付き、慌ててコントローラーに手を伸ばす。
ポチッとな〜…などと、気楽に再出撃した彼女の機体。その降下位置は主戦場よりも少し遠い。
中継地点を敵に奪われたのが痛手となっている。
「まーアレよな。キミらからしたら嘘っぱち扱いになるやろーし、信じるにしても笑い話だったり逆に憧れるなんて意見が上がるのは理解出来るぜ? けどなー…当事者からしたらガチでキツくってな〜。ふつーに精神病んでたのよ〜〜つうか、今も別に病んでない訳じゃなくてお薬服用しなきゃまともに生活できない脳ミソなんやけどな?」
ケタケタ笑う幼女だが、その目の奥に光は無い。
「けどバトオペ…に限った話でもないんだけど、こうしてゲームしてる間は身体の事とか過去の事とか未来の事を忘れられるんだわ。んで…ゲームしてると動画とか見るようになるじゃろ? 動画見てて閃いたわけ。あ、コレで金稼げはインじゃね、とな」
画面の中、彼女の操る機体がようやく前線に辿り着いたのだが、タイミング悪く仲間のMSが2機同時に撃破され、残るは遊撃に出ている強襲機と後方に控える支援機のみ。
彼女にそこまでの情報を瞬時に知覚する能力は無いのだが、それでもわかるくらいには劣勢だった。
なにしろレーダーが示す彼女の周辺には敵を示す赤いマークしか見えないのだ。
「ほら、社会復帰したくてもこの身体じゃろ? 戸籍上は45のオッサンなんだから学校には行けねーし、身体はヤベーくらいのちんちくりんで会社にも行けねー。特別な技能も知識も無いのナイナイ尽くしよ………けどま、逆に考えれば幼女のボディはあるわけでして」
急いで機体を後退させる。
しかし、その初動を敵陣後方のスナイパーに撃ち抜かれ足を止めた自機。
その隙を見逃す事なく吶喊した敵、強襲機の近接格闘3連撃により大きく転倒。
「オッサン×幼女って2次元では需要あったし、ユーツーベーの登録やらなんやらにしても知り合いにツテがあったし、な〜んもせずに部屋で酒飲んで腐ってるよりぁマシだよね…って。それが理由ですわな」
おっとり刀で駆け付けた残りの汎用2機が、手にしたサーベルで見事に連携して彼女の機体を切り刻んだ。
爆破エフェクトと同時に敵にポイントが加算される。
「…あちゃ〜コリャダメだな」
残り時間は50秒。
スコア差は約2000点。
彼女が活動するコスト帯にとっては絶望的な点差だ。
復帰待ちをしている間に残っていた味方の強襲機と支援機も綿菓子のように落とされ、その差はいよいよ埋め難い物になった。
PSを誇る配信者であれば、最後の足掻きで魅せるだろう。
トークが得意な配信者であれば、今回の戦況を分析しただろう。
しかし、オジサンはただ幼女にTSしてしまっただけのオジサンなので。
「…はい。お疲れ様でした〜」
再出撃を終えてからの約30秒間、拠点周辺を仲間と共にウロウロと歩き回り、最後に敵に3連撃を食らわされて終了した。
「とりあえず、こんな感じでのんびり配信してくかな。たま〜に別のゲームやると思うけど、基本はバトオペ。技術向上とか新機体紹介とかをお求めなら別チャンネルへど〜ぞ〜」
リザルトで唯一マシなのは陽動の項目のみ。
総合順位9/10位。
「では、そんなわけでTS幼女オサジサンのバトオペチャンネル、バトおじチャンネル(幼女)の第一回目を終了しまーす」
画面が暗転する直前。
「は? あ〜そっか…失敬失敬w おっちゃん自己紹介しとらんかってんな。おっちゃんはゴロウや。ゴローでもゴロちゃんでもおっちゃんでも何でもえ〜けど、ゴロージンだけは勘弁な」
照れた様子で頭をかく。
その様だけを見れば間違いなく本物の幼女。
「いやーやっぱ緊張しててな〜。数人とはいえ、他人様と関わる事自体が最近のおっちゃんには新鮮やし、こう言うパソコンでの付き合いなんかもほとんど経験無いやろ? 多少のオチャメには目をつぶってよろしヤス………ん? 次回?」
予想外の反応に戸惑う彼女。
「いや、まだ未定かな? おっちゃん飽き性やし、頭の調子が悪い時もあるもんで約束は出来んのですが、まぁ………なる早で? 頑張ってみようかな〜…みたいな?」
上目遣い。
これがもとのオジサンだったなら、この時点で同接はゼロになっていた事だろう。
しかし、悲しいかな幼女。
「じゃ…じゃあ明日? 明日も同じ時間に配信って事で…ヨキ?」
画面越しの出撃要請に幼女の薄い胸が弾む。
善意であれ悪意であれ、関心を持たれ求められる。
それを無視できるほど彼女の心は強くないから。
「では…また!」
また明日。
明日はきっと、昨日とは違う。