酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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すべりこみ!【コスプレ】キッカ・キタモト

 

 「コレで………ヨシ!」

 

 

 頭の上でゴソゴソと動いていた指が止まる。

 

 「出来たよ、お父さん!」

 

 お父さん。

 スミレがゴローを呼ぶ声。ほんの少し前には意識して耳から排除していた響き。

 

 「す〜〜〜〜………」

 

 小さな肺に娘の香りが乗った空気を取り込み、吐き出すと同時に閉じていた目を見開いた。

 

 「………おわぉ〜〜〜〜」

 

 化粧台に備え付けられた鏡の中に金髪の幼女が映る。

 頭には赤くて大きなリボン、服は薄い青色の袖なしシャツで、チラ見えするオヘソの下には上と同じ色の短パンを履いていた。

 腰のベルトと脚に履いた真っ赤なブーツがアクセントになる、ゴローが人生で1番最初にしたコスプレ。

 

 ーーーキッカ・キタモトーーー

 

 これを見て、当時はどう思っただろう。

 

 「ウケそう」とか

 「気持ち悪い」とか

 「バカバカしい」とか

 

 そんな気持ちが心の大半を占めていた気がする。

 

 娘の押しに負けて挑んだコスプレであり、ガノタを相手にするのであれば、まぁ悪くても怒られたりする事は無い…たぶん。流石に許してくれるだろう…とか。

 そんな後ろ向きな気持ちだったはず。

 

 「どうかな!? 前より可愛く出来たと思うんだけど!」

 

 少なくとも。

 

 「ん………まぁ、可愛いんじゃね?」

 

 「ーーーッ!! ホント!? やった!!」

 

 自分で自分を。この外見(幼女)を『可愛い』と。

 そう口にする事は絶対に無かった。

 もちろん、内心は複雑なままだ。

 一生かけても鏡に映る自分(幼女)への拒絶反応が消えることは無いだろうし、スミレがこだわり抜いたポイントも正直よくわかってはいない。

 娘やリスナーの幸せのために、自分が出来る役割を全うしている。そんな義務感すらもある。

 

 ………けれど。

 

 「ウイッグも服の生地も見直してみたんだ! キッカちゃんの記号を押し出しつつもお父さんの可愛さを掛け合わせる為にインフルと闘いながら頭の中でずっと、ず〜〜〜〜〜っと考えてたんだ! うへへ〜♡

すっごく可愛いよお父さん!!」

 

 「うん………ふ〜〜〜ん??」

 

 上目遣い、見下してみて。

 右から、左からと角度をつけて確認。

 

 「ほほ〜ん?」

 

 笑顔(^_^)

 ウィンク(^_-)

 〜からの変顔(´ϖ`)

 

 「プッ…! もぉやめてよお父さん!」

 

 妻は根が真面目なのに妙にひょうきんな所があって、よく変顔を作って家族を笑わせていた。

 

 「うん…良く出来てるよ。流石に気合入ってるな〜って思う。素人目にもわかるくらいクオリティ高いし、病み上がりなのによく頑張ったな」

 

 流石にまだ本調子では無いが、日常生活には支障がない程度に回復したスミレ。

 

 「もう動ける!」

 「まだ寝てろ!」

 「だから暇なの!」

 「寝ればいいやろ!」

 「猫じゃないんだからそんな寝れないのよ!?」

 「横になるだけでいーだるぉぉぉ??」

 

 そんな押し問答もあったが、結局ゴローは娘に甘い。最後には折れて遅延した100回記念コスプレの着せ替え人形となるより他に無く。

 

 「それにしてもなぁ。スミレは昔からリカちゃん好きやったし、将来子供が出来たらスゲー張り切ってオメカシとかさせそうだな〜って、ウサさんと話した事あるけど。まさかお父ちゃんがそのポジションになるとは」

 

 

 

 ゴローの脳裏に妻と話した懐かしい記憶が蘇る。

 古い…懐かしくて、胸の詰まる記憶が。

 

 『遅くなってごめん……お? スミレ寝たの?』

 

 『うん、今さっき』

 

 『そっか…お疲れ。お風呂行く?』

 

 『うん、もう少ししたら入るね』

 

 『リカちゃん、ホントに好きなんやな』

 

 『うん…抱っこしたまま寝ちゃうんだもんね』

 

 お人形遊びに疲れて眠る我が子。

 

 生まれて直ぐに先天性疾患と診断され、小さな小さな箱庭の中で懸命に生きる3歳の頃のスミレ。

 病室の白い壁とベッドだけが、この子の世界で。

 

 『この子の将来はスタイリストさんかメイクアーティストさんだね。かわいい孫が生まれたら毎日写真を送ってもらうんだ』

 

 そんな未来があるのだろうか。

 明日にはこの子の命は、ロウソクの炎のように消えてしまうのではないだろうか。

 

 そんな弱気な自分の心を。

 守り、許し、支えくれたあの人と、いつか夢に見た未来がまさか、まさか…こんな奇妙奇天烈に改変されるとは…流石に、さ〜す〜が〜に〜予想もつかないだろう…と。

 

 

 

 つい、こぼれた苦い笑み。

 それをどう受け取ったのか。

 

 「その。やっぱり、嫌だった……??」

 

 鏡越しに、驚くほど成長した我が子と目が合う。

 ここまでやっておいて今更の受け身。

 そんな不安気なスミレを見て。不安そうに揺れる瞳の前で、情けない姿は見せられないから。

 

 「いや、めっちゃ楽しみだぞ!」

 

 ゴローはニヤリ、と口元を歪めてみせた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ーーーこの為に、生きてきたんだ……!!

 

【挿絵表示】

 

 「へ〜い! と言うわけで…遅れに遅れちまったのですが! 酔うオペ開始100回記念コスプレ! 今回はおっちゃんのコスプレヴァージンをブチ抜いたキッカちゃんの再走だぜぃ!!」

 

 

 ーーーわー!!!

 ーーー888888888888888!

 ーーー原点〜至高なるシコシコ〜

 ーーーワキがエッチぃのな

 ーーーオヘソ…オヘソ………♡♡♡

 ーーーいいわ〜

 ーーーいいわ〜やっぱ生アシだよ生アシ

 ーーーで…でりぅ  ドビュビュビュビュビュ♡♡♡

 ーーー薄い本きぼんぬ

 ーーーリアルを超えたリアルキッカ

 ーーーぷにぷにしたいぉ!

 ーーー抱き潰したい2026

 ーーーボクのお薬で幸せにしてあげたいッピ!

 ーーー可愛いしか勝たん

 

 

 「い〜やろ? まだ病み上がりだってのにケラちゃんがエキサイトしちゃってな〜?」

 

 ーーーケラちゃん有り難う!

 ーーー無茶しやがって…

 ーーーユリユリしててスコ♡

 

 「いやユリはしてないけどなw」

 

 ーーーもっとポーズを…ポーズを……!!

 ーーーハサウェイ系のコスはせんの?

 ーーー健康のために今すぐヨガろう。花輪のポーズとかオススメですよドゥフフフフフフ…♡

 ーーー次からは水星だよな?

 

 「あ〜ハサウェイは昔小説を読んだことあってな? それがちょっとトラウマまでは行かんのじゃけど、一生胃もたれしてて…てか水星ちゃんよ。今やっと半分来たとこなんじゃけどグエルパイセンがなぁ…あの人は硬派な『ガンダム』しててスゲー推したくなるんだよな〜! 流石はーーーな! でよーーーなんで!!」

 

 娘が作り上げた偶像。

 その威力に酔いしれ、仕舞には本物の酒を食らって酔いどれるゴロー。

 酔うオペは、まだまだ続きそうなのであった。

 

水星の魔女のコスプレ、誰を選ぶ?

  • 赤いたぬき・スレッタ!
  • 白いきつね・ミオリネ!
  • ツンデレ侍・グエル!
  • 日陰の美人・ニカ!
  • ボンボン頭・チュアチュリー
  • ハッピーバースディ・エラン
  • エロの化身・シャディク
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