10日前から終わらない不調。
快復目前と思われた矢先38度の発熱をしても、
真っ黄色い鼻水が真っ赤な鼻血になっても、
頭が痛くて痛くて痛くて痛くて痛くても、
俺は(バトオペを)止めない。
4速ロータリーシステム。
それは主にホンダ・カブシリーズなどの自動遠心クラッチを採用したバイクに使われる変速機構だ。
クラッチレバーが存在せず、クラッチ・半クラなどの操作がなく、変速ペダルを踏み込むだけでスムーズに発進・変速が可能となるドライバーに優しい神の機構。
ギアはN→1→2→3→4→N→のように循環させる事が可能であり、リターン式(一般的な
もちろん、万人に対して完璧な性能…と言う訳ではない。
スクーターを代表とするVベルト式無段変速機(CVT)を採用したバイクに乗り慣れた人からすれば面倒と感じる事もあるだろうし、上に挙げたリターン式の…一般的な中型〜大型バイクに乗り慣れた人からすればパワー不足に感じる事もあるだろう。
(長所と短所は表裏一体)
それに、危険な面も無くはないのだ。
一昔前の話になるが、昔のカブはギア周りの安全対策が万全では無かった。
例えばの話。
時速60キロ、ギアは最大の4速で走行中に、昔のカブはギアをNに入れる事が
当然、Nの前は4であり、Nの次は1になる。
時速60キロである。
車と違い、生身の人間を載せた2輪の爆走マシーンのエンジンが、時速60キロでいきなり1速のギアに【ガチャコン!】と噛み合えばどうなるか…。
そう、大爆発である。
見た目の上で爆炎が上がることは無いが、比喩としてはこれ以上の言葉はない。
ハンドルは制御不能、壁に衝突したにも等しい凄まじい減速に機械は崩壊、まともに前へ進む事もままならず、下手をしなくても超絶危険な大回転の大道芸人となってしまう。
もちろん、現代のカブは安全対策がなされている。
走行中であればどんな低速時であろうとも4からNにはギアが入らないようになっている。
ーーーなっては、いるのだ。
◇
ソレを試そうと思った切っ掛けはゲーム実況投稿者さんのあげた1本の動画。
その人(仮にTさんとする)はバイオハザード的なゲームのバグをみつける事が大好きな投稿者さんだ。
操作キャラクターを後方視点から追うビハインドカメラ方式のゲームが好きなのか、そうした方式のゲームの方がバグが出やすいのかは不明だが、似たようなジャンルのゲームで様々なバグを引き起こして遊ぶのがTさんの配信スタイル。
ゲームの作り込みが甘い部分を突付いたり、作者が想定していない挙動を混ぜ込む事により【裏世界】と呼ばれる通常プレイでは目にする事の無い場所へ行って遊んでいた。
「おもしろそ〜」
バトオペにもバグはある。
いちばん有名で、いちばん無害なのはゴローが勝手に心の中で『打ち上げ花火』と呼んでいるバグだと思う。
通信ラグ(同期ズレ)や特定の地形の干渉。
撃墜のモーション処理における恒常的な不具合など、様々な要因が重なって起こるバグであり、名前の通り機体が撃墜された際にしゃがみモーションのポーズのまま、一気に真上に高く高く打ち上げられて爆発四散するオモシロバグだ。
この1年間でゴローが確認したのはたったの2回。
自機の陸戦Zがフラップブースター発動中に撃墜されて起こったバグと、味方のグスタフにタックルで粘着されて撃沈したかと思ったらマッハの速度で昇天を決めた敵のダギ・イルスのバグ。
探せばもっとあるのだろうし、回線を弄ればテレポートガンダムも作れるのだが、ゴローはバトオペにバグを求めようとは思っていない。
何故ならバトオペはみんなのゲームだから。
自分の楽しみにその他大勢を捲き込むような気概などゴローには無い。
…その代わり。
【ギキャァァァァァァァアン!!】
敢えて3速の状態でアクセルを全開。
時速60キロへ向けて車体を一息に加速させ、ギアを4へと回しながら右方向へ指示機を切る。曲がるのではなく本線への合流を意識した軌道のため減速は起きない。
バイクの進行方向。
実はこの道路にはちょっとした凹凸がある。
車線変更しなければ気付く事がない位置であり、例え車線変更したとしても
ーーーで、跳ねた瞬間チェンジペダルに爪先が当たってさ、気付いたらギアが回ってたんだ!
弟は妙にカブが好きな男だった。
金もあるし免許だって限定解除してある癖に、カブだけは手放さずに乗り倒していた。
【ガチャ】
車体がバウンドした瞬間、足先から妙な感覚が伝わる。
ーーー普通ならNか数字が出る液晶画面に『ー』の表示が点ってさ。
咄嗟に確認した画面には、弟の残した言葉通り『ー』の表示が点っており。
ーーー無意識にペダルを押し込んだら、
【ガチャコン】
チェンジペダルを押し込むと、液晶画面には『N』の文字がハッキリと示し出された。
ーーービビッて後ろを押したら『4』に戻ってくれたから助かったけど、アレは普通にヤバかったかな〜w
「ハッ…本当に来やがった」
再現出来るとは思っていなかった。
今日が無理なら明日また遊ぼう。
その程度の気楽さで試した不具合探し。
現実基準に作られたゲームで、現実に実在するバグを使って『作者が想定していない挙動』を引き起こせばどうなるのか。
ポポちゃんワールドサーキットはゴロー向けのワンオフ機であり、理解に苦しむ技術と狂気すら感じさせる凄まじいクオリティを備え持つ傑作機である。
しかし、バグが無いわけではない。
それはゴローの祖父が証明しているし、何よりゲームの端々から肌を通して伝わってくる違和感があった。
知識だけが先行しているような、
実際のバイクを知らずに作ったような、
言葉にするのが難しい違和感。
それがゴローを突き動かしていた。
「行こうぜ…裏世界!!」
【ガチャン!!】
ゴローはチェンジペダルを、強く強く。
前方へと押し込んだのであった。
再度発熱ナウ。
仕事山積みやねんな….°ʚ(*´ཀ`*)ɞ°.
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