ここ数日の作者の恋人は、ベッドと解熱・鎮痛剤と抗生剤と黄ばんだ(意味深)ティッシュ♡とトイレと経口補水液と病欠有給と休日出勤です(^u^)
バレンタイン・ハーレムですね。
ウフフ…♡
(2/14記す)
【ガチャン】
チェンジペダルを踏み込んだ瞬間、脳から全身の筋肉へ即座に硬直するように指示が奔る。
死ぬ可能性すらある大クラッシュ。
ポポちゃんワールドサーキットが現実に起こり得る挙動の何処までを再現するかは不明だが、無傷では通らないだろうと言う予測と確信があったから。
しかし、それはーーー。
「お………!?」
予想外にも車体は安定していた。
身体の各所から筐体壁面へと繋がるワイヤーからの
「なんだよ〜…これじゃバグんなかーーー!?」
バグを引き起こせなかった。
製作者の想定を超えられなかった。
そう落胆した矢先。
「おりょりょりょりょぉぉぉぉぉお!?」
ガックン…と、バイクの前輪が傾斜した。
まるで『ここに下り坂があるぞ』とでも言わんばかりに、何もない平面の道路の
「ちょ…こ、こわ! 怖いんだがッ!?」
夜の海に潜るような恐怖。
はたまたジェットコースター最初の上昇タイム。
とぷん…と、バイクのハンドルまでが地面の下に飲み込まれ「待って! タンマ! ちょーーー!!」上で騒ぐ幼女もまた、地の底へと飲み込まれたのであった。
◆
「はへ〜〜〜……………」
阿呆のように口を半開きにして、ゴローは天井を見上げていた。そこは黒い境目を主軸としながらも、その境界の上に先程までゴローがバイクで走っていた道路やビルの街並み、その先にある空の青が垣間見えた。
「裏世界だよな…これ」
バイクの操縦は可能。
当初はアクセルやギアのチェンジペダルはスカスカになっていて何処とも繋がっている気配が無かったが、一度ブレーキをかけて止まり、エンジンを切って再起動させた事でそれからはいつも通りゴローの意志に応えてくれるようになった………なったには、なったのだが。
「これ…何処まで行くんかな??」
ゴローは永遠に世界を落ちていた。
先程まで見上げていた地上の世界。
木漏れ日のようだった世界の色はもはや遠く、まるで夜空に輝く星のように小さな光になってしまった。
ゴローの走っている見えない道には登りという概念が無いらしく、進めば進むほどに地上の光が遠ざかる。
「…おん??」
何気なく下げた視界が光を捉える。
月の虹よりハッキリと、流れ星より直線で。
【ピシュン!】【ピシュン!】
【ピシュン!!】
黄色い光は細く、暗闇の彼方此方から光り。
【ズキューン!】
桃色の光は太く、個を主張するように特定の位置から放たれていた。
「ガ………ッ!」
それはガンダム、そしてーーー
「エルメス!?」
白い悪魔の異名をもつ伝説のMSと、とある世界線でシャロンの薔薇と呼ばれた古のMAが戦闘を繰り広げていた。
「ちょ…近ッ!!」
直下にいた緑色の玉葱ボディーがスラスターを全開にしてゴローが存在するY軸方面へ急上昇。
ギュオン!! とソレが抜た後。
手で触れられそうな程に近く。
筐体の壁面にドアップで映し出されたエルメスのビットにピンクの光線が突き刺さる。
スローモーション映像のようにビットが膨れ、内部から光を吐き出しながら柔らかな水風船のように【ズドン!】と爆ぜた。
「おぎゃ!?」
特大打ち上げ花火の振動波と等々の爆音。
腹をビリビリと揺らす爆発音にバイクが揺らされ、転倒を耐える為に脚を地に付けて蹴り上げる。
「ひぬ!! ひんぬぅ!!」
ここはヤバイ。
音もエグいが爆発再現の為に放たれる排ガスのような煙と真夏の熱風がゴローの精神を追い詰める。
バイクの変速方式を『4R』から『MT』に変更、中速ギアの半クラッチで限界まで車体を加速させ、脱兎の如く危険地帯から遠ざかるーーーその判断に至る直前。
《
「くッ……!?」
直感を信じて切ったハンドル。
その、本当に直ぐ真横を桃色の破壊光線が過り、背後に2回目の爆発を感じた。
コレはゲーム。
冷静なおじさんゴローは頭の中心にどっしりとお座りしてくれているのだが、ゲームが与えてくる肉体への負荷と、なによりも先程の
「コレはゲームコレはゲームコレはゲームコレはゲームコレはゲーム………!!」
宇宙空間にバイクの時点でゲームだし、あんな距離での爆発がドライヤーの熱風レベルな時点でゲームだろう。
頭ではわかっているのだ。
そう、頭では………!!
「怖いに決まってんだるぉぉぉぉお!!」
緩い涙腺から体液が漏れる。
下のお口からお漏らしをしていないだけでも大金星なのである。
半泣き()幼女は全力で裏世界を駆け下りたのであった。
◇
「えらい事に、なった、な………」
ひぃ…はぁ……ふぅ、ふぅ………。
荒い吐息を吐く幼女。
黒いライダースーツのジッパーをヘソ下の辺りまで引き下げて少しでも体温の低下を図りつつ、自分の身体と変わらない大きさのバイクを押して暗闇の中をただ進む。
ここは先程と地続きの裏世界。
数時間前まで下り坂しか無かった暗闇坂だが、ちょうどガソリンが尽きてから嫌がらせのように上り坂が混ざるようになっていた。
一応
「やっぱ………終わらん、の、よな…??」
ポポちゃんワールドサーキットのプレイ時間は基本的に1日最大2時間まで。
もしそれを越えた場合には強制終了からのペナルティが発生するが、今回のゲーム時間は開始から優に3時間を越えている。
もちろん、バイクを放置して筐体後部のドアから脱出する手段も実行した。
しかし、扉は扉型のオブジェクトのように小揺るぎもせず。
「もう…かなり、キッツいん………だが…」
絶妙にヌルい温風を吐き出し続ける壁に殺意が湧く。喉は乾くし汗で肌に張り付くスーツの具合が心地悪い。
足の筋肉はパンパンで腕に至ってはもう2回も
動かずに救助を待つのが正しいのかもしれない。
ーーーしかし。
「お………お!?」
永遠に続くかと思えた上り坂が終わった。
「頼む、今度こそ!!」
エンジンを切ったバイクに跨り、重力を推進力に変えて暗闇の坂を駆け下りる。
あと少し。
ゴローから見てほんの少し下に1か所だけ。
木々の緑に縁取られた門が見えていたのだ。
そこへ行けば何かが変わる。
そんな淡い期待を胸に、ゴローは坂を駆け下りるのであった。
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