「うぅ〜〜〜」
普段よりもかなりLEDライトの明るさを下げていた。
明るすぎるとキツい、暗すぎるのもツラい。
「うだぁ〜〜〜〜……」
バイオでハザードな生ける屍のような呻き声を垂れ流しながら、泥酔したゴローがパソコンの前の椅子に座り。
カチカチ…と、何度か間違えながらマウスを動かし目的のデータを画面に呼び出した。
「キッツい…」
ようやく意味を成す音を口からこぼし、虚ろな瞳でモニターを見据える。
両手は胸の前の。
キーボードが音を立て、ゴローの過去を奏でた。
☆☆☆☆☆☆
【TSおじさん日記】
26.3.19
今日は書ける。 意識があるので。 ただ頭がツラい。しょーじき飲みすぎた。 まぁしかし、キツくても眠くても。 今日の事はちゃんと記憶を残しておく。
今日は予定通り家族で集まって飯を食った。 みんなコスプレ姿だった事もあり明らかにテンションが高かった。 スミレもサヲリもベタベタくっついて話しかけてくるし、マロも、爺さんでさえやたらと俺の気を引こうとしていた。
「俺は聖徳太子じゃねぇんだよ!!」と言ってやりたかったが、流石に場の雰囲気を重視してグッと堪えた。 思い返してみれば俺がこうなる前はウサさんがこのポジションに居た。俺とサヲリとスミレに挟まれて好き勝手に話しかけられて困りながら笑っていたのを、今とてもよく思い出す。 なんか本当にスマンかった。
飯の席では爺が真っ先に酒を飲もうとしてスミレとサヲリに取り押さえられていた。
聞けば酒どころか、まだ固形物も飲食不可との事。
正直まだ夢だったのでは?? と思わなくもないのだが、俺がポポちゃんワールドサーキットの中から救出した時、あの妖怪爺はテケテケ*1もしくはエヴァのリリス状態で、下半身は別の台のクソでかい水槽にホルマリン漬けにされていた。
正直あの時はチビった。
バイクのバリアで壁をブチ破った衝撃で漏れたのが少パンチだとしたら、爺さん宙吊りを発見したショックでは中パンチの尿漏れとなるだろう。 俺の強靭な鋼の意思が無ければダムが決壊するレベルの大ダメージになっていたと思う。 だからこそ、それを堪えたあの時の自分は本当に凄かったと今でも思っているし、よくよく考えればこの細腕で爺さんの上半身と下半身を回収してバイクに載っけたのも凄い事だ。
通常時ならまだしも、オシッコを我慢しながらの極限状態であれだけの重労働をやって退けたのだ、火事場の馬鹿力ってのは案外本当にあるのかも知れない。
………そのあと爺に唱えさせたルーラ(仮)でポポちゃんワールドサーキットの筐体を現実世界と繋げて。
(やっとおトイレに行けるゾイ☆)
と思って気が緩んでオマタを締めるための筋肉も緩んだゆるゆる幼女パパを引き止めて離さない悪魔のような娘に捕まるとは、夢にも思っていなかったせいで1敗してしまったのだが。
まぁ、そんな訳であの爺の生命力の高さはヤバいなと、改めて認識した次第。 救助して10日…2週間はまだ経ってないよな。 それで胴体繋がって歩いてるとかバケモンじゃん。同じバケモノの俺でさえそう思うんだからヤツはバケモンキングなのかも知れない。 (なんかデジモンに居そうな名前)
飯食った(爺は嫌そうな顔で茶色の流動食を食ってた。それをニヤニヤして眺めながら高級なお寿司を食ったら何故か殴られた)その後は爺の持ってきたメンコで遊んだ。 そのメンコは鬼滅の刃とか言う俺が寝込んでる間に超絶大ヒットしたアニメのキャラクターが印刷された真新しいメンコで、爺さんもウチの娘二人も履修済みで大ファンらしい。タンジローがどうとか、テンゲンさんがこうとか、ミツリのオッパイがそうだとか。 なんかスゲー3人で盛り上がって俺とマロだけ蚊帳の外だった。
キメツは映画とかも凄いらしいし、実際ムスメーズにも度々勧められるんだが、なんかこぅ…乗り遅れた感と言うか、周回遅れで今更他の人達を追いかけるのが嫌という訳でもないが、なんかこう…もやもやして。 言語化出来ないが見る気がしない。
そうそう、遊びながら聞いたのだが。 爺が捕まったのはC国らしい。後郎の行方を追っかけて南の島から不法入国したが、昔の(大昔の)ツテとご自慢のインチキ霊媒能力を使ってイロイロと嗅ぎまわってる内になんやかんやあって捕まったとかなんとか。
あんまり詳しくは聞かせてくれなかったのだが、後郎はやはり生きていたらしい。 施設からは逃がす事が出来た…とのこと。 まぁ爺の言うことだからアテにはならんが、生きてると思えれば気分も良い。 それにしても、ポポちゃんワールドサーキットは本当に不思議なゲームだ。 なぜC国に繋がったんだろうか。
その後はベイブレードで遊んだ。 爺さんがベーゴマ好きなのは知っていた。 古風なベーゴマも悪くは無いが、折角なら現代のベーゴマで遊んだ方が記憶に残るのでは? と思い購入していたのだが、俺のシルバーウルフはなんべんトライしても爺さんの持ってきた大昔のベーゴマに勝つことはなかった(解せぬ)。
それはもう、めっちゃくちゃに煽られた。 俺の頭を肘掛けにしてクッソ偉そうな態度でベーゴマのコツについてレクチャーされた。 ミオリネ・レンブランのコスプレをしている事で煽り性能が向上していたらしく、俺のイライラゲージはあっと言う間に限界点を突破。
怒りを鎮めつつ、ヤツのイライラポイントを攻撃するためにグビグビと音を立てて酒を飲んでみせたのだが、それが気に食わなかったのか何なのか知らんがミオリネ扮する爺がド汚い変顔で俺を笑わせにきた。
「ゲフォ!!」つって口の中の酒を吹いたら、その噴射の先には運悪くサヲリが居た。
拭けばなんとかなる…そんなレベルでは無い。 スーツの下のシャツまで濡れてビショビショになった。 しかしそこはサヲリ。 女神かといわざるを得ない心の広さで俺を許し、爺にはしっかりと目と目を合わせてお話をしてくれた。
そこまではまぁ……普通に普通の宴会だった。
けど。 脱衣所から帰ってきたサヲリを見た瞬間、俺の酔いは消し飛んだね。
サヲリは服を着替えていた。 彼女のお気に入りの服。 それは深緑色のモコモコ怪獣パジャマだった。
見た瞬間、いつかポポちゃんが全裸で土下座して俺の前に姿を現したあの日の記憶が蘇った。 寒さに震えていた彼女を、なだめて、すかして。 お風呂に押し込んで。 そして、俺は確か告げたと思う。
『タオルは扉出てすぐ横の箱の上の段』 『着替えはウチの娘のが黄色い棚の中に入ってるから、それを使って欲しい』…と。
その後の出てきたらポポちゃんはブカッブカでゆるゆるの、身の丈に合っていないサイズ違いのモコモコ怪獣パジャマを装備していた。
【ーーーよくよく考えてみれば娘の服なんてサイズが違い過ぎて入る訳がない。となると、恐らくは亜空間から召喚したのだろうが…いや、それならそれでサイズ調整した物を呼べば良いのに、と頭の片隅で思いながらもーーー】
そんな風に考えた記憶もある。
パッと見で身長2mはあるポポちゃんが着て、ブカブカになるサイズのモコモコ怪獣パジャマ。そんなものどこにも売ってないだろう。 サイズを間違えて召喚した、などと考えるよりは、むしろ
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その日の日記はそこで途切れていた。
少しずつ。
少しずつ。
ゴローは終わりへと近づいていた。
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