酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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AC6 偏差射撃基本講座〜FCSについて〜

 

 気が付けば教室に居た。

 

 

 木材とニスの香り。

 床と椅子とが擦れる音。

 懐かしくて鬱陶しい箱部屋の空気。

 

 ゴローは黒い男性用の学生服を身に纏い、自分の机に着席していた。

 

 (あ〜………ああ、()ね)

 

 4月だからか。

 新入生の入学式を取り上げたニュースに影響されたのだろう…と結論付け、周囲をざっと見回した。

 

 ゴローを取り囲むような配置で大人しく着席しているのは、顔も身体も…全体的に黒っぽいモヤでぼやけた学生服姿の影人間たち。

 ゴロー以外に学ランを着た男子生徒の姿はなく、全員が少し古風なセーラー服を着用していた。

 

 (自分の夢だから服装が古臭いんやな)

 

 普通ならパニックになりそうな場面だが、夢だからか…夢だと理解しているからか、ゴローの感情に乱れは無い。

 身体は現実と同じ幼女ボディ。そのせいで身に付けているブカブカの学ランの着心地が悪い…この方が余程気に触るくらいには心理的な動揺が無かった。

 

 「うへ〜…」

 

 袖もダボダボだし、気持ち悪いなー。

 などと考えていた思考の空白に鋭い音が突き刺さった。紙で机を叩く音。

 

 「それでは1時限目の授業を始めます」

 

 声の主は教員の女性。

 いつから居たのかわからない。

 

 顔もよくわからない。モヤは無いのに何故かよく認識出来ない。にも関わらず、ゴローは直感的に彼女をとても綺麗で可愛らしい人だと感じた。

 

 背が低くておっぱいが大きい。

 カジュアルなスーツ姿の彼女が、教壇の上に資料を投げ落とした音。まるで魔法のようなその音が醒めていたゴローの意識を夢の只中に突き落とした。

 

 「日直さん、号令」

 

 誰一人反応しない。

 現実の意識を削ぎ落とされ、夢の住人と化したゴローの心臓がイヤに高鳴る。

 

 「日直〜? ゴローさん! 日直!!」

 

 「あ、ハヒ!!」

 

 この先生は怖い。

 可愛らしいけど怖いのだ。

 知らない先生なのに『怖い』と言う感情だけが暴走する。緊張のまま椅子を蹴飛ばして立ち上がるが、混乱してその後が続かない。

 

 「えっ…えと……!?」

 

 「き り つ ♡」

 

 先生の桜色の、小さな唇がゴローを促す。

 

 「あ、きり! 起立!!」

 

 ガタガタガタ!

 椅子が床を擦る音。

 影人間の群れがゴローの号令に従い立ち上がる。

 

 「礼!」

 

 

 ーーーヨロシクゥ! おネーガイシヤす〜

 ーーーヨロシクゥ! おネぃガイシヤァす〜

 ーーーヨロスクゥ! おネガイシヤァンす〜

 ーーーヨロピクゥ! おネーガイシヤァす〜

 ーーーヨロシクゥ! おネーガーシヤァす〜

 

 

 何処かで聞いたような声。

 そんな一瞬の戸惑いは、しかし。

 

 「はい! 本日はAC6の基礎『軸合わせ』と『軸外し』についてお勉強して行きますね!」

 

 パンパンッ!

 

 よく響く柏手で先生が注目を集める。

 変だな…と思う意識も先生へと溶けて。

 

 「教科書の105ページ開いてー」

 

 急がなくては、勉強に間に合わない。

 必死で105ページを探し当てる。

 

 「はい、前回はFCSの説明をしましたね」

 

 夢の展開らしい展開だが、今のゴローにとってこの展開は現実として進行している。

 

 (えっ!? 前回? 前回FCSの勉強したっけ!?)

 

 記憶がないと焦るゴロー。

 

 「ゴローさんは頭の具合が悪くてお休みだったので、皆さんの復習も兼ねてお話します」

 

 黒くて艶のあるストレートな先生の前髪。

 その奥からの視線を感じで、ゴローは咄嗟に「ひゃい! おねが、シャス!!」と応えていた。

 

 「元気でよろしい! ではFCSについて」

 

 言葉を区切り、黒板に向かう先生。

 スラックスの下に隠されたお尻の形。

 必死に背伸びして、チョークを黒板に擦り付ける度にプリプリと揺れる少しだけ大きな形の良いお尻。

 

 「うわ〜〜〜〜…

 

 何だか凄く素敵な物を見ている気がする。

 そんなゴローの動揺を知ってか知らずか。

 先生が図解を書き上げた。

 

 「え、スゴ!?」

 

 黒板に描かれたのはチョークで見事に再現されたガンダムの後ろ姿と、遠方でスラスターを吹かして右に移動している様子のザクだった。

 ピンクのチョークで描かれているし、ツノも付いているので恐らくこのザクはシャアザクだろう。

 

 「はい、ご覧の通り今ガンダムくんがザクに向かってビームライフルを放とうとしていますねー」

 

 カツカツーシーシーとチョークが擦れ、赤いチョークで描いた円がシャアザクを狙う。

 

 「FCSはオセルス。このように二次ロック済で敵の動きに追従しています。距離が100mでザクがこのまま、私達から見て右に旋回をし続けた場合ガンダムくんのビームライフルは命中するでしょうか? はいゴローさん」

 

 「え!?」

 

 「ゴローさん!?」

 

 「え、あ、はい! め…命中します!!」

 

 「正解です。では…それは何故でしょう?」

 

 急に振られたゴローだが、流石にこの程度の知識はある。

 

 「えっと…え、AC6のFCSには敵の速度や軌道から着弾地点を予測して偏差射撃する機能があるからです」

 

 ゴローの回答に「素晴らしい」と応えながら黒板に情報を加筆していく。

 

 『敵・軌道変更なし!』

 『等速運動』

 『予測による偏差射撃』

 『撃破!!』

 

 夢だから、だろう。

 それまで生きていたシャアザクにBRが刺さる絵が描かれたその瞬間、それまでの絵が一変し爆発四散したシャアザクに書き換えられた。

 軽くデフォルメされたモノアイから涙が溢れている演出に愛を感じる。

 

 「では、ここで問題」

 

 黒板消しで加筆された情報を無くし、その上にまた別の情報を加えていく。

 (BRの線が消え、ついでにシャアザクも再生した)

 カツカツカツ。

 チョークの音と共に文字が生まれる。

 

 先生の書く丸文字は、可愛らしいのに何処かで1本の筋が通っているように読みやすく、文字が連なって文章となる様を見ているだけでも心地が良い…そのようにゴローは感じていた。

 

 『距離350』

 『自機と敵機共にブースト速度380』

 『両機とも時計回りに旋回中』

 『ガンダムの武装はVvc-760PR(760プラズマ)

 『自機・敵機に軌道変更は無し』

 

 「さて、この条件下でガンダムくんがプラズマライフルを発射した場合、弾は着弾するでしょうか」

 

 要は時計の針のようにぐるぐるとお互いが旋回しながら、遠距戦で射撃をしたら弾は当たるの? 当たらないの? と言う問題である。

 

 「はいゴローさん!」

 

 「うぇあ!? あ、ひゃい!!」

 

 「2回連続だと思わなくて油断したな〜?」

 

 「いや! えっと…へへへ」

 

 あれ?

 先生が可愛いんたが??

 そんな気恥ずかしさを押し殺し、懸命に頭を回すゴロー。

 

 「えっ………と、命中、しません」

 

 「正解です。では…それは何故でしょう?」

 

 「え〜っと…………あれ? なんでだっけ?? あ、オ…オセルス? FCSがオセルスだから…かな?」

 

 オセルスとは近距離特化型のFCSだ。

 近距離戦では無類の強さ(2次ロック完了速度)を発揮する代わりに中〜遠距離戦には非常に弱い。

 

 「残念ながら不正解。オセルスの弱みが出るのは敵がジャンプやQBと言ったロックを外す為の行動を行った場合です。今回は等速で旋回しているだけなのでFCSの性能差は関与しません。他には?」

 

 ならば。

 

 「えと、プラズマライフルだから…かな??」

 

 この辺は経験則だ。

 プラズマライフルは当たらない、当てにくい。

 そうした記憶があって使わなくなった武器だから。

 

 「プラズマライフルだから当たらない。素晴らしい…確かに正解です。しかし皆さん、考えてみてください。先ほどゴローさんが教えてくれた通りAC6のFCSには敵の速度や軌道から着弾地点を予測して偏差射撃する機能があります。その事実に基づくのなら、どんな弾でも命中する筈ですよね?」

 

 「えーーー…あれ? 言われてみれば、確かに??」

 

 距離や速度に応じてシステムが勝手に偏差射撃してくれる。だからBRは当たる。それなのに、何故プラズマライフルは当たらないのか………??

 

 「プラズマ弾は外れます。では、自機から見て弾の着弾地点は何処になりますか?」

 

 質問しながらチョークで画く。

 

 「A.自機から見た敵の左側」

 「B.自機から見た敵の右側」

 

 両機とも、時計回りに旋回中。つまり、画面上の自機は左に向かって進み、敵機は右側に回り込んでいるーーーとなると。

 

 「A、でしょうか??」

 

 確信は無いが、これまでの経験で答えるゴロー。

 

 「正解です。では…それは何故でしょう?」

 

 先生の「それは何故でしょう」攻撃。今度こそ返答に詰まったゴローに彼女は優しく微笑んだ。

 

 「答は 『弾・速』 です♡」

 

 「だ、弾速…」

 

 「このゲームのFCSさんは優秀です。距離や速度により瞬時に的中する座標軸を探して偏差射撃を繰り出す天才なのですが、残念な事に弾速と言う概念を知りません」

 

 黒板のガンダムやシャアザクが消え、一瞬でビームライフルとプラズマライフルの絵に差し代わる。

 

 「簡単に、ビームライフルの弾速が90として、プラズマライフルの弾速を30としましょう」

 

 BR=90

 PR=30

 

 「FCSさんの中では弾速は常にMAXの100で偏差射撃の演算が成されています。どんな距離でも撃てば時差なしで当たる。そんな弾速で演算するようにプログラムを組まれているんですね」

 

 100=距離を無視する速度

   (超光速)

 

 「つまり、距離が離れれば離れるほど、弾速が遅くなれば遅くなるほど弾は現実の敵機の場所よりも、過去の地点へ向かう事になります。これがAC6の旋回戦で弾が当たらない理由の基礎です。ここにジャンプやQBによるロック外しの概念が加わるのですが、意外なことにこの基礎を知らないレイヴンは多いのです」

 

 なるほど…。

 ノートを取りながら理解する。

 これまで何となくでプレイして、敗北を重ねた理由の一旦が見えた気がする。

 

 「これを理解する事が、今日の本題となる『軸合わせと軸外し』に繋がるのですがーーー」

 

 キーンコーンカーンコ〜ン。

 懐かしいチャイムの音。

 

 「今回は少し時間配分を間違えました。先生のミスですね」

 

 テヘ、と舌を出す彼女。

 

 「また次回、今度こそ軸合わせについてお話します。それでは日直…ゴローさん!」

 

 「はい!」

 

 今度は間違えない。

 

 「起立…礼!」

 

 先生に心からお礼をしつつ、ゴローは夢から目覚めるのであった。

 

水星の魔女のコスプレ、誰を選ぶ?

  • 赤いたぬき・スレッタ!
  • 白いきつね・ミオリネ!
  • ツンデレ侍・グエル!
  • 日陰の美人・ニカ!
  • ボンボン頭・チュアチュリー
  • ハッピーバースディ・エラン
  • エロの化身・シャディク
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