「…3日だよ」
プシッ!
プルタブを低い心地良いSEとは真逆に、ゴローの瞳には配信開始当初のような薄暗い濁りがあった。
ーーーみっか?
ーーー今日は5日だが?
ーーーなにがあったってんだ!?
ーーーザワザワ…
コメント欄を、リスナーの存在を無視する暴挙でゴローがグビグビと金色の炭酸飲料にカブリつく。
「ぱはぁ〜!!」
随分と力が無い。
何回かに分けて飲み干した缶を片手に、背を仰け反らせて椅子の背もたれをしならせる。
ーーーマジでどうした?
ーーーゴロオジ緊急停止
ーーーコイン投げろ、コンティニューボタンは何処
ーーー喉もヨキよね…(゚A゚;)ゴクリ
ーーーあのまな板で俺達を誘惑してんだぜ?
チクショーが…。
小さく呟いたゴロー。
ようやく力を取り戻し、画面の前に舞い戻った。
「水ガン強いって言ったヤツ、挙手して」
ーーーノ
ーーーノノ
ーーーノ
ーーー(^o^)丿
ーーー(^ω^)/
ーーー(^Д^)ノ
ーーーノ
ーーー三兄弟おるw
ーーーノノ
ーーー(´ε` )ノ
「思ったより居てくクサ…いや違うくて」
気を鎮め、二本目のプルタブに生当て下格闘をブッパする。
「ゴッゴッゴッゴッ……!!」
ぷはぁーーーーー!!
オツマミはカシューナッツ。
間にアーモンドを挟むのが至高。
「水ガン…ゴミ…水曜日のごみの日説を提唱します!」
ーーーおっ? 戦争か?
ーーー無茶しやがって
ーーーよろしい、ならば戦争だ…!
ーーーゴロオジがザコなだけなんだよなぁ
ーーーゴロタス…ゴミなのは君のエイミちからだゾ
ーーー350水ガンは機体性能十分だと思うが?
ーーーモビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる!
反論一色に染まったコメント欄。
ガノタはこういう時に厳しい。
絶対に甘えを許さない。
だからこそ、ガノタ………!!
「うが〜! だから言いたかなかったんよぉ! 絶対…ずぇぇぇぇぇぇぇぇったい! 君らはボコボコにしてくるってわかってたもん!」
ーーー45歳「もん」ww
ーーーゴロたすガチ勢ー( ⑉¯ །། ¯⑉ )トホトイ…♡
「コレを見ろ!!」
水戸の黄門様よろしく画面へデカデカと見せつけたのはコントローラー。
移動とエイムを担当するアナログスティックにはエイムリングがハマっている。
「苦労したよ! 最初はハードタイプを付けたんだけど、指の筋力が貧弱過ぎて移動すら出来なかったりしてさ、君らと一緒にあーしようこーしようって悩んで選んで、それでようやくおっちゃんに最適なコントローラーが完成した、そぅだろ!?」
勢いを付けて飲み物を喰らう。
「それでやっと1割だッ! おっちゃんのエイミング1割上がった!! それが限界で、その程度じゃ焼け石に水で…!!」
ボリボリと、いつもに比べてかなり下品にナッツを噛み砕く。ゴローの目はじっとりと座っていた。
「3日間、来る日も来る日も350には水ガンで出撃したじゃろ!? その結果がこのクソみたいな戦績なんよ、わかるじゃろ? エイム弱者に優しくねぇんだよ水ガンはよぉ…!!」
ゴローはエイミングが下手だ。
壊滅的な命中率だ。
だからこそビームライフルを捨ててミサイル・ランチャー[魚雷装備]を選択した。
ミサイルランチャーに即よろけ効果は無いものの、付属武装にはバズーカとしての機能がある。
これを利用して戦ってはみたのだが、この付属武装には射程と継戦能力に難があり。
「近づかなきゃ当てれんし、近づいてもサーベル当てれんし…こんなん、ゴミやろ!?」
水中型ガンダムの近接武器。
その射程と攻撃範囲は恐ろしく狭い。
結論として、水中型ガンダムは何も考えずバズ格していればなんとかなるような機体ではない。
敵を止めたとして、その後の選択肢が複数存在して、都度都度を瞬間的に判断し、現場に適した武装を選択してチームに貢献しなくてはならない。
「おっちゃんが!! そんな難しいこと! 考えられるわけなかったんやッ!! そもそも、わからんやろ〜なぁ? あ? エイム強者にはわからんやろ!? 鍛えれば行けるだぁ? テメー幼稚園に20kgの米俵担げって言ってるようなもんやねんぞ!? 貴様は中学生位の筋肉があるかもしらん、けどおっちゃんの二の腕は幼稚園児なんや!! おっちゃんの脳みそ、幼稚園なんやッッッ!?!!??」
くやしい。
ゴローは心から悔しかった。
3日間粘ったのだ。
まだ行ける、俺はヤれるぞと自分を鼓舞し、無理に無理を重ねて修行したのだ…だが!!
「じぇんじぇん、勝てねぇ〜んだものよぉ………」
ーーーwwwww
ーーー泣いてりゅ〜〜〜w
ーーーやめろゴロオジ……w
ーーーごめんよゴロたん!
ーーーうわぁぁぁあ!! すまないゴロー!!
ーーー泣くな! 大丈夫だ!
ーーー俺がヨシヨシしてやるから!!
ーーーう け る ww
笑う者、動揺する者。
二分されたコメント欄が津波のように画面を揺らす。
「ふっ…うぐ、泣いてにぇーよ…泡がめにゅ入っただけだし………バカがよぉ」
情けなく呟きながら大きな瞳を手の甲で擦る。
涙は美しく、泣き顔は切ない。
しかし、その魂はあんまりにもあんまりだった。
ゲームで勝てなくて泣く45歳(もと男性)。
シラフならこんな無様な事にはなんかった。
(ホントだよ?)
【#TS幼女おじさん】
【#酒は飲んでも飲まれるな】
【#泥酔】
【#涙目】
【#バトオペ敗者】
【#酒カス】
【#合法ロリ】
【#エロくないゴロー】
愛に溢れた