「ーーー映画は行きたかったんだぜ? エヴァを創った人達がガンダム世界に参入するとか、字面だけで伝説的なアニメって伝わるやん? ただほれ、おっちゃんはTS幼女ですやろ? アムロ君ですやろ? 軟禁生活がスタンダードなもんでして…」
その日は雑談からスタートした。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』
今話題のテレビアニメ放送に間に合わせる事すら出来ないナメクジ野郎のご都合主義でして。
今、この世界では今日が放送初日なのです。
リスナーと一緒に第一話を視聴し終えたゴローがゴクゴクと美味そうに泡泡するムギチャを胃に流す。
「ぱふぁー!! ウマぃ!」
トン。
缶カバーのおかげで軽減された音を生じてテーブルの上に無事着陸。
「いちおー映画行く許可は出たんよ? ただその場合は映画館貸し切りにしますって言われてさ。流石に無いやろ? おっちゃんもそこそこ楽しみにしてたけど、おっちゃん以上に楽しみにしてる人が山ほど居るのはわかってんだし? 病院行く時の軽く倍はSP動員されそうだったし」
けどな〜。
行っとけば良かったかな〜。
そんな愚痴をこぼしながらレーズンをひとつまみ口に含み、酸味を味わい甘苦を楽しむ。
「んへぁ? あーそうそう。変装。ようわかったね? おっちゃん外出する時はバチバチに変装…むしろ変身? してるし、警備兵も配置されてて下手すりゃシュショーより手厚く警護されてっからね。たぶん外でおっちゃん見かけたとしても誰だかわかんないんよ〜。それもここで顔出し出来てる理由の一つやね」
ま、映画の話も今更やし。
ここは今後のアニメをボチボチ楽しむとして。
ゴローの小さな指がコントローラーのボタンをポチる。
「はい! そんなわけで今日は400コスト帯ベーシックマッチ・鉱山都市をプレイするぜぃ! 使用する機体はギャン・エーオース!!」
水曜日のガンダム事件を経てゴローのリスナーから推薦された機体の一つ。
汎用機であり、即よろけを持ち、武装数も少ない。
立ち回りも一般的な汎用機に近く、それでいてジムカスタムには無かった副兵装での射撃能力を持つ。
さらにギャンとしての生き様を見せ付ける、この機体の目玉武器である格闘武装ビーム・ベイオネットの火力がゴローのやる気を120%まで引き上げる夢の機体。
「所見さんへの前置きなんやけどな? コイツはリスナーさんからオススメされた機体でして。まぁモノの試しってやつで拡張施設に行ったら一撃でカスタムパーツ拡張[装甲]Lv5を引き当てましてな? それから乗ってるんじゃが…まーなんちゅうの? ヘイトかキツい感はあるよな」
カスタムパーツ拡張[装甲]のおかげで耐久性能はかなり良好に仕上がっている。
補助タイプのカスタムパーツを1つ装備するごとに各種防御性能に補正が掛かる拡張スキルであり、最上位のプレイヤーからもランク上げにはコレ1択と推奨される程の当たりスキル………なのだが。
「コイツって割とデカイじゃろ? イフリート系と違ってステルス機能なんて無いからまー目立つ。敵さんからしても放ってたら強襲機バリの近接火力で暴れる厄介者やし? 射撃戦するにしても副兵装のビームガンでチクチク出来ちゃうからね〜。あ…そうそうビームガンはマジで好きやよ!? ASL付いてておっちゃんに優しいし、切り替え短いし。ヒート率管理式ってのが最初は怖かったんやけどヒート率は甘いし冷却は早いしで本当に使いやすくてな〜」
ペラペラと喋り、飲み、食べる。
ご機嫌なゴローが颯爽と戦場へと出撃した。
「ま〜ず〜わ〜♪ 中継ぃーですわよね〜♪」
落下地点から倉庫を抜けて、その先にあるビルの根本まで駆け抜ける。
「ここなー、割と重要な中継らしいんやけどな〜? 敵のステルス機からしたら穴場の強襲スポットらしくてさー。こないだ中継ゲットのために歩兵状態になってた時、真後ろからダイレクトアタックされて開幕早々1乙したんよね…。まー今回は味方も来てくれてるし、たぶん行けるけど」
………チャリン♪
中継を無事確保し、ゴローのギャン・エーオースが戦線に加わる。
「とりあえず…橋の上行っとこ」
なんやらと煙は高いところが好きらしい。
特に理由もなく射撃機体にとって優位になりがちな橋上へと進軍して即座にエンカウント。
敵はリック・ドム[シュトゥッツァー]とジムⅢの2機。普通に考えればヤバい。
近づけば撃たれる、逃げても撃たれる最悪の状況なのだが、B・ベイオネット付属ビーム・ガンに狂気的な信頼を寄せているゴローは意気揚々と射撃戦を開始。
敵のエイムに問題があったのか、それとも素人感の抜けないトリッキーなゴローの機体操作が功を奏したのか運良く敵からの有効打は無く、ビームガンの蓄積ダメージを嫌ってかジムⅢが早々に橋上から離脱した。
残されたリック・ドム[シュトゥッツァー]へジリジリと近づき、バズーカの爆風が一瞬の隙を作り出す。
「チェーぃ!! 必殺の! N下格闘ッ!!」
範囲こそ狭いが、出が早く長距離まで届く刺突攻撃で相手を射止め、次に広範囲を巻き込む竜巻のような下格闘で連撃を浴びせる!!
「おひょ〜なんか上手く行ったぞゴラァ!!」
ーーーその後もゴローは快調に試合を進めた。
ビルの隙間でガオーして、暗い倉庫でガオーした。
ダダダダダーンと弾が来て、バババババーンと破裂しながらも最前線を支え続けた。
その結果としての総合準位は7位。
どれだけ敵の注意を惹き付けたかを示す陽動の数値は41.14%を記録。
「スゴ……え、凄ない?」
よろけ耐性スキルを持たない平均的な汎用機としてはなかなかの数値。
そうしたゴローの奮闘もあってか、チームとしても勝利を収めた。
毎日が充実していた。
苦しい事もあるけれど、リスナーのみんなとプレイするバトオペなら、それすらも楽しめる。
ゴローはずっとこんな日が続くような気がしていた。
ーーーそれが儚い幻想であるとも知らずに。