過去、もしくは未来。
パンデミックにより男性と言う『性』が消滅した世界で生まれ、生きた女が居た。
その他大勢の女性と同じく人工授精によって誕生した命。その名は毛利 洋子。
幼い頃は舌足らずで、
自分の名前を『ヨンコちゃん』と発音して、気付けばアダ名が4個ちゃんになっていた女の子。
男性が消えた世界で生まれた彼女ではあるが、彼女にとって異性が居ない世界こそが正常な世界の姿だったから。
特に不満は覚えなかった。
特に不安も感じなかった。
しかし、本来男性と女性で形作られていた種族の歪みは、第二次新型TSウイルスと定義された変種のウイルスをきっかけとして爆発的に開放された。
親は死んだ。
友達も死んだ。
世界中の人類の、その9割が死に絶えた。
それが、彼女の。
ポポちゃんと名付けられた彼女と、その後に出会った戦友達とが生き抜いた世界の末路である。
『
電子的に解明された魂の記号を時空の歪に差し込み、過去に存在した人間の魂に己の存在を上書きする
毛利 洋子はこの時代に生きる一人の女の魂を食い潰し、その上に己の存在を上書きした。
それは不可逆の侵食。
罪悪感はあった。
この世界で進行している新型TSウイルスの被害や、それのもたらす後世への影響を改変し編集しなおす。
これは過去であり未来でもある世界から洋子が引き継いだ義務であり呪い。
故に、この犠牲は必要悪である。
だから、どこかで思っていたのだ。
悪いことだけど、きっと許されると。
乗っ取った肉体で様々な工作を成した。
一緒にこの時代へ跳躍して来た部下と共に、未来の技術を再現して様々な状況に介入した。
───その結果。
驚いたことに呆気なく。
本当に、想定の100倍は簡単に世界は変わった。
彼女達は危機を回避し………そしていとも容易く、その責務を成し遂げた。
それでこのお話は御仕舞い。
現代は破滅の危機から逃れ。
未来の絶望は尽く回避された。
あとはこの世界の人間に任せれば良い。
めでたし…めでたし…。
───そして、暇を持て余した彼女は暇潰しにYouTubeを開いた。そこで出会ったのがゴローと言う名のTS幼女おじさんだったのだ。
ただ、可愛いと思った。
声を聞くと安心したし、美味しそうにお酒を飲んでいる姿には笑みがこぼれた。
苦しそうに懐かしい過去を語り、お酒に溺れる姿を見た日にはどうしようもなく胸が切なくて涙が止まらなかった。
ゲームの戦績には、画面のこちら側で一緒になって一喜一憂したし、頭の調子が悪いと言う理由で配信が延期になった日にはゴローのかかりつけ病院に潜入して容態を調べたりもした。
どうしても好きで、可愛くて、好きで好きで好きで。
辛抱出来なくなって、ただ好きだと伝える為だけに誘拐未遂事件まで引き起こした(部下には散々に説教された)。
ただ好きなだけで良かった。
それだけで毎日が光輝いていた。
──────けれど。
ゴローを知りたくなってしまった。
ゴローと言うキャラクターのルーツを、調べたくなってしまった。
いつぞや病院に潜入して調査した、その時点で嫌な予感があったのだ。
彼女の予感はこの世界の先にある科学により確定された未来視に近い能力で。
だからそこ、止まるべきだと思っていた。
けれど。
彼女の身体の、本当の名前は毛利。
彼の妻である毛利 咲。
未来科学によりリバースエイジングされた若い肉体、そして
どうしようも無かった事だし、どうしたって取り返す事は不可能だった。
死ぬべきだと確信して。
同時に生きなくてはならない事を理解した。
逃げる事が最善だった。
彼以外にも楽しみはある。
露見する前に。
発露する前に。
逃げろ。
逃げろ。
逃げろ………。
けれど、細胞が騒ぐのだ。
小さな、小さな。
この肉体を形作る細胞のひと粒ひと粒が、ゴローを求めて魂を狂わせる。
好きだった。
ゴローが好きだった。
ただ側に居たかったし、声を聞きたかったし、匂いを嗅いでいたかった。
そんな事が───
───許される、訳がない。
彼の最愛を。
命より大切な彼の伴侶を。
まるでゲームのセーブデータのように、機械的に上書きして、何もかもを破綻させてしまったのは己なのだから。
だから…仕事が忙しい方が楽だった。
ただ世界の安定の為に、未来の歯車として過ごす時間は洋子にとって救いだった。
それ故に罠にかかったのだ。
八木沼の…この世界最高の頭脳を持つ変態幼児の策略は洋子とその一派の意識を完全に絡め取っていた。
「4個、これ…マズイかも」
信じられないほど微かな痕跡から、今回の騒動の裏に八木沼の存在を察知したの部下からの警告。
「アタイら〜に、お任せだろん??」
「急げやザコ4個ぉ!」
「ゴロタスになんかあったら、アタイがアンタを殺してやんよぉ〜」
現場の状況はまだ
それでも、無茶を承知で洋子をゴローのもとに送り出そうとする仲間たち。
「みんな…有難う」
彼女たちの激励を背に洋子は日本へと転移した。
(間に合って…私はどうなっても良い。だから…お願い!!)
その願いは叶った。
ただ、一つの歪みを伴って。
◆
「───まーま♡」
絶対に
そう誓っていた素顔を、ゴローの別人格であるニコちゃんがペチペチと叩いた。
「んんぃ〜〜〜!!」
嬉しそうに鳴きながら、顔全面を洋子の首筋にこすりつけてキスをする。
触れ合った素肌から感じる、火傷しそうなポカポカのニコちゃんの体温。
幸せしか感じさせない笑顔。
小鳥のように心地良い嬌声。香り漂う吐息の色。
湯上がりの子供のもちもちした感触に、頭の芯がピリピリと痺れるのを感じながら。
「まま〜♡」
自分を。
罪人でしかない己を。
心底幸せそうな音色で母と呼ぶニコちゃんを、洋子はどうしようもなく持て余していた。
(どうしてこうなったの………??)
洋子が駆けつけた頃にはニコと八木沼の勝負は決していた。ミノ虫状態で転がっていたニコが洋子を目にして、それはもう花が咲くように微笑み、洋子に手を広げてみせた。
洋子とてニコちゃんなる人格は把握していた。ゴローとは別のベクトルの愛らしさを放つ彼女が初対面の自分を受け入れてくれた。
それは嬉しかった。
ご褒美以外の何物でも無かった。
何はともあれ気絶している
そして泣き叫びながら誘われ、断り切れなかったお風呂の中で懸念していた漏水(性質上ぐるぐる渦巻きバイザーは水に弱い)により認識改変装置が故障。
素顔を晒した洋子を見て、何故かニコちゃんは大歓喜して「まま!!」と叫んだのだ。
幸いにも、これまでの経験上ニコちゃんとゴローの意識は完全に断絶している。
この素顔を知るのはニコちゃんだけ。
それならまだ許される。
きっと、絶対に。
そう思いたかったのだと…後になって洋子はそう振り返った。ニコちゃんではない、
昨日も海上、今日も海上。
なんかイロイロあって作者は海の人になってます。
吐きそうwww
AC6のコスプレ、誰を選ぶ?
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