『アーシとはお酒飲んでくれない癖に! お父さんのバカーーー!!』
娘にバカ呼ばわりされた駄目な父親がコチラです。
「はふぅ…」
ポポちゃん=ニコちゃんのママ事件から1夜。
相変わらず既読無視されたラインを片手にゴローはため息をついた。
「反抗期に比べりゃ100倍マシ…とは言え」
あの子の反抗期は凄かった。
スミレの治療費を肩代わりしてもらう代償として、
病を克服し、動く身体で初めて人生を心から謳歌した絶頂の幼少期………を経て直ぐ。
小学校入学と同時に今まで会ったことも無い(実際には乳幼児期に会ってる)姉が突然現れて親の愛情を掻っ攫って行く事で爆発したかなり遅めの第一次反抗期。
その対応が不味かったのだろう。
駄目な事を駄目だと教えなくてはならない、と言う信念が間違いだったとは今でも思ってはいない。
だが、幼いスミレには姉の肩ばかりを持つ父親は精神の捻くれた悪魔のようなクソ野郎の裏切り者のカスでゴミでクズなハゲ野郎にしか見えなかったのだろう。
事ある毎に衝突した。
「ご飯をこぼすな」
「挨拶はしなさい」
「脱いだ服は洗濯機へ入れなさい」
「いちいちお姉ちゃんに突っかかるな」
「帰ったら手洗いうがい」
「お弁当と水筒は台所に出して」
「上履き洗って」
「お風呂掃除して」
「お姉ちゃんの物を取らない」
「お母さんに優しくして」
「ゴミはゴミ箱へ入れろって何回も言ってる」
「叩くな」
「叫ぶな」
「髪を引っ張るな」
「ハゲって言うな」
「臭いとか言うな」
「姿勢が悪い」
「グズグズしない」
「食っちゃ寝すると子豚になるぞ」
「人の話を聞きなさい」
「協調性を持ちなさい」
ざっと思いつく分にはこんな物か。
構ってほしいと言う欲求が根底にあるのだろうし、家族に甘えたいと言う気持ちもわかる。
しかし、いくら家族の間であろうとも共に生活をするのなら、お互いにお互いを尊重するための最低限のルールは守らなくてはならない。
(と言うか本当に当たり前の事を当たり前にして欲しいだけである)
しかし、スミレは反抗する。
しかし…まぁ………大変だったのは間違い無いと思う。まぁ、世のお父さん方にはわかる苦労だとは思うが、スミレは下手に頭が良かったぶんレスバ性能が飛び抜けており、負けじと張り合った結果、可愛い娘をガチで凹ませてギャン泣きさせる虐待パパが誕生したり、まぁ…ともかく色々な事があった。
当然、父VSスミレの構図になれば、バランスを取るために母がスミレの側に立つ。そこで苛立つのはサヲリだ。
父は正しい事を言っているにも関わらず、母は父や私よりも妹の肩を持つのか…それは間違いなのではないか、とする気持ちや、ハッキリと自覚せずとも【上杉の家を出た母の身代わりとして幼少期を送った私よりも、母は妹を選ぶんだ】という生々しい絶望と憎悪が無かったとは言えない。
そうこうしている内にスミレは思春期に突入。
第一反抗期が終わるより前に突入した第二反抗期状態のスミレは頭を撫でたり手を触ったりと言う、父親からのスキンシップを極端に嫌がるようになり、最終的にお父さんを幽霊扱いするまでになっていた。
(風呂はシャワー、服は別に洗濯、ご飯はなるべく一人で食べるし、どうしても家族で食べる時には絶対に、それはもう絶っっっっ対に喋らない)
酒に酔った勢いで抱き着いた時には発狂したみたいに叫んで肉がエグれるレベルで思いっきり引っ掻かれたあの夏の思い出。
パンデミックに倒れる前の悲しみの記憶。
あの頃は本当に、毎日がギスギスの崩壊家族だった。
TS幼女おじさんとして目覚めた後は自分の事でいっぱいいっぱいだった事もあり、スミレの変化に意識を向ける余裕がないまま、気付けば今のような穏やかな家族関係になっていたのだが………。
「とりあえず………飲むか」
マダオの見本のような脳死行動である。
とりあえず飲むか。
その言葉がゴミゴローを生かしている事実があるので仕方ない部分もあるのだが。
現実逃避と精神安定。
それをお助けしてくれる百薬の長に、今日もゴローは感謝する。
───そして、幾ばくかの時が過ぎて。
【ピン・ポーン】
「んぁ………お?」
来客があった。
あまり美味しくない酒をカパカパと食らった事で意識レベルが低空飛行しているゴローの頭に、ビリビリと稲妻が走った。
「スミレ? スーつゃん!?」
あぁ…帰ってきた。
帰ってきた!
愛娘が帰ってきた!
「うひぃ〜!! 行くぞ兎丸よ! スーちゃんをお出迎えするのら!!」
頭がオッコトヌシになったゴローは猪突猛進。
ウサギの人形を小脇に抱えて走る。
そして何度も経験したにも関わらず危険予知を忘れてドアの鍵を解除してしまった。
「スミ──────あ」
「ちゃーコリャ馬鹿ガキがぁ!!」
スパン!!
白い頭の幼女が首に掛けていたタオルを手に取り、勢い良く振り回してゴローの頭に叩き落とした。
「うぃっでぇぇぇぇえ!!」
雨でしっとりと湿ったタオルは重い。
悶絶するゴローを完全に無視。
我が物顔でゴローの部屋に押し入り、ゴローの飲みかけだった酒をガバガバと小さなお口に流し込む。
白くて小さな酒飲み幼女。
それってつまり───。
「てめ…! 妖怪爺ッッッ!!」
───そう。
妖怪爺こと毛利源八の襲来であった。
「くひぁ〜〜〜! 染みる! クッソ小僧が偉そうに昼間っからこんな美味い酒食らいおってからに!!」
「俺の酒飲むな!」
「は〜ん? おマンの酒はワシの酒じゃわ!!」
「ジャイアンかお前は…」
チッと舌打ちしながらも源八の横をすり抜けキッチンへ向かったゴロー。
1分で帰ってきて豆腐を献上。
「カラシは?」
「いる」
「ん」
「おぅ!」
モグモグと食らい、ゴクゴクと食らうお爺さんを横目にまたキッチンへ。
2分後に帰ってきて今度はスライスしたトマトをご奉納。
「鰹節」
「んむ!」
お爺さんは醤油派らしい。
小さなお口でモグモグを表現する姿を横目にゴローは3度目のキッチンへ向かう。
「…何やってんだろーな俺ぁ」
野良猫の餌付けに近い気がする。
自分用の予備グラスに酒を注ぎ、氷を入れてから炭酸で割り最後に軽くマドラーで混ぜる。
最初の段階で仕込みをしていた枝豆の茹で具合を確認して………ヨシ(๑•̀ㅂ•́)و✧
自分用の酒を先に持っていくと確実にツバを付けられるので、枝豆を先出しして牽制。
その間に自分の酒をもって席に付いた。
「………美味いか?」
「おぅともさ!!」
「何しに来たん?」
「別に、な〜んも」
「暇人が」
「泣きべそカキのガキが良ぉホザクのぉ?」
「は? 泣いてねーが?」
「はほ〜〜〜ん???」
「泣いてねーよ!!」
「スミレちゅわ〜〜〜んってか??」
「あ〜くそウゼェ爺ぃ」
「なんかあったんか知らんがおマンが悪い!」
「知らんくせにしゃしゃるな」
「ワシの言うことは間違い無いんじゃ!!」
「ハイハイ死ぬ死ぬ詐欺師が」
「ちゃーコリャ偉そうにバカ餓鬼が」
「偉そうなガキに飯タカってんなよマジで」
「おマンが勝手に出したのを喰ってやっただけや」
「んじゃもー出さねー!!」
「ふ〜ん…あ、今度は刺し身用意しとけな」
「刺し身…いや、この辺の刺し身は鮮度がな〜」
「チッ…これじゃけー都会はなぁ?」
「それよりマジで何しに来たん」
「あ〜……………」
そう言えば、という体で源八が壺を差し出す。
部屋に入る前から背中に背負っていた古風な壺。
備前焼とか言う種類の、表面がガザガザした手触りの茶色い陶器に似ていると思う。
太い木材と布で栓をされた壺をゴローへと差し出し。
「やる」
「んぁ…え、いや俺、壺とか興味無いし」
「アホ餓鬼が、だ〜れがおマンなんぞに壺をやるかぁ!? 中身じゃ中身! 中身移したら返せよ、ワシん壺じゃけーな、高いんじゃけ〜な!?」
「はぁ〜??」
よく分からないまま栓を抜く。
「ん……ん?? 水草?」
中にはタップリの水。
どこか田舎の懐かしい香りを感じさせる水の中に、ふわふわと水草が漂っていた。
「草はオマケじゃ…見とれよ?」
ニヤニヤ、ニマニマとメスガキを思わせる笑みを浮かべながら、源八が壺に手を入れた。
「うわ、も〜部屋ん中でヤメロよぉ……」
ゴローの抗議を聞く耳など無い。
「お? おりゃ手ぇ出せ!!」
空いている左手で無理やりゴローの手を掴み、その上にビシャビシャの右手を乗せた。
「うわも〜ホントこの爺さんは…ん?」
手の中にヌメヌメの棒がある。
「え…これ」
「逃がすなよ!?」
ビクビクビクゥ!!
「うへぇ!?」
手の中で跳ねた小さな生き物。
「川エビ、懐かしいじゃろ!」
薄くて透明がかった褐色の甲殻類。
何故かこの日、ゴローの同居人(同居エビ?)が10匹増えたのであった。
もう我慢ならん。
話の連続性とか知らん。
次回は挿絵を投げます。
嫁のイラストを見て作者は度肝を抜かれました。
震えて待て………!!
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