「美味い!!」
口に含む前から確信していた。
しかし、それでも叫ばざるを得ない美味さがあった。
記憶の中と寸分違わぬスパイスの香り。
薄い指先の皮を通り越し、いとも容易く内側の肉を焼くナンの熱量。
「アチチチチ!」
熱さに指を振りながら、ビリビリと痺れる熱と痛みに耐えてゴローの唇が三日月のように歪む。
ナンは熱ければ熱いほど美味い!
だから熱に耐え、指でナンを千切る。強く掴まなくては千切れず、強く掴んだなら指が熱い。
この苦行がまた楽しい!
ナンの焼き加減は絶妙の一言。
モッチモチの外周部と、サクサクっとしたうす〜い中央部の比率は正に黄金。
「スゲー!! コレだよコレッ!! 熱い! そして死ぬほどウメェ! もう二度と食えねぇって思ってたのに!」
ナンの甘みは熱を伴った暴力的な旨味を伴って口の中にサクサクとモチモチを交互に広げる。
カレーの辛味はその内側に肉の甘さを内包しつつ舌の全体に絡まる。ザクザクと突き刺さる痛みと幸福。辛いと痛いと美味いが三位一体となって食べる幸せを止めさせない!
「これ、キーマカレーだよな? 俺のいっちゃん好きなヤツだろコレ!?」
飾りとしてのゆで卵。
その微妙な味すらも再現した、正にインドカレー店『オイシーナ』の完コピメニューを前にして、ゴローのテンションは天井を突き抜けお空の彼方へレッツゴー。
「凄い! 美味い! 天才!! 流石はポポちゃんやで」
大喜びするゴロー。その対面には。
ーーーウィ〜
ーーーカラスンギ、マンモス!
ーーーサスポポよネ〜
そう、ゴローの対面には黒い渦。
家族での食事会用に購入していた広めのテーブルを囲むのは巨大でボインな女達。
ーーーオネイ
ーーーサン!
ーーータ〜チ♡
唐突!!
ポポちゃん配送のお姉さんトリオが自由気ままに決めポーズを取る。
「オネちー下品だからヤメロ」
オネちーと呼ばれたチームの一番槍は昔懐かしのコマネチポーズで腕を高速でシコシコと上下させ。
「サンちゃんアイーンは顔が命だろ? 渦で見えねーんだから別のポーズ選べばえぇのに…」
サンちゃんは黒渦の下で懸命に寄り目を作り、唇を突き出してポーズを決める。
「ター坊は単純に目の毒」
最後のターチはだっちゅーの♡ のポーズで野郎の視線を己の谷間に釘付ける。
今日の彼女達は全員が同じピチピチでパツパツのセーラー服姿。
客観的に見れば目のやり場に困りそうな物だが、今のゴローには妙な心の余裕があった。
馬鹿な友達と遊んでいる感覚が強く、どんな際どいチラチラ映像を見せられても煩悩先生は紳士のまま。
「つーか座れ、ご飯中に立たない。お行儀悪いぞ」
ーーーウィ〜
お姉さんトリオもゴローの指摘に大人しく従う。
『ヨシヨシ、エライぞ!』
口を人形で隠した上で裏声を出し、腕に抱えた兎丸のお手手をピョコピョコと動かす、そほあざといゴローのやり口にムカついたのか、ターチとサンがーーーヘィヘ〜イ!ーーーと煽りながらゴローの顔をそれぞれのおっぱいで挟んで潰しにかかった。
───そう、今この場に居るのはゴローと三人の怪異さん。顔バレしたポポちゃんの姿はない。
彼女は脱兎の如く逃げ出した
「おかわり欲しかったら言って…」
その代わり、ウブメと名乗る割烹着姿の少女がキッチンから姿を現した。小さな歩幅で滑るように移動し、ゴローの隣にチョコンと正座しする。
「ウブメさんありがとね〜? 本当に食べなくていーの?」
「私、辛いの苦手だから…」
ポポちゃんの料理を引き継いで完成させてくれた少女に感謝しつつ、一先ずは目の前のご馳走に集中するゴローなのであった。
◆
ーーーキリシマ〜完売ぃ〜完売ィ〜
「完売って………あ!? これ25℃の方飲んだんか!? これはおっちゃん用って言ったやろ! つーか、なんぼキリシマが飲みやすいからってペース早すぎやぞ」
ーーーマオウ出せよォラア!
「魔王はキサマらにはまだ早い!! ───はぁ!? ケチとかじゃねーよ、美味い酒ってのは下地を作った上で味わうから美味いんだバカがよぉ!!」
ーーーナンの〜オカワリくだせ〜ナン♪
「あ〜! ター坊ナン来たらおっちゃんにも一口食わせて。アツアツのは別腹なんよ」
飲み会は宴会へと変わっていた。
パカパカと酒を飲み、モリモリとナンを食べる。
愛しのあの子との時間は夢のように消え去ってしまったが、気のおけない友達とバカを丸出しにして過ごす時間も代えがたい。
ーーーゾイド見ようゼ〜!!
ーーー同時視著配信のヤツな?
ーーー次の18話はヤバィワヨン♡
「え〜アレは配信でリスナーと見てるヤツだし」
ーーーデージョブやって! 俺達コレで認識阻害デキっから!
ーーーフツーに配信してオケマル
ーーーオパ〜い触っててもバレないし♡
「え〜?」
「ゾイド配信は私もおっかけてます。セイバータイガーちゃん、可愛いです…」
三馬鹿だけならまだしも、ポポちゃん飯を完成させてくれたウブメさんにまで押されれば仕方ない…と、途中でアニメ視聴配信を挟みながら飲み会を続けた。
黒渦に隠されたポポちゃんの素顔。
それは紛れもなく、若かりし頃の妻の物で。
けれど、やはり目は違う人の瞳だったように思う。
「なぁ…ポポちゃんって───」
深酒でグチャグチャになった脳がゲロを出す。
それを必死に堪えて。
「───料理…上手いんやな」
そう、呟いたのだった。
最近投稿が弱くてすまない。
生活がギリギリなんだわ。
エタらない事だけが現在の目標なので、何卒ご容赦くだせぇませ。
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