酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

15 / 132
連敗のTS幼女おじさん

 

 「はい、と言う訳でお久しぶりです約2ヶ月ぶりかな? 皆のパンダことTS幼女おじさんのゴローです」

 

 久々の配信に胸が高鳴る。

 ワッと弾む心を共有したようにコメント欄にはリスナーの声が溢れた。

 

 

 ーーーお帰り!

 ーーー待ってたゾ

 ーーー信じてた

 ーーーあまりにも長い放置プレイ…萌える

 ーーー全裸待機で風邪引いた甲斐があったよ

 ーーーおかえりゴロタス

 ーーー体調大丈夫なんか?

 ーーーおせーよホセ

 ーーー愛してるぞゴロー!!

 

 

 止まないコメントの嵐。

 これほど多くの人が自分を待っていてくれた、そしてわざわざ声をかけてくれるこの幸福。

 

 「なんか…アレだわ。TSして初めて良かったって思えたかも。本当に有難う。長いこと待たせてごめん」

 

 この2ヶ月は大変だった。

 マネキンおばさんの解体と洗浄(いろんな意味で)PCとネットワーク環境の凍結。

 誘拐未遂という極度の緊張状態から開放された反動で精神的にも崩れ、酒を飲みながら古いアニメを眺めて壊れた脳ミソをなだめたあの日々。

 

 「あかん………ちょっと泣けてきた」

 

 久々にキツかった。

 あんな集客数しかない癖に高速サイクルなネット環境から唐突に切り離されたのだ。

 復帰した所でなんの意味もない。

 そう思っていたのに、サヲリをはじめとした警護の面々や病院のカウンセラーさんが国に直訴してくれて、それでもどうにも進みが悪いまま頑張って頑張って2ヶ月もかかった。

 それでも、間違いなく今ここにいるリスナーはゴローを待っていてくれたのだ。

 

 「ほんと、有難う。重ねて言うわ。ちょっと私生活でトラブっててさ、なかなか再開出来んかったんよ………動画の方は」

 

 ーーーん? なんか含みのある言い方

 

 「おっ、鋭い子がおるね。そーなんよ、バトオペはアカウント変えて続けててさ〜実はこないだAフラットに到達しちゃったんよね〜!」

 

 ドヤ!

 と叫びそうなドヤ顔を披露して、ゴローが自分のレーティングを掲げる。A+で沼る、と言う話をよく聞くがゴローからすれば最近の連勝は快挙であり、今の戦績には自信を持っていたのだ。

 

 「まーね? ほら、おっちゃんもこのゲームある程度理解しちゃったし? 普通にやったらA+も今週中にいっちゃうかな〜なんて思っててさ、けどほらそれだとつまんないじゃん? 最近同じ機体に乗るのも飽きてきたし、今日はリスナーからのリクエスト機体に乗ってA+を目指す耐久配信にしようと思っているのじゃよ! あ、機種は汎用1択でおにゃしゃす」

 

 輝かしい未来へ向けて!

 ーーー乾杯!

 カシュッとプルタブが心地良い音を奏で、アーモンドナッツがポリポリと半奏する。

 ひと粒丸ごと口に含んで食べるのではなく、リスのように端っこからカリカリポリポリ齧りながら食べるのが美味いビー○を飲むコツだゾ。

 

 「それではッ! バトオペ耐久24時!! A+になるまで終われまてん、スタートぉ〜〜〜〜!」

 

 いつものバトオペ。

 いつもの動画配信スタイルに、ゴローのテンションは上がりっぱなしだった。

 

 「では記念すべき一戦目! コストは350の地上戦! コロニー落下地域でやってきますぞォ! 選ばれた機体は〜〜〜〜コレッ! イフリートLv2」

 

 イフリートは思い入れ深い機体ですよね〜。

 最初に出会ったのがイフリート改で、戦場はどっかの砂漠だったかな。

 蒼いジムことブルーディスティニーをツインスティックでガチャガチャ言わしながら操縦してさー。いやー楽しかったな〜セガの全盛期。

 バーチャロンも合わせてツインスティックの偉大さはおっちゃんが未来永劫語り継ーーーーーー。

 

 調子よく舌を回すゴローだが、イフリートLv2の調子はまるっきり空回りしていた。

 

 「ショットガンが…ちょっ…これ、当てれん」

 

 「んご…なんだ、この、紙耐久…」

 

 「スモーク? あ、スモーク使うのか!? 使った後に攻撃したらステルスが消える? は? 意味なくなくない??」

 

 空回りを続けるゴロー。

 

 

 ギャン・エーオースのフル改造の為にDP(ゲーム内通貨)を使い切った結果拡張スキルを回す金すら残っておらず、それでもなんとかなる…と踏んでいたゴローの甘さが一つ目。

 

 水中型ガンダムが汎用機の割に支援機と同等のエイムスキルを求めてくるように、イフリートは汎用でありながら強襲機風の立ち回りを求める機体である。にも関わらず汎用機=壁汎としか考えていなかったゴローの愚かさが二つ目。

 

 そして最後に、A-で連勝した程度でAフラットでも余裕だ…などど、バトオペを舐めたゴローの無知と傲慢。

 

 

 様々な要因が重なった結果、ゴローの戦績は黒く塗り潰されていく。

 

 「ハイゴックな! コイツはスキルモリモリだし、拡張でカスタムパーツ拡張[装甲]が付けばカッチカチだとかなんとか! まぁ、おっちゃんは金が無くて未拡張なんですが、前評判が前評判じゃし? イケルイケル………」

 

 確かに、ハイゴックは強い。

 だが。

 

 「なん…ビームどっから撃つの?? つか…デカすぎで蜂の巣なんじゃが…??」

 

 ハイゴックは操縦の癖もべらぼうに強い。

 付け焼き刃で扱える簡単機体(壁汎)とはわけが違う。

 

 「ザクシュトゥッツァー!!」

 

 胴体に固着された馬鹿でかいビームライフルが特徴的な射撃寄りのザク。

 

 「ゾゴック!」

 

 パンチで闘う男の機体。

 

 「ナイトシーカーLv4! ガッシャ! EG8! ザクⅡ改! パワード・ジムなら………!?」

 

 手持ちの汎用機が次々と爆散して行く。

 

 気付けばランクはA-。

 戦績は全戦全敗の10連敗。

 

 

 ーーーえ?

 ーーーやらせか?

 ーーー流石に嘘やろ??

 ーーーなんぼ足を引っ張るにしても奇跡w

 

 

 この時はまだ余裕があった。

 ゴローにも、リスナーにも。

 2時間が経過した事によりコストとステージが変化した。このタイミングなら…勝てる!!

 

 「300コストはアッガイたん1択なんよ! エースマッチなのがちょっと嫌だけどホレ、アッガイたんに乗ったおっちゃんはツオイぞ〜〜〜!?」

 

 ーーー負けまして

 ーーー惜しかったよ!

 ーーー敵が上手すぎた

 

 「え………えーすマッチが悪かったんよ、今度は450コスト! 勝率45%を誇るおっちゃんのザク・マシーナリーなら…!!」

 

 アッガイに乗っても、ザク・マシーナリーに乗っても、勝てない、勝てない、勝てない、勝てない、勝てない………!!

 

 「ちょっと………お花を摘みに…」

 

 ーーーゲロじゃね?

 ーーーゲロだわ

 ーーーゲロじゃね?

 ーーーゲロってる

 ーーーゴローゲロー

 ーーーこの軟弱者!!

 

 「時間を置けば勝てる。次の時間帯は強化に強化を重ねたおっちゃんの最高傑作、ギャン・エーオースだからイケル!!」

 

 ーーー出撃しても。

 じぇんじぇんイケぬぁい………TдT)

 

 死ぬほど………負ける。

 なんだこのクソゲー。

 え、何してもしなくても負けるんじゃが??

 

 「バトオペは勝率50%になるように運営が調整してるんやろ? そう言う都市伝説があるんじゃろ?? なんで………なんで勝てんのや…」

 

 15戦15敗。

 

 その後、ようやく一戦勝利したあと2敗して、晴れてゴローはB+(実力相応)に転がり落ちたのであった。

 

 本当に…ただただ吐きそうな敗北の1ページ。

 耐久? A+に成るまで帰れまてん??

 …ちょっと、何言ってるのかわかりませんね。

 

 「オツカレサマデシタ。サヨウナラ、ミナサン」

 

 ゴローは………逃げた。

 勝てん日は勝てんのや。

 なんなん。

 ほんとバトオペ…なんなん………??

 




 実話です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。