酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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【エイミング】逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ【練習中】

 

 ゴローの駆るジム・カスタム。

 

 眼前には味方の下格闘により転倒状態となったレッドライダー。ゴローのジム・カスタムはカスタムパーツにより格闘補正を38まで盛っており、目の前で転んだ敵のHP程度なら下格闘一撃で消し飛ばせる状況だ。

 

 完璧なお膳立て。

 動かない敵を食うだけの簡単なお仕事。

 

 ーーーしかし。

 

 「ちッ!?」

 

 ジム・カスタムが後方へ勢い良く緊急回避した。

 

 素晴らしい。

 視野を広くしてレーダーを把握。

 機体後方から迫る敵機の格闘攻撃を察知した上での美しい回避………などと言う話では、まったく無くて。

 

 「ちがッ! 攻撃ボタンが…ちぐしょう!!」

 

 格闘を振りたい。

 必死の思いで触ったボタンは。

 

 

 ーーーお座りしてるんだが??

 ーーー素人か?

 ーーー素人よりヒデェ

 ーーーゴロオジはこれだから

 ーーーがんばれゴロタス!

 ーーー酒飲んでなくて、コレなの?

 ーーーうわー老害…

 

 

 唐突にしゃがんだゴローのジム・カスタムを見逃すほど、敵の目は腐っていない。

 

 「あわわわわはわ!?」

 

 チュピーン!

 チュピーン!!

 

 座って撃たれ、立ち上がりモーション中に撃たれ。気付けば先程後方から攻撃してきた敵の格闘攻撃クールタイムが一回りしていて。

 お膳立てしてくれた仲間諸共に叩き潰されていた。

 

 「すまねぇ。マジですまねぇ…」

 

 とりあえず、プルタブを開ける。

 敗北の記憶は黄金の泡で飲み込む。

 酒に逃げなきゃ生きられない。

 ゴローは本当に…ただただ、雑魚だった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 事は一週間前に遡る。

 

 つい先程の戦闘でチームメイトになった、と自称するリスナーからの熱烈なファンメールが発端だった。

 

 ーーー迷惑なんだよ! 勝てる勝負だからってナメプしやがって! YouTubeだからって何しても許されると思うなやクソザコが!!

 

 「ナメプ……だと?」

 

 思い当たるフシはある。

 酒に酔っていたから、とか。

 エイムがクソ過ぎて射撃戦出来ないから、とか。

 頑丈な機体だからデコイになるかな、とか。

 

 まぁゴロー(ザコ)なりの考えがあり、ゴローはちょくちょく敵陣の中央に特攻していた。

 一瞬だけはヘイトが稼げるし、味方が相当強ければその一瞬の隙を上手く活用してくれるのだが、多くの場合それは単なる自殺志願の利敵行為でしかなく。

 

 ゴローの身勝手な振る舞いによりチームが敗北する事も珍しくはなかった。

 

 これまでは運が良かったのだ。

 心の広いリスナーに囲まれ、助言を受け、フォローされ、明らかにアウトな言動すら許されてきた。

 

 しかし。

 

 ーーーナメプじゃねぇなら何なんだよ!? こっちは勝つために頑張ってんのによぉ! 酒飲んでヘラヘラしてワザと下手くそなプレイして再生回数稼いでんだろこのクソ乞食が

 

 「はぁ〜〜〜〜!?」

 

 ーーーワザとあんな下手なプレイ出来ねえって

 ーーーゴロオジはゴロオジなんだからさ…

 ーーーは〜これだからゆとりは

 ーーーゴロたすアンチは○す

 ーーーサルの言う事なんか気にすんなよゴロー!

 ーーーゴローだって頑張ってんだよ!!

 

 擁護、弁明。

 ゴローを支援する声は多いが、決してそれが全てではない。

 

 ーーーザコなのは事実

 ーーー前に俺も同じこと思ったりして

 ーーー顔が良いから許されてる感はあるよな

 

 ーーー確かに、TS幼女おじさんだからな

 

 「ーーーーーーーーー!!」

 

 わかっていた。

 わかっている。

 

 そう、思っていた。

 

 ーーー顔真っ赤じゃね?

 

 「ちょっと、すまん」

 

 暗転する画面。

 その日、ゴローの配信が再開されることはなかった。

 

 

 

 〜〜〜翌日〜〜〜

 

 

 

 「エイム練習1日目」

 

 ーーーおっ?

 ーーーどうしたどうした〜

 ーーーもしかして練習法勉強したのか?

 ーーーゴロたす…!

 

 フリー演習、ステージは北極基地、制限時間を8か15分で何セットか繰り返しする事とし、最後に敵の非撃破設定を行う。

 

 「昨日気付いたんじゃけど、エイムが安定しない原因の一つがボタン配置なんよね」

 

 それまでのゴローのプレイングでは右手でアナログスティックを操作して右手で武器のトリガーを引いていた。

 長時間練習してようやく気付いたのだがエイムとトリガーが右手に集中する事でコントローラーの重心が右に傾き、結果としてエイミングに悪影響を与えていたのだ。

 これを解決するためトリガーボタンを左手、安定感への影響がもっとも少ない人差し指で押せるポジションである『L1』に変更した………その結果。

 

 「んぉ!? また間違えた…」

 

 L1で射撃

 L2でしゃがみ

 R1で武器変更

 R2でスラスター

 

 自分で設定し直したボタン配置なのだが、思考に余裕のある練習モードですら脳が過去のボタン配置と混同して機体制御に著しい不安を生じさせた。

 

 

 

 「エイム練習2日目」

 

 情報収集の結果、練習に最適…と判断した機体『零式』を操り敵機体を撃ち続ける。

 

 3機群生しているカカシ役のMSを、高台から見て▽の形になるようにサーベルやタックルで押し出して準備する。 

 (この時に横格闘からN格闘の2段よろけコンボの練習も欠かさない)

 

 準備後に射撃の集束撃ちを利用して練習開始。

 集束が完了する2.5秒以内に敵をセンターに捉えてトリガーを離す。

 

 「目標をセンターに入れてスイッチ」

 「目標をセンターに入れてスイッチ」

 「目標をセンターに入れてスイッチ…」

 

 凄まじく下手くそだ。

 標的までの最短ルートである斜め軌道のエイミングが出来ず、横軸を合わせてから縦軸を合わせるだけでも困難を極める。通り過ぎてからまた戻り、戻りすぎてまた合わせる。

 それでもエイムに捉えきれず、惜しいとすら言えないガバガバな射撃を連発してしまう。

 1日目よりはマシな気配はあるが………。

 

 

 

 「エイム練習3日目」

 

 今日は演習場での練習がメインだった。

 ステージ中央の敵をエイムしたまま、円を書くように歩きながら射撃する。

 今回は強襲機に乗っていた。

 大容量スラスターで高速移動しながらバルカンで蓄積よろけを取れるようになりたいのだが、スティック操作の繊細な力加減が難しく、標的を捉え続ける事が出来ない。

 

 

 

 「エイム練習4日目」

 

 「エイム練習5日目」

 

 「エイム練習6日目………」

 

 

 

 練習場で馴染ませたコントローラのボタン配置も、いざ実戦で反射的な機体操作を求められる際には以前の配置癖が出て重大な失敗を量産してしまう。

 

 「脳がポンコツ過ぎる……」

 

 頭ではわかっているはず、なのだが。

 実際脳がついてこない。

 

 「チクセウがぁ…………!!」

 

 エイミングは確かに、練習開始前と比べれば格段にマシになっている。

 だが、脳が慣れない。

 

 がんばれゴロー。

 錆びついた脳ミソにビールと言う名の潤滑液をジャブジャブと投入してクルクルパーになりながら戦うのだ。

 行けゴロー!

 明日の美味しいお酒の為に…。

 

 今日もゴローは惨敗を重ねるのであった。

 





 なんか書けたので完結設定を解除します。
 それにしてもバトオペ…強くなれねぇんだよなぁ。
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