酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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TSょぅι゛ょオジサン2杯目

 

 「は〜〜〜〜〜…」

 

 機動戦士ガンダムバトルオペレーション2。

 その華々しい音楽が流れるタイトル画面とは不釣り合いに、動画配信を開始した幼女は陰気な表情で長いため息を吐いた。

 

 「初めての人はコンニチは、2回目の人はありがとう。TS幼女オジサンことゴローです」

 

 ポツポツと、彼女のPCに視聴者からのコメントが入る。

 視聴者はまだまだ少なく、そのコメントへ対応はそう難しいものでも無い。

 

 

 ーーー幼女や

 ーーーTS? また変な設定やの

 ーーー待ってたー!

 ーーーパンツ見せて♡

 ーーー幼女再来

 ーーー凍結解除オメ

 ーーー目が4んでてw

 ーーー元気出せよオラァ!

 

 

 雑多に浮かぶ言葉の中から必要な物だけを選び取りつつ、ゴローはゲームを起動した。

 

 「え〜初回からまるまる1ヶ月の間音信不通で申し訳ありません」

 

 ペコリ。

 頭を下げるとチョンマゲも揺れる。

 死んだ魚の目をした幼女が抑揚なく言葉を繋げた。

 

 「ご承知の方も居られるみたいなのですが、この1ヶ月間アカウントの凍結解除に四苦八苦したり脳を壊して…と言うと語弊がありますね。もともと壊れてる脳を一段と悪くしてて動けなかったと言うべきですかね…はい」

 

 長いため息と同時に缶を手に取る。

 缶には可愛らしい刺繍の施された缶カバーが被せられ、目視では中身が何かわからないようにされていた。

 

 「凍結の原因はーーーコレ」

 

 プシッ!

 耳に心地良い音を響かせてプルタブ(正式名称ステイオンタブ)を上げ、缶の蓋を開く。

 

 「ゴクゴクゴク………ぷは〜!!」

 

 炭酸飲料らしき何か。

 1杯引っ掛けたおかげか、少しだけ目に力の入った幼女が叩き付けるようにテーブルに缶を下ろした。

 

 「…これな〜? 参ったのよな〜。ほれ、おっちゃん見た目がこのナリやろ? つーほーされてもーたのよツーホー」

 

 どこのドイツがドイツ人…なんでやねん。

 

 ボソボソと意味不明に呟く幼女。

 やはりまだ頭の調子は良くないらしい。

 

 「いやコレはおっちゃんが悪かったよ、そらそう。普通に幼女が酒飲んでる映像なんて流しちゃダメだろ。バカなんですか? 当然でしょうがっ!!」

 

 再度、謎の炭酸をゴクゴクゴクリ。

 

 「パはァー!!」

 

 そうとう溜まっていたのか、ほんの二口でひと缶飲み干したゴローが次の缶へと手を伸ばした。

 

 プシッ!!

 

 白い肌にはみるみる朱が差し、死んだ魚のようだった瞳は少しだけふにゃりと形を変える。

 

 「ゴクゴクゴクゴクゴク…」

 

 まさかの炭酸一気飲みである。

 

 「ぐはーーゲブォ!!!」

 

 缶をテーブルに叩き付けると同時、妖精の如き幼女にあるまじき大音量のゲップをさく裂させた。

 

 「は〜〜〜〜…」

 

 画面の中ではリスナーがザワつくのだが、ゴローは目も向けずしばし酔いに浸って天井のシミを数えていた。

 

 それから1分…2分…3分。

 その間、思い出したようにゲップが放たれるだけで他には一切動きが無い。

 あわや放送事故、すわアルコール中毒かと彼らが騒然とした頃、ようやくゴローが動いた。

 

 「は…は…………」

 

 クチュン!!

 

 衝撃ゲップ映像とは真反対の小さなクシャミ。

 チーンと鼻をかんで、ようやく彼女が動画配信に復帰した。

 

 「はい、そんなわけで今日も元気にバトオペをやって行きましょー!」

 

 ーーーなんでやねん!!

 ーーー説明すっ飛ばすな!

 ーーー風邪ひくぞバカッ!!

 ーーー有り難う御座います!!

 

 「え〜? 説明とかいるぅ〜? いや見たらわかるじゃろ? おっちゃん復帰=運営様から許可をもぎ取ったってことよ! まぁおっちゃんは殆どナンもしてないんやけどなw」

 

 ハロー!

 いつもの賑やかなハロの歓迎を受けつつ、ゴローのアバターが駆け足で出撃ミッションへ向かった。

 

 「成人してるって事を証明するための書類とか、本人確認の書類とか、利用規約の書類とか…まぁ大変だったらしいぜー? 知らんけど」

 

 現在出撃可能な戦場は左から地上の400コスト、宇宙の550、地上の650、地上の750だ。

 脳死で選ぶのは400コスト帯の地上戦。

 戦場は最近アップデートで追加された鉱山都市。

 

 「とりあえず、ビー………じゃなくて、飲み物のラベルだけは最低でも見せないように配慮すれば許されるらしくてな、それで今回缶にカバーしてんのよ。あっ…と? 確か前回の動画にはモザイク処理してくれてた筈だから、今なら未成年が見てもヘーキヘーキなんだってさ」

 

 未視聴の方はどーぞヨロシクー。

 

 番宣しながら3本目の缶へ手を伸ばす。

 カシューナッツの袋を開けて、ポリポリと摘みながらマッチングまでの時間を楽しむ。

 

 「はんッ! だぁら最初っから言ってんじゃろ? おっちゃんは正真正銘のTS幼女オジサンなんですぅ〜ww 本物の幼女がガンダムなんてやってたまるかってんだべらんめー、だいたいおマイらネットニュース読んでる? あのパンデミックでTSしたの日本人だけで235人だぜ? 47都道府県で割ったらジャスト5人! その中の一人がおっちゃんだったってだけの簡単なお話じゃないですか…なんで、なんで通報するんだよぉ………」

 

 最初から嘘ついて無いのに。

 おっちゃん真面目に配信してただけなのに…。

 

 泣きかけた情緒不安定な病人の耳にマッチ完了のお知らせが届いた。

 

 「オッ今日は早いの」

 

 正気を取り戻したゴローは出撃MSを選択。

 

 「今回はジムカスタムですね〜バニング大尉。あーそれとさ…第一回のおさらいと前置きなんだけど、おっちゃんはバトオペエンジョイ勢だぁらね? 上手いプレイングだとか課金パーツでのゴリ押しなんかも無いのよな。ゴリョーショー下さいって話」

 

 ピコピコと機体の詳細を選択。

 カスタムパーツは格闘強化プログラムと強化フレームで埋まっている。

 

 「拡張施設でカスタムパーツ拡張[HP]を引かなきゃならんのがネックなんだけど、拡張HPはおっちゃんみたいな無課金と微課金の狭間に揺れる底辺プレイヤーには神だと思うね」

 

 ジムカスタムのデータを簡単に表示して戦闘準備を完了した。

 

 「攻撃タイプのカスタムパーツをセットしたら、そのレベルを問わず一個につき最大400までHPを盛れるってのはね? やっぱおっちゃんが主戦場にしてる低コスト帯ではデカイのよな。特にモチベーションが変わってくるじゃろ? ほら、下手くそはとりあえず強化フレーム連打で耐久モリモリにしとけってのがこのゲームのファイナルアンサーなんだけど、下手くそには下手くそなりの矜恃があってさ、もちろんチームに貢献するのが最良なんだけど、それでも少しでも俺が強いと錯覚したいわけでして…その妄想を手助けしてくれるのがこのカスタムパーツ拡張[HP]なんだよね〜。ま、こんな場所にくるような皆様には釈迦に説法なんだろーけど」

 

 ナッツを摘み、炭酸を飲む。

 ポリポリ…ゴクゴク。

 その音が途切れた時、ようやく他のプレイヤーの戦闘準備が完了となった。

 

 「よ〜し、ほんじゃま! 動画第二回戦、元気よく行ってみよ………ん? はへ? そんなん需要ないやろ?」

 

 戸惑うゴロー。

 だが、限られた時間がその背を押した。

 出撃シークエンス。

 カタパルトから、ゴローの愛機が射出される!

 

 「てぃ、TS幼女オジサン・ジムカスタム、いきま〜っす!!」

 

 視聴者の要望に応えヤケクソで叫んだ台詞。

 赤らむ頬。

 甲高く、恥ずかしくも楽しげな声の波。

 ゴローはそう。

 この時少しだけ現実を忘れる事が出来た。

 ーーー楽しい。

 仲間と、楽しく遊ぶ。

 少年の気持ち。

 彼にはそれが、なによりも必要だったのだ。

 

 

 

 

 ーーーその後。

 

 有志が作成したTS幼女オジサン切り抜き動画は本編を遥かに上回る再生回数を記録した。

 

 あ、なんか可愛い。

 

 そう思わせてからのビール(ビールとは言っていない)一気飲み→巨大ゲップ爆弾のコンボが不特定多数の性癖を捻じ曲げたとか曲げなかったとか。

 

 ーーー知らんけど。

 

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