酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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400コスト以下でも散弾バズーカを使えるようにして欲しいバトオペおじさん

 

 Q.なんで強い機体に乗らないの?

 

 

 へそ出し短パン赤い(ブーツ)

 金髪に大きな赤リボン。

 その上中身はTS幼女おじさん…と言う、属性マシマシなガノタを殺す服を装備した結果は数字として如実現れる。

 

 今日の服装は平常運転。ヨレヨレになった無地のTシャツにボカボカのハーフパンツ。頭は珍妙なちょんまげスタイルなのだが、ゴローのチャンネルには新規リスナーが大量に押し寄せコメント欄は常に無い賑わいを見せていた。

 

 その中でも現役・引退含めたバトオペ経験者勢はゴローに対して非常にアクティブであり、一度脳みそを壊した事のあるゴローの精神は濃密な彼らの関心の圧に負けてゴリゴリゴリゴリと消耗している。

 

 脳も肉体と同じ。

 一度壊した部分は治らない。

 だましだまし、まだマシな箇所を経由して使うか、痛くないように労って使うか。

 薬で誤魔化しながらその2択を選ぶしかない。

 それを知っていたからこそ、ゴローはまだ壊れる事なく戦えていたのだが…。

 

 「強い機体、強い機体ねぇ…は〜来たよコレ」

 

 お薬(錠剤)ではどうにも出来ない疲労感。

 それをどうにか出来る魔法のお薬。

 それはそう、お酒。

 酒は、百薬の……長!!

 

 パカシュ!

 

 「プルタブを引き抜く一瞬に、世界の幸福が詰まってる気がするんじゃよ…」

 

 頭から水を被るような勢いで、口から一気に胃に流し込む…刻むぜ、波紋のビートォ!!

 

 「ンゴッゴッゴッゴッゴッーーーぴひゃ〜やっぱこれしか勝た〜〜〜おグォグアぁぁぁぁ!!」

 

 ゴローの痴態を知らぬ新規がザワつき、乱高下する同接数に古参リスナーが喜ぶ。

 …んなこたぁ知ったこっちゃねーんですよ。

 

 しっかりユックリと時間を取って、胃に落ちたアルコールが血液に溶けるまでの数秒間を楽しむ。

 椅子に仰け反ってボケーっとしながら胃をパンパンにしてる炭酸を吐き出す時もまた心地良い。

 やっぱ酒は神だわ。

 特にビール。

 安くて美味くてすぐ酔える。

 

 「ーーーさて、なんで強い機体に乗らんのか、だっけ?」

 

 オツマミの四角いチーズをパクリ。

 水分を飛ばしまくってカリカリになってるオツマミチーズ。その濃厚な味わいがまた、酒へ自然と手を伸ばさせる。

 

 「〜〜〜ウマぃ!」

 

 煉獄さんはいつ何時コスっても良いですね。

 

 「結論から言うとな? おっちゃんは強い機体には既に乗ってるのよーーーふんふん、いや違う。オフの時に乗ってるとか、そ~いうのは見当違いで」

 

 ポチポチポチ。

 今日も500コスト帯、戦場は北極。

 機体はいつものヘイズル改『散弾バズ』装備。

 無骨な愛機が雪原の上に降り立つ。

 

 「ほれ、最近老人の事故って多いじゃろ? ご老体が無理して車に乗ってさ、店に突っ込んだり歩行者に突っ込んだり、そんな酷くなくてもさ、法定速度50キロの道を20〜30キロでとろとろとろとろ走ったり、あるじゃろ? ん? 最近でもない? 大昔から? まーそれは置いといて」

 

 ステージ中央に鎮座する、北極名物巨大ロケットの周りを全力ダッシュ。

 開幕はトムとジェリーよろしくお互いの尻を追いかけるのが北極基地の習わしなのだが今回は珍しく敵の集団から1機だけ外れ、敵拠点の側に待機していた。

 

 「お?」

 

 カモである。

 ゴロー含めたブルーチームの全員がソレに食い付く。

 あっという間に敵のHPが削れるのだが、その代償として残った敵の集団に優位射線(高台)を奪われてしまった。

 

 集中砲撃が開始されるより一瞬早く包囲網に気付いたゴローと他数名のプレイヤーが迎撃態勢に移行する。

 

 「例えば今!」

 

 何故、高台が優位なのか。

 

 ➀ リスクが少ない

 ② エイム難易度が低い

 ③ 視界を広く持てる

 

 大分すればこの3つか。

 

 まず➀のリスクに関して。

 

 例えば高台と平地にある機体が同時に撃ち合いよろけた場合、追撃で格闘攻撃を捩じ込まれる確率が高いのは平地側の機体だろう。バトオペに於いて『登る』という動作は時間的なコストがあまりにも大きい。

 つまり、同じスキルで同じように被弾した場合に被るリスクがまず、圧倒的に違いすぎる。

 

 そして②のエイム関連。

 

 これも単純。

 上から見下ろす場合には敵の全体像が見えるが、下から見上げる場合には敵の土台となる部分が下半身を隠すため、単純に狙える面積が違ってくるし、地面に炸裂した際の爆風をダメージソースとするバズーカやキャノンと言う武装の価値が反転する。

 この上高台で前後左右にステップを踏まれれば、ロートルなオールドタイプに出来ることは無くなるだろう。

 

 最後に③の視界。

 

 上を狙わせる。

 下が見えなくなる。

 強襲機はフリスビーを見せられた犬のように喜んで空を見上げる馬鹿なおじさんの喉元を喰いちぎる。

 これもそう。

 単純明快な話でしかない。

 

 

 ◇

 

 

 「ナメるな」

 

 その上で何故、ゴローがヘイズル改をーーーひいては散弾をーーー信仰するのか。

 

 「そこだッ!!」

 

 ゴローが目をつけたのは橋の上に陣取るガンダム5号機。堂々と片膝をつき、5号機用G・ガトリングを乱射している。

 

 まず高台を有利とする条件②のエイム関連。

 ゴローのエイミングは通常の3倍は下手くそだ。

 過去5戦の平均値が31%を記録した程度にはド下手だ。

 

 そんなプレイヤーが射撃命中面積の狭い高台の敵機を狙う…当たるわけ(理屈)がーーー「ヒットぉ!!」ーーーあった。

 

 散弾の命中判定は通常の弾丸と違い、弾の全周に張り巡らされている。

 バズーカやビームライフルでは擦り抜けるであろう敵機頭上へと逸れた下手くそなエイムが、アッサリと着弾判定を記録して。

 

 「まだ…まだぁ!!」

 

 動けない敵機へクールタイム1.3秒の散弾が襲いかかる。

 武装切り替え無しで追撃をこなせる。

 切り替えに割く意識を他に回すことで、ゴローのような低スペック脳みそでも周囲への警戒を維持出来る。

 

 よろけた敵へもう一撃プレゼントし、即座にブースターで強襲機から距離を取る。

 

 「そりゃおっちゃんだって知ってるんだよぉ〜? ヘイズル改の評価。初心者向けのゴミだの、ギャプランの劣化だの、ナラティブの下位互換の骨董品だの…クソみたいな機体でレーティングに出るなだの、好き勝手言ってくれてんじゃん? その上おっちゃんの愛銃の拡散バズなんか対面で使ってる人すら見たことねーもん。けどそらぁふーひょー被害ッてもんじゃろ、Fuuuuu↓Hyoooooooooo↑↑」 

 

 ケラケラケラケラケラケラ。

 

 

 ーーー恐らくはストレスの影響です

 ーーー普段のゴローはもう少しマシなんよ?

 ーーー今日は荒れてんなぁ…パンツ脱いどこ

 

 

 そんな擁護? すら無視してゴローが飛ばす。

 画面の中ではヘイズル改が物陰に隠れた敵機相手にバカスカバカスカと散弾を撃ちまくり、雀の涙ほどの命中率を更に細かく蒸発させる。

 

 命中の是非など関係ない。

 上手くすれば無被弾で13秒敵を拘束出来るのだ。

 壁汎としては上々の戦略。

 

 「コレはぁ〜おじさん救済機なんですよぉ〜! 年老いて認識能力とか瞬間判断力が衰えたオールドタイプはね? 敵の行動を先読みして弾を置くしかないのよ。ビームライフルの照準が合った瞬間にトリガー引ける脳みそなんて無いし、一撃必中なんて集中力がもたんもの。車で言ったらオートマ? もっと言えば運転支援システム内蔵の高級品なわけ。ミッション乗りこなせる若者にはわからんじゃろーけどね、おっちゃんにはコイツが最強なんよ」

 

 無理してミッションの車に乗り、事故って他人の命を奪うより。

 

 「優れたシステムに頼る」

 

 それが正しい時もある。

 

 今回の戦闘ではゴローのチームが勝利した。

 

 アシストスコア1st

 追撃アシスト1st

 総合順位2stを記録。

 

 所詮老人の戯言である。

 だが、この世界は広い。

 若者が居れば老人も居る。

 

 強者が弱者を見て『お前はザコだ』と切り捨て続けるなら、バトオペをして良い人間はハイトップの一人だけ。

 使って良い機体もたったの1機になってしまう。

 

 下には下が、上には上が。

 そんな広い世界で、同じようにガンダムを楽しむ仲間なんだろ? 許してくれよ。

 おっちゃんを…おっちゃんの存在を。

 

 ちくしょう…ニュータイプめ、若者め。

 修正してやるぅぅぅ!!

 (カミーユ感)

 

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