酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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TS幼女おじさん「今日はバトオペできませんでした。ガクブル」

 

 「くっは〜! さっすがに疲れたぞー」

 

 

 その日、ゴローが住処へと帰宅したのは真夜中。

 時計の針は12時を過ぎていた。

 

 新型TS細胞の研究でアメリカに呼ばれ、2泊3日の遠征モルモット生活からようやく開放されたゴロー。

 下半身をマネキンおばさんに埋もれさせた状態で大きく背を仰け反らせた。

 

 「幼女ボディでも弾丸輸送はキツかったのだぁ」

 

 目尻に涙を浮かべながら背を伸ばし、横にひねり前へと曲げる。もしこれが40の肉体だったなら今頃身体中の筋肉は石のように硬くなっていただろう。

 これがTS細胞の神秘の一端か。

 

 翌日の心配はいらない。

 ストレッチすら不要、入眠姿勢も適当でOK、寝る前の摂取水分量を調節しなくても朝までぐっすり快眠できる。

 雑に寝て雑に起きれば全快している素晴らしい肉体。未だに幼化TSした肉体に忌避感のあるゴローではあるが、こうして実益を体感する度に気味の悪い科学者連中が目を血走らせて執着する事に頷けてしまう。

 

 「さて…と。それよりなんかあったんかぃ?」

 

 マネキンおばさんから抜け出し、駄々っ子パンチの逆回転でぐるぐると腕を回す運動をしながらゴローが声をかけた。

 

 出撃準備室に居るのはゴローともう一人。

 TS幼化人類警護隊の隊長を務める毛利サヲリだけ。

 おばさんから開放されて湯気立つゴローとは対象的にサヲリの顔色は優れない。

 

 アメリカに行くまでは普通だったのだが、帰りの道中では明らかに神経過敏で血色も悪いまま。

 (クソ)真面目なサヲリの性格を熟知しているゴローはあえて仕事となる警護任務中を避け、任務完了後の今問いただしたのだが。

 

 「はい、いいえ…その私は………いえ」

 

 要領を得ない返答。

 それも仕方あるまい。

 何故ならゴローの外見は5歳児相当だ。

 頭で理解していても見た目5歳の幼女にお悩み相談するのはキツい。

 

 それならばーーー。

 

 今一度マネキンおばさんへと乗り込むゴロー。

 

 「『今の私は清水トシコよ。さぁサヲリちゃん、オバさんに話してご覧なさい。今はオフなんですから、気を抜いても良いのよ』」

 

 ポカン…と口を開けたサヲリ。

 

 「『なんなら抱っこしてヨシヨシもしてあげましょうか? オバさんデ…豊満ですから、きっとリラックス出来るわよ』」

 

 「ーーーふ、ふふっ」

 

 お茶目にウインクする姿に、流石のサヲリも頬を緩ませて。

 

 「それなら、手を握っても良いでしょうか。マネキンじゃなくて、本物の…」

 

 小さな願いを口にした。

 

 

 ◇

 

 

 出撃準備室の中で、二人は壁に背を預けていた。

 対面にはハッチを開放したマネキンオバさん。

 顔から上半身がパックリと縦に割れた待機モードなのだが、地味に待機中のその目が怖い…と、いつもゴローは思う。

 

 隣に座るサヲリは先程よりも随分リラックスした様子であり、それとは逆にゴローは自分の手汗を気にしては落ち着き無く後頭部をガリガリと指で掻き乱す。

 

 「ーーーそれで、怖くなって。もし私一人だけだったらどうしようって。けど、少しだけ安心しました」

 

 サヲリ不調の原因はいつぞやの影女。

 

 「ポポちゃんな〜」

 

 「ポポちゃん?」

 

 二人の前に現れて、魔法のような何かを用いて一時ゴローを誘拐した犯罪者。

 

 「名前無いと不便だろ? 最初は八尺様っぽかったから略してシャクティとか思ったんだが、シャクティだとVガンダムに出てくるシャクティちゃんと名前がダダ被りしちゃうよなって思ってさ。可愛い系ならまだしもアイツって完璧に肉食系だったじゃん? そんでたまたま電話で話してたスミレがポポちゃんで行こうって言い出したんだ」

 

 ーーーうぅ゛ん。

 喉の調子を整えるゴロー。

 この身体の特性の一つをお披露目する。

 

 「『八尺様の鳴き声ってポポポでしょ? あとドラゴンボールにミスター・ポポって魔神がいるじゃない? ダブルミーミング的な!? いや待って! 待て待てステイよ』ってな」

 

 「凄い! ソックリです!!」

 

 「このボディってなんかこう言うの得意なんよな。まぁ低音は無理なんだけど」

 

 「続きお願いします!」

 

 目がキラキラと輝くサヲリ。

 顔のパーツも良いしスタイルだって(少し筋肉質な所を上手くコーデで誤魔化せば)抜群なんだし、毎日こんな目をしてればモテるのに…いや、仕事命みたくなってる現状を変えてあげなきゃどんだけ素材が良くたって春も夏も無いかーーーと、ゴローは頭の片隅で考えながら。

 

 「『モンハンに居たじゃん? 顔の無いマンモスみたいな草食獣! アレもポポだったし! もはやコレ、トリプルミーミングじゃない!? アーシ凄くない!? なくなくない!?!?』なんて言ってさ、それからあの影女さんのことはポポちゃんて呼ぶことにしたんよ。けどな〜やっぱポポちゃんて正真正銘の魔神なんかね? 鳥山先生もビックリだわ」

 

 アメリカへの遠征中にポポちゃんの襲撃を警戒したサヲリ。現地到着後の余暇を活用して事件の記録を整理して現地スタッフへの情報共有を行おうとしたのだが。

 

 「事件の痕跡もなく、私達以外で彼女の存在を覚えているのはスミレだけ…機材のデータだけならまだしも記憶まで消えるだなんて。本当に魔法か、いつか子供の頃に映画で見た記憶消失ライトでも使ったのでしょうか。だとしたら宇宙人? いえ現実的に見れば凄腕スパイの可能性の方が高いのですが、しかしあまりにも現実離れしたーーー」

 

 深刻な表情のサヲリ。

 繋いだ手のひらから彼女の緊張が伝わる。

 

 「変わらんな…」

 

 つい、ポツリと呟いたゴロー。

 誤魔化すように微笑んだその時。

 

 ピピーーーー!

 

 「何!?」

 

 奇妙な電子音。

 天井の蛍光灯が明滅する。

 ほんの一瞬光が消えたその時に。

 

 「『ーーーポポチャン」』 

 

 ビクリ!

 あの日の声をゴローは覚えている。

 異様な気配にサヲリが殺気立つ。

 

 ライトが点った瞬間。

 

 「『ワティシ! ポポチャン!!』」

 

 二人の目の前にはハッチを開放して縦に割れたマネキンおばさんの巨体。

 

 その(スピーカー)が声を発し。

 遠く離れた二つの目が。

 ギョロリ、と蠢いて二人を見つめた。

 

 

 「「ギャーーーーーーー!!」」

 

 

 室内には凄まじい絶叫が木霊し、二人はきつくお互いを抱きしめたのであった。

 

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