酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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ポポちゃんワールドサーキット

 

 【ピン・ポーーーン】

 

 

 久々に玄関のチャイムが鳴る。

 時刻は午前10時前。

 普段なら病院に居る時間だが、今日は向こうの先生の都合で通院がお休みの日だった。

 

 何時ぞやと違い、昨日は良い子でお薬を飲めたゴロー。頭の調子も悪くなく、果物類を中心とした朝食後に掃除や洗濯物を終え、そろそろ気になっていたアニメの2期でも見るかとーーーそう考えていた所だった。

 

 「宅配かな…?」

 

 パタパタトテトテと軽い足音でフローリングを抜ける。

 子供が走る理由の中には歩幅の違いがあるのではなかろうか。

 脳で進みたい速度と現実で進める速度差のギャップ、または有り余る若い活力の発露としても『走る・駆ける』と言う動作はとても重要な気がする今日この頃。

 

 そんなとりとめも無い思考を垂れ流しつつ玄関モニターを確認。そこにはいつもの管理人の姿があった。

 

 熊のように重圧な上背に恐ろしく太い二の腕。

 下手なヤクザよりも威圧感のあるラフでド派手なアロハシャツ。ケツアゴシャアにソックリなアゴを持つサングラス装備のナイスミドルだ。

 聞いた話では軍属時代のサヲリの元上官で、確か痴情のもつれ的なアレコレで退役した所をサヲリがスカウトしたとか何とか。

 

 『ゴロー、宅配だ』

 

 画面越しの野太い声。

 

 「はいはい、今開けますよ〜」

 

 実は今でも普通に怖い(体格差から来る本能的な恐怖がある)し、自分がTS幼女おじさんだと知っている男性の他人だ。無理やり女装させられた姿を見られるような嫌な羞恥心もあるのだが、信頼するスミレが大丈夫だと判断した相手に失礼な態度は取れない…と、そう思考する理性はある。

 

 「………ふぅ」

 

 1つ深呼吸してドアノブに手を触れて。

 

 「あ、せやった」

 

 直前に思いだした。

 電子戦が大得意な現代の怪異(ポポちゃん)に好き放題やられた苦い経験から、このドアにはアナログな覗き穴を追加してある。

 

 覗き穴から確認するため玄関脇の踏み台を手に取り「よっこいせ」と登った先にはーーー。

 

 「え…??」

 

 ーーー闇。

 

 ぐるぐると渦を巻く、宇宙のような暗闇が。

 

 【ピー…ガシャン】

 ゴローの認識を理解したようにドアのロックが外れる。

 

 「ちょ!」

 

 次にドアノブがゆっくりと回って。驚いた拍子に踏み台から足を踏み外したゴロー。

 

 「アッブ、え……えぇッ!?」

 

 ガチャリ、とドアが開かれて。

 ーーーゴローの朝に、非日常が襲来した。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「う〜〜〜〜〜ん…」

 

 頭が痛い。

 お薬はちゃんと飲んでるのに、頭が痛いぞぉ。

 痛みから感じる自分の命。

 嗚呼…おっちゃんは、生きてるんやなぁ…。

 

 ぼんやりと思考するゴロー。

 その眼前には大きな白いハコがあった。

 

 ゴローの住処は国から与えられた借家だ。

 面積は無駄に広く、使わない部屋も無数にある。

 ここはその内のひとつ。

 使う予定の無かった空き部屋だった。

 

 

 ーーーコンチハ〜! ポポちゃん配送をご利用頂き、アリアトー御座いヤ〜ス!!

 ーーー『『『『アリアトー御座いヤ〜ス』』』』

 

 

 目の前に居るのに何処か遠くから聞こえてくる、奇妙で一方通行なご挨拶を皮切りに赤地に白いラインの制服? を着た怪異の集団がドシドシとゴローの住処に押し入ってきたのだ。

 

 押し入り強盗ならぬ押し入りサンタ。

 それも顔がぐるぐる渦巻きの影でモザイクされたミニスカサンタだ。

 (外は灼熱のカンカン照りである。明らかに長袖で生地の分厚い彼女らの服装は異変である。唯一の救いは下半身のミニスカートか…8番出口、どこ? ここぉ??)

 

 彼女らはパニクるゴローに構うことなく粛々と任務を遂行。勝手知ったる他人の家とばかりに一切の無駄なく空き部屋までの動線を確保し、万が一にもゴローが怪我をする事のないよう配慮した上で機材を搬入、入った端からプログラムされた機械のように組み立てを開始。

 

 襲撃開始からジャスト1時間。

 

 

 ーーー『『『『『この度はァ! ご利用アリアトー御座いヤした〜!!』』』』』

 

 

 怪異の群れは嵐のように立ち去り、空き部屋には巨大なハコとゴローだけが残された。

 

 「………どうすっかな〜」

 

 白くて巨大なハコ。

 卵のような外見で、大人でも余裕で収納出来るスペースがある。

 その外装には『Here We Go! ポポちゃんワールサーキット!』との看板が掛かっていた。 

 

 中にあるのはバイクだ。

 以前ゴローが呟いた通り、今のゴローの身体にピッタリとフィットするサイズのモンキー125。

 

 「絆かなぁ…??」

 

 外装は大昔に流行ったガンダムのアーケードゲーム、戦場の絆に似た雰囲気を感じる。

 大きさは絆よりも大きい気がするが、どうだろう。

 今のゴローがTS幼女おじさんだからそう感じるだけな気もするが、いやでもやはりかなり大きい気がする。

 

 もう一度ハコの中に入ってぐるりと見回す。

 

 「………絆、かなぁ???」

 

 球状のハコの内側、ゴローから見た壁面にはデモ映像が流れている。天井は青空、眼前には国道、左右には町並み。

 バイクを中心にゆっくりと景色が流れて行く。

 

 自動車教習所のバイク体験マシーンに近い気はする。映像クオリティは段違いだが、バイクの疑似体験装置としての方向性は同じだと思う。

 

 現代の技術で再現可能な範囲で宇宙人が作ったオモチャ、そんな嫌なクオリティを感じて気味が悪い。

 ポポちゃんに悪気は無い(100%善意)のだろうが、ガチ恋にしてもやり過ぎではある。

 

 バイクの後輪左右には格好良い革のサイドバック。

 『さぁ乗れ! 俺に跨がれ!!』とバイクが言っている。そんな幻聴を感じはするが…。

 

 「えっと………また、今度ね?」

 

 ゴローは逃げた。

 今はとりあえず、頭が痛かったのだ。

 

ZZのコスプレ、誰を選ぶ?

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