酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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ポポちゃんワールドサーキット『HARD MODE』

 

 ポポちゃんワールドサーキットと言う謎のマシン。

 設置したのは怪異としか言えない謎の存在。普通なら無視するかサヲリを通じて自ら管理監督者たる国に報告するべき呪物。

 

 自分の体型ピッタリの衣服まで周到に用意してくる気持ち悪さに嘔吐までして、それでもゴローはこのマシーンの秘密を守り、本日で2度目になる起動実験に挑まんとしていた。

 

 囚人を連想させる黒いストライプのパンツとタンクトップ姿。

 その上に革のライダースーツを着込む。

 靴下の上に革のブーツ。

 何年も使い古したような(逆に)嫌なフィット感を意志の力で黙殺し、次にフルフェイスのメットを被る。

 

 これにより外見上の性別が消えた。

 小さな、おませな外見の子供がゆっくりとグローブを装着して。

 

 

 ーーーなぜ、このゲームにこだわるのか。

 

 

 理由はいくつか有る。

 

 ・まず単純に面白そうだと思ったこと。

 ・意味がわからない怪異ではあるし、怖すぎてゲロ吐いて泣かされた事実もあるが、それはそれとしてポポちゃんの善意を信じていること。

 ・一向に腕の上がらないバトオペ、そのマンネリ化から新しい刺激に飢えていたこと。

 ・何もかも見透かされている現実への反抗。

 

 他にもあるのだが今特に強く思うのは現実への反抗…つまり、父親としてのプライドだ。

 

 ゴローは自分の父親が嫌いだった。

 底が知れていて、しょうもなくて、母親に苦労だけかけて勝手に死んだあのマダオが大嫌いだった。

 

 父親は子供にとって凄い存在でいて欲しかった。

 いや、凄くなくても良い。

 どこか不思議で、見通せなくて、何かを隠し持ってくれていればそれて良かった。

 

 (はいはい、どーせコイツは家で酒を飲んで寝るだけの酒カス)

 

 そう、子供に思わせたく無かった。

 

 その為には何が必要か。

 秘密だ。

 子供には隠して絶対に見せない、親だけの秘密がなくてはならない。

 

 ミロのヴィーナスを思い出して欲しい。

 両腕が欠損したおっぱいお姉ちゃんの石像を。

 その欠落。

 見えない物、欠けている物、そうした『未知』や『余白』と言った物こそが美や尊敬を生み出すのだ。

 

 ひるがえって今のゴローはどうか。

 秘密どころか、あえて汚い言い方をするならケツ穴のシワの数すら把握されかねないほどに丸裸にされている。

 

 心の全裸だ。

 

 全裸で我が子に介護してもらうスーパーマダオ幼女こそ、今のゴローなのではないのか。

 

 愛娘(スミレ)の前で号泣した上にギュッと抱きしめられてヨシヨシポンポンされて背中をサスサスされて泣き止むまで面倒をかけた上にベッドで添い寝までさせてしまったあの日の苦い苦い苦い苦い苦い記憶は脳の深い中枢部で巨大なるトラウマとなり今でもポロポロと夢に見てうなされているのだ。(息継ぎ無し)

 

 泣きたい、泣けない。

 

 「このクソみたいな現実に抗う…その為にも、おっちゃんにはバイクが必要なんや…!!」

 

 暗い決意。

 残念なTS幼女おじさんは今、ポポちゃんワールドサーキットの扉を開いた。

 

 

 ◇

 

 

 「なんーーー! 馬鹿ゲーかよ!?」

 

 ゲームのスタート地点はゴローが国により監禁生活させて頂いている東京某所の高級高層マンション、その目の前にある国道だった。

 

 【ズキューーーン!!】

 

 特徴的なビームの音波が、アホほど怖いリアリティを伴ってゲーム筐体の中にある空気をズタズタに引き裂く。

 

 ゴローの頭上でRX-78-2(白い悪魔)がビームライフルを構えている。

 撃ち放った桃色ビームの飛沫が道路に落ちる。

 ジュワリ…とアスファルトを溶かす音と光景があまりにもリアルで、無いはずの臭いすら感じられる。

 

 この状況に最も近い臭い。

 

 灼熱のアスファルトにバケツの水を薄くぶちまけたような、懐かしい夏の臭いが生命の危機を刺激する。

 それによりゴローの手が、知らずアクセルグリップを強く握り締めていた。

 

 当たり前ながらバイクは動かない。

 しかし映像にて仮想の世界を示すモニターはアクセルの捻りとギアチェンジのアクションに反応して本物さながらに景色を変える。

 その加速する世界に連動し、衣服の各所に取り付けられたワイヤーが引かれて擬似的にG(重力加速度)を再現する。

 

 モニターの隙間には送風機があるらしく、ゲーム内のバイクのスピードにあわせた気流が筐体内部に生み出され、その久しい風の感触がゴローの意識を一段と深くゲームの中に誘い込む。

 

 エンジンの唸り、肉体への負荷、風の演奏、景色の乱舞ーーーその、あまりにも見事な没入感。

 贅沢でリアルな仮想の世界にしかし、ありえないガンダムがリアルに頭上で機動している。

 

 「何がどうなって…ッ!?」

 

 久々ながらも、TS幼女化前に身体に覚えさせていた動作が上手く作用して急発進出来たのは良かった。

 だがゴローの進行方向はガンダムがビームライフルを撃った方向と同じ。

 ほんの50mも進まない距離で、ビルの影になっていたガンダムの敵対者が見えてきた。

 

 「GQuuuuuuX(ジークアクス)!?」

 

 先程の一撃を受けたのか、一部が白熱化して白く煙る盾を構えながらツインアイを光らせる、その勇姿。

 格好良い…そんな感想に至るよりも早く滑らかな動作で腰を屈め、反撃のトメノスケ・H・ホーク[投擲]をガンダムへ向けて投げつけた。

 

 「は!? なん、下手くそがッ!!」

 

 パッと見でわかるほど、大きく狙いを外したH・ホークがゴローの頭上にあるビルの壁面を叩き壊す。

 

 「なんで…こわ! 怖ッッッッッッ!?」

 

 リアルでは絶対にしないような急ブレーキ。

 どうやって再現しているのか、後輪が浮くような感じでドリフト走行に移行。

 片足を強引に地面に下ろすが勢い良く跳ね返される。

 

 「コナクソッ!!」

 

 蹴りを連続して放つようにして地面の反発を押さえ込み、ガリガリと足裏が削られる感覚を味わいながら車体を支えて転倒しかけるバイクを保つ。

 

 グルグルと回る視界。

 ようやく止まったかと思った頃、空が陰った。

 

 「ーーー!!」

 

 天井を見上げるゴロー。

 そこには降り注ぐ無数の瓦礫。

 避ける術などなく、ゴローはその下敷きになった。

 

 明らかなる死亡。

 完全に暗転した、一筋の光すらない虚無の世界。

 

 ………訳が、わからない。

 だが心臓はバクバクと脈動してゴローの生存を伝えている。確かにお前は生きているぞ…と、その時。

 暗転した画面に赤い文字が浮かんだ。

 

 【GAME-OVER】

 

 光が告げる。

 ゴローの敗北を。

 

 【We look forward to your next visit.】

 

 「うぃー…? ろっく、ふぉ、ふぉろわーど? ………ねくすと、びしった……んん??」

 

 明るくなった筐体の中、英語を読めないTS幼女おじさんがバイクの上で頭を抱えた。

 





 次回はEASY MODEで挑戦しましょう。
 …と言うか、なんでゴロタスは最初にHARD MODEを選んだのかしら。と困惑する怪異さんが居たとか居なかったとか。

ZZのコスプレ、誰を選ぶ?

  • エルピー・プル
  • プルツー
  • ルー・ルカ
  • エル・ビアンノ
  • ハマーン・カーン
  • はにゃーん・かーん
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