酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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連載開始から約半年。やっと本名を名乗ったTS幼女おじさんのとある1日

 

 「お疲れさん、復帰おめでと!」

 「サヲリー乙〜♪」

 

 

 パンパン!

 炸裂した軽い火薬の香りと音、そして細いくるくるの紙テープの束が彼女を包んだ。

 

 「あ…ありがとう御座います」

 

 紙テープに包まれ、驚きから羞恥へと表情を変えるサヲリ。ゴローとスミレはかねてより、風邪でしばらくダウンしていたサヲリの現場復帰祝い、そして普段からの感謝を込めてちょっとした食事会のサプライズを企てていたのだ。

 

 「も〜サヲリってば、今日はまだ顔見せでお仕事の日じゃないんでしょ? 堅苦しくしちゃダメだよ!」

 

 「せやな」

 

 ウンウンと腕組みするゴロー。

 

 「てかぁ! やっぱしスーツで来たじゃん! アーシの読みは的中したよねッ!?」

 

 「せやせや」

 

 コクコクと首を縦に振るゴロー。

 

 「ほら、ちゃんとサヲリ好みの可愛い服用意してあるから脱いで脱いで! スーツはアーシがちゃんと掛けとくから! ほらほら急いで急いで時間は有限なんですよ〜!!」

 

 「う〜ん、パパンはリビング行ってるー」

 

 一人で3人分の姦しさを発揮するスミレに場を任せ、ゴローはトテトテと奥へと姿を消すのであった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 今回ゴローがパーティー会場に選んだのは普段使わない客間のひとつ。

 濃いクリーム色のフカフカした絨毯をベースにして中央に広めのテーブル。椅子は無く、他にも極力物を持ち込まないようにしていた。

 直に床に座ってゆったりと飲んでのんびりと話せるように、各々が好きなクッションを尻にして広々とした空間でお喋りを楽しむ。

 

 (絨毯は少し早いかと思ったけど、今日は気温低めだし空気は雨で湿ってるからいい塩梅になったな…)

 

 サヲリの趣味であるクラシック…オーケストラ? の映像を流す大画面テレビを見るともなしに眺め、絨毯の心地良い手触りに感心しつつ物思いに耽るゴロー。

 

 そこにスミレの声が刺さった。

 

 

 

「ーーーからぁ!? 『毛利』とかなん〜も面白みないじゃん! ネーム変えたほうが良いって!」

 

 昔はノンアルコールですら口にしなかった*1愛娘の成長に目を細めつつ、ゴローは二人の会話に意識を向ける。

 

 「『スミっ子crisis!』のビックリマークが意味不明で…。なんかこう、お姉ちゃん凄くモニョっとします」

 

 普段口数が少ないサヲリは酒のおかげか…はたまたスミレと一緒だからか、澄ました顔をほんのりと紅く緩ませてオツマミのチーズおかきの外周をカリカリと削るように噛り、一口、また一口と酒を嗜み猫のようにウニャウニャと口の中で何事かを呟く。

 

 「えーなんで〜!? 超可愛いじゃん!」

 

 サヲリとは対照的にケラケラと快活に笑いゴクゴクとチューハイ風のノンアルコール飲料を飲むスミレ。最近は『のんある気分』シリーズにハマっているらしく、今飲んでいるのは後味スッキリのレモンサワー………と。

 

 「そ~言えばさ、お父さんラインのネームって『マエダ』だよね? 前から気になってたけど何でマエダなん??」

 

 娘の素朴な疑問。

 5年前の娘は思春期の真っ只中。

 反抗期も激しく、中学生にはまだ早いと言う事でスマホの購入を見送っている内に病に倒れたゴロー。

 

 「あ〜…スミレには話してなかったんか」

 

 マエダ。

 それはゴローのアダ名である。

 

 「父ちゃん名前が前田(ゼンタ)やろ? 毛利前田(モウリゼンタ)とか言うクソふざけた名前ですやろ? 普通の人はモウリマエダって読むやろ?? ダブル名字とかモリゼンとかマエちゃんとかモリちゃんだとか…まぁ色々あったけど最終的にマエダがアダ名になってな…コレはその名残なんだな〜」

 

 「ダブル名字w マジで!? ウケる〜ー!!」

 

 そんなウケる事あるか?

 とは思うのたが、腹の底から楽しそうにケラケラと笑う可愛い娘の姿をみて気分を悪くする親など居ない。

 

 「同じクラスにマエダ君が居たのにや〜、ソレを差し置いて俺がマエダなんだぜ? バカかと」

 

 「ひひぇ〜wwww」

 「ふふ…!」

 

 可愛らしい娘達。

 サヲリは自分が不甲斐ないせいで顔を変えてしまったが、優しい笑い声だけはあの頃と何も変わらない。

 重苦しい後悔を押し隠して、ゴローは楽しげに過去を語る。

 

 「そもそも親がアホなんよ。キミらの爺さまにあたる酒カス野郎なんやけど、ソイツの名前が史郎なんよね」

 

 ゴクリ、舌を濡らしておかきを食べて。

 

 「8人兄妹の末っ子でさ、兄貴は上から一浪、次郎、左武郎と来て史郎だったらしくてやー。どうしても弟が欲しかったんだと。味噌っカスやったんやろね? あのオッサンは酒カスだったし兄妹でも最弱(奴は四天王の中でも最弱)のポジションでウダウダウダウダしてたんやって。

 でもまー父ちゃんのお婆ちゃんやって8人も産んだら流石に厳しかったらしくてな? そらなー? なんぼ昔の人やからっても無理があるぜと。そんなこんながあってさ、自分の子供が産まれたら後郎って付けようってずっと昔から決めてたらしい」

 

 「後郎…? ゴロー叔父さん!?」

 「初耳です!」

 

 グイグイと食い付く娘達に気を良くしたゴロー。

 その舌はぐるぐると熱を帯びる。

 

 「でなー。こっからがバカなんだけど、あの口下手なオッサンの話を要約すると『自分が数字の四じゃないから息子には五ではなく後の文字を当てたい』てのがあったらしくて『後があるなら前が無くては心地が悪い』だから『先に前田(ゼンタ)と言う名の長男を作った』てな事を抜かしやがったのよ」

 

 「え………??」

 「ゴロー叔父さんが先に…あれ??」

 

 「変なオッサンよなぁ。な〜んか知らんけど娘が産まれたときの事はぜんぜん考えてなくて、普通に男二人産まれるって思ってたんやって」

 

 謎の持論を持ってる口下手なオッサン。

 会話が出来なくて酒に逃げて、その上で酒に飲まれてボディランゲージ(DV)して、その現実が苦しくてまた酒に逃げる。

 

 自分も酒やゲームに逃げているカスではあるが、アイツを反面教師にしている限り大丈夫だと信じたい。

 まぁ…この子達の笑顔があるなら、きっと大丈夫だと思うのだが。

 

 「ま、そんな訳で父ちゃんのアダ名は三億年前からマエダなんよねー」

 

 へーだの、ふーんだの、キャハハハハ…だの。

 

 楽しげな娘達の声に癒やされながらゴローは思った。そろそろ誤魔化すのは止めようと。

 

 アイツのーーー弟の…墓参り。

 今なら、行ける気がした。

 

*1
少・中学生に酒モドキを勧めるクソ親父が実在するらしい。な、なんだってぇ!?

wキャラのコスプレ、誰を選ぶ?

  • やはり主人公! ヒイロ・ユイ
  • ココこそヒロイン! リリーナ・ドーリアン
  • お母さん! デュオ・マックスウェル
  • スネ夫! トロワ・バートン
  • 頑固ショタ! カトル・ラバーバ・ウィナー
  • オデコ紳士! 張五飛
  • 火消しの! ゼクス・マーキス
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