酔うじょオペレーション   作:マキシマムとと

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TS幼女おじさんの墓参り

 

 墓地は山の中にある事が多いらしい。

 

 背景としては昔からの風習があり、それを引き継いだ土地があり。他には人が生活を営む平地が山の中よりも価値があるから…と言った所だったか。

 

 

 毛利家の墓地もその例に漏れず、県道だか私道だかもわからない細い道路を抜けた先、車での乗り入れを拒む雑木林の木のトンネルの奥にあった。

 

 その道の傾斜は40℃前後の非常に急な上り坂で、道幅は大人が両手を広げれば左右の植物に手が触れる。

 そう書けばまだマシな広さに思えるが、足元の地面は所々が欠けたり割れてたりしているボロボロのアスファルト。歩行可能な場所には青々と苔が産して常に転倒の危険が伴う…と言うか、なんだったら足腰の弱い老人では登れないまである。

 

 そんな墓地へ続く地獄の山道はポポちゃんワールドサーキットの中でも忠実に再現されていた。

 

 「これが怖いんだよなぁ………」

 

 画面の中でゴローの愛車が坂にタイヤをかける。

 それと同時にこのゲームのコントローラーでもある車体を支える土台が傾き、現実となんら変わらない負荷をゴローに与える。例えるなら………そう、位置エネルギーを蓄えている途中の、ジエットコースターの上り坂のような角度に似ているのではないだろうか。

 

 違いは自動と手動。

 オートマチックに送られる地獄か、自らの意思で進まなくてはならない地獄か。

 

 「やっぱ…無理ゲーなのでは??」

 

 遠すぎてゴールが見えない坂道。

 スリップしづらいタイヤに変更する前にも一度挑戦し、スタートから2秒もかからず転倒判定を食らって車体から投げ飛ばされたトラウマがゴロー決意を鈍らせる。

 (ライダースーツ等と筐体を繫ぐワイヤーに宙吊りにされただけで身体的なダメージは無い。流石はポポちゃんクオリティである)

 

 「……………いや、行ける!」

 

 恐怖はあるし、無理臭いとも思っている。

 しかしポポちゃんワールドサーキットの『VERY HARD』を戦った自分が、MS1機も出現しない『NORMAL』モードで坂登り程度が出来なくてどうするんだと。

 

 「いっけぇぇぇぇぇぇーーーおわぁぁぁぁぁ!!」

 

 ギターが鳴くような新造エンジンの鼓動と回転。

 それに包まれ、悲鳴を上げながらゴローは坂道を駆け上がるのであった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「ーーーーーはぁ…死んだかとオモタ」

 

 そこは変わらずゲーム筐体の内部。

 しかし先ほどまでの景色とは一変、空は頭上に小さな青空と生い茂る落葉樹の葉が覆い、周囲には草木の壁、そしてゴローの眼前に灰色の墓標が並んでいた。

 

 「………誰かしらお参りしてくれてんだな」

 

 山の中。一応は集合墓地に分類されるが、ここには毛利家由縁の墓しか無い。

 少し放置すれば地面は落葉に埋め尽くされ、墓のコップやお皿は野生動物に転がされてしまう。

 墓に白い鳥の糞が付くのも見慣れた景色。

 

 しかし、現在の毛利家の墓はかなり整然と管理され、墓石は皆どれもピカピカに磨き上げられていた。

 

 「どなたか存じませんが、感謝」

 

 ヘルメットを脱ぎ、何となく髪の毛をガシャガシャと指で解して。誰にともなく手を合わせるゴロー。

 

 「………よし!」

 

 まずはご先祖様が祀られている祠に手合わせ。

 ペコペコパンパンと二礼ニ拍手一礼して長らくの放置を詫び、娘達の息災に感謝を述べる。

 

 「本当なら直接来て、形だけでも掃除するべきなのですが、どうぞお許しください」

 

 そして墓を下る。

 毛利家の墓地は上段と下段に別れており、上には『毛利家先祖ノ墓』と書かれた大雑把な寄せ墓(合祀墓と言うのかわからないが)と、ご先祖由来の四天王的な方々の名も無き岩の墓があり、下段には奥から順番にそれぞれの時代を生きた毛利家の方々が眠っている。

 

 「にしても…なんか懐かしい感じするなぁ」

 

 バイクを中心に世界が動くため、ゴローは一度墓の奥までバイクを押して歩き墓を眺める。

 親が親だった事もありゴローはご先祖様の事を詳しくは知らない。ただ何となく名前を眺めて歩くだけ。

 

 端に行き着いたら今度こそ目的の墓へ向かう。

 奥から順番に古い人が埋まっている。

 つまり、入り口の近くには。

 

 「おっ…!! さ〜すがに…いやまーそうだよな。流石にくたばったかぁ…妖怪爺ちゃん」

 

 手前から3つめの墓石。

 以前は毛利 豆野(マメノ)の名前だけだった墓石が真新しくなっており、豆野の隣に源八(げんぱち)の名が刻まれていた。

 

 毛利 源八。

 

 残念なマダオでしかなかったゴローの父の父。

 元祖マダオとなる妖怪爺。

 殺しても死ななさそうだった祖父も寄る年波には勝てなかったらしい。

 

 稲刈りやら草刈りやらシシ撃ちやらミカン狩りやら漁やらなんやら。

 

 弟と一緒に好き放題に連れ回され、奴隷よりはマシで小間使いのよりは酷い待遇(無給労働)をされながら野山を駆け回された苦い記憶と、妖怪爺のニヒルで嫌にダンディな悪い笑顔が脳裏に過ぎった。

 

 「せめて…葬式くらいは出てやりたかったけど………悪ぃなジッちゃん。婆ちゃんもゴメン、墓の下でも面倒臭いジジィの世話押しつけちまって」

 

 パンパン。

 手を合わせて冥福を祈る。

 そして隣の父と母の墓前に立つ。

 

 「母さん…ただいま」

 

 マダオが早死して、さて人生これからだ! …って時に交通事故で呆気なく他界した母。

 

 5年前も顔を見せず、帰ってきたと思ったらこんなちんちくりんの女の子になってしまった息子の姿に、彼女はどんな反応をするのだろうか。

 史郎くん(マダオ)の方は…まぁどんな反応しようがしまいがどうでも良いのだけれども。

 

 無心で手を合わせて母に帰還を告げる。

 

 「………さて」

 

 ここまでは良い。

 妖怪爺が死んでいたのは1つの変化点ではあるが、ほとんどは気持ちの整理が終わっていた事柄だ。

 寿命が見えていた年寄り墓参りなど、結局の所こうなる前にしていた墓参りの延長でしかない。

 

 問題はーーー。

 

 急に重さを感じるようになったバイクを、ゆっくりと押して。ゴローはその墓の前に立った。

 

 『毛利 後郎』

 

 やはり、あった。

 間違いようもなくその墓はあった。

 

 「よぉ…ゴロー………」

 

 若くして一流のジャーナリストとして名を馳せた弟。

 才能豊かで、何をさせても卒なく熟して。

 歳を感じさせない顔と身体。

 豊富な知識と軽快なトーク。

 兄の一歩も二歩も先を行く癖に、何故かやたらと犬のように付きまとうデカい困った俺の弟。

 

 「5年前は嫌でもテレビで顔見せてやがった癖に…なんかやらかしたのかと思って調べたらお前ーーー」

 

 

 【有名ジャーナリスト毛利 後郎 死去ーーー新型TSウイルス発症国と目されるC国にて取材活動中、新型TSウイルスに感染、発症。C国国立東●●病院で治療を受けるも死亡が確認された。感染防止の観点から遺骨は返還されずーーー】

 

 

 「兄より先に死ぬ奴があるか…馬鹿が、よぉ」

 

 どうせ俺が倒れたせいで無茶やらかしたんだろう。

 勝手に死んで。

 骨すら帰って来られなくなりやがって。

 

 やはりこの身体はダメだ。

 涙腺が脆くて脆くて…。

 

 止ようもなく零れる涙をそのままに、ゴローは弟の墓に向き合うのだった。

 

wキャラのコスプレ、誰を選ぶ?

  • やはり主人公! ヒイロ・ユイ
  • ココこそヒロイン! リリーナ・ドーリアン
  • お母さん! デュオ・マックスウェル
  • スネ夫! トロワ・バートン
  • 頑固ショタ! カトル・ラバーバ・ウィナー
  • オデコ紳士! 張五飛
  • 火消しの! ゼクス・マーキス
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