「あ゙〜〜〜〜ビールが染みるんじゃ〜」
ゴロー流血事件から今日でちょうど1週間。久々に配信を再開したゴローは開幕から酒に走っていた。
ーーー既に飲んでいる…だとぉ!?
ーーー心配したんだが( ꐦ◜ω◝ )
ーーーゴロたすぅぅぅぅう♡♡♡♡♡
ーーー永遠に全裸待機してた
ーーー生きててよかった…
ーーー目は大丈夫なんけ?
ーーー呑気なオネェさんですねぇ( º言º)
ーーー神様………
「いやスマネ〜! おっちゃんは元気やってんけどなー? お医者さんがうるさくってな〜?」
病院での検査結果は異常なし。
「例の血涙? 原因不明なのが悪くってさー、ありとあらゆる検査にどっぷり漬け込まれてよぉ? お酒の1滴すらも禁止されて過ごしたこの1週間はもぅマジでほんっっっっとうに面白くなかったんだよな〜もぉぉぉぉぉ!!」
解禁されたならこれまで我慢した分だけ飲まなきゃ損ですからね!! そんな意味不明な理論で酒をカパる。
オツマミに用意した鶏肉ジャーキー、その濃厚な肉の旨味が1週間に渡る病院食でモリモリと健康を取り戻したゴローの細胞にビリビリと刺激を与えてイクぅぅぅぅ!!
「そらおっちゃんもビックリしたけどさー? わからんモンはわからんでイーのに…な〜んであんな真剣に検査なんかするかな〜もー!!」
ゴローからすればそうだろう。
しかし世間では既にゴローの新型TS細胞を用いた新薬が製造・使用されている。
わからないなら、わからないなりに薬の使用に問題が無いことを立証しなくてはならない。
この1週間、不眠不休でこの難問を強引に処理した今のゴローの担当医は泣いても許されると思う。
「そんな訳でおっちゃんの元気は100%! 頑張ってバトオペやって行きましょ〜!」
ーーーそれより隣のウサギが気になる
ーーーウサギちゃんかわいーでちゅね?
ーーー中身オジサンがあざとさに走るのかぉぉん?
ーーー絵が好き過ぎてシコれない…
ーーースカーフ巻いてるのオシャレやね
そう。
今日の配信にはいつもと違う事がある。
いつもは着けない赤いスカーフを首に巻いたウサギ人形。ゴローがいつも『ウサさん』と呼んでいた人形がバトオペ配信に出演していたのだ。
「かわぇ〜じゃろぉ♡ 酔うオペch*1の公式マスコットとしてこれから頑張ってもらう兎丸くんに拍手!」
ーーーわ〜???
ーーー888888888
ーーーウサギマル? 古風な名前ですね?
ーーー88888!
ーーーんな事より俺に心配させた賠償としてパンパンチラチラを希望しますぞ♡(°᷄д°᷅)♡
ーーーあざと過ぎひん?
ーーー可愛いから…ヨシッ!!
そのようなちょっとした変化点を挟みつつ、ゴローのアバターが出撃ステージ選択に入った。
今回の選択肢は4つ。
・350 山岳地帯
・450 宇宙要塞内部
・600 ランダム地上
・750 北極基地
「450はガンダムが強すぎるし、そもそも宇宙は集まり悪いじゃろ? んで600はvガンまともに使えんからパス、750はF90のアイちゃんで戦えはするけど…あのサーフィンって戦ってる感じがしないからヤなのよね〜」
そんな消去法により選ばれた350コストだが。
「なんとかなれ〜…のジム・レイドくん!」
山岳地帯は高低差が激しく射線の通りも良い。
そんな戦場へ近距離特化型のジム・レイドで出撃すればどうなるか。
「痛って! 何処から撃たれ…うげ!? あんな遠くからスナイプしてくんの!?」
山陰のスナイパー。
視認すら困難な遠距離から、一撃が重い強よろけをピンポイントで脚に叩き込まれ。
「おまっ、このクソガキ!!」
アーチの上にお座りした可愛らしいジュアッグたんが、全くぜんぜん可愛しさのカケラも無い凶悪ロケットランチャーでジム・レイドの足を砕きに来る。
「まだ…あっ」
強よろけからの復帰を目前に、特徴的なホバークラフト走行で岩陰から姿を現した
何処かの誰かがバラ撒いた
◇ ◇ ◇
「う〜〜〜ん、惨・敗・☆」
ーーー戦犯乙
ーーー戦乙女と書いてせんぱんと読む幼女
ーーー射撃ステージでレイドは無いって三億年前から言ってるやつ〜
ーーーピクシー使えばまだマシなのに…
ーーー珍しく負けても機嫌良いじゃん?
ーーー酒飲みすぎなんだって
ーーーあく(禁酒)しろぉ!
「殴ってナンボの機体じゃ厳しかったわな〜…つーかドムに殴り合いでいっぺんも勝てんかった時点でおっちゃんの実力不足なだけなんじゃが」
一度ケチのついた相手にはなかなか勝てない。
「『勝ちたい』とか『見返したい』って気持ちがなぁ? 上手い人ならやり返すまでの手順を順序立てて実行するんだろーけど、おっちゃんレベルだとついつい突撃して玉砕しちゃんうんだわ。冷静になればわかるんだけど、やってるとわかんなくなっちゃってなー?」
はーまいったまいった。
そんな風に明るく失態を振り返りながら、遅々として上達しないバトオペを繰り広げるゴロー。
今配信の勝率はたったの20%だが、ゴローの表情は常に穏やかな余裕に満ちていたのであった。
◆
「ふぃ〜終わった終わったぁ!」
しかし今日のゴローは活気に溢れていた。
「最後はちょ〜っと上手かったよな! 高台からの狙撃をSGで永遠行動阻害して遅延したヤツ!」
ウサギ人形に、ではない。
誰とも知れない虚空へと、必ず届くと語りかける。
「それはそれとして、このステージはもうしばらく見たくねーわ。あ〜でもそろそろレイドくん以外の機体も使わなきゃだよな? エイムが簡単で誰が乗っても仕事出来るアホみたいな機体が欲しいけど、なかなか良い機体見当たらんのよな〜。新機体のゾロアットだっけ? アレは見た感じかなりおっちゃん向けなんだけどな〜…トークンが厳しくってなー?」
喋り倒しながらココアの袋を開く。
用意するコップは我が家から持ってきた陶器のコップ。それぞれに白ウサギと、黒ウサギが描かれている。
二人で選んだコップ。。
久々に使うから使用前に軽く洗って。
ココアは大さじ2杯に熱々のミルク。濃い目のココア好きな人だから、ミルクの量は少な目に。
仕上げに大昔に金比羅山のお土産として購入した木製のマドラーでクルクルとかき混ぜる。
「……飲んでくれたら、嬉しい」
囁くように呟いて、白ウサギのコップをテーブルへ。
黒ウサギのコップを手に、ゴローは寝室へと姿を消したのであった。
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