白を染めるいろ   作:サルノトラ

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目茶苦茶久し振りの更新です。リハビリも兼ねているので短いです。
もしかしたら何かしらの報告が有るかもです。


遭遇/相談は大事

午後からの授業をサボって学園から抜け出してから、さてどうしようか。と悩みつつも行く当てもなく適当に歩いていたら、いつの間にか見覚えのある神社に来ていた。

季節関係なく一年中咲き誇る櫻が花弁を風に乗せて舞っている。石段を登ろうかと一瞬だけ考えてから、仕方なく石段を登らずに腰掛ける事にした。

この神社は代々《大塚家》の人間が管理をしている神社で、《御柱(みはしら)神社》と言う。現在の管理者は大塚小白先輩だ。

他の場所に行こうにもあたしはこれでも《鴨居家》の跡取り娘なので目撃情報は必ず集まる。タイムリミットは《逢魔ヶ刻》迄だろう。

 

大事な幼馴染みであるまーちゃんに苛立って八つ当たりをしてしまった自分に嫌悪して項垂れて膝を抱え込んで丸くなってため息を吐く。視界の端に映るのは、悔しい程に綺麗な櫻の花弁が風に舞う様子だ。

程よい風が吹いて桜と木々の枝を揺らす。それは何の変哲の無い穏やかな日常として見えるだろう。

何も知らなければ、という前提が付くけれど。

 

何故ならこの櫻が咲くのは、犠牲となった《妖滅師》の魂を櫻の花弁として散らせて浄化してから霊脈に流れているからだ。そうして霊脈となって世界を巡り、新たな命として生まれ変わる。らしい。

この世界で信じられているのがこの考えだ。これが本当なのかは知らない。ただ興味が無いからとも言えるけれど。

 

本当に何も知らない一般人に生まれたかったなぁ……」

 

《妖魔》と闘い滅する事を使命とする《妖滅師》の一族に産まれた人間は誰だって考える事だ。誰だって生死について考えて死にたくないと考えるのと同じだ。

 

勿論、大智の様にテレビや漫画で見たヒーローの様に活躍して英雄に成りたいと願望を抱く人もいる。けど、その思いを持つのは男の子の割合が多い。

あたしの様な女の子は殆どが一般人として産まれて生きたかったと考えるのだ。

基本的に《妖魔》は《霊力》を持つ存在を襲って喰らう。存在する動物の中でたまたま人間が最も《霊力》を有していたから狙われているだけで、食物連鎖の一部として成り立っている。ただ、その方法が悪辣なだけで。《妖魔》にとって年齢や性別も関係なく自身の欲を満たせるなら見境が無い。だからこそ《霊力》を操り、手中に修めた《妖滅師》が囮になって闘っているから一般の人たちは平和に暮らせているのだ。

もっと感謝してくれて良いとは思うけど、万が一《妖魔》の存在が表沙汰になったらパニック処の騒ぎではない。恐怖や恐れを糧により強くなって支配下に置かれた人たちによって二次災害が際限なく拡大するのが目に見えている。なので人知れずに命を賭して闘うしか道はない。つら……。

 

誰が好き好んであんな化物と目合(まぐわ)いたいと思うのか。命もそうだけど、何より一番は貞操を死守しないといけないのが辛いのだ。

"喰われるだけならマシで、凌辱され穢されてから喰われるのが最悪な終わり方"と言われているくらいだ。

そんなのは絶対に嫌だ。気持ち悪いし。

 

それだったら其処らの男とかとする方が百倍も──ザッザザザザッ──ザリザリザリザリッ──

 

『見ィ付ゥけたァ』

 


 

はぇ~、スッゴイ大変そう。

 

それがお昼休みの時間にあった事を真白から聞いた時のオレの感想である。

おい、誰だポンコツって言ったの!出て来いよ!《霊力》で身体強化した状態で顔面往復ビンタしてやっからな!イテェじゃ済まさねぇからな!?

 

「二日前に(わたくし)が《大塚家》のお墓に墓参りに行った時に会いましたが、その時より相当に無理をしていたのは知っていましたが……」

 

そう言って湯呑みを持って湯気を昇らせる緑茶を飲む。うむ、美味い。流石は茶葉を生産している《御奉衆》のお爺ちゃんお婆ちゃん方だ。手間暇が掛かっているだけ優しさの風味だ。

 

「むぅ……ワタクシの真白たんになんたる暴挙をしたとカチコミをしたい所ですが、今回ばかりは簡単には行きませんわね」

 

「君は何事も物理で解決しようとする癖は直した方が良いね。けど白癒の現状は《鴨居家》の役目による避けようのない負責の積み重ねによる精神的なモノだから、取れる手段としてはカウンセリングをする事くらいかな?」

 

場所は学園の部室棟にある空き教室をオレが占拠して使用している《茶道部》の部室だ。

此処には《茶道部》の部長をしているオレ以外にも同じクラスでもあり、部員として所属している紋白と最近行動を共にしてくれる事が増えた許嫁の男の子の透が居て、オレの用意したお茶と羊羮を食べながら、真白の話を聞いていた。

 

「踏み込まれるのを嫌がっているから、どうしようって思って……でもわたしだけじゃ何も出来なくて……そう思ったら相談に来たんです」

 

助けたいのは山々だけどなぁ。そもそも白癒はかなり自立した子だし、この面子の中じゃ一番人の死に直面して見ているから精神的にも強いのだ。色々と積み重なってボロボロになっているけど立ち直るのも早いのだ。

 

それに《妖滅師》は程度の差はあれど、人の生死には直面するので否応なしに耐性は出来ていく。

オレは六歳の時の初任務と両親の死から始まって、《妖魔》との戦いや助け出した女性達を楽にする為に"終わらせてあげたり"とかな。幼馴染みの紋白だって任務で目の当たりにしている。当然に透もそうだ。真白も任務に出ているから経験もしている。

オレたちの認識としては、"一々気にして真面目に受け止めていたら身が持たない"となっている。

なので、そこまで問題では無いことではあるのだけど……まぁ、慕ってくれる後輩の一人に頼られたなら動かないと駄目だろ。

 

それに白癒はオレの《世話役》を務めてくれている小暮の妹と言うこともあり、無下には出来ないしなぁ。

 

「取れる手段も方法も多くあれど、先ずは話をしてみる他ありません。私も折を見て白癒とお話をする機会を設けたいと思います」

 

でもあまり期待はしないでくれな。嬉しそうに眼をキラキラさせているのが狛犬の仮面越しにでも分かるけどさ。いくらオレが歴代の《大塚家》の巫女の中でも最も強い力を持っていると言っても、所詮は戦って倒して《妖魔》を滅する為だけの力なんだ。

白癒の様に誰かを癒して救う力じゃない。本当に羨ましいよ。あの力は人を助けられる凄い能力なんだから。

 

小暮だって妹の白癒に背負わせてしまって申し訳ないって言っていたくらいだ。

それにオレは小暮に助けられて救われている。なら今度はオレが助ける番だろう。本来なら小暮の愛情は、白癒に注がれて然るべきなのにオレがそれを受けている。

真白だって本当は自分がどうにかしたいはずなのにこうして相談に来ているんだ。素晴らしい仲だろう。聞けば体質のせいで誰にも見付けられなかった中で唯一真白を見付けて此方側に連れ戻していたようだしさ。

真白の右手首に結ばれている年季の入った赤い紐の付いた鈴は良く手入れがされている。それだけ大切なモノなのだろう。

 

とても心配だろう。力になりたいだろう。それを押し殺しているのだ。可能な限りの事はしてみよう。




topics:《等級》
・数多く存在する妖魔に対して危険度を解りやすくする為に分けられた区分の事だよ。

上級・中級・下級と区分さていて、さらに細かく等級の中でも小分けに分類されているんだ。
その場合は松・竹・梅で区分けしている。
松は危険度=高
竹は危険度=中
梅は危険度=低
と言った具合にね。分かりやすく言えば、ゲームで良くあるモンスターとかの危険度表記さ

一例を上げれば、下級の松は下位の中でも強いと言うことだ。

この等級分けはとある才能に溢れる《妖滅師》が幼い身空で任務に出た事を境に設けられた制度だよ。
これのお陰で初陣の子達が無駄に命を散らす数が減ったんだ。凄いよね。
これの調査をするのは、《御奉衆》と呼ばれる普段は商店街で暮らす《妖滅師》達だよ。
彼ら彼女らが《橘家》の下部組織として情報を集めて精査して纏めているんだ。
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