桐藤ナギサと空崎ヒナは、実は付き合っている   作:再誕計画シリーズ

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三話

 

 崩壊した街を駆け抜け、ヒナはようやく簡易医療施設へ辿り着いた。

 焼けたアスファルトを踏み続けた脚は火傷で血に染まり、立っているだけでも激痛が走る。それでも背中のナギサを離すことだけはしなかった。

 

「誰か!」

 

 叫び声に、医療班の生徒たちが駆け寄る。

 

「重傷者です!」

「すぐ治療室へ!」

 

 ヒナは慎重にナギサを担架へ乗せた。

 離れていく手を見つめ、小さく呟く。

 

「……お願い」

「必ず助けます」

 

 その言葉を聞き、ヒナはようやく息をつく。

 ――その瞬間だった。

 耳を裂くような風切り音。ロケット弾が病院へ向かって飛来する。

 ヒナは反射的に銃を抜いた。

 

「させない!」

 

 乾いた銃声。

 弾丸はロケット弾を正確に撃ち抜き、空中で爆発する。爆風が病院を揺らした。煙の向こうから、新たな武装集団が姿を現す。

 

「病院ごと吹き飛ばせ!」

 

 銃撃が始まった。

 ヒナは瓦礫へ身を滑り込ませる。

 

(ここを抜かれたら終わる)

 

 病院にはナギサだけではない。

 傷ついた生徒たちが大勢いる。

 ここだけは、絶対に落とせない。

 ヒナは立ち上がった。機関銃を構えた敵へ一直線に駆ける。弾丸の雨を潜り抜け、一発。敵はその場に崩れ落ちる。振り向きざまに二発。さらに二人。

 息をつく暇もなく次の敵へ。

 飛来する手榴弾。

 爆炎。瓦礫が降り注ぐ。それでもヒナは止まらない。

 ロケットランチャーを構えた敵を見つける。

 跳躍し空中で照準を合わせ、射撃すると、ロケット弾が空中で爆散した。

 十分。二十分。三十分。

 戦いは終わらなかった。銃弾が肩を貫く。爆風が身体を吹き飛ばす。火傷した脚は感覚を失い、折れた肋骨が呼吸のたびに軋んだ。

 それでもヒナは立ち上がる。

 病院だけを見つめて。

 

(まだ終われない)

 

 その一心だけで銃を握る。

 敵が迫る。

 一人倒す。また一人。銃声は途切れない。やがて敵兵たちの表情が変わった。

 

「撤退!」

「この化け物は殺せない!」

 

 命令とともに武装集団は後退を始める。静寂が戻った。ヒナはその場へ膝をつく。《終幕:デストロイヤー》が手から滑り落ち、乾いた音を立てた。

 全身が血で濡れている。

 肩には銃創。腕には爆発で裂けた傷。焼け爛れた脚は、もう立っていること自体が奇跡だった。

 呼吸をするだけで胸が痛む。

 それでもヒナの視線は病院から離れない。

 

(守れた)

 

 その事実だけが、彼女を支えていた。

 医療班の生徒が駆け寄る。

 

「ヒナ様! 治療を!」

 

 ヒナは首を横に振る。

 

「……先に、中を」

 

 かすれた声だった。

 

「ナギサを」

 

 それだけを言い残し、一歩踏み出す。しかし脚は言うことを聞かない。視界が揺れる。膝が崩れた。倒れる寸前、なおも病院の入口へ手を伸ばす。

 

(生きていて)

 

 願いは、それだけだった。

 次の瞬間、張り詰めていた意識が途切れ、ヒナの身体は静かに地面へ倒れ込んだ。

 

 

 

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