桐藤ナギサと空崎ヒナは、実は付き合っている 作:再誕計画シリーズ
アリウス自治区の焼け焦げた廃墟の下に、その場所は隠されていた。
地下深く、カタコンベの最奥に広がる巨大な祭壇——苔むした石壁に刻まれた古の紋様が、不気味な赤い光を放ち、空間全体が異様な熱気に包まれていた。
中央にはベアトリーチェが立っていた。彼女の髪が揺れ、瞳には狂気と執念が宿っている。
祭壇の中央に鎖で縛られているのは、秤アツコだった。アリウスの「ロイヤルブラッド」と呼ばれる彼女は、血筋に秘められた神秘を持つ存在だ。
ベアトリーチェはその力を利用し、「色彩」と呼ばれる超越的な存在を呼び出そうとしていた。アツコの顔は青白く、抵抗する力さえ失っていたが、彼女の瞳には微かな反抗の光が残っていた。
「無駄ですよ、貴方の血は私が『ナプキンを取る者』となるための鍵になるのです」
ベアトリーチェの声は冷たく、儀式の準備が最終段階に差し掛かっていたことを示していた。
祭壇の周囲には、アリウスの残党が配置され、奇怪な呪文を唱えていた。地面に描かれた魔法陣が脈動し、空気が歪むような感覚が広がる。ベアトリーチェは両手を広げ、高らかに宣言した。
「『色彩』よ、顕現しなさい。この血と魂を捧げ、私に無限の力を」
その瞬間、アツコの体から赤い光が溢れ出し、魔法陣が一気に輝きを増した。空間が震え、何か得体の知れない存在が現れようとしている気配が漂った。
その時、地下への通路を突き破る爆音が響き渡った。アバンギャルドシリーズを身にまとった空崎ヒナが、強化スーツのブースターを全開にして祭壇へと突入してきた。
彼女の手に握られた最新鋭の銃が火を噴き、アリウスの残党を瞬時に薙ぎ払った。
ドローン型の支援ユニットが周囲を旋回し、敵の動きを封じる。
「貴方がベアトリーチェ……ここで消えてもらう」
ヒナの声は怒りに震えていた。彼女の瞳には、桐藤ナギサを救う決意と、ベアトリーチェへの憎しみが燃えていた。
ベアトリーチェはヒナを見て、不敵な笑みを浮かべた。
「来ましたね、空崎ヒナ。貴方の力は、私を完成させる最後の欠片です。『色彩』を掌握した私が、運命を握る者となる瞬間を、見届ける権利をあげましょう」
ヒナは即座に銃を構え、ベアトリーチェに向かって引き金を引いた。だが、弾丸は祭壇から放たれる異様なエネルギーに阻まれ、空中で蒸発した。ベアトリーチェが手を振ると、魔法陣から黒い影が這い出し、ヒナへと襲いかかった。
儀式が進むにつれ、「色彩」と呼ばれる存在の輪郭が現れ始めた。それは形を持たない光と闇の奔流であり、見る者の精神を侵すような圧倒的な力を放っていた。ベアトリーチェはアツコの血をさらに引き出し、彼女の命を吸い上げるように儀式を加速させた。
「これが私の力ですよ、空崎ヒナ。桐藤ナギサから奪ったものも、この『色彩』に溶け込んでいる。彼女を取り戻したければ、私を倒してみなさい」
ヒナの胸が締め付けられた。ナギサの視覚と運動機能を奪った力が、この「色彩」に宿っている——ベアトリーチェの言葉が、彼女の決意をさらに固めた。
ヒナはアバンギャルドスーツの出力を最大に引き上げ、ドローンに援護射撃を命じた。黒い影を切り裂きながら、彼女は祭壇へと突進した。
「ナギサが大好きだから、私は戦う。あなたなんかに、彼女を渡さない!」
その叫びは、祭壇全体に響き渡った。ベアトリーチェの笑みが一瞬歪み、彼女は「色彩」の力を引き出してヒナを迎え撃った。
「不可能です。これが運命なのですから。そして、私は『最初にナプキンを取る者』であることを、貴方の死で証明しましょう」
ヒナはベアトリーチェの言葉を聞いていなかった。いや、聞くつもりすらなかった。彼女の耳に届くのは、桐藤ナギサの掠れた声——「ヒナ、やめて」という懇願だけだった。ナギサの目が見えず、体が動かない姿が脳裏に焼き付き、ヒナの心を突き動かしていた。
「黙って! ナプキンだの運命だの、そんな戯言はどうでもいいわ!」
ヒナの叫びが祭壇に反響し、彼女はアバンギャルドスーツの出力をさらに引き上げた。
銃弾が尽きると、強化された腕で直接黒い影を殴り潰し、祭壇へと肉迫した。ドローンが周囲を旋回し、爆発物を投下して敵の動きを封じる。ヒナの攻撃は必死で、感情に突き動かされた猛攻だった。
ベアトリーチェは冷笑を浮かべ、ヒナの無謀な突進を見据えた。
「聞いてないませんね、空崎ヒナ。貴方は私の言葉を理解する知性すら持たないのか。『最初にナプキンを取る者』とは、運命を自らの手で掴む者です。貴方がどれだけ足掻こうと、私がそれを奪う」
彼女が指を鳴らすと、「色彩」の力が一気に膨張した。祭壇から溢れる光と闇の奔流がヒナを包み込み、彼女の動きを一瞬止めた。ベアトリーチェはアツコの血をさらに引き出し、儀式を加速させた。
「貴方の力も、桐藤ナギサの力も、全て私が掌握する。私が女王となり、運命の頂点に立つのです」
だが、ヒナは止まらなかった。アバンギャルドスーツが悲鳴を上げるほどの負荷をかけ、彼女は「色彩」の奔流を突き破った。
額から血が流れ、装備の一部が焼け焦げていたが、彼女の瞳にはナギサへの愛が燃えていた。
「ナギサを救う!! そのために、貴方は……ここで! 今ここで!」
ベアトリーチェに攻撃が届くく寸前、ヒナは最後の銃弾を放った。弾丸は「色彩」の障壁を貫き、ベアトリーチェの肩をかすめた。女王の冷徹な表情が初めて歪み、僅かな血が祭壇に滴った。
アトリーチェは目を細め、低く呟いた。
「……空崎ヒナ。貴方のその執念、試してみる価値はあるかもしれない」
彼女が手を振ると、「色彩」がさらに膨張し、祭壇全体が震え始めた。アツコの命が尽きかけ、儀式が完成に近づく中、ヒナとベアトリーチェの戦いは更に加速する。
アリウス自治区の地下祭壇は、戦いの熱気と「色彩」の奔流で歪んでいた。ベアトリーチェは冷徹な女王のごとく祭壇の中央に立ち、鎖に繋がれた秤アツコの血を魔法陣に滴らせていた。
空崎ヒナはミレニアムのアバンギャルドシリーズを駆使し、黒い影を切り裂きながらベアトリーチェに迫る。だが、その猛攻を前にしても、ベアトリーチェの表情は揺らがなかった。
彼女は手を軽く挙げ、ヒナの銃弾を「色彩」の障壁で弾きながら、静かに語り始めた。
「空崎ヒナ、貴方は分かっていないようですね。私が求めるのはフェアな戦いです」
ヒナの動きが一瞬止まり、彼女は眉を寄せてベアトリーチェを睨んだ。だが、攻撃の手は緩めず、ドローンに援護射撃を命じながら反撃を続けた。
ベアトリーチェはそんなヒナを見据え、冷たい声で言葉を続けた。
「卑怯な存在は強い者ではない。姑息な手段で勝ったとしても、それは『最初にナプキンを取る者』には相応しくない。フェアな戦いこそが、この儀式に捧げるべき試練です」
祭壇の魔法陣がさらに輝きを増し、アツコの命が吸い取られる音が響いた。ベアトリーチェの瞳には、狂気と同時に奇妙な純粋さが宿っていた。
「私は貴方を試している。貴方が私に挑むなら、正々堂々と立ち向かいなさない。卑劣な奇襲や策略ではなく、純粋な力で私を倒してみなさい。それが、私が『色彩』を掌握し、運命を握る者となるための証明になるのですから」