お気に入りが2桁になりました。
嬉しい限りです。
「(・・・あれは、残月・・・!)」
リィンは驚愕し、言葉を失う。
目の前の少年が放った技、それは紛れもなく自身と同じ流派の八葉一刀流の型の1つである残月だった。
「(それにあの切り口・・・)」
彼の切った化け物の足を見る。
まるで切られた部位が切られたことにすら気づかなかったかのように、まるで最初からそこにあったかのように存在していた。
「今だ!追撃!」
思考の海に入りかけたリィンをレナの号令が無理やり現実へ連れ戻す。
今は思考にふけっている場合では無い、この場を切り抜けなくてはならない。
太刀を構え直しリィンは仲間たちと共に化け物へと斬りかかった。
「紅葉切り!」
「ゲイルスティング!」
「クイックスラスト!」
「ARCUS駆動、アクアブリード!」
「スピアスパーク!」
リィン、ガイウス、ユーシス、エリオット、レナの5人で一気に攻める。
化け物の角が欠け、羽根が折れ次第に動きも鈍くなり始め、そこにミナズキも駆けつけ太刀で化け物を斬りつけていく。
「gr・・・」
そうして少しの間総攻撃を加え続けとうとう化け物は最期に1つ唸り声を上げ、その場に倒れ伏し消滅した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「やった・・・のか?」
「何とか凌げたか・・・」
「あぁ、なんとかなったな・・・!」
息も絶え絶えなエリオット、確認するようにつぶやくユーシス、槍を構える手を少し弛めたガイウス、そして太刀を納刀しミナズキとレナに向き直るリィン。
「ありがとう、2人が来なかったら危うくやられていたところだった」
「なぁに、礼ならこのミナズキに・・・おや、どうかしたかねミナズキ?」
「・・・・・」
礼を言うリィンにレナが返すが当のミナズキは太刀を抜いたままで一方向を見つめていた。
そこは丁度さっきまで戦っていた化け物が銅像として鎮座していた台座、その正面の位置にあるもう1つの石像だった。
「ミナズキ、あれがどうかしたのかね?」
「あの位置にあって全く同じ見た目でこの状況・・・動かない方が不自然だろ」
「いや、いやいやいや」
レナの質問に答えるミナズキとその発言に半ば願いすら込められた否定をするエリオット。
パキ、パキパキ─── 。
しかし無情にも先程自身が聞いたものと同じ音が石像から響きエリオットは青ざめる。
「嘘ぉ!?」
「流石に厳しいか・・・!」
「やるしかあるまい!」
「もう1度だ!ここも切り抜ける!」
「2度目とは・・・少しだけくどいねぇ」
「面倒だな」
唖然とするエリオット、少しだけ苦い顔をするガイウス、奮起するユーシス、太刀を構え周りを鼓舞するリィン、この状況に少しだけ飽き始めたレナ、そしてあからさまに面倒くさそうなミナズキ。
全員が色んな気持ちを抱きながら戦闘に備える。
そして石の軋むような音が止むと同時に化け物が降りて来るその瞬間だった。
「下がりなさい!」
どこからともなく飛んできた矢が化け物に直撃、体勢を崩した化け物は床に不時着する。
「そこです!」
そこに真面目そうなメガネの女子、エマの魔導杖による攻撃が加えられ更に化け物にダメージを与えた。
「砕け散れ!」
駆けつけた青髪の女子、ラウラもまた巨大な剣を振るい化け物に強烈な一撃をお見舞いする。
「君たちは!」
「どうやら無事みたいね!」
エリオットの声に先程矢を放ったであろう金髪の女子、アリサが応える。
1体目の時とは打って変わって全員で攻める、何故か少しだけ他のメンバーが何をするか何となく分かった。着実に化け物にダメージを与えられている。
だがまだ少し攻めきるには足りない。
そんな時だった。
「まあ、仕方ないか・・・」
「よし、間に合ったか」
銀髪の女子、フィーとマキアスがダンジョン区画を抜け合流してきた。
「導力銃のリミットを解除・・・喰らえ、ブレイクショット!」
マキアスの放った弾丸は化け物を怯ませ隙が出来る。
そこをすかさずフィーが素早い動きで化け物の頭上を抜け、後脚を一気に斬りつけた。
あまりのダメージに仰け反る化け物、そんな状態を今のⅦ組が逃すはずは無かった。
「勝機だ・・・!」
「あぁ」
その時一瞬だがⅦ組の面々は自分と他のメンバーが淡く光っているように見えた。
そして何より誰が次にどこからどう攻撃するのかが不思議と手に取るように分かった。
「今だ!」
「任せるがよい!」
全員の隙のない攻めに堪らず仰け反った化け物、その首を飛び上がったラウラが一撃で両断した。
化け物の首、そして胴体は石に戻りそして紫色の光とともに消滅した。
戦闘後一同は円となり話し合う。
最後のアレは一体なんだったのか。
全員が淡い光で包まれ皆の動きが手に取るように視えた、普通ではどうやってもありえない。
連携と言っても今ここにいる全員は今日初めてあった者しかいない、そもそも連携だとしたらあの光は何なのか、そして1つの回答に辿り着いた。
「もしかしたらさっきの力が」
「そう、ARCUSの真価ってわけね」
答えを言おうとしたリィンに合わせるように声が聞こえる、声が聞こえたのは出口でそこには自分たちを地下へ落とした張本人のサラが立っていた。
「いやーやっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん、お姉さん感動しちゃったわ」
ぱちぱちと拍手をしながらサラは笑った。
「これにて入学式の特別オリエンテーリングは終了なんだけど・・・何よ君たち、もっと喜んでも良いんじゃない?」
「よ、喜べるわけないでしょう!」
「正直、疑問と不信感しか湧いてこないんですが」
「単刀直入に問おう、特科クラス《Ⅶ組》─── 一体何を目的としているんだ?」
サラの不満そうな言葉にマキアス、アリサが逆に不満を爆発させ、ユーシスが質問を返す。
だがユーシスの言う通りで現状何も分かっていないのは事実であり、そこは皆気になっていた。
ユーシスの言葉にふむ、そうね。と頷いたサラは説明を始めた。
「君たちが《Ⅶ組》に選ばれたのは色々理由があるんだけど・・・1番分かりやすいのはそのARCUSにあるわ」
その言葉に全員自分が身につけているARCUSを開き見つめる。
「エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で開発した最新鋭の戦術オーブメント、様々なアーツを使えたり通信機能を持っていたりと多彩な機能を秘めているけどその真価は《戦術リンク》先程君たちが体験した現象にある」
《戦術リンク》・・・先程の全員がそれぞれ繋がったような感覚の正体がまさしくこれだった。
これを戦場で使いこなせればその恩恵は絶大であり、どんな状況下でも互いの行動が把握出来て最大限に動ける理想的な精鋭部隊になる。そしてそんな部隊がもし存在すればあらゆる高度な作戦が遂行可能になる。
まさに戦場における革命といえた。
だが1つだけ問題があった。
「でも現時点だとARCUSには個人的な適正に差があってね・・・新入生の中で君たちは特に高い適性を出したのよ。これが君たちが身分や出身を問わずに《Ⅶ組》に選ばれた理由でもあるわ」
サラの説明に納得、偶然の塊のようなクラスに唖然とする皆の前でサラは続ける。
「トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君たち11名を見出した。でも、やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算に余裕がある訳じゃないわ。───それと、本来所属する予定だったクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で《Ⅶ組》に参加するかどうか改めて聞かせて貰いましょうか?」
真剣な面持ちで聞いてくるサラに対し皆互いを見合う。断った場合はどうなるのか、等の思考が頭の中を過ぎる。
「あ、ちなみに断った場合は本来所属する予定だったクラスになるわよ?貴族ならⅠ組かⅡ組に、それ以外ならⅢ~Ⅴ組ね。今ならまだ初日だし溶け込めると思うわよ?」
サラの言葉を聞いたミナズキは他の面々の参加理由を聞き、少しだけ天井を見つめた。
「(俺にはなにかやりたいことあったかな・・・)」
しばらく考えてもこれといったものが見つからない。
「ちょっと、大丈夫?」
そんな風にしているとサラから声がかかる、他の面々も少し心配そうな顔で見てくる。
「少し考えてただけだ」
「そう?決めてないのは貴女とその隣の子だけよ」
隣?そして横を向くとレナがニヤリと笑っていた。
「ふむ、ではトリは君に任せよう。レナ・レトロノーツⅦ組に参加しよう!まぁ、理由としてはその方が退屈しなさそうだからだねぇ」
「ハードになるけど大丈夫かしら?」
「構わないとも!それと教官、私が!貴族生徒に溶け込めると思うかね!?」
「あーうん、無理ね」
わざとらしい仕草と言い方にサラですらちょっとだけ引く形でレナはⅦ組に参加した。
「・・・ミナズキ・バンシア、Ⅶ組に参加する」
「理由を聞いても?」
ミナズキの参加に対し理由を聞くサラ、そんなサラに視線を返しミナズキは答える。
「今のところ何かをやってみたい、という目標が無いからだ。なら何かしら刺激があるクラスにいた方が良い、それだけのことだ」
素っ気ないミナズキの返しにサラは頷く。
かくしてミナズキとレナはⅦ組に参加することになった。
ご拝読ありがとうございました。
何時もより切れる場所がなかったので少しだけ長くなりました。
次話もよろしくお願いいたします。
もうすぐ原作で言うところの自由行動日になります。ミナズキの過ごし方を幾つか考えていますが、どれが良いでしょうか?
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リィン達と旧校舎の調査(原作に沿う形)
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レナに誘われ帝都へ(帝都で情報集め)
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単独行動(他クラスの生徒とやり取り多数)
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図書館へ(オリキャラに会いにいく)