英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。

生存報告です。

⚠︎注意⚠︎
今回の後半は読む人にとってはキツイと感じる内容が含まれております。
ご注意ください。
あと少しタグが増えました。



95.月の光は不器用に、しかし寄り添うように 前編

 

バルフレイム宮、第二迎賓口───

 

「いや、本当に助かった。僕たち兄妹共に士官学院に足を向けて眠れないな」

事件の翌日、Ⅶ組とサラはバルフレイム宮へと足を運んでいた。

 

まだ夏至祭は続いているがそれでもとオリヴァルトがせめて一言お礼が言いたいという事でⅦ組を呼んだのだ。

 

「いや、そんな・・・」

「恐れ多いというか・・・そもそも主に活躍したのミナズキだし・・・」

オリヴァルトの言葉にリィンとアリサが言葉を濁す、だがそれをアルフィンが遮った。

 

「謙遜しないでください。帝都各所での騒動、いつの間にか呼び出されていた魔獣たちから近衛兵たちを助けながらクリスタルガーデンまで救援に来てくれたこと、本当に助かりました。」

そう言ってアルフィンが頭を下げ、その姿にⅦ組は慌てて止める。

 

「か、顔をお上げください!」

マキアスが慌てて声を上げるがアルフィンは止まらない。

「いいえ、皆様のおかげで帝都の民も近衛兵たちも守れました。せめてお礼を言わせてください」

「私からもお礼を言わせてください、ありがとうございました」

アルフィンに続きエリゼも頭を下げた、今回の騒動に巻き込まれた2人に頭を下げられてしまってはⅦ組も頷くしかない。

 

「も、もうわかりましたから・・・!」

「頭を上げていただきたい!」

いたたまれなくなったエリオットとユーシスが慌ててアルフィンとエリゼの頭を上げさせると2人はニコリと笑って頷いた。

 

 

「そう言えばなのですが、ミナズキとあのアイネという少女がいないようですが・・・」

「まぁ、こちらもレナさんが帰ってしまって居ませんが・・・」

ふと、ラウラが問い掛ける。それに合わせるようにエマも心配そうに言葉を漏らす。

レナがここに居ないのは朝から体調不良を訴えていたからだ。事実顔色は悪くとても特別実習を続けられる状態ではなかった。

 

それを聞きオリヴァルトが思い出すように顎に手を当てる。

「それなんだが、何か気がかりがあるみたいでね・・・今朝、マクダエル議長を見送って護衛任務が終わるとすぐにトリスタに向かって行ったよ、何故か慌てたようにね。アイネ君も同様に今朝の時点で護衛任務が終わったら慌てて帰ってしまったよ、まぁ彼女の場合は母親から家に戻ってくるように言われたかららしいがね」

 

 

苦笑いを浮かべながらオリヴァルトは今朝の出来事を振り返る。

 

 

今朝8:00、ヘイムダル中央駅ホーム───

 

 

「ではオリヴァルト殿下、例の件出来ればでよろしいのでよろしくお願いします」

「えぇ、わかっております。上手くいくかは分かりませんが出来る限りの説得をしてみましょう」

なにかの約束をしたのかマクダエル議長はオリヴァルトに頭を下げる。それに対してオリヴァルトは力強く頷いた。

 

次にマクダエル議長はオリヴァルトの後ろに控えているミナズキとアイネの方へと歩いて2人の前で止まる。

 

「短い時間だったが本当に世話になってしまったな、ミナズキ殿、アイネ殿。帝都巡り、とても楽しい時間だった。」

「いえ、これが今回の任務でしたから」

「またね、おじいちゃん!」

軽く頭を下げるマクダエル議長に対してミナズキは頭を下げ返し、アイネは笑って手を振る。

 

それを見てマクダエル議長は笑いクロスベル行きの列車に乗り込む。

その後少ししてから列車は動き出した。

ちらりと見えた車窓からマクダエル議長が手を振るとミナズキは静かに会釈をしアイネは笑顔で手を振った。

 

やがて列車が見えなくなるとオリヴァルトは2人に向き直るとお礼を言い始める。

「さて2人とも、今回の護衛本当にありがとう。おかげでマクダエル議長も守れたし帝都を満喫してもらえたよ」

「いや、これも任務だからな・・・」

「あたしも楽しかった!」

オリヴァルトの言葉にミナズキもアイネも穏やかな表情で返す。

そうしているとアイネの持っている連絡用刻印石が光り文字が浮かび上がる。送信主はアイネの母親だ。

 

「うん?・・・・あ、やばっ」

ちらりと石を確認したアイネだったが文面を読むにつれて顔色はどんどん青くなっていく。

そんな様子に異常を感じたミナズキが声をかけた。

 

「アイネ?何かあったのか?」

「・・・・・お母さんから連絡、『ろくに連絡も入れないでなにしてんの?』って・・・・」

ミナズキの問いにアイネは顔を青くしながら返す。

恐らくは親としてアイネの動向が心配だったのだろう、しかしアイネは帝都を楽しむことに夢中になり連絡を怠っていた様でアワワと慌てながら刻印石で返事を用意していく。

 

「『大丈夫、今色々終わったところ』・・・よし、これなら・・・あばばば!」

返信をし終えたアイネだったが今度はよく分からない声を上げそのまま刻印石を手から落とす。

ミナズキが拾い上げるとそこには『終わったらなはよ帰ってこい』との文字が浮かび上がっていた。

 

「アイネ、連絡はちゃんとしておいた方が良いぞ?」

「わ、分かってるよ!でも帝都楽しすぎて・・・あわわわ!」

ミナズキが注意しながらもアイネに刻印石を渡す、アイネは反論していたが新しく届くメッセージに更に慌てた。

 

『罰として次の鍛練の合格基準を引き上げます』

 

この一文を読んだ瞬間アイネは帝都博物館にあった絵画である『叫び』にも似た表情で悲鳴をあげる。

 

「ごめんミナズキ!それに殿下も!あたしすぐ帰らなきゃダメみたい!」

そう言いながらアイネはドタドタと走り出す。

ミナズキとオリヴァルトが止める暇もなく彼女は帝都の喧騒の中に消えて行った。

 

「騒がしいな・・・・ん?」

いきなり帰ってしまったアイネに呆れた声を漏らすミナズキ、そんな彼の刻印石にメッセージが届く。

「『またね、今度アル・カフラに遊びに来てね』か。オリビエ、すまない。まさかあんな風に帰るとは」

「いや、昨日の時点で山場は越えてたから大丈夫さ、それとその石は一体なんなんだい?」

アイネの事で謝るミナズキ、それをオリヴァルトは特に気にした様子もなく、むしろ連絡を取るための石の方が不思議に感じたようだった。

 

そう言えば秘密だったな、と頭の中で軽く愚痴を零しながらミナズキは続けた。

「ごめんオリビエ、これは秘密だから言えない。アイネは多分慌ててたから見せちゃっただけだ」

「なるほど、まぁ乙女には1つや2つ秘密がある物さ♪それとミナズキ、君はどうする?アイネ君はもう帰ってしまったし君もⅦ組と合流して特別実習を続けるのもありだよ?」

そう提案してくるオリヴァルトにミナズキは考えるように唸り横を見る。今しがた出発したトリスタ方面行きの列車が目に映り───

 

一瞬、車窓に今にも死んでしまいそうな顔をしたレナが見えた気がした。

「・・・・・・レナ?」

つい言葉が漏れる、もしかしたら見間違いかもしれない。動体視力には自信はあるがそれでもはっきり見えた訳ではない。

しかし、何故かミナズキには不思議とそれが見間違いでないと思えた。

「・・・・オリビエ、俺はトリスタに帰るよ」

「え?どうかしたの「悪い、ちょっと大事な事を思い出した!」・・・ふむ」

そうしてミナズキはオリヴァルトの言葉を遮りながら切符売り場まで走り切符を買うと5分後のトリスタ方面行きの列車に飛び乗って行ってしまった。

 

残されたオリヴァルトは正直面食らったが普段の彼からは考えられない慌てように何かしら事情があることを察し特に何も言うことはなかった。

 

 

 

 

トリスタ駅、ホーム───

 

 

列車の扉が開いた瞬間ミナズキはホームを駆け抜ける。

先程まで晴れだった天気はいつの間にか厚い雲に覆われ勢い良く雨が降り始めていた。

 

ただの天気だ、予報が外れて雨が降るなんてよくある事だ。

しかし今のミナズキにはそれがただの偶然には感じられなかった。

嫌な胸騒ぎがした。見た事がある表情だ、今にも死のうとするやつがする顔だ。

 

 

「あれ、Ⅶ組の学生さん?さっきも1人来たけど何かあったの?」

「そいつがどこに行ったかわかるか!?」

改札にいた駅員の言葉に胸騒ぎが強くなったミナズキは声を荒らげながら問い掛ける、その様子に駅員は驚きながらも答えた。

「えっと、よく見てないけど多分第3学生寮に行ったと思うよ」

「っ・・・・!」

その答えを聞いた瞬間ミナズキは弾かれたように駅から飛び出す。

寮が駅から近いとしてもただの1秒だって油断出来なかった。

「レナ!」

寮の目の前に着き乱暴に扉を開く。玄関を見渡すが特に人の気配は無い、どうやらアリサのメイド兼管理人のシャロンも今は居ないようだ。

 

「ということは・・・上か」

すぐに階段で女子の部屋がある3階まで駆け上がりレナの部屋の前で止まりミナズキは目を閉じ集中した。

 

中から確かに人の気配がする。

 

意を決してミナズキは静かに扉を開く。

天気のせいでまだ昼前なのに部屋は薄暗い、しかしそれに目が慣れていくとはっきりと中の様子が見えてきた。

 

見えたのはベッドの上でナイフを自分の首に押し当てているレナの姿だった。

 

「レナ!」

「み、ミナズキ?なんで・・・」

ミナズキは急いでレナに駆け寄り持っていたナイフを取り上げた。

 

「か、返してくれ!」

「嫌に決まってるだろ!」

一瞬呆気にとられたレナだったが直ぐに取り上げられたナイフを取り戻そうと手を伸ばす。しかしミナズキはそのナイフを部屋の隅に投げレナの腕を掴みそのままベッドに押し倒した。

「放してくれ!痛いじゃないか!」

「今死のうとしていたやつが何言ってるんだ!」

藻掻くように暴れるレナをミナズキは容赦なく拘束し声を荒らげた。

 

その言葉にレナは黙り込んでしまう。

「っ・・・・・」

「死のうと、してたんだろ?首に小さい傷が付いてるもんな」

黙り込むレナの首には小さい傷があり血が滲んでいた。

ミナズキはそんな彼女の首を優しく撫でるとそのままの体勢でレナの目をまっすぐ見つめた。

 

その目に逃げられない事を悟ったのかレナは静かに口を開いた。

「あぁ、そうだ・・・そうとも・・・私は死のうとしていたよ・・・昨日眠れないながらに散々考えた結果さ・・・」

 

「なんでだ?昨日の事なら俺以外のⅦ組は見ていない。唯一見ていたアスラも黙っていてくれるって言ってたんだ、なのになんで・・・」

「ハハ、そんな程度の理由じゃないさ」

困惑するミナズキにレナは乾いた笑いを浮かべ一瞬だけ何かを確認するように目を逸らす。しかしミナズキはそれに気付いたようでレナの見た方向を見る。

 

そこには乱雑に床に投げ捨てられた欠けた懐中時計があった。

だが以前とは少し形が違う、ミナズキが帝都の地下でGの魔笛から切り落とした欠片が合わさっていた。

 

「あれか・・・あれが原因なんだな?」

「待ってくれ・・・今は、その・・・なんていうか状況が悪いというか・・・」

ミナズキの言葉にレナは慌て始め必死に弁明を始める。しかしろくな言葉が浮かばないようでその間にもミナズキはベッドから降り懐中時計に近づいて行く。

 

「待ってくれ!本当に!他の誰でもなく君に見られるのは嫌なんだ!」

レナは急いでベッドから降りミナズキを止めようとした。

しかし体調が悪いのは本当で覚束無い足取りでふらふらと、しかしそれでもミナズキの方へと歩を進め勢い良くミナズキにしがみつく。

 

だがこの勢いがいけなかった。

背中を押されたミナズキはそのまま転ぶように床に倒れそのまま懐中時計に触れてしまった。

 

ドクン、と以前も聞いた心臓の鼓動のような音が耳元で聴こえると目が開けられないほどの眩い光を放ちミナズキを包んだ。

 

 

 

「ここは・・・どこだ」

 

ミナズキが目を開けるとそこはレナの部屋ではなかった。

感覚自体には覚えがある。初めてレナと懐中時計を修復した時に連れていかれた過去の世界、名をつけるなら回想世界とでも言うべきものに入った時の感覚と一緒だった。

 

だが今ミナズキ目に映っているのは頑丈そうな石造りの壁、そこそこ幅のある廊下と鉄格子で仕切られた部屋が大量に並ぶだけの空間、ミナズキはこの空間にによく似たものを知っていた。

 

「これはまさか・・・牢屋か?」

更に見渡しながらミナズキは呟くそして何かが脚に触れている感覚に気付き下を見る。

 

そこには先程自分を押してしまったレナがいた。恐らくは一緒にこの過去の回想世界に入ってしまったのだろう。

「レナ・・・」

「あ、あぁ・・・お願いだミナズキ、せめて目を閉じて耳を塞いでいてくれ・・・」

ミナズキの脚にしがみつき懇願するように呟く、その声は弱々しく掠れていた。

 

そして聞こえてくるのはレナの声だけでは無い、よく耳を澄ませるとある牢屋からは啜り泣きが、ある牢屋からは苦しみに耐えるような唸り声が、ある牢屋からはもはや言語ですらない叫び声が木霊している。

 

「これは・・・いったい・・・」

「・・・・・」

誰かに質問するようにミナズキは呟く、だがこの場にいるレナ含めて誰も答える者はいない。

 

 

「おら!さっさと歩け!」

不意に後ろから声が聞こえた。

ミナズキが振り返るとそこには5人ほどの黒い修道服のような服とペストマスクを着けた者たちに追い立てられるように牢屋に入れられていく人物がいた。

 

「グァッ!」

怪しい集団に蹴り飛ばされるように牢屋に入れられた人物、だがこの人物はおそらく人でないのだろう。

 

まず耳が長く尖っている、御伽噺では妖精などにそういう特徴があるが現実には中々いない。

次に肌、青白いと言うよりは少し紫がかっている。

ちらりと見えた眼球は人間で言う白目と黒目の配色ががちょうど逆。

そして何より目を引くのは額にある2本の角だった。

 

「もしかして・・・悪魔なのか?」

「っ・・・・」

ミナズキの言葉にレナのしがみつく力が増す。

 

そんな中その悪魔はよろよろと立ち上がり牢屋の奥の方へゆっくりと歩き、倒れる。

「スマナイ、エラ」

 

くぐもった声を出した悪魔、そんな彼に今度は牢屋の奥から白く細い小さな手が伸びてきた。

「え?」

「・・・・」

ミナズキがつい声を漏らした。牢屋の中が暗すぎて気付かなかったがどうやらもう1人この牢屋に入っている人物がいたようだ。

 

「だい、じょうぶ?」

か細い声が牢屋に小さく響く。

そこには痩せこけている茶髪の、恐らく歳は12にもみたない少女がいた。

 

子供がこの場にいることにもミナズキは驚いたが何より驚いたのはこの少女のお腹だった。

 

明らかに膨らんでいる。一瞬太っているようにも見えた、だがだとしたら他の部位も多少なりとも太るはずなのだ。

「この子・・・もしかして妊婦、なのか?」

「・・・・・」

 

戸惑うミナズキ、レナは苦しそうな顔で少女を見ている。

 

そんな2人を他所に虚ろな目で少女は口を開いた。

「あの、ね。この子・・・産まれたらわたしたち自由になれるかな・・・名前、考えたの。男の子ならギル─── 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子なら、レナ───

 

 

 

 

 

 

 

「もう止めてくれ!!!!」

レナの慟哭で世界が白く光って消えていく。

消えゆく回想世界でミナズキが最後に見たのは壁に描かれてる大きな1つ目が刻まれたモノリスに6枚の翼が生えた謎の紋章だった。

 

 




ご拝読ありがとうございました。

少しづつ筆者のメンタルが回復しつつあります。

次話もよろしくお願いします。

ミナズキは帝都編以降はどうなりそうに見えますか?

  • なんとか色々切り抜けそう
  • クロスベルでは地獄を見そう
  • 昔の仲間に期待
  • 今の仲間を信じろミナズキ
  • 少しはヒロインたちと接近しろミナズキ
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