少し短めですが投稿します。
13:00、クロスベル駅ホーム─────
「さて、着きましたね」
「あぁ、思ったよりも早く着いたな」
ホームに降りたマローラはそう言って伸びをした。
続いて列車から降りたミナズキも軽く欠伸をしながら周囲を見渡す。
経済都市なだけあってクロスベルの駅は栄えている、問題も多く抱えているがそれに負けないくらいに希望も感じさせる、そんな街だ。
「さて・・・あんたも出て来いよ」
一通り見渡した後ミナズキは列車のドアを見る、するとそこから1人の男が出てきた。
「まさか同じ目的地とはな・・・まぁ、別に同行するわけじゃない。だから気にすんなよ、特にそっちのお嬢ちゃん」
「な・・・別に気にしてませんから・・・!」
男の言葉にマローラは慌てて反論する。
ミナズキの後に列車から出てきたのは夏至祭での事件で戦った槍使いアスラ、何故彼がこのクロスベルにいるかと言うとこれには彼の臨時の雇い主のアルフィンが関わっていた。
帝都での事件の後、彼はアルフィンの言葉通り彼女から渡されたハンカチを持ってバルフレイム宮へとやって来た。
のだが────
『もう1度だけ、力を貸してはくれませんか?』
大量の報酬を渡しながらアルフィンはアスラにそんなことを言った。
当然アスラは最初断った、だがその辺りはアルフィンの方が何枚も上手だったようで─────
『そちらのミラには夏至祭で助けてくれたことの分でもありますが次の分の依頼料を前金制で全額、それと気持ちとしてテロリストに協力した件の免除も含まさせていただいてます♪』
そう、渡しながら言われたものだからアスラは一瞬ポカンと口を開けた。
すぐに突き返したがアルフィンは今度は目の前で祈るように手を合わせて懇願してくる。
『どうかお願いします。今回の依頼には帝国のみならず、クロスベルや他の国の今後にも関わる事なのです』
目の前で目を閉じて手を合わせる彼女に根負けしたアスラは嫌々ながらも今回の依頼を受けることとなった。
「今回の通商会議、その際に何かあればその対処を手伝う。何も無ければそれで良し、その場合はそのままミラを持って何処かに行っても良い。これで行かなかったらこっちの今後の活動に響くからな、あの皇女さんはかなりのやり手だよ」
そう言ってため息を着くとアスラは改札の方へと歩いて行った。
どことなく疲れた様子のアスラを一瞥しマローラは口を開く。
「なんだか疲れた様子でしたね」
「何かあったんだろ、とりあえず俺たちも出よう」
そう言ってミナズキ歩き出そうとしたが、すぐにピタリと動きを止め後方にあるホームの太めの柱と近くに見える建物の屋上を睨みつける。一瞬だが屋上の方から小さく光が反射した。
「ミナズキ?どうかしましたか?」
「・・・・・いや、なんでもない」
「何もない顔じゃないですよ、それ」
「・・・歩きながら話そうか」
マローラに指摘されたミナズキはバツの悪そうな顔をすると改札の方へと進む、マローラは少し困ったように笑うとそれについて行く。
「(主な視線は2つ、1つはホームの柱の陰から、もう1つはホームが見える建物の方から・・・どちらも敵意は無い、まるで観察するような視線・・・誰だ・・・?)」
ミナズキたちがホームから去り少し時間が経つと柱の陰から3人の男女が出てくる。
「行ったみたいだな・・・」
「危なかったですね・・・」
茶髪の青年とオレンジ髪の女性が一息着きながらそう言った。
しかし一緒に出てきた黄緑色の髪の美青年が安心した2人に水を差す。
「いや、多分彼は気付いてたんじゃないかな。でもツレの女の子がいた手前不安にはさせられなかったんだと思うよ」
そう言って青年はふふっと笑う。
そうしていると不意に着信音がなる、彼らの使用している戦術オーブメントであるENIGMAⅡからの物であった。
「エリィからだ・・・こちらロイド、そっちから見た感じどうだった?」
茶髪の青年、ロイドが応答するとすぐに女性の声が聞こえる。
『ごめんなさいロイド、もしかしたら双眼鏡が反射してたかもしれないわ・・・』
ENIGMAⅡから聞こえてくるエリィの声、それに混ざって2人の男性の声が漏れ聞こえる。
『いやお嬢、かもっつーかガッツリ反射してたぞ』
『あぁ、正直わざとかってくらいピカらせてたな』
『えぇ!?ランディ、グレンも!言ってくれれば良かったじゃない!』
通信の中で軽く口論が始まる。銀髪の女性エリィ、赤毛の青年ランディ、黒髪の青年グレンの3人が軽くヒートアップし始めるとオレンジ髪の女性ノエルが慌てて止める。
「さ、3人とも!今は喧嘩している場合じゃないですよ!」
そんなノエルとは対照的に黄緑色の髪の美青年ワジは笑ってむしろ喧嘩を促していた。
「良いんじゃない?美しい友情を育む為には喧嘩だって必要さ」
「いや少なくとも今はダメだろ」
笑いながら言うワジにロイドが早々にツッコミを入れると気を取り直すために軽く咳払いをする。
「とりあえずだけど、そっちから見て彼はどうだった?」
『そうね、少なくとも悪い人には見えなかったわ。おじい様も帝都ではお世話になったみたいだし・・・』
ロイドの言葉にエリィが返す、彼女の祖父であるマクダエル議長は帝都の夏至祭で今回の調査対象である彼に助けられている。祖父を守ってくれた彼を疑いたくない気持ちが少なからずあった。
「少なくとも僕らをどうこうする気は無さそうだよね」
『ていうかあのアランドールの言葉は完全には鵜呑みにする必要は無さそうだな』
ワジの言葉に今度はグレンが返す、アランドールの言葉というのは先日クロスベルに秘密裏にやって来ていた帝国情報局のレクター・アランドールに接触した際に言われた事である。
『実は通商会議の何日か前にとあるおっかねぇ奴がクロスベルに入るんだ、必要とあれば殺しも厭わない凶暴な暴れん坊で極悪人だぜぇ?』
あまりにもわざとらしい物言いではあるが実際レクターからの情報で調査対象の青年は元は人斬りである事を教えられた。
流派は八葉一刀流、クロスベルを代表する遊撃士アリオス・マクレインと同じ流派で同じ師匠に教えを受けた言わば弟弟子でもあった。
そう言った不安要素のある情報を聞いては無視は出来ない、幸いレクターからある程度の時間は本人曰く勘で教えてもらったからこうして調査対象の彼を見つけられたのだ。
だが聞いてた話と違う。凶暴な極悪人と聞いていたからどんなのが来るかと思えば思ったよりも穏和そうな青年だった。
なんなら女の子連れているしどう見ても暴れる雰囲気も無い。
そんなこんなで話をまとめるとロイドが切り出す。
「とりあえず彼を調査して接触出来そうならしてみよう。何があってクロスベルに来たのか確かめる!─────クロスベル警察、特務支援課、これより要調査対象であるミナズキ・バンシアの調査を開始する!」
その言葉に他のメンバーも応える。
以前起きた教団事件後、一時的とは言え解散していた彼等、現在レマン自治州にいるもう1人のメンバーであるティオはまだ帰ってきていないがそれでも久しぶりの号令に特務支援課の士気は上がるのだった。
一方ミナズキは─────
「ここだな、オリビエが前もって手配してくれた宿は」
「龍老飯店ですか、風情がありますね」
クロスベルの東通りにある宿屋、龍老飯店に来た2人は早速中に入った。
中では赤い共和国の服を着た少女がウェイトレスをしており、調理場では寡黙そうな男がフライパンを振っていた。
「いらっしゃいませ!お2人でイイ?」
「あ、予約していた者です」
少し独特な訛りのウェイトレスに話すと彼女は笑顔で部屋に案内してくれた。
しかし─────
「あの、2人なんですけど・・・」
「予約では2人で1部屋って聞いてるヨ?」
「あ、はい・・・」
何故か部屋は1部屋しか予約しておらず、ウェイトレスに聞いても首を傾げられた。
それは良い、同部屋ならばお互いの着替えの時に外に出るなりすれば良い。
そこまでは良い、だが─────
「ベッド、2人用の物が1つですね・・・」
「・・・・だな」
マローラの頬が赤く染まる、そしてミナズキの方を振り返ると切り出した。
「わ、私は別に良いと思います。その・・・ミナズキさえ良ければ今回の件が終わるまでの間、えっと、その・・・一緒に寝ませんか?」
「・・・・マローラが嫌じゃなければ「嫌じゃないです!本当に!」・・・・そうか」
マローラに変な気を使わせているんじゃないか、そもそも年頃の男女が同衾を何度もして良いものなのか、そんな風に考えながらミナズキはこの状況を作り出してくれやがった、恐らくは笑顔でやらかしてくれやがった自称漂泊の詩人を思い浮かべて決心した。
''あの野郎、クロスベルに来たら1発ぶん殴ってやろう''
余談だがこの日、バルフレイム宮にいるオリヴァルトは妙な寒気を覚えたそうな。
ご拝読ありがとうございました。
グレン、という男は私がいつか書こうとしている零、碧の軌跡の二次小説の主人公です。
ミナズキとは別ベクトルでカッ飛んでいます。
次話もよろしくお願いいたします。
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ミナズキが教えてくれた4人の裏の人達、読者の皆様は誰と遭遇したくないですか?
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《蒐集鬼》
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《狐面》
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《死喰み》
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《天泣》