英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

109 / 109
ご拝読ありがとうございます。

生存報告です。
新しいアンケート、というより質問を用意しました。


103.東通り、遊撃士ギルドを訪ねるが

 

 

「美味しい・・・これが共和国のご飯か・・・!」

「ふふ、本当に美味しいですね」

泊まる部屋から出たミナズキとマローラは早くも店の料理に舌鼓を打っていた。

炒飯、酢豚、麻婆豆腐、拉麺といった共和国を代表するグルメの数々、それを大衆向けの金額で食べられる。

ミナズキは食欲に任せて大量に注文し、そしてしっかりと味わっていた。

 

「お兄さんたち良い食べっぷりネ!これ、大将からの奢りネ!」

ウェイトレスの少女がミナズキたちの座るテーブルに小さな皿を置く。

置かれたのは小籠包、マローラがレンゲに乗せて食べるとあまりの熱さに驚いて水を飲んだ。

 

「はふっはふっ・・・熱いけど美味しいですよ、これ」

そう言ってマローラはそのレンゲに小籠包を乗せてミナズキに差し出した。

「・・・・・」

「・・・その、口開けて貰えます?」

 

差し出されたレンゲをミナズキは目を丸くして見つめる、マローラも差し出した体制のまま固まってしまった。

 

そしてその状態でマローラは1つ気付いてしまう。

 

「(あれ、私が今やってるこれって・・・)」

いわゆるカップルとかがやっている『あーん』なのではないか、と─────

 

そしてこのレンゲは自分が使った物のままではないか、これでは関節キスではないか、そう気付いた時マローラの頭の中では軽く火花が散り始めていた。

 

「いや、あの、そ、の・・・・」

その体制のまま顔を赤くしながら目をぐるぐると回し始めるマローラ、そんな彼女を見てミナズキは何度か目をぱちくりと瞬きをする。

 

そして─────

 

「あむ・・・・ふぁひかにあふいふぁ(確かに熱いな)」

特に躊躇せず食べた。

 

「そ、そうですね!・・・あは、あはは・・・」

特に気にされた様子も無いことにマローラは内心崩れ落ちながらも笑う。

そんな彼女にミナズキも麻婆豆腐を掬って差し出す。

「ん、どうぞ、お返し」

「へ・・・?」

 

つい素っ頓狂な声を出したマローラ、それに対してミナズキは不思議そうにレンゲを少し引っ込める。

「もしかして麻婆豆腐は嫌いだったか?」

「い、いえそうではなく・・・」

 

気付いていないのか、それともわかった上でやり返しているのか、ミナズキも先程のマローラ同様に関節キスになってしまう状況を作っていた。

「すごく美味しいぞ?」

「は、はい・・・ではその・・・」

再度差し出された麻婆豆腐をマローラは少し遠慮気味に頬張った。

「・・・美味しいです、はい」

「だよな」

 

顔を少し背けながら感想を言うマローラにミナズキは満足そうに頷くと食事を再開する。

少しドギマギしながらマローラも食事を再開する。心なしか周りからも若干同情の眼差しを感じることとなった。

 

 

 

ちなみになのだが─────

 

 

 

「(じ、焦れったいわね・・・!)」

「(わわ、なんだか甘酸っぱいですね・・・)」

実は店の窓から中を見ていた特務支援課、エリィがミナズキの様子になんとも言えない表情を浮かべ、ノエルが頬を紅く染める。

 

「(彼、なかなか良いね・・・)」

「(いや、何がだよ・・・)」

ワジが得意げに笑い、そこにランディが突っ込む。

 

「(おいロイド、こいつら捜査する気あんのか?これじゃただの覗きだぞ?)」

「(まぁ、店に入って鉢合わせする訳にもいかないからなぁ・・・今はとにかく見つからないように見ていくしかないさ)」

4人に呆れた顔をするグレンをロイドが宥めていた。

 

 

 

「・・・さてと、そろそろ行こうか」

「・・・ですね」

しっかりと料理を平らげたミナズキとマローラは席を立ち、支払いを済ませるとそのまま外へと向かった。

 

 

 

クロスベル、東通り──────

 

 

「さて、まずは東通りの調査をする・・・」

「ちなみになんですが調査と言っても何をするんですかミナズキ?」

店を出てから少し離れたあと、ミナズキとマローラは周辺を見渡しながら歩く。

首を傾げるマローラにミナズキは向き直ると一言言った。

 

「1つ、訪ねておきたい所がある・・・遊撃士ギルドなんだけどさ、兄弟子がいるらしくてな・・・」

「確か、八葉一刀流の・・・風の剣聖、だったでしょうか?」

「あぁ、アリオス・マクレインっていうんだ・・・と、ここか」

会話をしながら2人は遊撃士ギルドクロスベル支部の前に到着する。

 

 

「まぁ、今居るかは分からないが・・・」

「えぇ、入りましょう」

そうして2人は建物へと入って行く。

 

 

その様子を特務支援課は遠くから監視していた。

「遊撃士ギルドに入って行きましたね」

そう言うノエルにランディが反応する。

 

「だな・・・にしても、だいぶ豪快に食ってたよなぁ・・・こっちまで腹減っちまうぜ」

「まぁ見てて爽快な食べっぷりではあったよね」

「私たちも何か食べといた方が良いかしら?」

ランディの言葉にワジが頷き、エリィは少し苦笑いを浮かべる。

 

するとその様子を見てたグレンがロイドに言った。

「おうロイド、お前皆連れて飯でも食って来いよ」

「え?でも今は捜査中だし」

「良いって、それに東通りでこの人数は普通に目立つだろ。そういう面でも少数の方が都合良いんだよ」

戸惑うロイドにグレンはそう言うとさっきまで窓から覗いていた龍老飯店を指さす。

 

「さっさと食って来い。どうせ今回の調査は長丁場なんだ、今からガチガチに構えてたら要らんところでバテちまうぞ」

そう言って全員に向かってしっしっと追い払うような手振りで言うグレン、それならばとロイドたちは店の方に歩いて行く。

 

「何か買っておこうか?」

「良いよ別に、単純に今は共和国料理の口じゃないしな」

聞いてくるロイドに対して首を横に振りながらグレンは監視を続ける。

 

やがてロイドたちが店に入って行くのを確認すると遊撃士ギルドの方に視線を戻した。

そうしていると今度は白い髪が毛先にかけて黒いグラデーションになっているポニーテールの少女がグレンの元に歩いてきた。

 

「見つけた、グレンお疲れ様」

「サヨ?今は仕事の時間じゃないのかよ?」

グレンに声をかけたのは彼の妻である女性サヨだった。

「今日は午後は休み貰ってたから・・・それと、これを渡しに来た」

そう言いながらサヨは小さなバスケットを差し出した。

「ほら、昼ごはんまだだったでしょ?」

「助かる、正直腹ぺこだったんだ・・・」

「どうせ後輩たちにはご飯食べに行かせたんでしょ?」

そう言ってサヨはくすくすと笑うとバスケットを開ける、中にはサンドイッチとお茶の入った水筒が入っていた。

 

「まさか好物とはな・・・」

「それ私が作った物だとなんだって言うよね?」

「へへ、まぁな」

「ふふ・・・」

入っていたサンドイッチを掴み食べ始めるグレンにサヨは微笑みながらカップに紅茶を注ぎ差し出す。

それを受け取るとグレンは笑顔で飲み干した。

 

「・・・ありがとうな、サヨ」

「いいってこのくらい、お仕事頑張ってね」

ニカッと笑ったグレンにサヨは微笑んで返した。

 

 

 

一方その頃、ギルド内では──────

 

 

「あら?いらっしゃい、なにかの依頼かしら?」

ミナズキとマローラが建物に入ると褐色のガタイのいい、何故かオネエ口調の男性の受付がいた。

「・・・えっと、すみません。アリオス・マクレインさんはいらっしゃいますか?」

「アリオスなら今日はオルキスタワーの方に・・・ってあら?貴方どこかで・・・」

「ん・・・なにか?」

「・・・いいえ、なんでもないわ」

1度ミナズキを見てなにか言いたげだった受付の男性は口を閉ざすがすぐに1つ提案をした。

 

「もしアリオスになにか伝言があれば伝えておくけどどうかしら?」

「・・・いえ、また隙を見て伺います」

そう短く返事をするとミナズキは踵を返して出口に向かう、マローラも受付の男性に軽く頭を下げるとそれについて行きそのまま2人は出て行ってしまった。

 

 

「あれ?ミシェルさん、誰か来てるみたいだったがもう出て行ってしまったのか?」

不思議そうにしているミシェル、そんな彼女に2階から降りてきた2人組が声をかける。

 

「あら?リンにエオリアじゃない・・・ってクリストフがいないわね、どうかしたの?」

「クリストフなら先に外回りに行っているわ、なんだか落ち着かないみたい」

リンにそう返したミシェルにエオリアがさらに返す。

 

クリストフというのは彼女らの後輩であり何時もついて回っている青年なのだがここ最近の彼は妙に落ち着きを失っていた。

ここにいる3人、というよりここの遊撃士は皆その理由を知っている。

少し前に目を通したクロスベルタイムズだ、それに写真付きで印刷されていた青年の持っていた剣、それがクリストフの持っている剣と色は違えど瓜二つなのだ。

 

「ずっとあの調子だと流石に困るな、活動にはまだそれほど支障は出てないがいつも浮かない顔だ──「そうね、リンとしても何時も自分に元気について回る後輩が元気無くて心配だものね」──って違うからな!?」

腕を組んで話すリンをエオリアが被せるようにおちょくるとリンは顔を赤くしながら否定する。

それをミシェルはポンっと手を叩き切り出した。

 

「そうそう、実はさっきその件の青年がここに訪ねてきたのよ。アリオスを探してるみたいなんだけどね」

「え、あいつが?」

「確か・・・ミナズキ、だったわよね?」

ミシェルの言葉にリンもエオリアも驚く、それに対してミシェルは頷き話を続けた。

 

「クリストフと同じタイプの剣を確かに持っていたわ、多分ミナズキ本人は自分と同門のアリオスに用があるんだと思うけど」

「そうか・・・というかアリオスさんと同じ太刀だからまさかと思ったけどやっぱり八葉一刀流の剣士だったのか」

「それもそうだけどやっぱりクリストフと同じ剣を持ってるのは気になるわよね・・・」

そうして3人でうんうん唸っていると出入口のドアが開いた。

 

「・・・今聞こえてきた話は本当ですか?」

入ってきたのは3人の話が聞こえていたであろう後輩でありミナズキと同じ剣を腰に差している後輩遊撃士、クリストフだった。

普段の、と言ってもクロスベルタイムズを読む前の明るく人懐っこい性格は鳴りを潜め完全に目が据わっている状態の彼を見てミシェルたちは一瞬たじろぐ。

「く、クリストフ・・・・・もしかして聞いてた?」

「えぇしっかりと・・・いたんですか?俺と同じ剣を持っているあの男が・・・」

少し引きながら訊ねるミシェルにクリストフは一切瞬きをせずまっすぐ受付に歩み寄りながら聞き返す、明らかに普通ではない様子にリンもエオリアも困惑して話しかけられないでいた。

 

「・・・・すみません、ちょっとまた出てきます」

何も答えない3人の様子を肯定と受け取ったクリストフは再び外に出るために歩いていく。

その姿に気を持ち直したリンが声をかけた。

 

「ちょっと待てクリストフ、お前その青年と会ってどうするつもりだ!」

「・・・そうね、今の貴方はどう見ても冷静じゃないわ」

リンに続いてエオリアもクリストフを止めようと少しだけ語気を強める。しかしその程度ではクリストフは止まるわけがなかった。

 

「えぇ、俺は冷静なんかじゃありませんよ。兄の仇であるあの男がクロスベルに居るんだ。3月に入れ違いで会えなかった男が、兄を殺して剣を奪ったであろう男が手の届く所にいるんだ・・・・・絶対に奪い返す!」

そう言ってドアを乱暴に開けるとクリストフは飛び出して行った。

 

リンもエオリアも以前では考えられなかった彼の激昂した様子に言葉を失う、そんな中ミシェルが2人に声をかけた。

「ほら、しっかりしなさい!貴女たちあの子の先輩なんでしょ、急がなきゃあの子が一線を越えかねないわよ!」

「そ、そうだ!・・・でもまさかあいつがあんな事を抱え込んでたなんて・・・」

「ほぼ毎日一緒だったのに、なんだかショックね」

「そんなことあの子を止めてから幾らでも聞けば良いのよ!急いで、早く!」

戸惑う様子のリンとエオリアにミシェルが喝を入れると2人も外に飛び出す。しかしもうクリストフがどの方向に行ったかも分からない。

「どっちだ!?」

「とにかく手分けして探しましょう!リンは港湾区、私は中央広場の方に向かうわ!」

そうして2人は別れつつクリストフを探し始める。

 

 

 

 

 

そんな様子を遠くから見ていたグレンはサヨから貰った紅茶を飲み干すとカップをサヨに返す。

「ありがとうサヨ、ごちそうさま」

「お粗末さまでした・・・ところでグレン、今遊撃士のリンさんとエオリアさんが走っていったけどどうしたんだろうね?」

「ん?・・・多分さっき走って行った後輩の事を探してるんだろうな」

「教えてあげなくて良かったの?その後輩さんが向かったのは旧市街だって」

「紅茶飲んでたし声かけそびれたな・・・ただ問題は」

そう言ってグレンは旧市街に続く道を見る、自分たちが調査しているミナズキもクリストフと同様に旧市街に向かって行った。

 

理由までは分からないがクリストフの方は何かミナズキに用件でもあるのだろう、ただ目が据わっていたりなどどう見ても様子がおかしかったが・・・・。

 

「サヨ、今日は間違っても旧市街に近付くなよ、それと出来れば早めに家に帰るんだ」

「グレン・・・わかった、気を付けてね」

「あぁ、大丈夫だ」

サヨに帰るように促すと彼女は少し残念そうな顔をしながらも頷く、そして軽く背伸びをしグレンの頭を撫でるとさっさと帰っていった。

 

 

サヨの姿が見えなくなるとグレンはENIGMAⅡを起動すると通信をかける。

「こちらグレン、聞こえるかロイド」

『こちらロイド、何かあったのかグレン?』

「あぁ、とりあえず標的は移動した。今から追いかけるがお前らは飯食い終わってからで良いぞ、俺はこれから旧市街に向かう」

『旧市街か、わかった・・・ところで外が少し騒がし』

 

ブツン、と何かを聞かれる前に通信を切る。

ENIGMAⅡを仕舞うグレンの顔は少しだけ獰猛に笑っていた。

「さて、久しぶりに手応えのある事が起きそうだな」

そう言いながらパキパキと拳骨を鳴らすとグレンは少し早足で旧市街へと向かうのだった。

 

 

 

ちなみにこの時─────

 

 

「さっきのあれ、やっぱりメラクだ・・・!」

物陰からミナズキとマローラを見ていた人物がいた、新緑色の髪を揺らした彼女はミナズキとその連れの女の子が旧市街に向かい、その後遊撃士が妙に殺気立った様子で同じ方向に行くのを見た。

 

「多分、なにかあるんだよね・・・」

胸を軽く抑えながら彼女は呟く。良くない胸騒ぎがしたのか、彼女は軽く深呼吸をすると周囲には見えないように武器を確認する。

「銃、良し・・・小道具、良し・・・心の準備、良し!」

色々と準備を確認した割に彼女は何度もスーハースーハーと深呼吸をすると最後に自分の両頬をパチンと手で挟むように叩いた。

 

「よーし!メラク、今行くからね・・・かっこよく再会するぞー!」

そう言いながら彼女もまた、旧市街へと向かうのだった。

 

 

 

 

そして旧市街、裏路地─────

 

「こっちの方には特にお店は無いですね」

「あぁ、さっきのプールバーとその隣のよく分からない店、そしてこの修理屋くらいだな」

マローラと一緒に旧市街を調査していたミナズキ、周りを見る限り情報源になりそうなところは旧市街入口付近のプールバーとよく分からない店(明らかに取り揃えている品がおかしいが)くらいなものだ。

 

 

「1度戻りますか?」

「そうしようか・・・」

マローラに言われミナズキは来た道を戻るため振り返り歩き始める。

そして、曲がり角を曲がったその時だった。

 

 

 

 

 

「死ねよ《死の精霊》」

「は・・・?」

ミナズキの瞳には自分が今背中に背負っている銀の牙とよく似た金色の剣を振りかぶっている青年が映っていた。

 

 

 

 




ご拝読ありがとうございました。

驚くかどうか分かりませんがグレンさん、既婚者です。


次話もよろしくお願いいたします。
※感想、好評価、お気に入りいただけると励みになります。

ヒロイン以外でミナズキが好意的に見てるキャラは誰?

  • リィン
  • エリオット
  • マキアス
  • ユーシス
  • ガイウス
  • アリサ
  • エマ
  • フィー
  • ラウラ
  • ロジーヌ(Ⅶ組ではない)
  • ベリル(Ⅶ組ではない)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。