英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。

こんな時間に投稿するのは初めてです。
グダっとしたものになりました。


104.グダグダ2連戦

 

「死ねよ《死の精霊》」

「は・・・?」

 

 

振りかぶられた剣に一瞬目を奪われたミナズキだったが持ち直しは早かった。

次の瞬間にはガキンっという金属同士のぶつかる音が響く。

 

「ミナズキ!?」

いきなりの事にマローラ声を上げるがすぐに懐から導力銃を取り出し即座に発砲した。

弾丸はクリストフとミナズキの間を通り抜け、驚いたクリストフは飛び退きマローラを睨んだ。

しかしマローラは全く怯まず、むしろ睨み返し導力銃を向けて口を開く。

 

「今のは警告です、次は必ず当てます・・・それが嫌なら下がってください」

警告するマローラ、しかしクリストフも止まらない。

「重要塞・・・不落・・・!」

身体中に何かのオーラを纏い、クリストフは突っ込んでくる。マローラは眉を顰めるが発砲する、しかしクリストフは弾丸が当たってもビクともしない。

 

「(弾丸が弾かれた?・・・一体どう言う理屈・・・?)」

「あんたは下がってろ!」

驚き目を見開いたマローラにクリストフは剣を振り上げる。しかしその攻撃はミナズキの太刀によって止められる。

 

「・・・っ!《死の精霊》!」

「マローラ、下がれ!」

忌々しげに見てくるクリストフを睨みながらミナズキはそのまま競り合いマローラに指示を飛ばす。

ただそれを聞いたマローラの反応は予想外のものだった。

 

「嫌です!」

「・・・・え?」

マローラのまさかの反応にミナズキは一瞬呆気にとられる、そんな中マローラはしっかりと拳を握りクリストフの脇腹へと放った。

 

「ハァッ!」

「うごっ!?」

マローラの放った正拳突きは競り合っていたクリストフの脇腹に突き刺さりクリストフは思わず呻き声を上げそのまま飛び退いて突かれた脇腹を抑える。

 

「舐めないで下さい、平民クラスでも私だってトールズの生徒です!なにより・・・」

そう言ってマローラはミナズキを見る。

「貴方に無理はさせたくない、こんな時くらい頼ってください」

「マローラ・・・」

微笑みながら言うマローラにミナズキは少しだけ照れくさくなり視線を逸らす。

 

そんな様子を見たクリストフは声を荒らげた。

「なんでそんな奴に味方をする!?こいつの事を何も知らないのか!?」

血走った目で言うクリストフ、だがマローラに動揺した様子はなく導力銃を構えながら返す。

 

「えぇ、ミナズキに昔何があったかは知りません。あなたの言う《死の精霊》と言うのも私には聞き慣れない言葉です。ですがね・・・私はトールズに入学してからのミナズキを何度も見ているんです、貴方がミナズキの何を知っているかは分かりませんが・・・少なくもといきなり斬り掛かられるような人ではありません!・・・ミナズキ、いつかで構いません。貴方のこと、沢山教えてください、徹夜でも付き合いますから・・・」

 

そう言ってマローラは頬を軽く搔くとニコリと笑う、だがクリストフのボルテージは上がってしまった。

 

 

「ふざ、けるな・・・・ふざけんな!何が斬り掛かられるような人じゃないだ!あんたからしたらそう見えててもなぁ!俺からしたらそいつは兄を殺したクソ野郎だ!」

そう叫びクリストフはもう1度構える。

マローラもそれに応じるように導力銃を構え直す。

 

 

「そこまでです!」

 

 

そんな中まるでこの空気を割るかのような明るい声が路地に響いた。

「誰だ!?」

クリストフがその声の方を見ると新緑髪の年若い女性が腕組の仁王立ち、ついでにドヤ顔で建物の屋根の上に立っていた。

 

「メラ、じゃなくて・・・ミナズキ・バンシア殿!かつての友情に従い、このリルル!助太刀するよ!」

決まった!と言いたげに手を顎に当てながらニカッと笑う女性、リルルだったがミナズキの反応は明らかに複雑そうな、なんとも言えない表情だった。

 

「ミナズキ・・・あの人は一体?」

「強いて言うなら・・・うーん・・・」

状況が状況だからなのかマローラに質問されたミナズキすら若干言い淀む、しかし当の本人はそれに気付いていないようで自身がスカートを履いているにも関わらずトウッ!と屋根から跳びミナズキたちの元に降りてきた。

「(決まった!)・・・ミナズキ久しぶり!会いたかったよー!」

 

嬉しそうに両腕を広げるリルルだったがミナズキとマローラが目を逸らしている事に気付き首を傾げた。

「あれ?ミナズキ、それにもう1人の「マローラです」あ、どうも・・・なんで2人とも目を逸らすんです?」

不思議そうなリルルにミナズキが頬を染めながら返した。

 

「リルル、自分がスカートなこと忘れてないか?」

「スカート?・・・あぁ、大丈夫!ちゃんとスパッツは履いてありますから!「最近のスパッツはレース付きなのか?」・・・え?」

ミナズキに言われリルルは物陰に行き自分のスカートの中を確かめる、そして顔を真っ赤にし目を回し涙ぐみながら戻ってきた。

 

「こ、こここれはその・・・あた、新しいデザインのスパッツでして・・・!?」

「いや無理するな!?」

「忘れますから!」

「ひぃん・・・」

グダグダなリルルをミナズキとマローラが慰める。

先程までの張り詰めた空気は霧散した、1名を除いては。

 

 

「俺をおちょくっているのか・・・!いい加減にしろよ!」

クリストフが剣を構え突っ込んで来る。

リルルはそれを一瞥すると一瞬で切り替え導力銃によく似た道具を取り出し発砲した、打ち出されたのは弾丸ではなく緑色の煙を噴出しながら飛ぶ煙幕弾だった。

 

「これは・・・」

「私特性の煙幕弾です、今のうちに逃げるなり何なりしますよミナズキ!」

そう言いながらリルルはミナズキとマローラの手を引く。マローラはされるがままに引かれたがミナズキはその手を振り払った。

 

「ちょ、ミナズキ?」

「ありがとうリルル、でも俺だって彼に用があるんだ。マローラのことよろしくな」

「・・・・わかりました、行きますよ!マローラさん!」

「え、ちょっと!?」

そうしてリルルはマローラを連れてその場を離れる。

ミナズキはそれを満足そうに見ると未だに漂い続けている煙に目を向ける。

 

1分後、煙が晴れるとそこにはまだミナズキを睨みつけるクリストフとそんな彼を悲しそうに見るミナズキの2人だけが残っていた。

「逃げなかったんだな?」

「こっちも君に用があったからな・・・」

クリストフの言葉に反応したミナズキはゆっくりと背中に背負っている銀の牙を鞘ごと外しクリストフへと差し出した。

 

「は?」

「持って行け、君のだ」

ミナズキの言葉にクリストフはピタリと止まった。それどころかその場が止まった、比喩でもなんでもなく本当に止まった。

 

「なにを?」

「君の言う兄というのはキルクス、だろ?」

困惑するクリストフ、そんな彼へのミナズキの対応は変わらない。

ただひたすらに彼の前に剣を差し出す。

「君が持っている剣は『金の牙』、ちょうど俺が持っている『銀の牙』の兄弟剣であり、君の兄であるキルクスが使っていた物だ」

そう言うミナズキに対しクリストフの反応は苦悶に満ちた表情で構える。

 

「あぁ、そうだ・・・2年前のことだ、定期的に届く兄からの手紙に《死の精霊》を調査すると書いてあった。だがそれを最後に何ヶ月経っても兄からの続報は無かった、大雑把で騎士らしくない兄だったけど手紙だけは毎月送られて来ていた」

そう言いながらクリストフは駆け出しミナズキ向かって剣を振る。

ミナズキはそれを太刀で受けながらも自分からは反撃しようとしない。ただ彼の言葉に耳を傾ける。

 

「そんな兄からの手紙が届かなくなった時、俺は疑問を持った。もしかしたら兄は《死の精霊》によって殺されたんじゃないかって・・・もし《死の精霊》が国の思っているような《外法》じゃなければその事を手紙に書くはずだ、だがそれが無いという事は少なくとも手紙を書けない状態にされているのではないかってな!」

そう叫びクリストフは跳躍すると上段の構えを取り剣を思い切り振り下ろした。

 

「獣牙!」

剣は光りながらミナズキへと真っ直ぐ振り下ろされる。だがミナズキはそれを軽く躱す、自分も使う技をわざわざ喰らうほどミナズキは優しくはない。

「その技、キルクスとお揃いだ。やっぱり兄弟なだけある」

 

そしてまた手に持った『銀の牙』を差し出してミナズキは言う。

「君と戦う気は無い、ただこれを持つべき者に返しに来ただけだ」

「黙れ!」

だがクリストフにその言葉は届かない、先程よりも更に荒れた表情で剣を構える。

 

「そしてつい先日だ、クロスベルタイムズの号外で掲載された帝都での事件・・・あの時写真に写っていたお前と兄の物であるはずの剣!兄があの剣を手放すはずが無いこと、そして《死の精霊》はまだ歳若いという情報から俺の疑問は確信に変わった・・・《死の精霊》・・・お前が兄を殺し『銀の牙』を奪ったってな!」

力任せの怒りのままに振るわれる剣をミナズキは躱し続ける、もはや防御すら必要としない稚拙な攻撃、やろうと思えば何時でも無力化出来るものでもミナズキはやり返そうとしなかった。

 

「答えろ!何故兄を殺した!?《外法》の認定でもされたか!?だから殺したのか!?」

「・・・そうだな、キルクスを死なせてしまったのはある意味俺かもしれないな」

ミナズキの返した言葉にクリストフは1度目を見開くと、歯を食いしばり目に涙を浮かべながら声を絞り出した。

 

「やはり・・・お前が・・・」

「君の怒りは尤もだ、何も知らない以上斬り掛かられても文句は言わない。・・・だがすまない。俺はまだ、少なくとも通商会議が終わるまでは死ねないんだ」

「ほざくなぁ!」

激昂したクリストフが涙を流しながらミナズキに剣を振り上げた、その時だった。

 

 

「そこかぁ!」

文字通り人が上から降ってきた。

なんの比喩でもなく唐突にミナズキたちのすぐそばに落ちてきたのだ。

 

「旧市街とはいえ街中で戦闘とはいただけねぇなぁ、遊撃士と帝国から来た調査員さんよぉ」

砂埃を上げながら現れたのは黒いコートを羽織った長身の男だった。

いきなりのことに呆気に取られる2人を見て男は懐からある物を取り出し見せる。

革製のカバーに覆われた顔写真付きのそれにはでかでかとC.P.D(クロスベル警察)の文字が刻まれている。

 

「クロスベル警察、特務支援課所属のグレン・イリオスだ。少し強引だが決闘による暴行罪、傷害罪の現行犯であんたら2人をしょっぴかせて貰う」

そう言って嬉しそうにパキパキと指を鳴らす彼を見たミナズキは少し考えると答える。

 

「いくつか言いたいことがある、いいか?」

「ん?構わねぇよ」

 

 

「まず1つ、あんた今強引だがって言ったか?」

「言ったな」

 

 

「つまりまだ決闘らしい決闘を見てないな?」

「見てないな、騒ぎを聞きつけて予想を付けただけだ」

 

「もっと言えば怪我したかどうかも分からないな?」

「まぁな、なんなら知ったこっちゃないな」

 

あまりにも正直な受け答えにミナズキは内心呆れつつも何となく浮かんだ答えを口にした。

「・・・・・さてはあんた、単純に喧嘩したいだけか?」

「当たりだ」

 

グレンは満面の笑みで嬉しそうに答える、その様子にミナズキがゲンナリしているとようやく正気に戻ったクリストフが声を上げる。

「ふ、ふざけるな!いきなり割って入ってきて何様のつもりだ!」

しかしグレンそんな言葉に一切耳を貸さず2人目掛けて突っ込んで来た。

 

「かもな!でも遊撃士が民間人に手ェ出しておいて言えた事じゃないだろ!」

そう言ってグレンはクリストフを殴り飛ばす、勢い良く壁に叩きつけられたクリストフは衝撃に耐え切れず白目を剥いていた。

 

「よし、これで1人目拘束出来るな・・・で、次はあんた・・・ん?」

クリストフの様子に軽く頷いたグレンは今度はミナズキを見る、しかしミナズキは飛ばされたクリストフの方へ歩いていくと彼の手に『銀の牙』をしっかり持たせると軽く呟く。

 

「出来ればゆっくりと話し合いたかったが・・・今は無理そうか」

そう言ってグレンの方へ向き直ると両の手を上に挙げ降参のポーズを取る。

「拘束するのは良いけど、出来れば通商会議までには釈放してくれると助かる」

「ありゃ・・・?」

 

ガッツリと構えていたグレンはその言葉にコケそうになった。全部鵜呑みにした訳じゃないが自分たちに情報をくれたアランドールが言っていた『凶暴な奴』という部分に久々の喧嘩の予感を感じていた彼としてはこの騒動に内心胸を踊らせていた。

 

だが対面してみればまさかの降参宣言、もう片方のクリストフは簡単に白目を剥いている始末だ。

正直納得はしたくない、だが警察としては無抵抗な人間に暴力を向けるわけにはいかない。

落胆したグレンは握っていた拳をゆっくりと下ろし1つため息をついた。

 

「久しぶりの荒事だと思ったのに・・・」

「なんで残念そうなんだよ・・・」

露骨なグレンにミナズキが呆れるとグレンは腕を組みながら愚痴り出す。

 

「教団事件でルバーチェが壊滅してからというもの全く歯応えの無い奴らばかりでな・・・アルタイル市での捕り物も大して苦戦しなかったしな・・・」

「教団事件・・・そうだ、その事も調べたいんだった」

あまりの事で忘れていたが今回ミナズキがクロスベルに来たのはマクダエル議長から聞いていた教団事件を調べる為でもあった。

 

 

その事を思い出したミナズキは事件を直接解決した特務支援課の1人でもあるグレンに切り出す事にした。

「1つ聞きたいんだが「お前たちそこで何してる!」今日はよく邪魔が入るな・・・」

 

声が聞こえた方を2人が見るとそこにはクリストフを探し回っていたであろう先輩遊撃士であるリンとエオリアがいた。

「ゲッ、リンとエオリアじゃねぇか・・・!」

「知り合いか?」

面倒そうなグレンの言葉にミナズキが反応すると手早く、しかしかなり大雑把にグレンは説明した。

 

「クロスベルの遊撃士だ、頭にハチマキ巻いてる熱血そうなのがリン、銀髪のベレー帽被ってるのがエオリアな・・・リンの方は直情的でめんどいしエオリアの方はいつか小さい女の子に手を出して警察の厄介になりそうなちょい怖いやつだ」

「誰が直情的だ!」

「失礼ね、ただ可愛い子にハグして貰えたら力が漲るだけよ」

 

合ってるじゃん、とミナズキは少しだけ言いそうになったが慌てて抑えた。

だがそんなやり取りをしているとエオリアがミナズキとグレンの後ろにあるものに気付いた。

 

「リン、あれ!」

「あれ?・・・ってクリストフ!?」

エオリアが指を指す方向をリンが見るとそこには白目を剥いて倒れているクリストフがいた。

 

当然彼女たちはなぜクリストフがああなったかを知らない、だが状況的に見るとどうしてもミナズキとグレンの2人が何かやったようにしか見えない。

「・・・どうやら緊急案件として扱う必要がありそうだな?」

「何があったのか詳しく話してもらおうかしら?」

リンもエオリアもそう言いながら構え完全に臨戦態勢に入るとグレンは嬉しそうに構え、ミナズキは嫌そうに構えた。

 

「良いじゃねぇか、久しぶりに相手してやるよ」

「いや、普通に説明すれば良いだけなんじゃ・・・」

 

 

「「問答無用!」」

こうしてミナズキにとって理不尽かつ不本意(オマケに知らないうちにタッグマッチ)な第2ラウンドが始まってしまった。

 

 




ご拝読ありがとうございました。

評価、感想よろしければお願いいたします。
また、質問も受け付けています。
少し気になった程度の事も受け付けていますのでお気軽にどうぞ。

次話もよろしくお願いいたします。

ヒロイン以外でミナズキが好意的に見てるキャラは誰?

  • リィン
  • エリオット
  • マキアス
  • ユーシス
  • ガイウス
  • アリサ
  • エマ
  • フィー
  • ラウラ
  • ロジーヌ(Ⅶ組ではない)
  • ベリル(Ⅶ組ではない)
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