英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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9.放課後

 

本日最後の授業、トマス教官による帝国歴の授業が終わりホームルームの時間にサラが切り出す。

 

「前にも言ったと思うけど、明日は自由行動日になるわ。厳密に言うと休みではないけど授業はないし何をするのも生徒たちの自由に任されてるわ」

その言葉にミナズキは考える、自由と言われても何をすればいいのか迷ってしまう。

 

「帝都に遊びに行っても良いし、なんだったらあたしみたいに一日中寝てても良いのよ?」

続けられたサラの言葉にⅦ組全員がなんとも言えない顔になる。教官なのにそれでいいのか、と頭の中で呟く。

 

「あの、学院の各施設は開放されるのでしょうか?」

「図書館の自由スペースを使えるとありがたいんですが」

「ええ、その辺りは一通り使えるから安心なさい。それとクラブ活動も自由行動日にやってることが多いからそちらの方で聞いてみるといいわね」

エマ、マキアスの質問にサラは返し補足情報も入れる。そしてそのまま次の話題を切り出す。

「それと来週なんだけど───水曜日に実技テストがあるから。ちょっとした戦闘訓練の一環ってところね。一応評価対象だから体調には気をつけておきなさい、なまらない程度に鍛えておくのも良いかもね」

そう意味ありげに生徒たちに伝えてサラは不敵に笑った。

 

各々が反応を示すなかサラは続ける。

「そして──その実技テストの後なんだけど、《Ⅶ組》ならではの重要なカリキュラムを説明するわ。ま、そういう意味でも明日の自由行動日は有意義に過ごすことをお勧めするわ。以上だから副委員長、挨拶して」

「は、はい。起立─── 礼。」

副委員長であるマキアスの号令でホームルームは幕を閉じた。

 

 

ホームルームが終わるとレナが近づいてくる。

一瞬ミナズキは構えたが表情から察するに面倒事が来るわけでは無さそうだ。

「さてさて、ミナズキ。私は色々やりたいことがあるから行くよ」

「あぁ、こっちはこっちで好きに過ごす」

「ではまた・・・」

そうしてレナは挨拶を済ませるとさっさと教室から出ていく。

いつもならもう一言二言は話すのだが、あっさりと終わった会話にミナズキは若干肩透かしされたような感覚を感じていた。

 

そうしてミナズキがほうけていると背後から声をかけられたので振りくとガイウスがいた。

「ミナズキ、お前は部活動はもう決めたのか?」

「いや特には、やりたいことも無いし。ガイウスは決めたのか?」

「俺は美術部に入ろうと思っている。ノルドにいた頃も絵を描くことがあったからな」

「絵か・・・」

描いたことは無い、そもそも絵を描こうなんて考えたことも今まで無かった。

というよりミナズキは今までの人生において学院に存在するクラブ活動のほぼ全てが初心者と言えた。

 

水泳部:泳げるけどタイムに興味無し。

 

フェンシング部:そもそも同じ剣でもタイプが違いすぎて使ったことがない。

 

園芸部:やれなくもないが知識は無い。

 

馬術部:馬に乗ったことが無い。

 

ラクロス部:学院のラクロス部は女子しかいないので入れたとしてもマネージャー確定。

 

文芸部:そもそもミナズキはじっと本を読んだり書いてられるタイプじゃない。

 

チェス部:やった事ないし、何より貴族生徒と平民生徒で対立してるから入ったとしても巻き込まれそうで嫌。

 

美術部:絵を描いたことが無い。

 

吹奏楽部:そこまで音楽に興味無し。

 

釣り部:現在たった一つの入部候補。

 

写真部:興味無し。

 

調理部:興味無し。

 

オカルト研究部:そもそもオカルトを信じてない。

 

こんな具合にほぼ全滅である。

「ほぼ全てがダメそうだ」

「そ、そうか」

ミナズキのほぼ全滅発言にガイウスも若干引いてしまったが提案をしてくれた。

「話を聞くより直接見てみればなにか印象が変わるかもしれないぞ」

「ふむ、なら色々回ってみようと思う。では」

そうしてミナズキは教室から出る。ここから1番近いのは吹奏楽部だしそこからだろうか、いやそれとも他の部活を先に回ってみるべきか。

 

 

「文化系ダメだったな・・・」

学院の中庭、そこにあるベンチに腰掛けミナズキは空を仰ぐ。結果だけ言うと文化系部活はボロボロだった。

 

話は少し前に遡る─── 。

まず美術部と吹奏楽部だがこれは残念ながら単純にやってみたいとは思わなかった。

ガイウスとエリオットが残念そうだったのが少しだけ申し訳なく感じた。

これはまだ良い。ミナズキの意欲の問題だ。

 

次に調理部だがミナズキはあろうことかまな板を真っ二つにしてしまった。

「これは・・・うん、他の用途にも使えるから大丈夫だよ」というニコラス部長の優しいフォローとメアリー教官の苦笑いが逆に痛く感じた。

 

次にミナズキは学生会館へ向かった。

文芸部ではドロテ先輩、そして同じクラスのエマがいたのだが体験入部の為にドロテ先輩に話しかけた途端、先輩は挙動不審になり途中から「男の子同士でこんな感じに・・・」とうわ言を言い出し最終的には鼻血を撒き散らしながら恍惚とした笑みを浮かべていた。

あまりにも得体の知れない寒気を感じたミナズキはその場をエマに任せ逃げるように退室した。

 

チェス部は入室前に止めた。中から貴族生徒と言い合っているマキアスの声がしたのだ。マキアスは別に悪い奴ではない、勉強も出来るし教えるのも上手い。だが貴族の事になると頭ごなしに否定するところは正直いただけない。下手に揉め事に巻き込まれる前にその場を後にした。

 

写真部は会話を聞いてはっきりと幻滅した。

恐らく部長のフィデリオ先輩はまともなのだろう。しかし、同学年のレックスの言葉───。

「お前も俺と一緒に女子を撮りまくろうぜ!」

そう言って差し出して来た明らかに隠し撮りな女子の写真の数々にミナズキは一言───。

「俺に盗撮の趣味は無い」

そして素早く退室しドアを閉めると中から───。

「待ってくれ!別にこの部活はそんないかがわしいものではないんだ!」

「えー良いじゃないっすかー女の子撮りましょうよー」

フィデリオ先輩の悲痛な叫びとレックスの暢気な声が聞こえたが聞こえないフリをしてその場から離れた。

 

「ウフフ・・・待っていたわ。」

オカルト研究部の部室に入って言われた最初の一言はこれだ。笑っている同学年であり、唯一の部員であるベリルにミナズキは聞いた。

「・・・何を待っていたんだ?」

「貴方が来ることよ、ウフフ・・・調理部に文芸部、それに写真部は大変だったみたいね」

「なんで分かるんだ・・・」

「''視えている''からよ・・・ウフフ」

余計に謎が深まった。

ミナズキ自身ベリルのことは嫌いではない。

たまに話す仲ではあるし、なにか危機があるとベリルがさっきのような薄ら笑いと共に教えてくれる。

ちなみにその危機とは基本的にレナによるものだ。

「それで、貴方はオカルト部に入るのかしら?」

「いや、辞めておく」

「ウフフ・・・でしょうね」

笑うベリルにミナズキは問う。

「それも視えていたんだろ?」

「ええ、でも貴方が断らない未来もあったのよ?」

「は?」

これにはミナズキも驚いた。ミナズキはオカルトを信じない、ベリルに会ってからはその日の運勢くらいなら聞くようになったがそれでも占いに自分の運命を決められるのは冗談ではない。

そんな自分がオカルト部?訳が分からなかった。

「ウフフ、冗談よ」

困惑するミナズキにしてやったりと言わんばかりにベリルは笑う。

「なんだ、冗談か」

「ウフフ・・・それと貴方今日はまだ難があるから気を付けると良いわ」

「え・・・」

またもや得体の知れない寒気を感じたミナズキは少しだけベリルに近づく。

「具体的に何に気を付ければいい?」

「ウフフ、思ったよりも必死ね」

「当たり前だ、文化部だけでこの気苦労だ。運動部に行ったらどうなるか分からないからな」

ミナズキからすれば気が気でない。

放課後だけでも調理部ではメアリー教官とニコラス部長に苦笑いをされ、文芸部ではドロテ先輩が鼻血を噴出し、写真部ではレックスから大量の女子の隠し撮り写真を見せられた。

これ以上はどんなことが起きるかは想像出来ないししたくもなかったのだ。

 

「ウフフ・・・私からはなにもいわ「欠片でも良いからおしえてくれ・・・」貴方意外と押しが強いのね」

どんどん近付きながら真剣な顔で迫るミナズキにベリルも押され渋々といった感じでアドバイスをくれた。

 

「まず、ギムナジウムで水泳部を見るなら2階から見ることをお勧めするわ、フェンシング部は可能ならあまり近づかない事ね、馬術部は馬との距離に気を付けなさい、ラクロス部はそもそも貴方にとっては行くだけ無駄足ね、園芸部は大丈夫だけど空に注意ね」

「そ、そうか」

そっと胸を撫で下ろす。とりあえず今言われたことを守れば最悪は逃れられそうな気がした。

 

「ベリル助かった、ではな・・・」

そう言ってミナズキはオカルト研究部の部室を後にする。

「ウフフ・・・まああくまでも避けられるのは『最悪』だけなのよね」

1人になった部室でベリルは呟いた。

 

 




ご拝読ありがとうございました。
次の次くらいには自由行動日になるかと思います。
次話もよろしくお願いいたします。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

  • あった方が良い
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