英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
アンケートの結果、2番の「レナに誘われ帝都へ」が1番多い得票でした。
アンケートにご協力いただきありがとうございました。


12.夢の中

 

約11年前、ノルティア州の山間の集落跡───。

 

「童よ、これはお主がやったのか?」

「・・・」

1人の老人が目の前にいる年端のいかない少年に問いかける。少年はピクリとも動かず顔を逸らした。

 

それを肯定と捉えた老人は周りを見渡す。

地獄絵図、という表現がピッタリと思える場所だった。

血により真っ赤に染め上がった大地、そこらを転がるおびただしい死体の数々、その全てが凄惨な死を容易く連想させるような表情で苦しみ抜いて死んだことが嫌でも分かる。

 

「童よ、一体ここで何があった?」

「・・・みんな良い人達だったんだ・・・」

老人の問いに少年はぽつりぽつりと話し始める。

 

元はここに住んでいた住人たちは様々な土地から来たいわば流れ者達で、少年もその流れ者の夫婦の間に生まれた子供だった。

 

ここの住人たちに共通して言えたのは様々な事情で元の住処を出た傷心した者達、というもので例えば人に騙され借金のカタに家を失った者、事故で子供を失ったショックで何も出来なくなった者、元は会社の重役だったが理不尽な理由で社会的地位を全て捨てさせられた者。

 

そんな彼らが住んでいたのがこの集落であり外界との交流を断ち、野菜などを育て裕福でなくとも静かにのどかに暮らしていた。

───だがそれが野盗に襲われる原因になった。

 

金目の物は無くても食料はあるし女は居る。

無法者たちにとっては十分襲う理由になった。

 

「童よ、お主はどうやって生き残った?」

「・・・俺はその日隣の家の木こりのじいさんと山に木を拾いに言ってた、戻ってきた時には騒ぎが起きててじいさんに隠れるように言われた」

 

集落の異変にいち早く気づいた木こりは少年に隠れるように伝えると斧を手にし走って行った。

しかし、それだけで状況は好転したりしない。

木こりも直ぐに殺され生き残った若い連中は1箇所に集められた。野盗達はそんな住人たちを楽しむように弄び、苦しめ、それを肴に酒を飲み笑っていた。

そして少年はそれを、自分に良くしてくれた仲間たちの苦しみ抜いて死んでいく様を隠れながら延々と見ていた。───見ていることしか出来なかった。

 

真夜中になり野盗達が酔い潰れ眠りに着くと隠れていた少年はみんなの亡骸の元に静かに駆け寄る。

最近結婚した若い夫婦、自分にも良くしてくれてよくパンを焼いてくれたご近所さん、少年によく勉強を教えてくれた子と夫を失った元教師のお姉さん、元は医者でみんなの体調を気にかけてくれたおじさん、狩りが上手くてよくみんなに肉を分けてくれた猟師のおばさん、さっきまで一緒に山に登って木の切り方を教えてくれた木こりのじいさん。そして───。

「父ちゃん・・・母ちゃん・・・・!」

自分を育ててくれた両親が今は物言わぬ死体に成り果てていた。

みんな、みんな少年にとって大切な宝物だった。

───みんな幸せだったのに、苦しめられてこんな風にされて・・・あいつらも同じ目に合わせなくちゃダメだ。

 

そこからの少年の動きは速かった。

自分の家に置いてある包丁を手に取り、睡眠が浅そうな者から体重をかけ喉を刺した、少し抵抗されることもあったが泥酔しているものに少年を止めるだけの力は無かった。

途中返り血で手が滑り包丁を換え、それを繰り返した。

全て終わる頃には朝日が登り辺りは血にまみれた。

仇は取れた、じゃあどうする。

少年の中にはもう何も残っていなかった。

唯一残ったのは怒りだけでやり場のない怒りをただじっとその場に座り込み耐えていた。

人や物に当たってはいけない、両親に教えられたことを忠実に守っていた。

 

そして老人に出会った。

「童よ、お主はこれからどうする?」

「別に・・・何も・・・」

「ではその手に持った包丁は捨てるべきじゃな」

「・・・」

少年の手には未だに包丁があってその持ち手が軋むほどに強く握られていた。

 

老人が包丁を取り上げようとした瞬間だった。

少年は包丁を勢いよく老人に振り切る、しかし老人はいとも容易くそれを避けると少年に拳を少年に繰り出す。

「八ノ型、破甲拳」

少年は吹っ飛ばされ地面に落ちるが直ぐに立ち上がり包丁を構える、その目は怒りや憎しみに塗れた悪鬼そのものだった。

「grrrrrr・・・」

「童よ、今お主を支配しているのは『怒り』か、存分に来るが良い。教えてやろう『八葉一刀流』をお主の中で荒ぶる『怒り』・・・それを鎮める方法を」

その言葉を機に少年は老人へ再度斬り掛かり、老人はその怒りを受け止めるように跳ね除け続けた。

これが少年と剣仙と呼ばれる老人、ユン・カーファイの出会いだった。

 

 

 

「・・・ズキ、・・・ミナズキ!」

「ん・・・ここは・・・?」

ミナズキが目を開けると目の前には少しだけ心配そうなレナの顔があった、昨日は座ったまま寝てしまったようで少しだけお尻が痛かった。

 

「どうしたのかね、ノックしてもまるで返事がないから開けてみれば床に座りながら寝ているなんて、・・・ミナズキ・・・君泣いているのかい?」

「ん・・・あれ?」

レナの言葉にミナズキは自分の頬に手を当てる、そこには涙の伝った跡があった。

 

「あー・・・もし何かあるなら言いたまえ、多少は力になれるかもしれないからねぇ。・・・そうだ、お腹は減っていないかい?実は昨日食堂のラムゼイ夫妻から良い茶葉と茶菓子をお裾分けされてねぇ・・・」

「・・・お前、人に気とか使えたんだな」

「手厳しいねぇ!?いやしかし当然だとも!なにせ君は私の目的のために必要な協力者であって、そんな君が何かに弱っているならば「レナ」・・・なんだい?」

「ありがとう」

「・・・なんだい急に、少し調子が狂ってしまうよ」

不貞腐れたような顔でレナがそっぽを向く。恐らくは彼女なりの優しさであり、気使いなのだろう。ミナズキはそのまま部屋を出ようとするレナに話しかける。

「レナ、悪いんだが手を貸してくれるか?」

座ったままレナの方へ右手を差し出す。

こちらを見たレナは目をぱちくりさせるといつもの調子で笑った。

「・・・ふふ、はっはー!良いだろう!ほら、ミナズキ!私が手伝うからしっかり立ちたまえ!」

レナはその少し細い両の手でミナズキの右手を掴み、まるで大きなカブでも抜くかのようによいしょとミナズキを引っ張る。ミナズキもスっと立ち上がり2人で少しだけ笑う。

 

「ふむ、だが少し困ったねぇ。今日は君を丸1日連れ回す予定だったんだが・・・」

「相手に同意を得てからやれ、勝手に決定するな」

レナの言葉にミナズキは突っ込みを入れるがレナは変わらず顎に手を当て唸り続ける。

ふむ、うむ、むー、とレナは唸り続けたが最終的に考えが纏まったようでメガネをくいっと直しミナズキに向き合う。

 

「ミナズキ!お出かけといこうか!」

「は?どこにだ?」

「帝都さ!安心したまえ帝都の方にも調査予定だったんだ。ほら、話がまとまったんだから準備したまえ!私はもう出来ているからねぇ!」

「いや、だから相手に同意を・・・っておい!」

言うだけ言うとレナは部屋の外に出てしまう、ミナズキは制服のシャツを新しいものに着替えた。

昨日ギムナジウムでシャワー浴びておいて良かった。

そう思いながら身なりを整え部屋を出るとレナが目の前にいた。

「よし整ったな!では行こう!」

「いや、だから・・・」

「いざ帝都へ!」

「やっぱりお前は人に気を使うことは出来ないようだな!」

ミナズキの悪態にもなんのそ、レナはミナズキの手を引き駅へと駆け出した。




ご拝読ありがとうございました。
次回は帝都での調査、もとい息抜きです。
次話もよろしくお願いいたします。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

  • あった方が良い
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