昼ですが書けたので投稿します。
サンクト地区にて
「ふむ、これがフリーマーケットか・・・確かに普段見ない品が多く売られているねぇ・・・ただ・・・」
フリーマーケットと言うだけあり確かに色んな物が売られている。
このサンクト地区は聖アストライア女学院というお嬢様学校がありこのフリーマーケットもその女学院が協力している催しだ。
それ故に出品者にも女学院のお嬢様が結構いる。
そしてそんなお嬢様が出品している物は基本的に彼女たちがもう使わなくなった高級品だらけだった。
「お目当ての物は無さそうかねぇ・・・」
そう呟きレナは店の前から外れミナズキの元に戻ってくる。
「収穫無しか?」
「そうだねぇ、まぁこんなすぐに見つかっても楽しくは無いがね・・・」
それに、とレナは続ける。
「別の目的もある、と言ったろう?」
ニカッと笑いレナは乗り気でないミナズキの腕を引き歩き出す。
「あの制服はトールズの・・・兄様と同じ赤色の制服・・・」
そんな2人を1人の女学院生が遠くから見つめていた。
ドライケルス広場───
「ふむ、あれがかの有名なドライケルス像か・・・」
「なんというか、でかいな・・・」
広場の中心にそびえ立つドライケルス像の前に立ち、2人は呟く。
荘厳な雰囲気を纏う像の後ろには皇族であるアルノール家の住まうバルフレイム宮が遠くに見える。
「帝都へ来たのだから一目くらいはと思っていたが、見た目以上に大きく感じるねぇ・・・」
「・・・よく分からないが存在自体がでかく見えるな」
像の持つ圧倒的な存在感と威厳、その姿に2人は言葉を詰まらせ押し黙る。
「・・・えっと、いい時間だしなにか食べないかい?」
「・・・そうだな」
逃げるように露骨に話題を逸らすレナにミナズキも賛同し2人は広場を後にした。
ヴァンクール大通り───
百貨店《プラザ・ビフロスト》の一角喫茶コーナー《ミモザ》で2人は休憩を取っていた。
「このベリータルト、いけるねぇ」
「だな、丁度いい甘さだ」
現在午後3時、良い感じに小腹が空いていた2人はコーヒーのお供にベリータルトを頬張る。
タルト生地のサクサクした食感とベリーの程よい甘酸っぱさがしつこくなくてコーヒーによく合う。
程なくしてベリータルトをたいらげコーヒーを飲みつつ一息つく。
「ふふ、こういう昼も悪くないねぇ」
「・・・そうだな」
微笑むレナを他所にミナズキは少しだけ目線を自身の背後にやり、目を細める。
サンクト地区から誰かが着いて来ていた、初めは気の所為かとも思っていたがドライケルス広場を抜ける時も同じ視線を感じて警戒度を上げていたのだ。
「ミナズキも気づいていたかい?」
「・・・ああ」
レナの問いに答えながら左手を太刀の鍔に添える。
そんなミナズキを見てレナは慌てて席から立ち、その気配の主に声を掛ける。
「おーい、こちらへ来ておくれ。大丈夫、取って食うような事はしないさ。ただ───」
レナはミナズキを手で制しながら言う。
「私の連れが臨戦態勢だ、出来れば早く来てくれると助かる」
その声に反応するようにスっと1人の少女が2人の前に現れる。
「・・・申し訳ありません、付けるつもりは無かったのですが」
その少女はサンクト地区で見た聖アストライア女学院の制服を着た長い黒髪の凛とした少女だった。
「君は女学院の生徒のようだねぇ、先ずは座ってくれたまえ。・・・すみません、コーヒーのお代わり2つとこの娘にベリータルトと紅茶を」
席をミナズキの横に移動し、少女を座らせたレナは注文を済ませ少女に向き合う。
「え、いやあの・・・私は」
「私の奢りだ、良いから食べるといいよ。尾行していた事を申し訳ないって思っているなら余計にね」
断ろうとする少女をピシャリと跳ね除けてレナは続ける。
「先ずは自己紹介だね。私はレナ・レトロノーツ、トールズ士官学院の学生だよ、こっちはミナズキ・バンシア、私とは同じクラスさ」
「・・・どうも」
レナに紹介されたミナズキは軽く会釈をし、少女も頭を下げる。
「エリゼ・シュヴァルツァーと申します。先程までの無礼、どうかお許し下さい」
「・・・シュヴァルツァー?」
少女、エリゼの名乗りにミナズキが反応する。
シュヴァルツァーと聞いて思い浮かべたのは自身と同じクラスであるリィンの姿だった。
「もしかして私たちと同じクラスのリィンの関係者かい?」
「はい、リィンは私の兄です・・・」
「何故私たちを尾行するような真似を?」
レナの問いかけに肯定を返すエリゼ、そんな彼女にレナは更に問う。
「お2人が兄と同じ制服を着ていたので、気になりまして・・・」
「気になる?」
「はい、兄は優しくて良い方なんですがそれ故によく色んな事を1人で背負ってしまうような人なんです」
なるほど、とレナは何となくだが察する。
要するにこのエリゼという娘は兄がトールズで苦労をしていないかが心配なのだろう。
そしてそんな兄と同じ制服を着た自分たちを見かけた。
しかしなんと言って声をかければ良いかを決められずズルズルとここまで着いて来てしまったのだろう。
店員が持ってきてくれたコーヒーのお代りを飲みながらレナは答える。
「君の言いたい事は何となくだが解ったよ。安心したまえ、君の兄上は思ったよりも学院生活を楽しんでいるように見えるからねぇ」
君も食べたまえ、とエリゼに促しながらレナは笑う。
「・・・そうだな、少なくとも学院生活を嫌そうにしている感じはしない」
ミナズキもその意見に乗りエリゼを安心させるために言葉を紡ぐ。
ただねぇ、とレナは苦笑いしながらエリゼに告げる。
「ただ、うちのクラスは色々と問題だらけさ。そういった意味なら気苦労はあるかも知れないねぇ」
「問題、ですか?」
食いついてきたエリゼにレナは教える。
自分たちの所属しているⅦ組は身分関係無く作られたクラスである事、四大名門の子息と知事の息子が現在大喧嘩中でクラスの空気が悪いこと、特化クラス故にカリキュラムはハードであり色々と危険もある事、教官に押し付けられる形で生徒会の仕事を手伝っていること。
「それとだね、実は来週「待て、レナ」なんだいミナズキ?・・・あ」
レナの話をミナズキが遮る、何事かとミナズキに講義の視線を送るがミナズキの指す方向に目をやり押し黙る。なぜなら───。
「にい・・・さま・・・」
話を聞いていたエリゼが俯いて涙混じりの声を上げていたからだった。
おい、とレナを肘で小突くミナズキとバツの悪そうに顔を背けるレナ。おい何とかしろ、とミナズキは視線を送るが無理だ、といった視線でレナは返してくる。
「あ、えっとな・・・エリゼ・・・さんは兄貴のこと心配なんだよな?」
「はい・・・いつも無理をして、弱音を吐いてくれなくて・・・もっと自分勝手になっても良いのにぃ・・・!」
ミナズキの問いに答えながらもとうとうエリゼは顔に手を当てて静かに涙を流し始める。
そんな姿に少し気圧されながらもミナズキはポケットからハンカチを取り出しエリゼの涙を拭い、そのまま手渡した。
「ごめんなさい・・・取り乱してしまって・・・」
落ち着きを取り戻したエリゼは2人に謝ってくる、レナは頬をかきながら答えた。
「いや、こちらもすまない。君を心配させたかったわけじゃないんだ、ただ事実を伝えようと思っただけなんだ・・・」
「大丈夫です、レナさんはただ兄の近況を教えてくれただけですので・・・」
「とりあえず、出るか?」
ミナズキが提案するとレナもエリゼも無言で頷いた。
「今日はありがとうございました」
「いや、こちらこそあまり良い話が出来なくてすまなかった」
お礼を言ってくるエリゼにレナは謝りながら頭を下げる。ミナズキは夕日がかかり始めている大通りを見つめていた。
「あの、ミナズキさん。今日はありがとうございました」
「・・・まあ、こちらこそ・・・トリスタはここからそう遠くないんだ、心配なら偶には兄貴に会いにいくのも手じゃないのか?」
「はい、そうします」
少しぶっきらぼうなミナズキの返しに微笑みながららエリゼはレナに綺麗なペンダントを、ミナズキにはコインのサイズの小さな銀色の時計を手渡してきた。
「今日のフリーマーケットで余ってしまったものですが、よろしければどうぞ」
「良いのか?お古とはいえお嬢様が使ってたような物だ、高いだろ?」
「大丈夫です、どちらも私が少し前に自分で買っていた物ですし何よりお2人に受け取って欲しいので」
「そうか?」
じゃあ遠慮なく、と2人は貰った物を懐にしまう。
それとさ、と今度はミナズキから喋りかけた。
「この流れで言うのもあれなんだが、出来ればあのハンカチは返して貰えないか?恩人に貰った大事な物なんだ」
「え、えっと・・・」
右手を差し出してくるミナズキを見てエリゼは自分の手に握られたハンカチを見る。
くしゃくしゃになっていて自分の涙で濡れてしまっている。これを渡すのは貴族の淑女としても、何より1人の女の子としても恥ずかしい事だった。
「い、いえ!これは洗ってお返しします!」
「い、いやでも」
「今度兄に会いに行く時に必ずお返ししますので!」
「あ、ああそうか?なら、うん。待ってる」
再び取り乱すエリゼに気圧されながらミナズキはこくこくと頷く。
「時間が時間だねぇ、エリゼ君、私たちはもう行くよ」
「はい、今度帝都に来たら次は私が良いお店を教えますね」
「はっはー!楽しみだ!」
「じゃあ、まあ・・・また今度」
「はい、また今度」
挨拶を済ませたエリゼはレナとミナズキの後ろ姿を見送る。
「あの人の不器用なところ・・・兄様みたい・・・」
微笑んだエリゼの呟きが風とともに消えた。
「ミナズキ、改めて今日はどうだった?」
「・・・どうとは?」
「士官学院に来て初めての息抜きだよ、君はここ最近苦しそうだったからねぇ」
レナの言葉にミナズキは小首をかしげる、自分が疲れている?と頭の中で問答を始める。
「ま、自覚が無いのは仕方がない。また付き合ってもらうよ、君は自分の事になるとどうやら恐ろしく無頓着のようだからねぇ」
呆れたようなレナの言葉にミナズキも思い直す。
思えばレナが急に帝都に行こうと言い出したのは今朝の自分の姿を見てからだった。
恐らく調査というのは本当だろう、だがそれは午前には終わっていたし午後はほとんど帝都を見て回っていたわけで───。
「気遣ってくれたのか・・・お前は」
「なかなかどうして私も楽しかったよ、だからおあいこだねぇ」
おちゃらけるよう笑ったレナと、真相に気づいて少しだけため息を付き笑うミナズキ、2人はそのまま鉄道のある中央駅へ向かうのだった。
「あーーー!」
「な、何だ急に」
突然叫んだレナにミナズキは慌てて返す。
するとレナは頭を抱え今後厄介になるであろう事実を伝えた。
「今思い出した!シュヴァルツァー家といえば大帝ゆかりの秘境《ユミル》を治めている男爵家の名前じゃないか!」
「つまり・・・?」
「これがバレたらマキアスが確実に荒れる!」
「なんだと・・・」
恐らく起きるであろう面倒事に2人は頭を抱えるのだった。
ご拝読ありがとうございました。
なかなか締まらないラストになりました。
感想、質問等も受け付けてますので気になることがあればぜひ。
(質問に関しては後書きの方にQ&Aでお答えします)
次話もよろしくお願いいたします。
今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?
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あった方が良い
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無くても良い