英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
タイトルの通り特別実習前日です。


17.実習日前日

 

「アリサ、エリオット、少し時間あるか?」

「ミナズキ?えぇ、別に良いけど・・・」

「珍しいね、僕たちに話なんて」

実習前日の夜、明日ケルディックに向かう予定の2人にミナズキが声をかける。

 

その少し離れたところでは─── 。

「ガイウス、エマ、フィー、すまないが今時間あるかい?」

「レナか?どうかしたか?」

「まあ、あとは寝るだけですけど」

「なに?」

レナが明日パルムに行く3人に話しかけていた。

 

第3学生寮1階談話スペース───。

「えっと、まずはこれをどうぞ」

「あ、ありがとう?」

「いただきます?」

少しぎこちない所作で2人にハーブティーを差し出すミナズキ、意外なこと過ぎて受け取る側のアリサとエリオットもぎこちなくなる。

 

「あ、これ美味しいわね」

「うん、良い香りだね」

「気に入ってもらえてよかった、レナが教えてくれたんだ」

それでだ、とミナズキは切り出す。

「2人を呼んだのはレナのことだ、少しだけ気にかけてやって欲しくて・・・」

「レナを?」

首を傾げたアリサにミナズキは答える。

「あいつは細かいところに気を回すことは出来るがそれ以外は基本自分の道を行くタイプだ、だから時々考え込むようなことをして周りが見えない時がある・・・どうした?」

「いや、ごめんなさいちょっと驚いて・・・」

「ミナズキって思ったより喋るんだね」

「・・・まあ、2人とはあまり喋ってなかったからな・・・」

2人に言われたことに少しショックを受けながらもミナズキは続ける。

 

「話を戻そう、結論から言うとレナは頭は回るし知識も豊富だがたまにとんちきな行動をとる時がある。だからその場合の対処を頼みたい・・・また固まってるがどうかしたか?」

「気になってたんだけど、2人ってどういう関係なの?」

エリオットの質問にアリサもうんうんと頷き、迫るように聞いてくる。

「あなたたち一緒にいることが多いわよね、恋人同士とかなのかしら?」

「恋人?」

「うん、普通の男女にしては距離感も近いからね」

アリサの質問に首を傾げるミナズキ、エリオットもまたそのことは気になっていたようだ。

「少なくともそういう関係になった覚えは無いな」

だがミナズキはそれを特になんでもないように否定する。

えー、と疑いの目で見るアリサ。そういえば、とエリオットはもう1つ質問を投げかける。

「どうしてこの話を僕たち2人に?ラウラとリィンもA班なんだけど」

「あー・・・それはだな・・・」

ミナズキは気まずそうに目を逸らす。

「最近、実技テストを終えてから特にラウラとリィンから視線を感じるようになってな・・・何となく居心地が悪いんだ」

ミナズキの返しに2人は苦笑いを浮かべ、心当たりを口にする。

確かに実技テスト以降ラウラはミナズキを見てそわそわする時がある、流派は違えど同じ剣士で実技テストではレナ込みとはいえサラ教官相手にあの大立ち回り、挙句にサラに「楽しい」と言わしめたものだから自分も立ち合いたいと思っている。とアリサは本人から聞いていた。

 

リィンもそうだ、エリオットが聞いた話ではミナズキは立場的にリィンの兄弟子にあたる、リィン曰く『一つ一つの剣士としての動きが恐ろしく綺麗で隙が無い、どうやってあそこまで至ったのかを知りたい』とのことだった。

2人の説明を聞き表情を曇らせながらなるほど、とミナズキは頷いた。

「俺は実戦以外では立ち合わないよ、どうしても躱せない依頼とかならやらなくも無いけど」

他に質問はあるか?とミナズキが促すが2人は首を横に振る。

「そうか、話を聞いてくれてありがとう。実習の時はよろしく頼む・・・」

2人の飲み終えたティーカップをトレイに乗せ、ミナズキは食堂へと歩いていった。

「なんというか、あれで付き合ってないってちょっとムズムズするわね」

「あはは、多分本人たちに自覚は無いんだろうね」

ジトっとした目のアリサの言葉にエリオットは苦笑いで答えるのだった。

 

 

第3学生寮3階談話スペース─── 。

「付き合ってもらってすまない、とりあえずこれを飲んでくれたまえ」

そう言って慣れた手つきでガイウス、エマ、フィーの3人にレナは紅茶を差し出す。

 

「ふむ、りんごの良い香りだ」

「アップルティーですね、美味しいです」

「・・・いけるねこれ」

3人の反応を見てでは早速とレナは話を切り出す。

「話と言うのはまぁ、ミナズキのことさ。お荷物状態の2人がいる中悪いが少々気にかけてやって欲しくてねぇ」

お荷物状態の2人、という言葉を聞きエマたちは苦笑いを浮かべるが実際マキアスとユーシスの影響でクラスの空気が悪くなっているのは確かなので何も言えなかった。

意外にも聞き返したのはフィーだった。

「ミナズキを気にかけるってなに?戦闘とかなら確実にⅦ組でもトップじゃん」

「そう、戦闘力だけならね。問題はそれ以外さ」

それ以外?とフィーが首を傾げると次にガイウスが訊ねる。

「確かにな、俺はミナズキとはそれなりに話すが他の皆より俗世に疎いようなところがあるな、そういうところか?」

「そういうところさ、彼は少々、いや大分偏りがある」

ガイウスの問いにレナが答える。

実際ミナズキは偏っている、授業の成績は平均よりやや上だが、帝国の文化やマナーには疎かったり、或いはいまいち理解出来ていない、そのくせ戦闘の知識は高かったりと言ってしまえば一般常識が幾らか欠けてしまっている。

 

「えっと、つまり私たちにお願いしたいことと言うのは・・・」

「上手い言い方は出来ないが彼が途方に暮れているように見えたら腕を引いてやってくれ」

「・・・どゆこと?」

エマの問にレナは答えるがフィーは頭にはてなマークが浮かんでいた、ガイウスも考えるような仕草を見せる。

ふむ、とレナは少し考え言葉を紡ぐ。

「私はミナズキと一緒に色々行動したから分かるし、多分君たちも今回の実習でわかると思うが彼はその場に必要な事を終えると何をすれば良いのか分からないような態度をとる時がある、指示待ちという訳ではなく自分が何をしたいのかが分からない、といった風にね・・・そう、それはまるで───」

はぐれてしまった親を探す迷子のようで─── 。

 

何も言えなくなった3人にレナは続ける。

「私は私の目的があってこの学院に入学し動いている、その目的にミナズキが都合のいい存在と思って手を組みもしたし、ミナズキ自身も暇つぶしとして付き合ってくれている。ただ・・・たまにあいつが放っておくとそのまま何処かへふらりと消えそうな気がしてならなくてね」

言葉を丁寧に選ぶように話すレナを見てエマは微笑む。

「レナさん、優しいんですね」

「優しい?私がかい?」

「はい、その目的というのは分かりませんがミナズキさんとよく一緒にいるのは少なくともその為だけじゃないんだと思います」

エマの言葉にふむ?とレナは首を傾げた。

「ふふ、紅茶ご馳走様でした。実習がどうなるか分かりませんが出来る限りミナズキさんのことも見ておきます」

「俺も出来る限り見ておこう、ミナズキからは悪い風は感じない、むしろ春のおとずれを感じさせる暖かい風を感じるから悪い奴でない事はわかる」

「ん、面倒だけど任せて」

「・・・すまない、よろしく頼むよ」

レナは3人の飲み終えたティーカップをトレイに乗せ食堂へと向かう。

 

「ふふ、なんだか暖かい話でした」

「うん、なんか今日は何時もよりよく眠れそう」

「ああ、俺たちはミナズキを見守るとしよう」

エマ、フィー、ガイウスの3人は心に暖かいものを感じながら自室に戻って行った。

 

 

 

第3学生寮1階食堂

「なんだい、君も誰かにお茶を出したのかい?」

「ああ、お前が他のメンバーに迷惑をかけないようにちょっとな」

「ふむ、私も同じようなものさ・・・」

食堂で鉢合わせしたミナズキとレナは一緒にカップを洗うのだった。




ご拝読ありがとうございました。
次回から実習がようやく始まります。
原作とは違うので少し考えながら書きますがよろしくお願いいたします。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

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