ようやく原作での特別実習の開始回になりました。
特別実習当日、朝─── 。
目覚めたミナズキは支度を整え階段を降りる。
時間通りではあるが1階の食堂前には自分以外のB班が既に揃っていた。
「おはようございます。ミナズキさん」
「時間通りだな、ミナズキ」
「ふぁ・・・おはよ、ミナズキ」
「あ、あぁ、おはよう」
エマ、ガイウス、フィーの挨拶に返すがなんだか妙に3人が微笑ましく見てきている気がして戸惑う。
「3人ともなにか良いことでもあったのか?」
「いえ、何でもありませんよ」
ミナズキの問いにエマが返すが笑顔はそのままだ。
なんとも言えない状況にミナズキは首を傾げながら考えるが一向に答えは出てこない。
「おい、駅に向かうなら早く行くぞ」
そんな中不機嫌そうなマキアスに声をかけられ時間を確認する、確かに丁度いい時間だ。
「本当だな、では移動しようか」
ミナズキの返事にマキアスは頷き、少し遠くにいたユーシスは無言で出て行く。
なんとも不穏な空気を抱えながらB班は移動の為に寮を出るのだった。
駅の前に着くと良く知る人物が立っていた。
「マローラ?なんでここに?」
「おはようございます、ミナズキ。今日出発というのは以前聞きましたし私は朝は《キルシェ》でコーヒーを飲むのが日課ですから、要はついでです。」
先日パルムの資料のまとめを手伝ってくれたマローラが見送りに来てくれていた。
「なるほど、俺は普段は学生会館の1階の食堂しか使ってないから分からないが、あそこのコーヒーは美味いのか?」
「なかなか悪くないですよ、良ければ今度一緒に行きましょう」
「そうだな、実習から戻ったらよろしく頼む」
そんな2人の様子を見てエマが呟く。
「マローラさん、なんだか会話が弾んでますね」
「普段は違うのか?」
ガイウスの問いにエマは返す。
「はい、普段はもっと淡々としててほとんど表情を変えないというか」
エマの返しを聞きガイウスとフィーが改めて話す2人を見る。
2人とも普段からあまり他人に関わるようなタイプでは無いがそんな2人が楽しそうにしていた。
「レナはヤキモチ妬いたりするかな?」
「どうなんでしょう?」
「ふむ、仲良き事は良いことだと思うがレナとミナズキがそういう関係には見えないしな」
フィーの言葉なエマは考え、ガイウスも少しどう言ったものかと悩む。
そんな3人をよそにマローラとミナズキは会話を終える。
「ではミナズキ、お土産と土産話。どちらも楽しみにしていますね」
「ああ、まぁ可能であればだが何とか努力しよう」
「それで構いませんよ、無理は良くないですから」
「ああ、じゃあ行ってきます」
行ってらっしゃい、と手を振るマローラに背を向け3人の元に帰ってくるミナズキ。3人がなんとも言えない顔をしていることに気付きまたもや首を傾げる。
「・・・?マキアスとユーシスはもう入ってるみたいだし、とりあえず駅に入るか?」
ミナズキの言葉に3人は頷きそのまま駅へと入っていった。
パルム行きの切符を買い、皆で鉄道を待っているとA班が駅に入ってきた。
「皆さん、おはようございます」
「おはよう、委員長」
エマとリィンが挨拶をし他のメンバーも話し始める。
「そういえばA班は少し遅かったが何かあったのか?」
「実はレナが朝から紅茶とクッキーを用意してくれてね」
ガイウスの問いにエリオットが返す。
レナはどうやらA班の全員に朝からお茶を容れたようだ。
「そうそう!レモンティーとジンジャークッキー!どっちも美味しかったわ」
「うむ、おかげで身体がぽかぽかしている」
笑顔で言うアリサ、ラウラも笑顔でうんうんと頷く。
そんな話の渦中であるレナはと言うと───。
「ほらミナズキ、余ったからあげよう。小腹が減ったら食べるといい」
「これは?」
「ジンジャークッキーだ、味は保証するよ」
レナはクッキーの入った袋をミナズキに手渡す、ミナズキは不思議そうな顔をしたがそのまま懐にしまった。
「俺も何か渡した方がいいか?」
「いや、食べ物は要らないな、クッキーはまだ持ってるからねぇ」
「そうか・・・じゃあこれ」
そう言ってミナズキは本を1冊レナに手渡す。
「これは・・・ミステリー小説かい?」
「《暗中模索》シリーズの帝都編だ、意外と面白いぞ」
暗中模索シリーズとはミナズキがマローラに教えてもらった本であり、主人公が行く先々の不可思議な事件をタイトル通り色々な方法で解決を目指していく、というミステリー小説だ。
ちなみにシリーズの名の通り他にも海都編、公都編などがある。
「鉄道旅だからな、暇つぶしは必要だ」
「なるほど、感謝するよ。まぁ、お互い頑張ろうじゃないか」
「そうだな・・・」
「・・・やっぱりあれで付き合ってないってちょっとムズムズするわね」
「あはは・・・そうですね、とっても仲が良いと思います。」
「まぁ、本人たちにそんなつもりは無さそうだからね」
2人を遠巻きに見ていたアリサの言葉にエマとエリオットは苦笑いで答えるのだった。
「・・・もうすぐ列車が着くな」
銀色の小さな懐中時計を確認し、ミナズキはB班の元へ戻る。レナもA班の元に戻っていく。
そして列車が着くとそれぞれの行先に合った物に乗り込むのであった。
パルム行き列車内─── 。
「・・・・」
「・・・・」
相変わらずムスッとしたユーシス、マキアスを見て他4人は心の中で軽くため息をついた。
今から初めての実習なのだからそんな剣呑な雰囲気は辞めて欲しい、いや例え無理でもせめて表には出さないで欲しかった。
この雰囲気を壊したのはミナズキだった。
「・・・・えと、ちょっと良いか?」
「ん?どうしたミナズキ」
反応してくれたガイウスにミナズキはここぞとばかりに人数分用意したプリントをみんなに手渡した。
「これは・・・」
「今回行くパルムの情報をまとめた物だ、簡単な周囲の情報と特産物、どんな町なのかがまとめてある」
「ほう、やるじゃないか」
マキアスの声にミナズキが返し、ユーシスが感想を漏らす、その瞬間2人は睨み合うがそんな2人をよそにミナズキは説明を始めた。
「今回特別実習がどんなものかはまだ分からないけど、その土地でしか出来ない事なら土地のことを知っておいて損は無いと思う、だからパルムに着く前に一通り目を通してみてほしい」
なるほど、と全員がプリントに目を通す。そこには繊維製品の伝統的な製造方法やそれに使われている原料、道具などが詳細に書かれていた。
「これ、ミナズキさんが1人で用意したんですか?」
エマの問いにミナズキは首を横に振る。
「俺1人じゃない、さっき見たと思うけどマローラが手伝ってくれた」
ミナズキの言葉にエマたちはあの人か、と頷きまたプリントに目を通した。
途中レナから貰ったクッキーを皆で分けて食べた。
ユーシスとマキアスには無理やり口の中に押し込んだ。
そんな感じで過ごしていると車窓に様々な色に染められた綺麗な布生地が見えてきた。
『本日は、帝国鉄道をご利用いただきありがとうございました。─── 次は終点《パルム》でございます』
車内放送を聞き全員で降りる体勢を整え列車から下りる。
駅のホームから改札に向かい外に出ると目に入るのは大きな水車と色とりどりの染め物。
「着いたか、パルム」
トリスタとは違う趣のある町並みにミナズキは感嘆の声を漏らす。
それは紛れもなく初めての実習の始まりを告げる言葉だった。
ご拝読ありがとうございました。
原作と違うことをするのは初めての試みなので
ゆっくりと暖かい目で見ていただけると幸いです。
次話もよろしくお願いいたします。
今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?
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あった方が良い
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無くても良い