昨夜はそのまま寝落ちしていました。
大森林の主が見えなくなったその瞬間、皆は膝を着き肩で息をしながら話を始める。
「皆、無事か?怪我は?」
恐らく今回の戦いで1番ダメージを受けたであろうミナズキはその場で大の字に倒れながら他のみんなに声をかける。
「ミナズキさんが1番危なかったと思いますよ」
ミナズキの元へエマが近づき治療を始める、確かに最初の尻尾の薙ぎ払い以外は皆目立った被弾は無かった。
「・・・なら良い」
自分以外は特にこれといった怪我が無いことに安堵しつつ、自分だけはまともに攻撃をくらった事実に少し複雑な気持ちになったミナズキは顔を背け魔獣が去っていった方向に目を向け、そして怪訝そうに見つめた。
「どうかしたのか?」
ミナズキの行動が気になったユーシスが訊ねる。
「いや、気のせいかと思ったんだが・・・なんだか色々タイミングが良すぎるような気がした」
「タイミング?」
ミナズキの返答に次はマキアスが訊ねる。
「あぁ、歩いてて思ったけどこのイストミア大森林は驚くほど広い。ああいった主とも言える魔獣がいるのも頷ける、でも俺たちが花畑を見つけて花を摘み始めてすぐに、それもかなり遠くから真っ直ぐこちらに来た。まるでこちらに人がいることを分かってたみたいに感じる」
「確かにちょっと変かも・・・」
ミナズキの答えにフィーも訝しむ、そしてミナズキとは別の方向に視線を向ける。
「・・・・」
「フィーちゃん?」
ただ一点を見つめるフィーに気になったエマが声をかける。
「フィーちゃん?」
「今誰かに見られた気がした・・・」
「え?」
フィーの言葉にエマだけじゃなく皆フィーと同じ方向へ視線を向けるがなにもわからない、あるのは大森林の一部である木々だけだ。
「気のせい、なのかな・・・」
フィーも困惑したように首を傾げるが誰も何も言わない。
ただ、その不穏な言葉もありⅦ組は急いで必要な数の花を摘みイストミア大森林を後にした。
「ひゅー、危ない危ない。あのちっこいの随分勘がいいじゃないか。それにあの剣士まだまだ本気じゃないなありゃ、久しぶりに楽しめそうだ」
パルム礼拝堂─── 。
「トールズの生徒たち、戻ってきたか」
外がすっかり暗くなってしまったため、教区長が心配してくれていた。
「こちらが依頼のエリンの花です」
「おお、ありがとう」
エマが籠ごとエリンの花を渡すと教区長はそれを受け取った。
「そういえばなのですが、イストミア大森林には主がいるんですか?」
「確かにいるが、もしや会ったのか?だとしたら妙じゃな」
エマの問に教区長が答えるが『妙』という言葉に引っかかったエマは再度訊ねる。
「妙、ですか?」
「そうじゃ、あの大森林の主は少なくとも君たちの行ったエリンの花の群生地のある場所までは来ない、本来なら大森林のもっと奥でひっそりと暮らしているはずじゃ、そもそもが穏和な魔獣じゃからな」
教区長の言葉に皆驚きが隠せない、いきなり現れ攻撃してしたあの魔獣が本来穏和なんて言われても納得がいかない。
あの時大森林の主は確実に気がたっていたのだから。
教区長から報酬を受け取るとⅦ組はパルム礼拝堂を後にする。依頼はこなしたはずなのに皆の中にはもやもやしたものが残った。
酒場宿《白の小道亭》─── 。
ミナズキ、エマ、ガイウス、フィーの4人は同じテーブルに座り食卓を囲む。
マキアスとユーシスは各々別の席に座り食事を摂っていた。
「あの魔獣はなんであんなところに居たんだ・・・?」
「マキアスさんとユーシスさんのことはスルーなんですね・・・」
「キリがないからな」
ミナズキの言い分にエマは苦笑いを浮かべるが実際にキリがないので諦めた。
「教区長は本来は穏和で大森林のもっと奥に生息している、と言っていたな」
「でも今日は気がたってて、それも大森林の中ではまだ手前の方に来ていた・・・ですよね」
ガイウスにエマが続き情報を整理する、情報は今のところこれしかないがそれでも無いよりはマシといった感じだった。
「・・・もしかして戦った後とか?」
フィーが不意に呟く、その言葉に1度静かになるがミナズキが口を開く。
「有り得そうだ、でもそれだと何とってなるけど」
「そういえばフィーはあの時視線を感じたと言っていたな」
ガイウスの言葉に皆で頭を捻り考える。
「追い立てられた、とかですかね?」
「それだとあの魔獣より強い存在がいることになるな」
エマの言葉にガイウスが答える。
「それにもしフィーの感じた視線が実際にいたとしたらなんで襲って来なかったんだ、こっちは疲弊してるんだから普通に考えたら襲うと思うけど」
「知能のある魔獣?」
「もっと大変ですね・・・」
ミナズキの考えにフィーが答えるエマが愚痴る、正直知能のある魔獣がいたとしたら厄介でしかない。
そうこう言っていると違う席に座っているマキアスから声が聞こえた。
「人間、じゃないのか?」
「え?」
その声にエマが反応し皆マキアスの方を向く。
「魔獣だとピンと来ない話も、もし視線の正体が人間だとしたら色々理由ができるだろう、例えばエリンの花を採って欲しくなかったとか」
「その理由だとすれば俺たちに直接言えば良かろう、やり方としては回りくどすぎる」
マキアスの言葉にまたしても違う席に座っているユーシスが反論する。
「例えば、と言っただろう。」
「根拠の無い意見では場を引っ掻き回すだけだ」
お互いそこそこ遠い席なのに睨み合っている2人を見て他4人はため息を着いた。
そうしていると宿の扉が開き、外から昼に会った背の高い女性が入ってくる。
「お?昼に練武場であった奴らじゃないか、奇遇だな」
「貴女は・・・」
「自己紹介してなかったっけ?アメリエラだよ、眼鏡のお嬢ちゃん」
そして彼女はカウンター席に座ると注文をしだす。
「おっちゃん、肉!あと酒くれ!」
「おう、ちょっと待っててな」
店主のベルトランが大量の肉を焼き始め、少しすると彼女の前にはおおよそ5人分の肉とでかいジョッキに注がれたラガーが置かれた。
「へへ、やっぱこうでなきゃな!」
置かれた大量の焼きたての肉を頬張りラガーで流し込む、規格外の量をⅦ組は唖然とした表情で見ていたが彼女はそれに気付いた。
「なんだよ、珍しいか?」
「確かにその量は珍しいと思う」
彼女の言葉にフィーがなんとも言えない表情で返すと彼女は笑って言った。
「このガタイでこの筋力だからな、並の量じゃ維持できないんだよ」
銀髪のお嬢ちゃんもいっぱい食えよ、そう言いながら食べ進める彼女に皆納得がいった。
「私、もっといっぱい食べた方がいい?」
「確かにフィーちゃんはもっと食べた方が大きくはなれそうですね」
フィーの言葉にエマが微笑みながら返す。
そうしているといつの間にか肉を食べきった、彼女が席を立ちミナズキの前へとやってくる。
「・・・なんだ?」
「いや、昼見たけどさ、あんた全然本気じゃなかっただろ?」
「・・・・」
「だんまりか、早い話が勝負したくてな」
「やらないよ」
「あんなに強いのにか?」
「勝負好きに強い弱いは無いだろ、俺は戦いは嫌いだ」
ミナズキの返答に少し怪訝そうな顔をして彼女は返す。
「勿体ねえな、戦いほど楽しい時間も無いだろうに」
「俺は戦うくらいなら知り合いの女に振り回された方がマシだ」
「そうかい・・・」
彼女はミナズキの反論に興味を失ったのかその場を離れ、階段に向かって歩いた。
「ま、そういう意見もあるだろ。明日まで頑張ってな」
そう言って階段を上り宿の一室に入っていく。
食事の時間も終わり、後はレポートを書くだけなのだがもう1つ問題が発生した。
「なんで部屋割りが3人ずつなんだよ・・・」
「多分サラは適当に決めたんだと思う」
「ありえん・・・」
ミナズキ、フィー、ユーシスの順に感想を述べた。
今回の実習メンバーは6人、うち女子は2人だとわかっているはずなのに何故3人用の部屋を2部屋なのかと全員で頭を抱えた。
「とりあえず女子2人は片方の部屋で決まりで良いと思うが」
「問題は男子である俺たちだな・・・」
ガイウスの言葉にミナズキが続ける、あれだけ疲れる実習だったのにまさかこんな事になるとは思わなかった。
「どうする、こんな時に『貴族だから』ってベッドを譲れとか言わないだろうな?」
「言うわけ無いだろう、阿呆が」
「ふむ、どう決めたものか」
マキアスとユーシスが喧嘩腰になるなかガイウスは顎に手を当て解決策を案じ始める。
「もういいや、俺が雑魚寝する」
諦めるかのように言ったミナズキを他の男子3人が止める。
「いやダメだろ」
「少なくとも君はベッドで寝るべきだ!」
「1番怪我をしたのはミナズキだろ、ベッドを使うと良い」
「なんでそこは3人で止めるんだよ・・・」
部屋の前で4人で言い合っているとエマが隣の部屋から出てきた。
「あの、誰か1人こちらの部屋で寝ませんか?流石に雑魚寝というのは疲れも取れませんし」
「「「じゃあミナズキだな」」」
「なんで3人の意見が一致するんだ・・・!?」
その後しばらくは抵抗を続けたミナズキだったが雑魚寝をさせない為にも他の男子3人、そして寝るなら早く寝たいフィーも参戦し無理やりだが寝かしつけられるのであった。
ご拝読ありがとうございました。
次話もよろしくお願いいたします。
今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?
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あった方が良い
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無くても良い