英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
昨日は仕事帰りにすぐに寝てしまいました。
アンケートの結果は『ミナズキのトリスタでの奉仕活動』が
多くの表を得たためそちらを書かせていただきます。
アンケートへのご協力ありがとうございました。


28.リィン、マキアス 深まる溝

 

その日の放課後、ミナズキは以前からレナと一緒に懸念していたことが的中した場面に遭遇した。

 

「この際君が貴族であるかは関係ない。だが、嘘をつく人間を信用は出来ない」

そう言ってマキアスは教室を出て行く、途中教室の出口でエマとぶつかってしまったりもしたがそれでもその言葉はリィンに対する拒絶を表していた。

ただ、ミナズキは1つ言いたい─── 。

「せめて俺が教室を出てからして欲しいやり取りだな」

「なんか、ごめん」

ミナズキの苦言にリィンも謝罪する、まあまあ席も近いから余計に動きにくかったしなんならさっきのセリフを言った後のマキアスと一瞬目が合ってマキアスの方もちょっと申し訳なさそうな顔をしていたし色々と複雑すぎた。

 

「あ、あはは・・・でもマキアスさん、リィンさんを嫌っている訳では無いと思います。きっかけさえあればきっとリィンさんの思いも素直に伝えれば判ってくれると思います」

マキアスと入れ違いで教室に入ってきたエマはそう言って机に忘れていた参考書を取って教室を出て行く。が─── 。

 

「・・・やっぱり俺が居ない時にするべきやり取りじゃないか?」

「・・・ほんと、ごめん」

複雑な表情のミナズキといたたまれない表情をしたリィンが教室に取り残されていた。

 

「そういえばミナズキは俺と同門なんだよな?」

「急にどうした?」

その後なんやかんや一緒に教室を出た2人は校舎裏のベンチに腰掛け話していた。

普段からリィンやラウラを避けがちなミナズキと、何となく話しかけにくいと感じていたリィンがこうして腰を据えて話すのは何気に初めてのことだった。

 

「いや、昔老師に言われてさ。俺と同い年の兄弟子がいるって。それってやっぱりミナズキの事かなって思ってさ」

「・・・そうだな、リィンの言ってる老師って奴がユンのジジイなら意味は合ってるぞ」

「じゃあ・・・!」

「恐らく、いや確実にその兄弟子というのは俺のことだな」

ミナズキは渋々といった体でリィンに自身が兄弟子である事を伝える。

するとリィンは顔を僅かに綻ばせるがミナズキは少しだけ冷たく突き放した。

「でも俺は基本人とは稽古しないぞ、だから組手とかは他のやつに相手をしてもらった方がいい」

「そうなのか?」

ミナズキの言葉に今度は残念そうな顔をするリィン、初めて会う自分以外の八葉一刀流の剣士がまさかの同級生で、なおかつ兄弟子と知り内心わくわくしていたのもありその言葉には衝撃を受けた。

 

「あと、悩みとかあっても解決策を出せるわけじゃないからそれに関しても自分で考えて欲しい」

「そうか・・・ちなみにミナズキは老師にどの型を託されたんだ?」

「伍ノ型だな」

「《残月》か・・・俺は漆ノ型だよ・・・」

「よりによって《無》か・・・随分と厳しい型を渡されたな。それだけ期待されているということでもあるだろうが・・・」

「はは、まあ精進するさ」

お互いに老師に託された型の話になり多少ではあるが話は弾む、帝国における剣術といえばヴァンダール流かアルゼイド流、軍人たちが習う百式軍刀術が主であり、八葉一刀流はこちらではかなりマイナーな流派なものだから同じ流派がいると案外盛り上がるものなのだ。

 

「というかあのジジイ何者なんだ」

「何者って老師は老師だろ」

「嫌そうじゃなくて身の上とかだよ、あのジジイ自分のことは何も喋らないだろ」

「・・・・言われてみれば」

ミナズキの疑問にリィンも同調した。

2人は自分たちの師のことはあまり知らない、知っていることといえば酒好き、温泉好きでたまにスケベなところのある、滅茶苦茶に強い剣士ということだけだ。

 

「ま、良いか・・・気になるなら勝って聞けば良いだろうし」

「勝てるのか?」

「いずれで良いだろ?今勝とうとして勝てる相手じゃないし」

勝利の可不可を聞いてくるリィンにそう流したミナズキは腰掛けていたベンチから立ちそのまま歩き出した。

リィンは少しの間その後ろ姿を呆然と見つめていた。

 

 

 

学生会館2階、オカルト部─── 。

「ウフフ・・・災難だったみたいね、ミナズキ」

「久しぶりだな、ベリル」

「えぇ、久しぶり・・・でも無いわね。私の方は貴方のお見舞いに行っているもの」

「来ていたのか?・・・・いや待て、そういえばお見舞いの品の中によく分からないアミュレットのような物があった気が・・・」

ミナズキは頭の中で1つの品を思い浮かべた、確かあれは手のひらサイズの木製の板に謎の紋様、中心に今まで見たことの無い妙に綺麗な石、上部にはこれまた見たことの無い綺麗な紐が括られていた謎の御守りみたいな物があった。

「そう、それは私が置いていった物よ。よく分かったわね」

「ナチュラルに人の心を読むな。あと、あれを置いて行く人物は俺の知り合いだとお前以外いないぞ」

「冗談よ」

ウフフ、とまたしても怪しく笑うベリルを見て何となく肝が冷えるような気持ちになるミナズキだったが気を取り直して本題に入る。

「ベリル、実習での出来事は観えていたのか?」

何時になく真剣な顔で聞くミナズキにベリルは1度無表情になるものの、すぐに仄暗い笑みを浮かべて話し始めた。

「えぇ、少しだけど見えていたわ。大森林の奥で女の狂戦士と戦う貴方の姿がね。・・・そして今貴方は私のこの答えを聞いて少しだけ苛立っている、そうね?」

「あぁ、そうだな。でもきっとお前はこう言うだろ?『因果は見えるけど教えたら変わってしまう』的なことをさ」

「ウフフ・・・よくわかっているわね。その通りよ、もしもあの時戦ったのが貴方だけでなくB班の全員だったら、もしくは戦ったのは1人でもそれが貴方ではなく他の誰かだったら・・・少なくとも今あげた2つの『もしも』では恐らく何人かは死んでいたかもしれないわね」

淡々と言ってくるベリルにミナズキの眼光は鋭くなっていく、それはベリルも分かっているがそれでも続ける。

 

「そしてもしも貴方たちがあの日、大森林に行かなければ最悪パルムが廃墟になっていたかも知れないわね、貴方が撃退したあの狂戦士によって・・・どうしたの?怒りに任せて私に掴みかかるくらいはすると思っていたのだけど」

「やったとしても意味が無いだろ」

覚悟をして話していたベリルに対して努めて冷静な顔で返すミナズキ、しかしその両手は痛々しいほど強く握り締められていた。

「・・・・ごめんなさい、でも」

「いや、良いんだ。わかってるつもりだから・・・」

 

ベリルはただ『観る』事しか出来ない。あくまでも彼女は傍観者であり、その物事に首を突っ込んだり助言をして回避させることは出来ない。

例え助言したとしても事態は変わらずただ『人が変わる』と言うだけだ。

今回の場合、もしベリルがミナズキに助言をしたところでB班を見つけたアメリエラがイストミア大森林で事件を起こすことは変わらない、変わるとするなら『ミナズキがアメリエラと戦う』という部分が『B班の誰かがアメリエラに立ち向かう』に変わる程度。

そしてもしそうなってしまったら、ミナズキではなく他の誰かだったらアメリエラと戦って勝てる可能性は限りなく低い訳で─── 。

 

「・・・私は貴方が戦って良かったと思っているわ。少なくともあの場ではそれが1番の最適解で、そのおかげで誰も犠牲にならなかったのだから」

普段の仄暗い笑みも無く真剣な眼差しでベリルは言い切った。

「そうか・・・まぁ、次は自分も無事であるように立ち回るだけだ」

「その為にあの御守りを作ったのよ、少しでも『最悪』を回避出来るように。肌身離さず持っていることを勧めるわ、貴方の太刀の鞘に付けるとか、首にかけておくのが1番良いけど」

ミナズキの返事にベリルは少し笑顔で返す。

「そうか、太刀だと流石に揺れるから首から下げるよ。寮に帰ったら身に付けようと思う」

「今付ければ良いじゃない、ポケットに入ってるのだから」

「え?」

驚くミナズキのポケットを指差しベリルは笑う、恐る恐るミナズキはポケットに手を入れると確かに木製の板の感触があった。

「・・・なんであるんだ?確かに部屋に置いたはずだが・・・」

「ウフフ・・・私が作ったのだから特別製よ」

少しだけ気味の悪さを感じはしたが、ミナズキは早速着けてみることにした。

「んー、ん?なかなか難しいな・・・」

首の後ろで紐を結ぼうとするが上手くいかず、ミナズキはうんうん唸りながら苦戦していると席を立ったベリルが近付いてくるそして─── 。

 

「おい、そこは普通後ろに回るとかあるだろ。なぜ、何故正面なんだ」

「ウフフ・・・私が傍観者である事を知っているくせに文句を言いに来た仕返しよ、諦めてじっとしていなさい」

ミナズキは文句を言うがベリルはなんてことも無いようにミナズキの首の後ろに手を回して代わりに紐を結んでいる。恐らく何も知らない人が見ようものなら2人の関係が疑われるだろう。

「ミナズキ、何故私の目ばかり見るのかしら?」

「ん?今の状態に対する仕返しだ」

「ウフフ・・・1本取られたわね」

紐が結ばれている間ミナズキはベリルの瞳を覗き込んだ。綺麗な黄色、まるで琥珀にも似たその瞳は彼女のミステリアスさをよく引き立てている。

傍から見れば、ベリルに抱きしめられ見つめ合っているような状態だったが暫くするとベリルは離れた。

 

「ウフフ・・・これで大丈夫よ。軽く首を降ってみなさい、落ちないはずだから」

「ん・・・ほんとだ、それにあまり着けてる感覚が無くて邪魔じゃなくて良いな」

ベリルに言われ、ミナズキ首を振り着け心地を確かめる。紐が良いのか驚くほど着け心地は良かった。

 

「ありがとう、ベリル。まあ、次は実習行けないけどその次に活かすよ」

「ウフフ・・・大丈夫よ、実習は行けなくともすぐに機会は来るわ」

ベリルの言葉に首を傾げたミナズキだったが、特に気になる節も無かったので礼を済ませそのまま部室から出て行った。

 

「・・・・見つめられるのは思ったより恥ずかしくなるものね」

ベリルは部室で1人呟くが、ミナズキが部屋を出た今は彼女の呟きに返事をするものは誰もいなかった。

 




ご拝読ありがとうございました。
とりあえず原作での2章の話は決まりましたので書いていきます。
次話もよろしくお願いいたします。

ミナズキは次の特別実習は行けません、なので次の実習期間何を書くかを決めます。

  • ミナズキのトリスタでの奉仕活動
  • レナの参加する特別実習
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