なんやかんや日常を書くのが楽しくなっています。
5/22(土)HR─── 。
ミナズキが久々に登校した日1ヶ月弱、時間はかなり経ったがあれからリィンとマキアスの関係は修復どころかむしろ溝は深くなる一方だった、おまけにユーシスもどこか居心地悪そうにしている。
どうやらA班の実習先であるケルディックで起きた盗難事件の真犯人である領邦軍、その大元はユーシスの実家であるアルバレア公爵家。
もちろんユーシス本人は知らない事とはいえ実家とその実家が管理しているはずの軍人たちが事件を起こし、それをリィンたちが解決のために奔走したのだから居心地の良いはずが無い。
クラスの重心とも言えるリィンもどこか落ち込んでいる。
特科クラスⅦ組は過去一で空気が悪くなっていた。
「明日は自由行動日よ、そして来週の水曜日は実技テストをやるからみんな気を抜かないように、以上。副委員長、挨拶」
「起立─── 礼」
サラの締めくくりにマキアスが号令を出し、その日の授業は終わった。
放課後になりクラブ活動がある者は部室やグラウンドに向かう中、ミナズキはレナと話をしていた。
「レナ、明日は出掛けようと思う」
「おや、君から誘ってくるなんて珍しい事もあるねぇ」
レナの言う通りミナズキからレナを誘うことはかなり稀だ、しかしこれには訳がある。
「先日の実習でのイストミア大森林の一件、あの後色々あって謝礼金が出された」
つい先日のことだった、普段パトリックの世話をしているハイアームズ侯爵家の執事セレスタンがミナズキの元を訪れた。
なんでも紡績の町パルムを守ったから、だそうだ。
未だに捕縛は出来ていないがアメリエラという狂戦士が起こした大森林での一件、もしあの時B班が止めていなければ最悪パルムが廃墟になっていたかもしれないこと、誘拐された子供を助けたことなどを理由にパルムのあるサザーラント州を治めているハイアームズ侯爵家からの謝礼金を払いに来たんだそうだ。
ガイウス、エマ、フィーは『何も出来ていない』と辞退し、マキアスも貴族嫌いを理由に辞退、ユーシスに関してはそもそも同じ四大名門で確執があるため謝礼金を出せずにいたが事件解決に文字通り骨を折った人物たち全員に謝礼を断られては貴族の、ひいては四大名門であるハイアームズ侯爵家の名に傷が付くためセレスタンも結構必死だった。
しかし、ミナズキが初め渡されそうになった金額はあまりにも桁がぶっ飛んでいた。はっきり言って1士官学院生徒が貰っていい金額じゃなかった。
金額を見たミナズキも初めは断ろうとしたがセレスタンがあまりにも必死になっていた為、逆に条件を出した。
『この金額をB班の人数分で割った物であれば受け取ります』
これがミナズキが出した条件でこれを聞いたセレスタンは何処からか無線機型の導力機を取り出しハイアームズ侯爵に連絡を入れ、その後ミナズキの言った通りの金額が渡された。
ちなみにこの時渡されたのは実は金だけではなくサザーラント州で好きに動けるバッチ型の紀章なども渡されてしまいある意味金だけを受け取るよりも大変な事態となっていたのだ。
「その時に渡された物の中にチケットがある、帝都にある高級レストランのチケットだ」
「ほほう、つまり?」
「チケットを使わないのは申し訳ないし1人で行くのは窮屈だから手伝ってくれ」
「なるほど、良いとも」
ミナズキの誘いに微笑みながら頷くレナ、そんな2人を未だに教室から出ていないリィンがぼーっとした顔で眺めている。
そんなリィンをミナズキは横目で確認し、頭の中で色々と考えていた。そして─── 。
「レナ、今日は先に帰っててくれ」
「む、そうかい?わかった」
レナを教室から出させてミナズキはリィンに近づく。
「おいリィン」
「・・・え、ミナズキ?なんだ?」
声をかけても上の空で反応も鈍いリィンを見て心配半分、呆れ半分といった体でミナズキは言う。
「ちょっと付き合え」
そう言ってミナズキはリィンを連れて旧校舎へ向かった。
旧校舎前─── 。
「さて、ここなら人もそう来ないだろう」
「ミナズキ?一体何をするんだ?」
リィンの問いに対して返って来たのは投げ渡された木刀、そして─── 。
「ふん!」
「・・・!」
ミナズキによって振り下ろされた木刀を渡された木刀で凌ぐリィン、カァン!と木刀同士の衝突音だけが響いた。
「急に何をするんだ!」
「いやなに、最近うだうだと無駄に悩んでいるみたいだからな、一応『兄弟子として』打ち合っておこうと思ってね」
怒りながらも構えるリィンにミナズキは余裕綽々といった体で構える。
「でもお前、まだ身体治りきって無いじゃないか!」
「軽い運動くらいなら許されてるぞ、それに今のリィン相手なら『軽い運動』くらいで何とかなりそうだ」
「・・・なら後で文句言うなよ!」
ミナズキのあからさまな挑発にも今のリィンには響くようで構えたまま突撃してくる。
その後何度も打ち合うがリィンは療養中のミナズキに1度も攻撃を当てることは出来ていない。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「どうしたリィン、『文句を言うな』じゃなかったのか?」
息も絶え絶えのリィン、一方ミナズキは木刀で自分の肩をポンポンと叩きながら煽る。
「・・・うぉぉぉ!」
「無駄に迷うから単純になるんだバカが・・・」
気合いを入れるように声を上げ突撃するリィンを見てミナズキは呆れながら構えを取る。
カァン!と木刀同士がぶつかる音とともにリィンの振るった木刀は地面に叩き落とされた。
「・・・ぐ」
「拾うのは良いがその場合は覚悟しろよ?」
リィンの顔に木刀を向けながら威嚇するミナズキ、その目は動いたら本気で振り下ろすことが分かるほどに威圧的だった。
「ま、参った」
「ん、じゃあこれで終わりだ」
降参したリィンを見て木刀を下ろしたミナズキはじっとリィンを見て話す。
「迷うのは結構だが無駄に悩むのは止めておけ、そんなことしてたら見えるものも見えなくなるぞ」
「・・・・」
まだ黙ったままのリィンの頭に軽くゲンコツを落とし、続ける。
「明日は自由行動日だ、どうせサラ教官に仕事を押し付けられてるんだろ?頭空っぽにしてやれば気も晴れるだろ」
「あ、あぁ」
リィンの返事を聞くとミナズキはそのまま歩き出した。
ゲンコツを落とされた頭を自分で撫でるリィンがその場に残されたのだった。
ミナズキが旧校舎と本校舎を繋ぐゲートまで歩くとそこにはたまに話す間柄の生徒が居た。
「ミナズキさん、お疲れ様です」
「ロジーヌ?この時間に学校に居るなんて珍しいな」
普段は放課後になったら教会の手伝いに行っているロジーヌがいた事にミナズキは驚いたがロジーヌは少し怒った顔で続ける。
「ダメですよ?まだ傷が塞がりきってないんですから」
「いや、ベアトリクス教官からは軽い運動くらいなら大丈夫って「木刀とはいえあの戦闘は軽い運動には入りませんよ」・・・すみませんでした」
優しいはずの彼女から発せられるなんとも言えない圧にミナズキも謝るとロジーヌはミナズキの手を引き保健室に連れていった。
本校舎2階保健室─── 。
「貴方はまだ怪我人です。わかっていますか?」
「いやだから大丈夫って、いたたたた!」
ベアトリクス教官が不在だった為ロジーヌが代わりにミナズキに説教をしながら身体に巻いている包帯を替えたり傷口の消毒を行う。
リィンとの打ち合いの際に動きすぎたのか塞ぎ切っていない傷からは少量ではあるが血が出ていた。
「・・・あの日実習から帰ってきた貴方がボロボロだった時は驚きました」
「特別実習なんだ、そんなこともあるだろう」
「それでもです、貴方は自覚が無いかもしれないですが貴方は自分で思っている以上に仲間を大事に思っています、だから無茶もしてしまう」
「単に敵にムカついただけだよ」
「でも結果として他の皆さんを守りました。さっきのリィンさんとの立ち合いもリィンさんのことを思ってのことでしょう?」
「見ていたのか?」
「たまたま音が聞こえたので覗いてしまいました。」
ロジーヌは包帯を少しきつくしめて続ける。
「自分を大切にしてください、貴方が無自覚だとしても皆を想っている以上に貴方の周りには貴方を思ってくれている人が必ずいます」
ロジーヌの真っ直ぐな目にミナズキは頷くことしか出来なかった。
夕方、校舎前─── 。
「おや、ミナズキじゃないか」
「レナ?先に帰ったはずじゃ」
「いやなに、私は図書館に用があったのさ」
そう言ってレナは欠けた懐中時計を見せる、以前と違いミナズキがパルムで手に入れた分が合わさり半月のような形になっている。
ミナズキが目を覚ましたその日にミナズキはレナに懐中時計の欠片を渡した。当初レナはひっくり返るほど驚いたがミナズキがアメリエラから聞いた『曰く付き』という言葉に疑問を持つようになっていた。
「図書館に何か文献が無いか気になってね、まあ収穫は無かった訳だが・・・仕方ないさ」
苦笑いを浮かべるレナと共にミナズキは寮へと向かう、2人の歩く道を真夏の前を感じさせる少し温めの風が静かに撫でていた。
ご拝読ありがとうございました。
次は自由行動日を予定しています。
トリスタでの奉仕活動は少し案を考えているので気長にお待ちいただけると幸いです。
次話もよろしくお願いいたします。
今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?
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あった方が良い
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無くても良い