英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
最近初めて感想が付きました。嬉しいです。



30.自由行動日、後ろから感じる視線

 

5/23(日)AM8:00第3学生寮1階エントランス─── 。

 

「おはよう、ミナズキ。良い朝だね」

「レナ、おはよう・・・何を飲んでいるんだ?」

「ハーブティーだよ、君も飲むかね?」

「貰う」

朝、寮の1階で待ち合わせをしていたミナズキとレナの2人はお茶を楽しんでいた。

帝都に用件はあるが別に急いでいる訳でもなく、なんならまだ少し早いくらいだ、レナがカップに注いでくれたハーブティーをミナズキはのんびりと楽しむ。

今朝起きたら昨日までの痛みも大分引いてきていた。

恐らくもう少しすればほとんど変わらない日常生活を送れるだろう。

「(これも皆のお陰、というやつなのか・・・)」

ミナズキは頭の中でお見舞いの品とそれを送ってくれた人たちを思い浮かべる。

尖った物も多かったがどれもミナズキの回復を祈願してくれた物だし、なんなら目の前にいるレナもミナズキが目覚めてから怪我に効く薬茶をわざわざ買い付けてお茶を入れてくれたくらいだ。

レナだけでは無い、Ⅶ組の仲間たちも色々と世話を焼いてくれた、ミナズキにとっては気を遣いすぎではないかと考えるほどだった。

我ながららしくないな、と考えたミナズキは目の前のハーブティーを飲みきりレナに声をかける。

 

「飲み終わったら片付けて出発しようか」

「ふむ、そうだね。ささっと片付けてしまおうか」

2人で流しに向かい、茶器とカップを洗うとふわりとハーブの香りがのぼり2人の鼻腔をくすぐるのだった。

 

「では・・・はっはー!行こうかミナズキ!」

「その掛け声は必要なのか?」

「必要だとも!これは私のアイデンティティだからね」

いつもの調子になるレナにミナズキがツッコミを入れつつ2人が寮を出ると2階から2つの人影が姿を現す。

 

「行ったわね」

「行ったね」

そこに居たのはアリサとエリオットだった。

以前から気になっていたミナズキとレナのなんとも言い難い距離感に何となく焦れったいと思っていたアリサは自分と同じでクラブ活動が休みだったエリオットを巻き込む形で2人を尾行することにしたのだ。

 

「でもこんなことして良いのかな?なんとなく罪悪感が・・・」

「良いのよ、それにあれで付き合ってないって言われても正直納得いかないもの」

罪悪感を感じているエリオットにアリサは特に気にする様子も無く尾行を始める。

 

何故アリサがここまでするのかと言うとこれはミナズキがまだベッドから動けない時までに遡る。

 

 

 

ミナズキが目覚めて2日後─── 。

寮の食堂、そのキッチンでレナが作業をしていた。

「あら?レナじゃない、何をやってるの?」

「アリサかね?いやなに、ミナズキにあげようと思ってね」

そう言ってレナは野菜を多く入れたキッシュを皿に盛り付けた。

「園芸部のエーデル部長が『ミナズキに』って野菜を渡してきたのさ。皆も食べても良いよ、味は保証する」

そしてレナはキッシュを持って2階へと上がって行った。

もしやと思ったアリサがミナズキの部屋を静かに覗くとそこには─── 。

「ほらミナズキ、キッシュを作ったから食べたまえ。ほらあーん」

「おいやめろ、ガキじゃないんだぞ」

「でも君は今左手が動かせないじゃないか。それでは皿も持てないだろう?」

そしてレナはフォークで刺したキッシュを抵抗するミナズキの口に放り込んだ。

「どうだね?味は保証するよ」

「・・・・美味い」

「そうだろそうだろ!ほらあーん」

結局ミナズキはキッシュを完食しレナは満面の笑みで出てきたがあれは付き合ってもいない異性にやるものだろうか、いやそれ以前にわざわざ手作りで料理作ってるのもおかしいと感じたアリサはいつか問い質したいと思っていたのだ。

 

そしてその機会は今やってきた。

その時2人に声をかける人物が1人─── 。

「あんたたち、何やってんのよ」

「あ、教官。えっとですね・・・これはその・・・」

「サラ教官、あの2人を一緒に尾行しませんか?」

「アリサ!?」

エリオットは言い訳をしようとしたが迷わずサラを引き入れようとするアリサに驚愕した。

誘われたサラも駅へと入っていくミナズキとレナを一瞥するとニヤリと笑みを浮かべる。

「付き合うわよ、私もあの2人がどんな関係か気になってたのよね♪」

「じゃあ行きましょうか」

そしてノリノリのアリサとサラ、半ば強制的に連れていかれたエリオットの3人はミナズキとレナの2人を尾行することになったのだ。

 

帝都、ライカ地区、帝国博物館───

「こういう場所は初めてだ・・・」

「私もあまり来た事が無いね、でも意外と面白いものだ」

ミナズキとレナは博物館へと足を運んでいた、歴史を感じさせる絵画や希少な宝石の散りばめられた宝飾品、偉人が愛用していたとされる品などもまるで当時のままのように保管されていた。

 

「芸術というのはよく分からないな、上手い下手とかじゃないんだろ?」

「そうだね、そもそも上手いかどうかも人によって変わるからねぇ」

2人で飾られている絵を見ながらクラスメイトの1人を思い浮かべる。

「上手い絵といえばガイウスだな、美術部で絵を描いてる見たいだけどデッサンの時点で綺麗だった」

「彼の絵は私も見たことがある、なんというか真っ直ぐな気持ちで描いてるのが分かる絵だったねぇ」

「もしかしたらガイウスはいずれ絵で有名になったりしてな」

「はっはー!その時はⅦ組で盛り上がるだろうねぇ」

ミナズキとレナは2人でガイウスの絵を賞賛し盛り上がる、その姿を遠くから見つめるアリサたちはと言うと。

 

「良いわね」

「良い感じだね」

「デートとしては少しお堅い感じだけどあの2人なら何となく分かるのが良いわね」

サラ、エリオット、アリサの順で評価を下して行く。

何故かアリサだけ妙に熱が入り始めていた。

 

 

ガルニエ地区、某高級レストラン─── 。

 

「・・・美味い」

「これは、確かに美味しいねぇ」

普段は目にする事も無いような、なんなら生きてるうちに味わうことも無いような料理の数々に少し顔が引きつっていた。美味しい、それは確かなのだが普段の食事と違い過ぎて感想らしい感想が出なくなっていた。

 

「ミナズキ、別に変に身構えなくて良いのだよ」

「・・・・」

「楽しめば良いじゃないか、そういう店なんだからさ」

そう言ってレナはノンアルコールのワインの入ったグラスを持ちミナズキに近付ける。

ミナズキも意味は察したようで同じようにグラスを近付けた。

小さい音を立ててグラス同士を優しくぶつける、レナが微笑みながらワインを1口飲むとミナズキも同じように飲んだ。

「どうだい?ミナズキ」

「うん、美味い」

「ふふ、それは良かった」

先程までの緊張は嘘のように消え、2人は終始笑顔で食事を楽しんだのであった。

 

「ミナズキってあんな感じに笑うんだね」

「普段は結構仏頂面だものね」

「良いわ、良いわよ、そのままそのまま」

何処から取り出したのか双眼鏡でミナズキたちを見ているエリオットたち、やはりアリサだけ妙に熱くなっていた。

 

 

ガルニエ地区、宝飾店《サン・コリーズ》───。

「ふむ、見事な装飾だねぇ」

「綺麗なのは分かるが・・・」

レナが指輪やブレスレットをじっと見て呟く。ミナズキはこの手の事には疎く、どれも綺麗で細かい部分もこだわりを感じる、くらいしか分からない。

この店に入ったのはレナがミナズキの首にぶら下げているベリルから貰った御守りを着けているのを見つけたからだ。

当然ミナズキには他意はない。しかしレナとしては少しだけ対抗心に火がついた。

「・・・よし決めた、これを貰おうかな」

レナは店員を呼び出し、ケースに入っていた装飾品を取り出してもらう。

受け取った品に何かをブツブツと囁くとその宝飾品にはめてある宝石の中に一瞬稲妻が走った。

「ミナズキ、右手を出したまえ」

「え・・・こうか?」

レナの言葉に戸惑いながらミナズキは右手を差し出す、すると─── 。

「これで、良しと・・・ふむ、似合っているよ」

レナはミナズキの右手薬指に指輪をはめていた。

ミナズキがよく見てみると指輪の青い宝石の中に小さい黄緑色の光が入っている。

「名付けるなら《灯(スパーク)の指輪》かな?受け取ってくれるかい?」

そう言ってレナは少し目を逸らした。ミナズキは自分の指にはまった指輪を見る、そして─── 。

「レナ、右手を出してくれ」

「・・・ああ」

右手を差し出し、レナは目をキュッと閉じた。

右手の薬指に自分がしたように指輪がはめられる感覚を感じた、返されたか?流石にやりすぎたか?頭の中でぐるぐると考える。

「レナ?目を閉じてどうかしたのか?」

「あ、ああ・・・」

恐る恐る目を開くと宝石の色は同じでも形の違う指輪がはめられていた。

そしてレナが着けている指輪に付いている青い宝石の中をよく見ると青白い光が入っていてまるで夜空に小さく光る星にも見えた。

「お前の言葉を真似てみるなら・・・名付けて《月夜の指輪》・・・と言った感じか?」

先ほどのやり返し、と言わんばかりに笑うミナズキを見てレナはそっぽを向いた。

「たまに思うが君は時々容赦の無い返しをするねぇ」

「容赦の無い?なんか気を悪くしたなら謝るが」

「謝罪は結構だ、怒っていないからね」

右手にはめられた指輪にそっと手を添えて優しく撫でる、顔を背けているからミナズキには分からないがレナは静かに照れくさそうに微笑んでいた。

 

「なんか・・・すごい現場に来ちゃったな・・・」

「妙に大人びた感じのやり取りね、ねぇアリサ・・・アリサ?」

店の外から覗いていたエリオットとサラだったがアリサが少し離れたところにいる事に気付いた。

「アリサ?」

心配したエリオットが声を掛けると、アリサはまるで深呼吸するようにすぅっと息を吸って一言。

「はよくっつけ!焦れったいのよぉぉぉ!」

2人のくっつきそうでくっつかない様に焦れったさを感じたアリサの咆哮とも言える絶叫が地区全体に響き渡るのだった。

 




ご拝読ありがとうございました。
まだトリスタでの奉仕活動の内容を考えています。
次話もよろしくお願いいたします。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

  • あった方が良い
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