英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
真夜中の投稿です。
夜更かしには気を付けましょう。


44.帰還

 

薄暗かった森に光が差す、先程まで曇っていたはずの空も晴れ始め青い空が見える。

「おわった・・・のか?」

「ああ、終わったね・・・」

クロウとアンゼリカが確かめるように呟く、他のメンバーも周りを見渡して安全かを確認すると皆一様に喜んだ。

「勝てましたね、ミナズキ!・・・ミナズキ?」

ミナズキに声をかけたマローラは彼が一切反応しないことに疑問を覚えると早足で駆けて行く。そこには目を半開きにして立ったまま寝かけているミナズキの姿があった。

「良かった、何か怪我でもあったのかと・・・ミナズキ?聞いてますか?」

「・・・・」

マローラはいくら声を掛けても反応しないミナズキの正面に立って身体を揺する、するとそのままマローラに向かってミナズキは崩れるように倒れ込んだ。

「あ、ちょっと!?って・・・寝てる?」

「・・・すー・・・すー」

倒れ込んでくるミナズキをマローラは抱き締めるように支えるとミナズキからは小さな寝息が聞こえてきていた。

他のメンバーもミナズキに何かあったのかと近付いてきたがマローラが寝ているだけと説明すると呆れたように笑った。とりあえずミナズキの事はランベルトがおんぶして帰ることになった。

 

 

「・・・ん?・・・んー」

「お、目が覚めたようだな」

眠りから覚めたミナズキの声におんぶしていたランベルトが反応する。静かに揺れるような感覚にミナズキが目を開けると皆で森を抜け、トリスタに帰る真っ最中だった。周りを見ると他の先輩たちがニコニコと微笑みながらミナズキを見ている。

 

「ようねぼすけ、よく眠れたか?」

状況を飲み込めていないミナズキにクロウが声をかける、それでもぼーっとして目をぱちくりとするミナズキに今度はマローラが声をかけた。

「ミナズキ、おはようございます。現在私たちは森の精霊を討伐したので森を抜けてジョルジュ先輩、それにベリルと合流してトリスタに帰る途中です、貴方は森の精霊に止めを刺した後そのまま立って寝てしまったんですよ?」

「・・・ん」

「これはまだ寝ぼけてますね・・・」

マローラの説明を受けても眠気には勝てなかったのかまた目を閉じようとするミナズキ、ランベルトも別に構わないようで降ろそうともせずそのまま歩いていた。

「まあ良いではないか、ミナズキ君は今回療養中の身体で頑張ってくれたのだから」

そう言ってランベルトはよいしょと体勢を整える、ベリルは2度寝をしたミナズキの顔を覗いている。

「ウフフ・・・それにしてもよく眠っているわね、もしかしたらあの薬を使ったから余計疲れているのかしら」

「あ、あの薬そんな効果もあるんですか?」

ベリルの発言にマローラが聞き返すがベリルは笑ったまま首を横に振る。

「いいえ、薬の効果と言うより薬を使って普段見えないものを見えるようにしたから脳が疲れているというだけよ、少なくとも薬の副作用ではないから安心してちょうだい」

ベリルの言葉にマローラも胸を撫で下ろす、一方アンゼリカはミナズキの寝顔を見ながら言う。

「それにしても随分と気持ちよさそうに眠っている、昨日から見ていた気難しそうな顔とは全く違う顔だね、今のミナズキ君は」

「そうなのか?俺は今日初めて会ったからよく分かんねぇけどよ」

アンゼリカの感想にクロウは聞き返す、するとそこにフリーデルも加わる。

「確かにあまり笑っている姿は見たことないわね、私に勝負を挑まれた時もすごく嫌そうな顔しかしないし」

「それは皆一緒だろ、特にお前は強そうな奴を見かけるとすぐに戦おうとするからな」

フリーデルにロギンスが呆れた顔で返す、事実フリーデルはミナズキを見つけるとウズウズしているのをロギンスは何度も見ていた、昨日だってエーデルが止めなければ本格的にやり合っていた可能性がある。

「でもミナズキ君、以前自由行動日に帝都で見かけた時は普通に笑ってましたよ?」

エーデルの言葉に皆が振り向く、その表情は皆同じで驚きに満ちた顔だった。

「え?自由行動日、帝都、本当ですか?」

エーデルに問いかけるマローラだったが言葉が詰まっているのか妙に途切れ途切れな口調になってしまう、そんなマローラにエーデルも少し苦笑を浮かべながら答える。

「はい、確か同じクラスのレナちゃんと一緒でしたね。2人でガルニエ地区の高級レストランに入っていくのを見ました」

「そ、そうですか・・・ミナズキがレナと一緒に・・・レストラン、ですか・・・」

マローラの言葉がどんどん弱くなっていくのを見て、クロウとアンゼリカ、ジョルジュは小声で話し始める。

「なあゼリカ、ジョルジュもしかしてこれってよ・・・」

「マローラ君の反応を見る限り間違いないだろうね、恐らくマローラ君はミナズキ君を少なからず良く思っているようだ・・・」

「んー、昨年に女子の半数以上を手篭めにしたアンよりは健全なのは確かだね」

そうして3人でコソコソと話していると皆の前にトリスタの街並みが見え始めた。時間はいつの間にか夕方、街も夕日によってオレンジ色に染まっていた。

 

「やれやれ、やっと戻ってこれたか」

「随分と長く感じましたね」

「まあ行きと比べれば皆疲れきってますからね、実際長くなりましたね」

クロウの言葉にエーデルが答え、マローラが付け足す。昼前から始めた今回の作戦も長い探索と戦いでかなりの時間を要した。お腹も減ったし早く寝てしまいたい、と言うのが今回作戦に参加したメンバーの総意だった。

「そういえばミナズキ君はどうするべきだろうか?こうして寝てしまっているし・・・」

「本来なら学園長室に連れて行くべきなんでしょうけど・・・」

「完全に寝ちまってるな・・・」

ランベルトの言葉にマローラが困った顔をし、クロウもジトっとした顔で答える。今回の件での1番の中心人物はミナズキだし奉仕活動をしていたのもミナズキだ、だが療養中で体力が落ちている中であれだけの戦いをしたこの青年を無理に起こすのも気が引ける。

「一応は連れていこうか、起こさなくても良いから」

妥協点をあげたアンゼリカの提案に皆頷く、いつの間にかトリスタは目の前となっていた。

 

学園長室─── 。

 

「以上が今回の依頼の顛末の詳細となります」

「うむ、皆ご苦労だった」

学園長室に向かったメンバーはマローラを中心に学園長に今回の件の詳細を話した、学園長も頷きながら話を聞きそれが終わると頷き笑う。

「しかしミナズキが寝てしまうとは、よっぽど疲れたようじゃな」

「まぁ、そうですね・・・最後なんて10アージュ(10m)ある大木を垂直に駆け上がっていたくらいですし」

今は学園長室の椅子に座って寝ているミナズキを見ながら言う学園長にマローラが苦笑いしながら返す、他の皆もはははと笑いながら未だ寝ているミナズキを見る。

しかしその場の空気を突如フリーデルの口にした言葉が壊す。

「それにしても最後のミナズキ君の黒い炎、あれは何だったのかしら?」

フリーデルの言葉に学園長がピタリと止まる、その様子を見ていた皆も同様に笑うのを止めた。

「そうか、こやつは黒い炎を出したか・・・」

残念そうに学園長は呟く、その言葉が気になったマローラが少し気まずそうに聞き返す。

「すみません学園長、ミナズキのあの黒い炎ってなんなんでしょうか?」

「そうじゃな・・・出来れば口外して欲しくない・・・少し言い難くもあるがあれはミナズキの『怒り』と言うべきものじゃ」

「怒り・・・ですか?」

「そうじゃ・・・詳しくは言えんがミナズキの中には途方も無い怒りの感情が渦巻いておる、そしてこれがこやつがこの士官学院に入学した間接的な理由でもある」

「間接的な理由ですか?」

学園長の説明をマローラは何度も聞き返す、学園長も言葉を選びながらではあるが答えられる部分は答えていく。

「皆そうじゃろうが主に士官学院に生徒が入学する理由は2つじゃ、例外もあるがな。1つ目は家の意向、これは貴族生徒に多い。士官学院に入学して様々なことを勉強し将来実家の役に立てるようにする為じゃな」

今でこそ平民の生徒も多い士官学院だが昔は貴族生徒しか基本入学出来ず平民生徒は特例中の特例と言えた、それ故に貴族にとってはトールズ士官学院を出ることは伝統的でなおかつ誉れのあることだった。

「2つ目は本人の夢や目標、これも分かりやすいじゃろ。言葉の通り本人に夢があってそれを叶えるために卒業すれば箔が付く士官学院に入学するというものじゃ」

トールズ士官学院はその歴史の長さはもちろんだが学業自体も非常にレベルの高い学校だ、士官学院を卒業すればそれこそ就職先に困ることは無いだろう。

「そしてここからが例外じゃ、それはな『本人には入学の意思は無かった』というものじゃ。今の言葉でわかると思うが先程の2つはあくまでも本人にも入学の意思がある、じゃがこれは言ってしまえば『入学させられた』というものじゃな。特にミナズキは特殊な例の1つと言える」

学園長の言葉に皆で続きが聞きたいのか固唾を呑んで学園長を見る、学園長も言葉を選ぶように悩みながら口を開いた。

「こやつはな、3つの「学園長、流石にそれ以上は止めて欲しい」・・・そうじゃなミナズキ」

突然聞こえた声に皆で後ろの椅子の方を見るとミナズキがいつの間にか目を覚ましていた。皆で驚いているとミナズキは椅子から降り頭を下げる。

「途中で寝てしまってた、ごめんなさい」

「い、いや別に構わないとも・・・」

謝罪を述べるミナズキにランベルトが答えるとミナズキは頭を上げ学園長を見直す。

「申し訳ない学園長、でもその話はしない方が良いと思います。多分凄く話が拗れるから」

「そう・・・じゃな、皆すまんが今日はもう帰って大丈夫じゃ」

学園長の言葉に作戦に参加したメンバーは顔を見合せ学園長室を後にする、ミナズキも学園長に頭を下げて部屋を出て行った。

 

「ミナズキ」

「マローラ?どうかしたか?」

学園長室を出たミナズキは部屋からそこまで離れていなかったマローラに呼び止められる。

「いや、えっとその・・・」

「・・・・」

珍しく歯切れの悪いマローラにミナズキは何も言わずに待つ、そうしていると思い切ったようにマローラは話し始めた。

「すみません、先程の入学の話を深堀りしたのは私です。聞かれたくない事もあったと思いますが昨晩聞きそびれていた事もあってつい聞いてしまいました、本当に・・・本当に申し訳ございません!」

そう言ってマローラは深々と頭を下げる、ミナズキは困ったように顔をしかめるとマローラの顔を上げさせた。

「やめて欲しい、別に謝って欲しい訳でもない。好奇心で何かを聞くこともあるんだと思う」

でも、とミナズキはマローラの目を見て続けた。

「俺の詮索はしないで欲しい、知ったとしても気持ちのいい話は1つも無いから」

ミナズキはそう言うとそのまま歩いて行ってしまう、その背中を見ながらマローラは俯き、呟く。

「なんでいつもそんな悲しそうな顔を、目をするんですか・・・私にとって貴方は友達です・・・友達の役に立ちたいと、苦しそうにしている貴方を助けたいと思うのはいけないことなんですか・・・?」

 

 




ご拝読ありがとうございました。
次回から原作の3章に入ります。
ご拝読ありがとうございました。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

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