英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
夜遅いけど投稿します。
気づいたらお気に入り70件超えていました。
ありがとうございます、これからも頑張ります。


3章 鉄路を越えて 〜蒼穹の大地〜
46.近付く脅威(中間テスト)


 

6/15(火)

6月を迎えたトリスタでは長雨が続いていた、そしてこの季節になるとトールズ士官学院ではとあるイベントがある。

 

「さて、皆知っている通り明日から中間テストよ。私は座学の方はカラキシだから手助けすることは出来ないけど一応試験官として暖かく見守るわね」

サラの言葉にクラス全員がジトっとした表情を浮かべる、それで良いのか、仮にも教官だろうという視線をサラに送る。

「完全に他人事ですね」

「私たちの成績が悪かったら教頭に嫌味を言われるんじゃないですか?」

「フフン、このクラスには成績優秀者が結構多いしねー。精々結果を楽しみにさせて貰うわ」

リィンとアリサの苦言もなんのその、飄々といった体でサラは答える。

「ぐぅ・・・今回こそエマ君には負けないぞ」

「あ、あはは・・・」

マキアスがエマに張り合うなか、サラは続ける。

「ちなみに、各生徒のテストの順位以外にもクラス毎の平均点の順位も出るから頑張んなさいね」

そう言ってサラはエマにHR終了の挨拶をさせるとさっさと職員室へと戻って行った。

「さてミナズキ、私たちも行こうじゃないか」

「あぁ・・・」

レナがやってきて話を掛けてくるがミナズキの反応は薄い、それを見てレナは苦笑いを浮かべる。

「気持ちは分からなくはないが今は頑張りたまえ、君のフラストレーションが溜まっている事は私もマローラも理解しているからねぇ」

「・・・・あぁ」

ここ最近雨が続いたせいでミナズキは朝の鍛錬が出来ていない、厳密には部屋で太刀を振ることは出来るが走り込みなどが出来ていないためイマイチ身体を持て余している状態なのだ。湿気が強い事も相まってミナズキのテンションは落ちていく一方だった。

「ほら、図書館に行こうじゃないか。マローラが司書室で待っているよ」

そう言ってレナはミナズキの袖を引っ張りながら歩き出す、ミナズキも途中で観念したのか自主的に歩き始めた。

 

 

図書館、司書室───

「63点・・・ですか」

「悪くはないんだがねぇ・・・微妙だね」

「ぐぬぬ・・・」

マローラの言葉にレナが率直な感想を述べ、ミナズキは低い唸り声をあげる。現在マローラとレナによってミナズキは勉強を見てもらっていた、しかしミナズキは勉強らしい勉強自体が初めてだった事もあり結果はあまり芳しくない。現にマローラお手製のテストをやってみたが60点をなんとか超えた程度だった。

 

実際人生初めての勉強でここまで点数を取れていれば大したものだがそもそも勉強を見てくれている相手がマローラとレナというどちらも入学試験の段階で最低でも全教科90点以上を取っているような2人だ、感覚が違いすぎる。

「まあでも最初勉強を始めた時は40点行かないくらいでしたから十分すぎるくらいには成長してますよ」

「そうだねぇ、何かご褒美でもあげるべきかもしれない」

「・・・・ガクッ」

妥協点をくれるマローラとレナを他所にミナズキは力尽きたように机に突っ伏した。それを見て2人はやり過ぎたと苦笑いを浮かべる。

「とりあえずコーヒーでも入れましょうか」

「手伝うよ、私も手持ちの物だが茶菓子はあるからねぇ」

休憩を入れるため席を立ち、司書室から出て行く2人をミナズキはぼーっとした目で見た後窓からの景色を見つめる。空は灰色の雲で覆われ朝から降っている雨が今も降り続けている。

「雨・・・か・・・」

そう呟くとミナズキは1度目を閉じる、降り続ける雨の音が心地良くそのままゆったりと身を委ねるように意識が遠ざかって行く。

 

「ミナズキ、コーヒーを・・・あれ?」

「おやおや、寝てしまったようだねぇ」

マローラとレナがコーヒーを入れて戻ってくるとそこには静かに寝息を立てているミナズキの姿があった。

「どうしましょう、とりあえず起こしますか?」

「いや、少しだけ寝かせてあげよう。最近は上手く体力を使えてないから夜眠りにくいらしいからねぇ」

席に着き2人はコーヒーとお菓子をテーブルに置く、ミナズキの寝顔を見ながら話を始めた。

 

「レナ、聞きましたよ。バリアハートではいざこざがあったんだとか」

「あぁ、まあそうだねぇ。いつも通りの下らない政争の結果さ、まさか帝都知事の息子というだけでマキアス君が狙われるとは思わなかったが・・・いやはや、貴族というのは本当に下らないよ」

「貴女もその貴族でしょう・・・」

マローラとレナは前回の特別実習であるバリアハートの件を話す、クロイツェン領邦軍の拠点であるオーロックス砦に導入された新型戦車といい、対立する革新派を牽制する為に学生であるマキアスを拘束した事といい、立場的には同じ貴族であるレナから見ても後者は呆れる以外何も出来ない事だった。

 

「しかし、ミナズキの奉仕活動でも大きめな事件が起きているとはねぇ。ある意味こちらの実習よりハードだったんじゃないかい?」

「まぁ、そうですね。森の精霊もそうですがその前の仲間集めも大変でしたよ・・・主にフリーデル先輩が」

「あー、それは大変だったろうね・・・」

今度はレナが先日の森の精霊との戦いを訊ねるとマローラは少し遠い目をしながら答える、フリーデルという名前が出ただけでレナもなんとなく察することが出来た。

日頃からフリーデルはミナズキをフェンシング部に入部させようと、まあまあちょっかいを掛けてくる。それは決して悪いことでは無いのだが、問題は彼女が限界に達しかけている時だ。

森の精霊との戦いの後の数日後、ミナズキは完全に復活し完全にいつも通りの生活を取り戻した。それを聞きつけたフリーデルは容赦無くミナズキを勧誘(という名の襲撃)をするようになった。

 

実例を上げるとミナズキが図書館へ向かうための道を歩いていると校舎2階の窓が勢いよく開き、フリーデルが飛び降りながら奇襲を仕掛けてくる、ギムナジウム前を通り過ぎようとしたら練武場の窓が勢いよく開きそこから飛び出してくる、屋上でミナズキがのんびりした後下の階に降りるためのドアを開けた瞬間レイピアによる突きが飛んでくる等上げればキリがない。

恐らくミナズキのストレスの原因の一部には確実になっているだろう。

「あの人も飽きませんね・・・」

「まぁ、いわゆる所のバーサーカーと言うやつだろうからねぇ。一緒に戦ったからこそミナズキの強さを再認識したんだろうが・・・はっきり言ってミナズキが少し気の毒に感じるよ」

「そう思うなら止めてくれ・・・」

マローラたちの会話に寝ていたはずのミナズキが反応する、どうやら途中で起きたようだった。

「ミナズキ、あれを止めるというのは私じゃ無理だねぇ」

「私も無理ですよ、あんな暴走しているような人は」

ミナズキの苦言にレナもマローラも目を逸らしながら言葉を返す、流石にまずいとは思うがあの状態のフリーデルを止められる人物はこの学院には少ないだろう。

 

「ま、まぁ話はこれくらいにして勉強を続けましょう、今日のうちに80点取れるようにしますからね」

「長雨もテスト勉強も終わりはある、それまでは耐えてくれたまえミナズキ」

「フリーデル先輩の問題は残り続けるけどな・・・」

マローラとレナに弱々しく文句を言いながらミナズキはこの後みっちりと勉強を見られた、ミナズキが80点取れるようになる頃には雨は止んだが完全に日が暮れていた。

 

午後8時、学生会館前───

「ラムゼイさんが作ってくれたフイッシュサンド、美味しいですね」

「本人は急ごしらえで作ったと言っていたがそう思えないくらいの出来栄えと味だねぇ」

「・・・美味い」

3人が学生会館を訪れた時にはもうそろそろ食堂が閉まる頃だったがミナズキがあまりにも空腹で死にそうな顔だったため、見かねたコックのラムゼイが簡単な料理を作ってくれた。

衣をつけて上げた魚を細長いパンに挟んで3人に渡してくれたのだ、ちなみにミナズキが健啖家なのは理解してくれているようでミナズキだけ3つ渡された。

「しかし完全に遅くなったねぇ」

「でもそのお陰でミナズキは全教科80点は取れるようになりましたし、結果オーライですね」

「・・・申し訳ないとは思ってる」

フィッシュサンドを食べ終えた2人の言葉に顔を逸らしながら謝りつつミナズキはフィッシュサンドを頬張る、そんなミナズキを見て2人は笑いミナズキの頭をくしゃくしゃに撫でていた。

「なんだよ・・・」

「なんでもないですよ?ただよく頑張りましたって意味です」

「まぁ、我々を苦戦させてくれた罰だ。甘んじて受けたまえ」

質問をしてもよく分からない返しをされたミナズキは頭に疑問符を浮かべたがそのまま歩きながら撫でられる。

ただ途中から鬱陶しくなったのか頭をブンと振り嫌がると2人はそそくさと撫でるのを止める、その後第2学生寮まで着くとマローラと別れレナと2人で歩く。

そして第3学生寮に着き、食堂へ向かった2人は紅茶を入れた。

 

「ほらミナズキ、君の好きなアップルティーだよ」

「ありがとう」

レナが差し出してきたティーカップを受け取りミナズキはゆっくりと紅茶を飲む、それを見ながらレナは微笑むと自身も静かに紅茶を飲み始めた。

「ミナズキ、今日は夜更かしせずに寝たまえ」

「別に夜更かしはしてないぞ」

「だが最近あくびが増えていないかい?」

レナの言葉にミナズキは反論するもレナの指摘に黙ってしまう、実際ミナズキは最近寝つきが悪い。暑くなってきたこともあるだろうが体力を使えてない分眠気が来にくくなっていた。

「そんなに分かりやすいか?」

「まあね、君は良くも悪くも素直だからねぇ」

ミナズキの質問にレナはそう返すと紅茶を飲みきり、ティーカップを洗う、ミナズキも飲み終わりレナと同じようにティーカップを洗うと2人で上の階へ向かって行く。

「じゃあここで・・・」

「そうだねぇ、おやすみミナズキ」

2階に着くと2人で挨拶を交わし、ミナズキは自分の部屋に向かおうとするとレナが待ったをかけた。

「あぁそうだミナズキ、以前君がパルムで取り返してくれた懐中時計なんだが・・・」

「あれがどうかしたのか?まさか壊れたとか?」

レナが出した話題にミナズキは食いつく、何かトラブルかと身構えるがレナは首を横に振り答える。

「いや、実はようやく修復の方法が分かってきてね。今度ちゃんとくっつけようと思うからその時一緒にいてくれないかい?君も協力者だからね」

「まあそのくらいなら」

レナの言葉にミナズキが頷くとレナは嬉しそうに今度こそおやすみ、と言い残し3回へと上がって行く。

ミナズキはそれを見届けて自室に入りベッドに横たわった。

「(散々な日だった・・・)」

ミナズキは自分で頼んだことではあったが2人の容赦のないテスト勉強に何度も苦戦させられた。

だが2人のおかげでテストを乗り切れる自信も湧いていた。

「(それに・・・)」

2人に頭を撫でられた時、実は少しだけ嬉しかった。

恐らく2人を除けばミナズキの頭を撫でたことのある人物なんて師匠のユンくらいなものだろう。

そんな事を頭の中で考えているうちに照れくさくなったミナズキは頭を横に振るとゆっくりと目を閉じる。

勉強で疲れていたこともあってミナズキは久々にしっかりとねむれたのであった。

 




ご拝読ありがとうございました。
次話もよろしくお願いいたします。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

  • あった方が良い
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