英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
実はリアルの友達に誘われて馬を見に行ってました。
友達共々普通に負けました。


47.フラストレーション

 

6/19(土)中間テスト4日目、実践実技───

カリカリカリカリと音を立てながらⅦ組の面々は目の前のテスト用紙に回答を書いていく、本日は4日目の最終日であり、長かったテスト期間も今日で終わりだ。

そんな中ミナズキも皆と同様にペンを進める、レナとマローラという鬼軍曹2人に図書館で攻め立てられ続けた毎日、最近の長雨の影響でろくに走り込みも出来ずにストレスと戦った毎日がようやく終わろうとしていた。

「そこまで!」

試験官であるサラの言葉で皆ペンを置く、そのままサラは席の間を歩きながら答案用紙を回収した。

 

 

その後、HR───

 

「いや〜本当にお疲れだったわね〜、丁度雨も止んだしタイミング良いじゃない、これも空の女神様の粋な計らいかしらね♪」

「また適当なことを・・・」

「つ、疲れた・・・」

サラの適当な物言いにアリサが苦言を呈し、エリオットが机にそのままもたれ込む、ラウラやフィーもあまり態度には出ていないが心無しか元気が無い。

「いやはや、なかなか楽しいテストだったねぇ。ミナズキはどうだい?ペンの音は聞こえていたから結構書けていたと思うんだが・・・ミナズキ?」

余裕そうなレナが隣のミナズキに話しかけるとそこには机に突っ伏しながらブツブツと何かを呟くミナズキの姿があった。

「やっと、やっと終わった・・・レナとマローラの2人に勉強で扱かれる毎日が、知識を詰め込むためだけに無になるだけの日々が・・・頭を良くする為とか言って学生会館で魚料理だけ食べさせられた食生活が・・・もう一生分は勉強した・・・早く体を動かしたい・・・」

「これは・・・少々やり過ぎたかねぇ」

あまりにもグロッキーなミナズキに流石のレナも苦笑いを浮かべた。

ちなみに学生会館で魚料理だけ食べさせられたのはマローラが言い出しっぺであり、普段は肉多めなミナズキを気遣っての事だった。

 

「ま、明日は自由行動日だしせいぜい鬱憤を発散しなさい。ちなみにテストの結果は来週の水曜日に発表されるからお楽しみにね、あとその日の午後は実技テストだからそれも忘れないように」

「そういえばありましたね・・・」

「空気を読んでもらいたいものだ・・・」

サラの連絡にマキアスとユーシスが愚痴る、必要な事とは言えこんな疲労困憊な時に言わないで欲しかった。

「ま、そういう意味でも明日は思い切り羽根を伸ばしなさいな。委員長挨拶お願い」

そうしてサラは帰りの挨拶をさせると職員室へと戻って行った。

 

 

放課後───

「さて、私はどうしようかねぇ」

「・・・・」

「ねぇ2人とも」

レナとミナズキが放課後どうするかを考えているとアリサが声をかけてきた。

「うん?どうかしたのかねアリサ?」

「・・・ん?」

2人が反応しアリサを見るとアリサの後ろにはリィン、ユーシス、マキアス、エリオット、エマの5人がいた。

「久しぶりに皆で寮に喋りながら帰らないかって話になってね、2人もどう?」

「ふむ、私は構わないよ。一緒に帰るさ」

「悪がパスで、久々に動き回りたい」

聞いてくるアリサにレナは頷き、ミナズキは席を立ちそのまま教室を出て行く。

「あれ、嫌だったのかしら・・・」

「大丈夫さ、ここ最近存分に太刀を振れなかったからその反動だと思うよ。また誘ってあげたまえ」

断られて首を傾げたアリサにレナは笑いながら教える、その言葉に他の面々も納得し皆で教室を後にするのだった。

 

旧校舎前───

 

「・・・・ふん!」

誰もいない旧校舎前、ミナズキはそこで太刀を振るっていた。今日のテスト終わりまであまり満足に振れなかった分を清算するかのように荒々しく、それでいてその動きはまるで舞いのように規則正しく、素早く、そして美しくもある。

そして少しするとピタリと太刀を振るう手を止め、1本の木を、正しくはその木の陰に潜む人物を見つめそれが出てこない事を確認すると声をかける。

 

「どうせあんただろ、フリーデル先輩」

「あら、やっぱりバレてたわね」

ミナズキの声に木の陰からフリーデルが姿を現しそのままミナズキの元へ歩いてくる、やはりと言うべきか右手にはレイピアを持っていた。

「悪いわね、別に覗き見るつもりは無かったんだけど」

「あんたの事だからどの道乱入してただろ」

弁解するフリーデルにミナズキは呆れた様子で答えるとフリーデルは肩をすくめて笑う。

「テストも終わったし、貴方が色々抑圧されてたのは見てたから仕掛けるなら今日が1番良いと思ったのよねー・・・それでどうかしら、勝負してくれる?」

「なるほどな・・・まぁ、当たらずも遠からずと言ったところか。だけど少しだけ誤算がある」

笑顔でレイピアを構えるフリーデルに対していつも通り太刀を収めつつミナズキは言う。

「誤算?何かしら?」

「・・・今の俺はかなり気が立っている、ということだ。森の精霊との戦いでも納得の行く動きが出来なかった、もし全快ならもっと確実に、皆に苦労させずに手早くあの化け物を倒せた。その事が未だに頭の中で引っかかっている」

そうフリーデルに答えるミナズキの目には怒りと悔しさが浮かび、太刀の柄に触れる手は震えるほど強く握られていた。いつも挑発する側のフリーデルの額にも冷や汗が浮かび始める。

「どうやらただの脅しとかじゃないようね、急に肌がピリピリしてきたわ」

「あぁ、あんたが何時も仕掛けてくるような、ちゃっちい喧嘩じゃ済まないってことだ・・・!」

 

瞬間、フリーデルはレイピアで前に防御の構えを取ると腕に痺れるような衝撃が走った。ガキィン!という鉄同士がぶつかる音と共にフリーデルは後ろに下がる。しかしミナズキはもう視界から消えてしまっている。

「これは・・・!」

先程までの笑みは消え、フリーデルの目は必死にミナズキの姿を追っているがしかしミナズキの姿は見えない。

「(消えた?いや違うそんなんじゃない!)」

余裕無く周りを見渡すフリーデル、聞こえるのは風を切る音、でもそれはただの風の音じゃない。

背後から感じた殺気にフリーデルはレイピアを振り切る、当てられたと感じた。だがそこには誰もいない。

「どこに振ってる・・・?」

「!?」

自分がレイピアを振った方向の真後ろから声が聞こえた、次の瞬間フリーデルは脇腹に鈍痛を覚える。

「(柄で殴られた?・・・斬れたはずなのに?・・・遊ばれてる!?)」

そして先程よりも目を凝らすと風の音の正体は高速で移動しているミナズキだと気付いた。普段赤と灰色が入り混じったような色の瞳は真っ赤に染まり、速さが相まって赤い残光を残している。

「・・・!この!」

よく狙いレイピアを振るうフリーデルだったが攻撃は当たるどころか掠ることもせず虚しく空を斬る、そして今度は右脚に鈍痛がやってくる。

「・・・グゥ!?」

痛みに呻くがもしここで動きを止めたらそれこそ畳み込まれておしまいだ、そう考えたフリーデルは痛みに耐えながら周りを見渡す。目が慣れてきたのか先程よりもよく見える。

「(木と木を飛び移って移動して、まるでバネが跳ねるような一切止まることの無い動き!?でもこれなら・・・!)」

ミナズキの高速移動は高さもあるが直線、攻撃以外は線の移動だ。ならばこの線が点に変わる時、それは攻撃の合図であり逆にフリーデルが攻撃を当てるチャンスでもあった。

耳を澄ませれば木を蹴る小さな音も聞こえて来る、そしてその音が他よりも強くなり、視界に映る残光が線では無く点に変わる。

「そこ!」

文字通り跳ぶように迫るミナズキに対し全力の突きを放つ、自身の今までの剣技の中で1番とも言える素早く力強い突き、フリーデルもこれならと手応えを感じた。

「・・・・え」

つい声がフリーデルの口から零れる、剣の先にはミナズキは居ない。いや、方向はあっている。しかし─── 。

「よけ、た?・・・あんな素早い動きをして・・・私の剣が当たる瞬間に・・・身を、屈めて?」

「・・・・」

フリーデルのレイピアが当たる瞬間ミナズキは減速、身を屈めることでフリーデルの一撃をすれすれで回避した。そして今の呆気にとられているフリーデルは突きの体勢のまま固まってしまっているわけで─── 。

ミナズキは初撃以降抜いていなかった太刀を抜き放つ、狙いはフリーデルの頸椎だった。

「(避けられ、違う!そうじゃない!でも今、防御・・・間に合わ、死ぬ!?)」

思考がごちゃごちゃになる中、フリーデルは防御の構えを取ろうとするが目の前に明確な死が見え、身体は強ばり腕が動かなかった。

「(しぬ、死ぬ!?私が!?嫌だ!そんなのやだ!やだ!やだぁ゛ぁぁぁ!)」

フリーデルは頭の中で迫る死に対して子供のように必死に拒絶するがそんな事ではミナズキの太刀は止まることは無い、そしてそのまま太刀はフリーデルの首を───

「・・・・へ?」

「これに懲りたらしばらくは喧嘩ふっかけるの止めてくれ・・・」

斬ることは無く、首に触れる直前にピタリと太刀は止まった。

「わ、たし・・・生きて?」

「殺すわけないじゃん、そもそもがフラストレーションを解放しただけだし」

動揺しながら聞いてくるフリーデルにミナズキは呆れた顔で返しそのまま校舎の方へ歩いて行ってしまう。

「なん、なのあれ」

残されたフリーデルはレイピアをカシャンと落としそのまま地べたにへたり込む。

彼女の呟きに答えをくれる者はどこにもいなかった。

 

士官学院前───

 

「お、ガイウス。皆と帰ったんじゃないのか?」

「ミナズキ?サラ教官に呼ばれてな」

ミナズキが帰るために校舎前に来ると学院から出てくるガイウスを見つけた。

「教官に?ガイウス何か問題起こしたっけ?」

「いや、別に問題を起こしたわけじゃない。ただ・・・すまない、今は言えないんだ」

「へー、まあ良いか。帰ろう」

ミナズキの質問に答えにくそうにするガイウス、それを見てミナズキも質問を止め歩き出す。

「ミナズキこそ何かあったのか?なんだかスッキリした顔になっているが」

「んー、まあな。久しぶりに全力で動いたってだけ、やっぱり運動は良いな」

ガイウスはミナズキの隣を歩きながら質問する、ミナズキはそれに答えると軽く伸びをした。先程フリーデルに向けていた殺気はまるで無かったかのように酷く穏やかな表情を浮かべていたのだった。

 




ご拝読ありがとうございました。
テストはグダるので最終日まで飛ばしました。
次話もよろしくお願いいたします。

今更なのですが、ミナズキとレナ、それにマローラのプロフィールってあった方が良いでしょうか?

  • あった方が良い
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