英雄伝説 雪月の軌跡   作:モリーもふもふ

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ご拝読ありがとうございます。
現在リアルの方がバタバタしております。
気長にお待ち頂けると幸いです。


48.自由行動日、時計の修復

 

6/20(日)朝7時───

「・・・美味い」

「はい、厨房に慣れていないため間に合わせになってしまいましたが、アリサお嬢様とそのご学友である皆様の為に腕によりをかけてお作りしました」

ミナズキの呟きにそう返したのは昨日から第3学生寮の管理人でありアリサ、もといアリサの実家であるラインフォルト家のメイドであるシャロン・クルーガーであり、現在Ⅶ組は彼女が作った朝食を食堂にて囲んでいた。

シャロンが作ったのはトーストにベーコンエッグ、サラダにスープ、そして紅茶といういわゆるインペリアルブレックファーストという帝国風の伝統的な形式の朝食。

間に合わせ、とシャロンは言ったがラウラやユーシスも絶賛を送るくらいには出来は良く味も貴族が食べるものにも劣らないようだ。

 

「・・・・」

そんな中アリサは不機嫌そうにシャロンから顔を背けている、ただそんな対応をされているシャロンはそれを見て微笑んでいるが・・・。

話は昨日に遡る。

 

6/19(土)夕方、第3学生寮───

「じょ、冗談じゃないわ!せっかく実家から離れたのに母様の思い通りになるもんですか!」

「まあまあ、アリサ様。会長も私をお目付け役として派遣された訳では無いと思いますわ、ひとえにお嬢様に日々のご不便が無いようにと・・・」

「それが余計って言ってるのよ!」

アリサの叫ぶ様な言葉にシャロンが宥めるように優しく話す、それでもアリサは止まらず最終的には自身の母親に連絡を取ろうとしたが早くとも家に帰るまで5日は仕事をしているという話を聞きうなだれる。

「とにかく!絶対に!絶対に認めないんだからぁ!」

本人にとってはシリアスな、他人から見たらかなりコメディ気味なアリサの叫びが寮内に響いた。

 

そして現在───

「とにかく、私は認めない。母様だって忙しいしシャロンが付いていた方が・・・」

「あ、お嬢様。大好物だったアプリコットジャムをたくさん作ってきましたわ。せっかくですからシャロンがトーストにお塗りしましょうか?」

「え、ホント!?・・・だ、だから子供扱いしないでって!・・・ジャムは貰うけど」

アリサの話は綺麗にはぐらかされ終始シャロンのペースで話が進む、完全に手の上で踊らされてる状態だった。

「完全にからかわれてるな、あれ」

「あぁ、アリサはいわゆる所のチョロイン、と言うやつだからねぇ」

「だ、誰がチョロインよ!?」

ミナズキとレナの話が聞こえたようでアリサは軽く突っかかるが目の前にジャムが塗られたトーストを出されると、悔しそうに受け取ってトーストを1口、そのまま黙り込んで美味しそうにトーストを頬張る。

やっぱりチョロインじゃないか、とミナズキは頭の中で突っ込むが幸せそうにトーストを食べるアリサの姿にそれを言う気にはならなかった。

 

 

食後、第3学生寮3階レナの部屋───

「まぁ、入ってくれたまえ」

「お邪魔します」

以前レナに言われた懐中時計の修復、その方法が何となく分かってきたレナはミナズキを自室に呼び椅子に座らせた。

「それにしても・・・」

「なんだい、私の部屋が気になるかい?特に変なものを置いたとは思わないが・・・」

ミナズキの言葉にレナが反応して自分の部屋を見渡しミナズキも同じようにする。確かに散らかってはいない、だが色んな本やよく分からない結晶などが机の上に所狭しと置いてある。

「部屋が変というかレナが変というべきか」

「手厳しいねぇ・・・」

ミナズキの指摘に苦笑いしながらレナは作業台を用意してミナズキの前に置く、そしてその上に件の懐中時計を置いた。

「さて、じゃあ話を始めるとしようか」

「わかった」

レナはミナズキに向き合うように座り、さっさと話を始める。

レナは初めは懐中時計の欠片同士をくっつけようと破片同士が噛み合うかを確認した、破片はピッタリと一致した。次にどうすればくっつけられるか、だったのだがこれもまた苦労した。溶接をしようか考えたがそんなものは持っていないしそもそも通用するかどうかも分からない、そんな訳でレナは自身の能力であるスパークを何となくだが当ててみたのだ。

すると欠片同士が光りだした、レナはそのままくっつけられるかと思ったがその後欠片はお互いをまるで磁石の同じ極同士のように跳ね返してしまった。

「・・・という訳だ、現在は上手くいってないから一旦先延ばしにしてたんだ」

「・・・手で持ってくっつけながらスパーク使えば良かったんじゃないか?」

「やったとも、だがダメだった・・・まるで絶縁体にでも触っているみたいにスパークの電流は通らなかった。他にも本やら簡単な置物でくっつけながらスパークを流してみたがその程度では跳ね返されてしまう」

粗方の説明をしたレナはミナズキの言葉に落胆しながら返す、そんな彼女を見てミナズキはある提案をする。

「レナ、俺がその時計をくっつけるように支えながら持つから俺ごとスパークを当ててみたらどうだ?」

「・・・それは有難いが、かなり痛いと思うよ?」

「覚悟の上だ」

ミナズキの提案にレナは少し引きつつも頷くとミナズキは懐中時計の欠片同士をくっつけた状態で持つ、レナは人差し指をミナズキに向けると窺うようにミナズキを見つめた。

「えっと・・・本当に大丈夫かい?」

「良い、早くやってくれ」

あっけらかんと答えるミナズキに対して意を決してレナは懐中時計にスパークを放つ、指から黄緑色の稲妻がほとばしると時計に当たり輝きだす。しかしミナズキにも影響はあるようで痺れるような痛みにミナズキは顔を歪ませる。

「ね、ねぇ!本当に大丈夫なのかい!?」

「そう思うなら早く済ませろ!正直1日に2回もこれを喰らいたくない!」

1度電撃を止めそうになったレナだったがミナズキの言葉に不安な表情を浮かべながらも続ける、懐中時計の欠片はようやく半分くっつき始めたところだった。

「う、ぐ、あぁ・・・」

「ミナズキ・・・は、早く!くっついてくれ!頼む!」

苦悶の表情で呻き始めるミナズキを見て焦りと恐怖を感じたレナは懇願するように叫びながら電撃を放ち続ける。そしてついに─── 。

カチリ・・・ドクンッ!

まるで耳の横に心臓を持ってこられたような、そんな鼓動にも似た音を2人は聴いたような気がした。

そして直後、目を開けてられない程の眩しい光に2人は目を閉じる。

 

 

「ミナズキ・・・大丈夫かい、って・・・え?」

「そっちこそ・・・これは?」

2人が目を開くとそこはレナの自室ではなくとある街道の橋の上だった。

「ここは、どこだ・・・知らない土地だ」

ミナズキは首を傾げたがレナは景色を見渡すと納得したように頷く。

「ここは・・・間違い無い、私の故郷であるアルテマ・・・そこに辿り着くための橋だ・・・そして多分ここは過去の、いや記憶の世界だ」

レナの言葉を聞きミナズキはもう一度周囲を見渡す、確かに本当の世界にしては少し色褪せているような、少しだけ景色がセピア色がかっているように見える。

「つまり懐中時計はくっつけられたわけか?」

「あぁ、多分だがね・・・あれは・・・!」

訊ねて来るミナズキにレナは言葉を返すがその際に何かを見つけたようでそのまま走って行ってしまう、ミナズキも追うように走った。記憶の世界とやらで走れることに不思議さ、というより違和感を感じたがなるべく気にしないようにミナズキは無心で走った、しばらくするとレナは止まりミナズキも追いついて止まるとそこには1人の妙齢の男性が川でのんびり釣りをしている姿があった。

「誰だこのおっさん・・・」

「お養父さん・・・」

ミナズキの呟きに反応するようにレナが零す、この男性こそレナの故郷アルテマを管理しているレトロノーツ辺境伯その人であった。

「ふむ、今日はなかなか釣れないな・・・」

そう辺境伯はボヤきながらのんびりと椅子に座ってくつろいでいる、ミナズキはなんとも言えない表情で辺境伯を見た。

「なんというか・・・なんて言えば良いんだ?」

「ふふ、気持ちは分かるさ。掴み所の無い人だからねぇ、だがこれでも交渉等の舌戦は見事な人だよ」

表現に困るミナズキに対してレナが笑いながら答える、そうこうしていると辺境伯は何かを見つけたようだ。

「ん?・・・樽、だなこれは・・・何故こんなものが流れて来るのだ・・・」

流れてきた樽は大きさはせいぜい1アージュ(1m)もない大きさでまるで辺境伯に吸い寄せられるように彼のすぐ横で岩に引っかかって止まった。

「ふむ、何が入っているのか・・・これは・・・音、いや違う・・・人間の声か!」

そう叫ぶように辺境伯は言うとその樽を持っていた釣具やナイフを使って叩き開ける、中には衰弱した赤ん坊が入っていた。

「あぁなんということだ、誰がこんな非道な事を・・・いやこんなこと言っている場合ではない!急がねば!」

そう言うと辺境伯は赤ん坊を抱え走り始めた、そして場面が切り替わる。

「レナ、ここはどこだ?」

「ここは・・・確かアルテマにある病院だったねぇ」

そこでは辺境伯が医師と話し合う姿があった。

 

「ありがとう先生、おかげでこの赤子が命を拾った」

「いえ、レトロノーツ卿の頼みならこれくらいさせてもらいますよ」

お礼を言う辺境伯に医師が笑って返す、どうやらあの赤ん坊をは生き延びたようだった。

「しかしあの赤ん坊は一体どこから来たのか・・・」

「それなんですがレトロノーツ卿、こちらを」

考え込む辺境伯に医師がとある汚れた紙切れを渡す、酷く汚れており破けているがその紙切れにはまるで走り書きしたような字で『レナ』と書かれていた。

「ふむ・・・レナ、あの赤子の名前はレナか!」

「そのようです、他に身元が分かるような物は入っておりませんでした・・・如何しましょう、孤児院に預けますか?」

レナ、という名前を知って頷く辺境伯に医師は提案するが辺境伯はその言葉に首を横に振った。

「いや、私の家に連れて行こう・・・これもまた空の女神の思し召しだろう」

その言葉を最後に景色が一気に歪み始め、記憶の世界が崩壊し始める。

「ちょ、これどうするんだい!?」

「知るか、お前の時計だろ!」

慌てるレナとミナズキだったがそんな事してる間にも世界の崩壊は続いていた。

「あーもう!何でもいいから元の世界に戻したまえ!」

やけくそ気味にレナは叫ぶ、するといきなりミナズキが手に持っていた懐中時計が眩く輝きだし2人を光が包んだ。

 

「え?」

「戻った、のか?」

レナとミナズキはあまりの事に声を漏らす。

気が付くと2人はレナの自室に戻っていた、というより元から移動なんてしていなかったようで2人の位置は記憶の世界に行く前と全く同じだった。

「ミナズキ、君は今あったことを覚えているかい?」

「レトロノーツ辺境伯のことだろ?覚えてるぞ」

今起きたことが現実かどうかレナがミナズキに聞くとミナズキは自分の手の上に乗っている欠片同士が接合された懐中時計を見せる、レナが安堵したその瞬間だった。

「うおっ!?」

「ミナズキ!?」

ミナズキがいきなり吹っ飛び部屋の壁に勢いよくぶつかる、手に持っていたはずの懐中時計はそのままカシャンと作業台の上に落ちた。

「ミナズキ!一体どうしたんだい!?君がいきなり吹っ飛ぶなんて!」

「いや、今懐中時計から衝撃が・・・」

駆け寄ってくるレナにミナズキはそう返した、その言葉にレナは作業台の上の懐中時計に駆け寄り見るがそんな仕掛けは無くただの半分の懐中時計があった。

 

「ただの懐中時計・・・じゃないようだねやっぱり何かしらの力を秘めているかもしれないって事か」

そうしてレナは冷静に分析を終えるとミナズキの元に歩いていく。

「ミナズキ、すまない。君に怪我を負わせてしまった。始めのスパークと言い今の吹っ飛ばされた件と言い君に負担をかけてしまっている」

「別に平気だ、ただあの電撃は少々キツかったな。なんなら今もまだ少し痺れてるし」

申し訳なさそうに謝ってくるレナにミナズキは笑って返した。だがミナズキの発言にレナは慌ててミナズキに怪我が無いか確認してくる。

「本当に大丈夫かね!?スパークをあれだけ当てたら火傷をしてる可能性もある!」

そう言ってレナはミナズキの腕を見ようとミナズキに迫る、ミナズキはミナズキでそんなことはさせまいと抵抗する。

「なんで抵抗するのかねぇ!?もしかして病院が怖いのかなぁ!」

「そんな訳ないだろ、単に少し痺れてるだけだ」

レナはミナズキが壁際にいるのをいい事にまだまだ攻勢を仕掛ける、ミナズキはそれを全力で防御し耐える。

しかしそんなことをしていると───

「レナさん借りてた本を返そう、と・・・思った、のですが・・・」

レナの自室に本を借りていたエマがレナの部屋に入るとそこには壁に背を持たれて地べたに座っているミナズキの脚に馬乗りしながらミナズキの腕を見ようとしているレナの姿があった。

見方によってはレナがミナズキを襲っているようにも見えてしまうこの状態、そんな2人を見てエマが口を開く。

 

「お邪魔しました、その・・・そう言うことは学生のうちはあまり良くないと思うので・・・とりあえず程々に」

そう言いながらエマは勢いよく扉を閉めた。

「待て!(待ちたまえ!)」

出ていったエマの誤解を解くため、2人は走った。なんとかエマに必死に説明したが信じて貰えたかは五分五分だった。

 




ご拝読ありがとうございました。
なんとか1話に収めました。
次話もよろしくお願いいたします。

まだ直接的な関係は無いんですけど逆質問です。ミナズキは士官学院を卒業したらその後はどうなると思いますか?

  • 遊撃士になって仕事をする
  • 帝国の各地を放浪する
  • なんやかんや身を固めて何処かに定住する
  • 行方不明になる
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