おかげで50話に到達し、お気に入りも85になりました。
これからもよろしくお願いします。
【注】今回は結構強烈な話になっています。
リィン率いるⅦ組代表とパトリック率いるⅠ組代表の戦いが始まった訳だが、状況としてはⅦ組が有利だった。
「ブルーララバイ!」
エリオットのクラフト、ブルーララバイによりⅠ組の2人が眠ってしまい、そこにマキアスのクラフト、ブレイクショットが1人の生徒に刺さる。
Ⅰ組がアーツを使おうとすればリィンとガイウスがその駆動を解除していく。
「くっ・・・調子に乗るな!」
「っ!」
まだ余裕のあるパトリックが前に出て近くにいたエリオットを狙う、そこにリィンが割って入った。
「どけぇ!」
「させるかっ!」
パトリックが放つ連続の突きをリィンは冷静にいなし続ける、一方ガイウスは2人の貴族生徒と向かい合うも槍を振るい近付けないように牽制している。
「うおぉぉ!」
「ち、近づけない・・・」
頭上で槍を高速回転させるガイウス、周りには風が巻き上げ始めておりその威圧感は高まっていく。
「ブルーララバイ!」
「うわっ!?」
「・・・ぐぅ」
そしてガイウスに意識が向いている2人に再度エリオットのブルーララバイが直撃する、眠りはしなかったものの2人は意識が一瞬遠い世界に行きかける。だがその瞬間が命取りだった。
「タービュランス!」
ガイウスのクラフト、タービュランスによって発生した竜巻が2人と、そして眠っていたもう1人の貴族生徒に直撃する。
3人の膝を着かせるには十分すぎる一撃だった。
「お前ら!?くそっ!」
「ふっ!」
仲間を同時に3人ダウンされたパトリックは一瞬動揺を見せたがそれでも目の前のリィンへの攻撃を緩めない、そして───
「緋空斬!」
「くぅっ!」
隙をついてリィンが放ったクラフト、緋空斬をパトリックはすんでのところで回避する、そして再度リィンに攻撃しようとしたその時だった。
「ブレイクショット!」
「がはぁっ!?」
パトリックの右脇腹に強烈な鈍痛、攻撃してきた方向を見るとマキアスがおり、導力銃からは発砲後の煙が出ていた。
ここでパトリックは思い返す、眠ってしまった1人を除き自分以外の2人と戦っていたのはガイウスとエリオットだ、ならマキアスはどこに居た?答えは簡単、今まで自分と打ち合いをしていたリィンの真後ろで身を軽く屈めていた。
そして仲間の3人がダウンされ意識がそちらに向いた瞬間マキアスはパトリックが向いた方向とは逆方向に向かった。散々煽られ、そして仲間がやられ頭に血が上ったパトリックはこれに気付けなかった。
「こ、このぉ!」
「ゲイルスティング!」
「ぐぼぉ!?」
なおもリィンに向かおうとするパトリックに今度はガイウスが放ったゲイルスティングが突き刺さる。
ふらり、と身体が揺れるが貴族としての矜恃が倒れることを許さないのかパトリックはすんでのところで耐える、しかしそれも終わりだった。
「紅葉切り!」
リィンはクラフト、紅葉切りによってパトリックは遂に膝をついてダウンした。
「そこまで!勝者Ⅶ組代表!」
サラの言葉にⅦ組は手を止め武具をしまう、そして息を整えるとⅠ組に向き直る。
「どうだ、これがⅦ組の実力だ!」
「ヘトヘトだけどね・・・」
「良い具合に連携が出来た」
胸を張るマキアスとまだ全快とはいかないエリオット、頷きながら自己分析しているガイウス。
「フン、及第点だな」
「ふふ、やったわね」
「悪くない、かな」
ユーシス、アリサ、フィーも満足そうに頷く中、リィンはパトリックに手を差し出した。
「いい勝負だった、皆に助けられなかったら押し込まれてたかもしれない。機会があればまた─── 」
しかし、パシンというリィンの手を払い除ける音と共にその場が静まり返った。
「触れるな、下郎が!」
パトリックの放った言葉にリィンも1歩後ずさる、Ⅶ組の面々も顔を険しくして彼を見つめた。
「思い上がるなよ、ユミルの領主が拾った出自も知れぬ浮浪児ごときが!」
「お、おい!」
パトリックの言葉にマキアスが制止するもパトリックは止まらない。
「お前もだレトロノーツ!辺境伯に拾われただけの捨て子風情が!他のものも同じだ何が同率首位だ!貴様ら平民ごときが良い気になるんじゃない!ラインフォルト!?所詮は成り上がりの武器商人風情だろうが!おまけに蛮族や猟兵上がりの小娘まで混じっているとは・・・!」
「・・・」
パトリックの言葉に皆固まる、そんな言葉を聞きガイウスはただ目を閉じて考えている。
「まぁ否定はしないけど・・・」
「小娘・・・私の事?」
「・・・酷いです」
武器商人と言われたアリサは苦い顔をし、フィーは目を細め、エマは落ち込んだように俯く。
「・・・レナ?」
「ん?・・・あぁ、大丈夫さ。事実だしこの程度で落ち込むことは無いよ」
ミナズキもレナの方を見る、レナも気丈に振る舞いはするが多少ショックだったのか少し顔が引きつっているように見えた。
「ぱ、パトリックさん・・・」
「流石に言い過ぎでは・・・」
「うるさい!僕に意見する気か!?」
取り巻きたちが青ざめながら止めるがそれでもパトリックは止まろうとはしない。
「聞くに堪えんな・・・」
「おい、いい加減に・・・」
見兼ねたラウラとユーシスが止めに入ろうと前に出たその時だった。
「─── よく分からないが、貴族というものはそんなに立派なものなのか?」
「っ!?」
前に出て来たガイウスの言葉にパトリックが言葉を詰まらせた。
「そちらの指摘通りオレは外から来た蛮族だ。故郷に身分は無かったため未だに実感が湧かないんだが・・・貴族は何をもって立派なのか説明してもらえないだろうか?」
「なっ、な・・・!」
ガイウスの言い分にパトリックは言葉を失うも少し気を持ち直すと答える。
「き、決まっているだろう!貴族とは伝統であり家柄だ!平民ごときには真似の出来ない気品と誇り高さに裏打ちされている!それが僕たち貴族の価値だ!」
「なるほど・・・ラウラやユーシス、それにレナの振る舞いを見れば納得できる答えではある・・・だが、それでも疑問には答えてもらっていない。伝統と家柄、気品と誇り高さ・・・それさえあれば先程のような言い方も許されるという事なのだろうか?」
パトリックの言い分にまっすぐな言葉と瞳でガイウスは問う、これにはパトリックも唸る以外何も出来なかった。しかしそれでも、とパトリックは反論した。
「だ、だがだとしたらそいつはどうなんだ!?」
そうしてパトリックはⅦ組の1人を指差す、そこに居たのはパトリックに冷たい目を向けるミナズキだった。
「え・・・ミナズキ?」
「ふむ・・・?」
「・・・・」
エリオットが声を上げレナは眉をひそめる、ミナズキは何も言わずパトリックを睨んだままだ。
「ミナズキ・バンシア!何故貴様のような存在が士官学院に居るんだ!?いや居て良いはずがない貴様のように帝国でも最もおぞましい男は!何故なら貴様は本来秘密裏に処刑されたはずの男だからだ!」
パトリックの言葉にその場の全員が目を見開く、処刑なんてワードが飛び出すとは誰も思っていなかった。
「しょ、処刑?」
「それは一体どういう・・・」
「・・・・・」
エリオットが震えた声で呟き、マキアスも頭を整理しようと声を漏らす、それでもミナズキは何も言わない。
「はっ!何も知らないのか!?なら教えてやろう、そこにいる男は帝国各地で山賊や猟兵崩れの野盗を殺し回っていた大量殺人鬼!夜の暗闇に乗じてその場を地獄に変える様から付けられたあだ名は《死の精霊》(バンシー)だったな・・・!」
息を切らしながら声を上げるパトリック、他のものは動けなかった。いきなり開示された情報、今まで普通に共に過ごしてきた級友の過去、皆の頭を真っ白にするには十分すぎた。
「父上から聞いたぞ、貴様がこの士官学院に来た理由は・・・帝国せぐぉ!?」
「口が軽いのは結構だが、お喋りな貴族の寿命は短いぞ?」
続きを喋ろうとしたパトリックの鳩尾にいつの間にかミナズキが肘鉄を入れていた、パトリックは口をパクパクと動かすとそのまま意識を失った。
「おい、連れて帰れ・・・それと今の事を話さないことを勧めるぞ、俺も困るがお前らはもっと困るだろうからな・・・」
「は、はいぃぃ!」
ミナズキは乱暴にパトリックを取り巻きたちに渡す、取り巻きたちもパトリックを抱え逃げるようにその場を後にした。
「え、えっと・・・」
同じく呆気にとられていたサラも持ち直す、しかしどうしたものかと困惑した顔でミナズキを見ていた。
「ごめんなさい教官、自分は今日はもう帰ります。班分けも必要なら見直してください、では・・・」
ミナズキはサラにそう言って他のⅦ組の面々を見る、皆困惑や不安が入り交じった表情をしている事を確認しグラウンドから出て行った。
「あ、ちょっとミナズキ!?」
「教官・・・私に行かせてください。この中、というよりトールズで1番彼と長く過ごしたのは私ですから」
「レナ・・・わかったわ、行きなさい」
焦るサラに普段と口調も態度も違うレナが提案する、サラも1度思案したがすぐに承諾した。
「ありがとうございます・・・行く前に1つ聞きたい、教官はミナズキの事をどれくらい知っていたのですか?」
「・・・はっきり言ってほとんど知らないわ、過去に問題がある生徒ってだけね」
「そうですか・・・では」
サラの返事を聞くとそのままレナもその場から去った、残された面々は誰も何も言えなかった。
ご拝読ありがとうございました。
これからも色々と開示していきます。
次話もよろしくお願いいたします。
まだ直接的な関係は無いんですけど逆質問です。ミナズキは士官学院を卒業したらその後はどうなると思いますか?
-
遊撃士になって仕事をする
-
帝国の各地を放浪する
-
なんやかんや身を固めて何処かに定住する
-
行方不明になる